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岡山フィル第75回定期演奏会 指揮:山下一史 Vn:黒川侑 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第75回定期演奏会


ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調

  〜 休 憩 〜

シューマン/交響曲第3番変ホ長調「ライン」


指揮:山下一史

ヴァイオリン独奏:黒川侑

コンサートマスター:藤原浜雄


2023年3月12日 岡山シンフォニーホール


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・指揮の山下一史さんは、ミュージック・アドバイザーの秋山さんと並んで、国内で最も忙しい指揮者。岡山フィルとはちょっとお久しぶりで2012年の第九以来だろうか。シューマン解釈の第1人者ということもあって、「ライン」は暗譜だった」(「オベロン序曲」も暗譜)。仙台フィルとの録音もテンポ設定・バランス・響の作り方、どれも私好みで、今日の演奏の期待も高まるというもの。

・編成は1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6の12型2管編成。

・1曲目のオベロン序曲。ドイツの音を響かせるホルン、みずみずしい生命を描く木管。中世の英雄たちのドラマが見えるような弦の旋律。よく練られた見事な演奏でカーテンコールが起こる。

・2曲目のベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲は、案外岡山フィルではやっていないのではないか?名曲ということに異存はないが、チャイコフスキーやメンデルスゾーン、パガニーニのような超絶技巧が前面に出る曲ではなく、音の絶対的な美しさや構成力が必須で、ヴァイオリニストの真の実力が試される大曲だと思う。

・ソリストの黒川侑さんの実演に接するのは、これで5回目(もしかしたらもう少し多いかもしれない)。最初に接したのは彼が弱冠17歳で登場した関西フィルの定期演奏会でのブルッフのコンチェルト。天翔るような才気溢れる演奏、指揮の藤岡幸夫さんも首席指揮者就任披露公演ということもあって、指揮者とともにたいへんな熱演でもあった。

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・2回目は京響の定期演奏会。20世紀の天才:プロコフィエフの2番を21世紀の天才ヴァイオリニストが演奏する、インスピレーションあふれる演奏に度肝を抜かれる。この演奏はNHKで放送され、のちにCDにもなった(たぶん、天神町のアルテゾーロ・クラシカに置いてあるはず、店長さんと「凄いヴァイオリニストが出てきたねえ」と話したのを思い出す)。

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・彼は倉敷音楽祭にも度々登場し、そこでの室内楽の演奏でも2回接した。で、今回のベートーヴェン。たぶん33歳になる筈。ヴァイオリニストとして脂が乗っていくこの時期に、よくぞ彼をソリストに招いてベートーヴェンを組んでくれたと思う。

・私のこの曲を聴く楽しみ方は、難しい事を抜きにして、ひたすらヴァイオリンの音色を愉しむ・・・それに尽きる。特に第1楽章のシンプルなオーケストレーションをバックにハイトーンが続く場面が好きだ。そして黒川さんのヴァイオリンの伸びやかで真珠のような輝きのある音に「そうそう、この曲はこの音なんだよ」とドンピシャの演奏だった。長大な第1楽章が夢のような時間に感じた。

・第1楽章のカデンツァも至福の時間だった。このホールに神が棲んでいるとしたら、黒川さんのヴァイオリンは、その神に愛されているな・・・。観客だけでなく、ホールも喜んでいるような幸せな時間。

・ベートーヴェンの完璧な音楽を完全に手の内に入れている黒川さんの演奏に巨匠の風格さえ感じた一方で、少し若手時代の情熱的な顔を垣間見たのが第3楽章、飛び跳ねるような天衣無縫の演奏は、彼のヴァイオリンを初めて聴いたとき面影を感じた。


・ヴァイオリニストの真の姿が見えるこの曲をこれほどまでに純化された美しさを湛え、堂々とした骨太な世界を顕現させた黒川さん。40代、50代になった彼のヴァイオリンを聴いていきたいと感じた。


・アンコールはバッハの無伴奏ソナタ第3番の第3楽章。

・後半はシューマン/交響曲第3番「ライン」。実はシューマンの4曲の交響曲の中で、私の中ではこの曲が一番評価が低かった。順番としては2番が至高の名曲で、少し離れて4番→1番「春」→3番「ライン」という順番だ。第1楽章、第2楽章は文句なく素晴らしい。第5楽章も悪くない。ただ5楽章編成の交響曲の座りの悪さが冗長さに繋がっている気がする。幻想交響曲やマーラーの5番のように巨大な第3楽章を中心に据えないと5楽章形式の交響曲は中途半端に感じてしまう。

・そんな「帯に短し襷に長し」な印象の曲を、シューマン解釈の第1人者の山下さんのタクトに掛かれば、まったく冗長にも物足りなくも感じない。シューマンというのは独特の色彩感覚=色使いを持っていて、絵の具が混ざりすぎるとグレーに近づいて行くのと同様。ドイツ音楽の重厚さを保ちながらも、各パートのボリュームを整理し、響きを重ねすぎない配慮が必要だと思っている。山下さんのタクトはその匙加減が絶妙なのだ。ホール全体を満たし切るグラマーでありながら、とてもスッキリとした響きに感じる。


・まずN響アワーのオープニングにも使われた、超有名な冒頭が素晴らかった。どこでもドアを開けた瞬間、ヨーロッパの夏の風景が風とともに目に飛び込んでくる、そんな感じ。ちょっとこみ上げるような感動が体を走った。


・ティンパニにチェロ+バスが爽やかな風を起こしヴァイオリンとヴィオラが朗々と歌い上げる自然賛歌。客演首席の細田さん率いるホルン隊がパリッとしたドイツの音を響かせる(第4楽章のホルン、最高だった!!)、木管・トランペットもトロンボーンも良かった。


・先日の高畑前首席コンマスのレクチャーコンサートで、ドイツ流のフレージングのお話を聴いたお陰で、「なるほど、ここからここまでを一括りで大きな流れを作っているのか?」「ここに頂点を持ってきているのだな」など、見えるものがあった。そういう意味では「ライン」は構造は複雑だが、フレージングを意識して聴くにはもってこいの曲だったかも。


・メロディーラインだけでなく、内声を担う中低音域のパートがフレーズを作って歌っていることで、音楽が芳醇になり、勢いがつき、迫力が漲る。今回も中低音域の弦の素晴らしさが印象に残った。ヴィオラ、チェロ、コントラバスは都市部の楽団に引けを取らないのではないか?ヴァイオリンは艶のある美しい音(浜雄さんの音色に、いい意味で染まって来ている感じ)が素晴らしかった。当たり前だが『やっぱりプロって凄い!』その一言だ。


・客席の入りは5割程度か?秋山さんが指揮する回はかなり認知されていてお客さんが入るが、客演指揮者の時は苦戦している印象だ。こんなにいい演奏なのにもったいない。一方でtwitterを見ると県外からの遠征客もいらっしゃった。新年度に入ってネットチケットが買いやすくなるので、SNSなどを通じたプロモーションをもっと力を入れるべきだろう。今回、ハレノワのこけら落とし(発売日が4月に迫っている)のチラシが入っていなかったのも解せない。

・帰り道に漕ぐ自転車のペダルのスピードが自然と上がる・・・そんな活力を貰ったコンサートだった。

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高畑壮平氏による冬の音楽アカデミー コンサート&演奏法解説 [コンサート感想]

高畑壮平氏による冬の音楽アカデミー コンサート&演奏法解説


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ヴァイオリン:高畑壮平

ピアノ伴奏:川﨑佳乃


2022年2月17日(金) 日本福音ルーテル岡山教会


・ノルトライン=ヴェストファーレン州立南ヴェストファーレン・フィルの第一コンサートマスターを37年間勤め(私にとっては何と言っても『岡山フィル 前・首席コンサートマスター』としてのご活躍の印象が強い)、ドイツを中心にヨーロッパでの演奏法な精通するヴァイオリニスト:高畑壮平さんによる、演奏法の解説を交えながらのコンサートを聴講した。

・私自身は全く楽器を演奏しないので、「あー、高畑さんの琥珀色に輝くようなヴァイオリンの音色を聴きたいな」と思いつつも、マスタークラスのようなものをイメージしていたのだが、主宰者の黒田さんから「コンサートとして聞かれる方も大歓迎ですよ」とご返事いただけたので参加した次第。

・高畑さんのソロを最後に聴いたのは、2020年7月の岡山フィルの定期演奏会でのワーグナー/ジークフリート牧歌の冒頭。チェロ首席の松岡さんとの掛け合いは絶品で、コロナが猛威をふるっている真っ最中にあるなかで心の癒やしとなった。

・プログラムに載っている曲だけではなくて、クラシックからスタンダードナンバーやエバーグリーンと言われる名曲を沢山取り上げた。高畑さんの演奏は聴衆を惹きつける力が別格に強く、「ああ、いいなあ」とうっとりした瞬間、そんな私の心の動きを察知したかのように、首根っこを掴まれて、美音の渦の中へこれでもか!と引きずり込んでいくような剛腕さがある。この感覚は過去に聴いた思い出の中では、オーギュスタン・デュメイやダニエル・ホープ、忘れてはならないのがシェレンベルガーのオーボエもそうだった。

・で、今回はそんな「引力の強い演奏」の秘密を理論的に解説するというとても興味深いものだった。解説は極めて実践的で、第一義的には演奏を志す方に対してヒントと示唆に富むものなのだろうが、私のような「聴き専」の聴衆にとっても本当に面白いものだった。もしかすると音楽の聴き方がこれがきっかけでガラッと変わるのではないか、そんな貴重な時間になったのだ。


以下、3月11日追記


・高畑さんの解説を聞いて一番印象に残ったのは、「音楽は決して天から降ってこない、自ら作り出さねばならない」という言葉だ。さらに「頭の中でイメージしたことが、音楽に反映されるのではない。大事なのはあくまで「フレージングを作り出す技術、能力」という言葉も印象に残った。

・ドイツでこの「フラジーレン」の能力は、演奏家にとって根幹を成すものらしい。音楽には「緊張と緩和」の波がある、『目的音』に向かって音楽が緊張とともに大きな波となり、頂点に達すると今度は緩和に向かう。そして再び目的音に向かって緊が始まる。これが「フレージング」の基本構造。

・こういうお話は私も聴いたことがあり、最近ではあるヴァイオリニストの方も、TV番組で「フレージングの重要性」について語っているのを目にした。面白いのはその方が「イメージを持ち、膨らませる」ことの重要性を指摘したのに対し、高畑さんは「イメージが音楽を作るわけではない」ということを明確にしている点。

・「緊張」と「弛緩」、そして「目的音に向かっていくエネルギー」について、高畑さんが様々な楽曲で実際に演奏して見せてくれると、とてもよく理解できた。

・例えば、サウンドオブ・ミュージックの演奏では、音楽がピークに達して聴き手が陶酔の中にいる状態で、そこからまた音楽が寄せては返す波がどんどん大きくなるかの如く繰り返されるエネルギーの大きさに圧倒される・・・よく、評論などで「体格の良い西洋人ならではのパワフルな演奏」「肉食系のハイカロリーな演奏」などと言われたりするが、実は高畑さんは体格的に恵まれているわけではない。そうした事は全く関係なかったのだ。

・終演後に高畑さんに、このレクチャーコンサートへ「聞き専」の聴衆として参加したことで、今まで疑問に思っていたことがどんどん氷解するような感銘を受けたことを伝え、今回、高畑さんが自身の負の部分をさらけ出すような現場経験を踏まえてのお話について、私自身の記録のためにもブログに書いてもよいですか?と許可を求め、『ぜひ書いてください!』と快諾を得ましたので、以下に書かせていただこうと思う。

・高畑さんの音楽家人生の転機は、突然訪れた。芸大卒業後に渡独。ハノーファー音大で本場の奏法を身に着け、歌劇場のコンマスを皮切りに南ヴェストファーレン・フィルの第一コンマスに就任するなどキャリアを重ね、聴衆や団員の評価も得たことで「この方向性で研鑽を積んでいけばよい」と確信し始めたある日、同僚のオーボエ奏者から「君の演奏は音楽とは言えない」と青天の霹靂のような指弾に遭った。高畑さんはフレージングやアーティキュレーションについて、一通り説明したのだが、なんとその同僚から「そんなことだろうと思った」と鼻で笑われたという。

・「フラジーレン」と言うのは、楽譜上でフレーズを設定したら、その中の音をダイナミクス、アゴーギク、アーティキュレーション、リズム等々様々な要素や素材を使い自分で「レイアウト」を創り出す事なのだそうだ。楽譜に書いてあることを色付けするのではなく、むしろ音楽家はフラジーレンする能力があることが前提で、楽譜にはその要素だけしか書かれていない。楽譜の記号だけを読み取って音を並べたのでは音楽にならない、強い調子で指摘された。

・同僚からの指摘で高畑さんは「フラジーレン」について調べていくうち、ドイツと日本では幼少期の音楽教育が根本的に違うことに気付く。それは、ドイツでは楽譜を読み解くことや楽器の操作方法を身につける前に、5歳のころからフレージングを自分で造っていく能力を学ぶ。高畑さんは(ご謙遜も入っていると思うんですが)これまでの自分は上辺のテクニックや技術で味付した音楽しか演奏していなかったのではないか?その気付きはたいへんなショックだったそうで、音楽家人生が一変する体験だった。

・ドイツのオーケストラがリハーサルの段階で、最初は全く縦の線が合わない事を不思議に思っていた。日本のオケでは自然と縦の線が合って行くのだが、ドイツはそうではない。彼らがなぜ周囲と合わせようとしないのか?理由がわかった。個々の音楽家は「フラジーレン」を創造しようとする、その混沌の中でアンサンブルを造っていく作業は、個々の音楽がぶつかり合い、時に意見が違う者同士の紛争も辞さず、それでもいいものを造ろうというエネルギーの中で、一つ上の次元で統合していく感覚のようなのだ。だからこそ、その音楽的方向性の一致点/統合点が見いだせたとき、物凄い深みと推進力の有る音楽が生まれる。

・このお話を聴いて私が思ったのは、「これはヘーゲルの言うアウフヘーベンの音楽版だなあ」である。矛盾や未解決の問題が存在する場合、片方が安易に妥協したり折れるのは真の解決方法とは言えない。まず個が確固たる基盤の上で自立した主張を成り立たせていること。その主張同士が、時には闘争することも辞さない構えでぶつかり合い、その中でひとつ上の次元の解決策が見出される・・・・なるほど、だから本場の音楽家やオーケストラの演奏は、あれほどの迫力を持って聞き手に迫ってくるのか・・・

・高畑さんは、それまでコンマスとしてオーケストラのアンサンブルが全く合わない時、「何をやってるんだ、楽譜にこう書いてあるでしょ!」と楽団員を嗜める事がしばしばあった。しかしそれはヨーロッパの伝統的な音楽作りを十分に理解していなかった。楽譜に指定が無くとも自らフラジーレンし演奏するべき物がある。楽譜が音楽家のフラジーレン能力を前提にしている事は、ドイツに限らずヨーロッパの伝統の底流をなしている。

・高畑さんはドイツの伝統的な「フラジーレン」の能力を身につけるために、小学校高学年の子供が勉強するような内容からやり直したそうだ。私などから見ると、本場のオーケストラのコンサートマスターまで務めているプロの奏者が、そんな苦しみを伴う学び直しをすることに戦慄を覚えたが、実際には「宝の山が見つかった」という感覚だったそうだ。往年の巨匠たちがどの音に向かってフレージングを創っているのかが解明できるようになった。あるいはそれまでのご自身の演奏の問題点を克服し、借り物や真似ではない「自分が作り出した音楽」という宝を掘り当てた、とのこと。 


・他にも面白いお話は沢山あった。日本語では「私は今日、天気が良かったのでピクニックにでかけました」という文章を平らに喋ることに違和感がないが、ドイツ語ではどこかの単語に力点を置く。「今日」なのか「天気が良かったから」なのか「ピクニック」なのか、喋る当人が強調したいことを明確にせずにはおられない。そういった目的思考の言語感覚が「フラジーレン」の作り方に影響している。などなど・・・・

・話があちこち飛んでしまったが、私にとっては本場のオーケストラの音の迫力、心を捉えて話さない表現の深み、その秘密の一端が垣間見えるようなレクチャーに興奮した。去年岡山で聴いたパリ管も、一昨年姫路で聴いたウィーン・フィルも、椅子に押し付けられるような圧を感じるパワーを感じたのだが、この日の高畑さんの演奏にも同種の迫力、引力を感じた。

・また、しきりに「緊張しっぱなしではいい音楽にならない」と仰っていたか、緊張と弛緩の繰り返しが、こういった力強さを生み出すのかもしれない。私には解明できないが、たいへん楽しい時間だった。

・高畑さんは現在、出雲フィルハーモニー管弦楽団の客演コンサートマスターを勤めている関係で、年に2回ほど来日の機会があるようだ。次回の「アカデミー」も(聴き専の私でもOKのものならば)是非参加してみたいし、楽器を演奏される方ならば尚更、大きなヒントを得られること請け合いだろうと思う。

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THE MOST music festival 街角コンサート [コンサート感想]

 1月に新型コロナ感染症に罹患し、最初に発症した子供の濃厚接触者待機から数えて丸々2週間の隔離になってしまった。

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 よって1月の岡山フィルの1月定期は欠席、THE MOST music festival のオープニング公演の森野美咲さんと木口雄人さんのデュオは、咳・倦怠感の症状が強く、チケットを譲りました。譲った相手はクラシックのコンサートは始めてだったらしく、プログラムに色々な工夫があったようでとても楽しかったようだ。また一人、クラシックのファンを開拓したと思えばこれもまた良し。

 とまあ、こんな感じで生音楽に飢えに飢えていた状態で、街角コンサート2つに足を運ぶ。

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◆2/10 1830〜岡山コンベンションセンター アトリウム 1曲目(曲名失念)。福田廉之介のソロ。まさに松ヤニが飛んでくるような距離で聴く美音。弓を自在に操り、聴き手の心の琴線を直接揺り動かしてくる。
 2曲目はルクレール/2台のヴァイオリンのためのソナタ(福田廉之介、春名夏歩)、3曲目はタイスの瞑想曲(西江春花)。二人の若きヴァイオリニストはTHE MOSTの岡山の本公演に登場した方。二人とも音を確実に捉えて表現していた。福田さん曰く、若い修行中の音楽家が市井の聴衆の前で演奏する機会は本当に少ない。自分は色々なチャンスを貰ったので、これからは若い人たちにチャンスを与えていきたい、とのこと。
 お客さんは100人近く集まっており、小さい子供も聴きに来ていて、子供がどんどん福田さんに惹き込まれるように近づいて聴いていた。

◆2/11 1030〜ホテルグランヴィア岡山 敢えて「プロデューサー」と呼ぼう=福田さんも会場で進行役を務める。

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 昨日に続いて春名夏歩さんによるサン=サーンス/序奏とロンドカプリチオーソ。スケールの大きい良く歌う演奏。昨日よりいっそう素晴らしかった。
 2曲目の中村さんによるパガニーニ/24のカプリス第1番。これはもはやプロの演奏。既に高校生離れしている。中村さんはTHE MOSTの東京公演に登場した方のようだ。
 3曲目のバッハ無伴奏ソナタのフーガも圧巻。彼の描き出す世界観を堪能。5年後、いや3年後には名前が知られる存在になりそう。
 最後は春名さん、中村さんがピアノ伴奏でショスタコーヴィチ/5つのソナタ。30分ほどのコンサートとは思えない充実した時間だった。

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 昨日の盛況とは対照的に、お客さんは20人程度。最後は吹き抜け2階に何人かお客さんが集まって、それでも30人ぐらい?福田さんが演奏しない回は集客に苦戦している印象。
 THE MOSTの本公演にオーディションをくぐり抜けて登場した若き音楽家の卵たち。彼らを1回のコンサートのソリストだけでなく、こうしたロビーコンサートのユニットに組み込んで経験を積ませる・・・福田さんの構想力には脱帽だ。

 彼らは恐らく今後も一流の教育者の元で研鑽を積み、コンクールなどにも出ていくのだろう。しかし、「音楽家として生きる」ということは、私のような素人聴衆の心を捉え、惹きつける能力が必要。一般の聴衆が音楽に感動する理由はそれぞれ、「もう一度身銭を切ってでも聴きたいか」を決めるのは、そんな掴みどころの無いもの。コンクールの審査員や音楽家の能力を見抜く目を持った専門家に評価されることと、一般の聴衆の心をつかむことの間にはかなりの開きがあり、おそらくその事を福田さんは分かっているからこそ、こういった舞台やチャンスを作っているのだと思う。


 残念ながら、2月19日の前橋汀子&松本和将のリサイタルと、THE MOSTのメンバーと岡フィルの夢の共演には、先の予定が動かすことが出来ず、聴きにに行けないのが悔やまれる。

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岡山フィル2023年度シーズンプログラム [岡山フィル]

 少し時間が経ってしまったが、岡山フィルの2023年度シーズンプログラムが1月21日に発表された(ハレノワのこけら落としは12月11日に発表済)。



第76回定期演奏会
2023年5月20日(土)14:00~
指揮:秋山和慶
ベートーヴェン/交響曲 第6番「田園」
ベートーヴェン/交響曲 第5番「運命」


津山定期演奏会(津山文化センター)
2023年5月21日(日)15:00~
指揮:秋山和慶
ベートーヴェン/交響曲 第6番「田園」
ベートーヴェン/交響曲 第5番「運命」


第77回定期演奏会
2023年7月23日(日)14:00~
指揮:デリック・イノウエ
ピアノ:松本和将
リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
チャイコフスキー/交響曲 第4番 ヘ短調



岡山芸術創造劇場ハレノワ  こけら落とし公演

ケルビーニ/歌劇「メデア」

2023年9月1日 岡山芸術創造劇場ハレノワ大劇場  開演時間未定

指揮:園田隆一郎

演出:栗山民也

メデア:岡田昌子  ジャゾーネ:清水徹太郎

グラウチェ:小川栞奈  ネリス:中島郁子

クレオンテ:伊藤貴之

管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団



第78回定期演奏会
2023年10月22日(日)14:00~
指揮:秋山和慶
チェロ:佐藤晴真
ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調


ベートーヴェン“第九”演奏会2023
2023年12月10日(日)14:00~
指揮:飯森範親
ソリスト:オーディションにより選出
合唱:岡山“第九”を歌う市民の会
ベートーヴェン/交響曲 第9番


ニューイヤーコンサート
2024年1月21日(日)14:00~
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ:マルギット=アナ・シュース
ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/フルートとハープの為の協奏曲(Ob.版)
モーツァルト/交響曲 第31番「パリ」
ラヴェル/ボレロ


第79回定期演奏会
2024年3月9日(土)14:00~
指揮: 秋山和慶
ヴァイオリン:戸澤采紀
ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲
ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調


 指揮者陣や地域定期などで徐々に「秋山カラー」が出てきていると実感させるラインナップ。ただ、少々物足りない部分もあります。

 昨年11月11日付、山陽新聞に掲載された記事を振り返ると・・・
岡フィル 秋山体制でより高みへ 創立30年、東京公演も模索:山陽新聞デジタル|さんデジ https://www.sanyonews.jp/article/1329410

 この記事から、秋山ミュージックアドバイザーが示す方向性は
「東京公演の実施など視野に入れ、全国区で評価されるような演奏水準を目指す」
「レパートリーを拡大し現代曲なども取り入れる」
「本拠地以外の地域や子どもたちへのコンサートに力を入れる」

 この観点で2023年度のプログラムを検証してみよう。
 まず演奏水準の向上については、ベートーヴェン・ブラームスを軸にオーケストラの基礎固めをする意図が明確。特に5月は同一プログラムで本拠地定期と津山定期という、コンチェルト無しのシンフォニー2本勝負で2回の本番をこなすことで地力をつけようという意図が見える。
 指揮者陣もデリック・イノウエ、飯森範親ともに秋山さんと同じく斎藤秀雄直系の指揮者で、飯森さんはもともと岡山フィルとは縁が深く、デリックさんはメトロポリタン歌劇場など北米の歌劇場の経験が豊富で、2018年のセイジ・オザワ・フェスティバルでは小澤征爾の代役を急遽務めたことも記憶に新しい実力派。同じメソッドを共有する指揮者陣で岡山フィルの演奏向上を目指そうという意志が極めて明確な陣容。1月にシェレンさんが指揮台に立ったとき、どんな変化を感じ取るだろうか。

 次にレパートリーの拡大については、秋山さん十八番の一つ:シベリウス/交響曲第2番がいよいよ取り上げられるが、先のインタビューで秋山さんが触れていた「現代曲」はラインナップに無く物足りない印象を残す。そもそも年間5回のサブスクリプションでは新レパートリーの開拓には限界がある。せめて定期年間6回+名曲コンサート年間3回ぐらいの回数は欲しいところ。

 本拠地以外のコンサート展開については、従来の県内各地域での特別演奏会を津山「定期演奏会」と名付け、今後も本拠地の定期演奏会と同じプログラムが聴ける体制を目指しているのだろう。津山市は過去に音楽大学も存在し、30年間に亘って音楽祭を開催してきた音楽都市、県内他地域に比べると潜在需要は高いはず。一方で今回は『第1回』定期演奏会と銘打っていないところを見ると、今後も実施するかは集客次第なのだろう。津山の皆さんには是非足を運んでほしいと思う。願わくば津山の地に、岡山フィルの手で再びマーラーの音楽が鳴り響く日を夢見て。


 ソリストはホールゆかりの奏者を中心に起用。松本和将(Pf)は去年のラフマニノフ3番の演奏が圧倒的だっただけに、パガニーニ・ラプソディにも期待が高まる。佐藤晴真はTHE MOSTの初期メンバーで岡フィルへは2度目の登場、戸澤采紀さんはお母様の実家が岡山だそう。間違いなく日本のトップヴァイオリニストになる(もうなっているか)逸材によるブラームスも楽しみ。
 もちろん、ソリストのハイライトはシェレンベルガーとパートナーのアナ・シュースさんによるモーツァルトだろう。シェレンベルガーの名前が入るだけで年間プログラムがなんと華やかになることか。シェレンさんとアナ・シュースさんのデュオは、2月4日ハレノワの中劇場でのリサイタルも予定されている。


 他には、ネットチケットのシステムがぴあゲッティに移行する点が注目点。シンフォニーホールとハレノワの3つの劇場4館の催事のチケットがぴあゲッティのシステムで一括で管理される。セブンイレブン発券に対応するため、従来の電話をする手間や簡易書留料金の負担などが軽減され、市外の客は買いやすくなるだろう。実際、京響・京都コンサートホールはぴあゲッティの導入によって市外から格段に買いやすくなり、目に見えて(演奏向上やそれ以外の集客策も功を奏して)お客さんが増え、定期演奏会2日制に移行できた。近隣ではアルスくらしきが導入しているし、新型コロナウイルスワクチン予約システムもゲッティのシステムを使っているところが多く、システムが非常に安定している。


 また、開演時間が15:00から14:00に変更に。14時開演16時終演だと終演後に夕食を食べて帰るという流れにはなりにくく、商店街への波及効果は少なくなるだろうが、高齢の公共交通機関を利用するお客さんは夕方のラッシュに巻き込まれないため、遠のいている高齢客層が戻ってくるかも知れない。


 2022シーズンのプログラムは2021年の年末に発表されていたが、今回はちょっと遅かった。年末年始に来年度のカレンダーに予定を書き入れたり、家族の大まかな用事(帰省や旅行の計画など)を固めるという人も多いだろう。思い出してみると、私が関西の実家に帰った時、大阪フィルや関西フィルの年間プログラムが転がっていて、あーだこーだと家族・親族の話題になったりしていた。大フィルなんかは定期演奏会・主催公演の日程が入った卓上カレンダーまで用意されている。今回のように1月下旬の発表、パンフレットの送付だと、そういうビジネスチャンスをみすみす逃していると思う。

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ゆるび祝祭室内管弦楽団 第7回ニューイヤーコンサート Vn:石上真由子 Pf:長治昂志 [コンサート感想]

ゆるび祝祭室内管弦楽団 第7回ニューイヤーコンサート


ヴィヴァルディ/「和声と創意の試み」作品8 「四季」(全曲)
カプースチン/ヴァイオリン、ピアノ、オーケストラのための協奏曲(本邦初演)

指揮:江島幹雄
ヴァイオリン独奏:石上真由子
ピアノ独奏:長治昂志
2023年1月9日 早島町町民総合開館「ゆるびの舎」文化ホール

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・秀逸な企画による最高に愉悦に満ちたコンサートを堪能した。ゆるび室内祝祭管弦楽団(今回は弦楽合奏のみ)は岡山在住のプロの奏者で結成されており、これまでにバルトークの管弦楽曲やショスタコーヴィチの協奏曲など、岡山ではなかなか聴けない楽曲を聴衆に提供してくれている。今回もカプースチンの日本初演の曲ということで胸躍るような好奇心を持って足を運んだ。

・配置は1stvn4→2ndVn3→Vc2→Va3、上手にCb1の配置。プログラムにはコンマスの表記はなかったが、長坂拓己さん(岡フィル・アシコン)が務めた。

・まあ、なんと言ってもカプースチン、旧ソ連圏にこんな作曲家がいたのか!と驚嘆を禁じ得ない。去年はコロナ感染拡大の職場ルールで鑑賞を断念したのだけれど、ピアソラ/ブエノスアイレスの四季を取り上げたそう。今回のカプースチンもそれに匹敵/凌駕する名曲。これが国内初演とは。

・ピアノの長治さんが「ジャズといえば即興で演奏しそうだけど、実は楽譜は音符で埋め尽くされている」と仰っていたが、聴き手から見ると、ピアノ、ヴァイオリンの石上真由子さん、そしてオケメンバーが即興で弾いているとしか思えない瑞々しく躍動する演奏。

・解説も興味深い内容だった。カプースチンはウクライナ生まれでモスクワに学び、西側からの短波ラジオで流れるジャズの世界の虜になってこういう作風を身に着けていったようだ。プレトークでチェロの江島直之さんが仰っていたが、この時期に旧ソ連下で西側の影響を強く受けた楽曲の演奏を聴いたことで、思想や趣向が矯正されることがなく、皆が音楽を享受できる平和な世界に戻って欲しいと思う。

・前半のヴィヴァルディ「四季」。コロナ時代に突入してから生演奏で聴くのは3回目。聴けば聴くほど奥が深い。石上さんのソロはむやみに表に出ることなく。各パートとの豊かな対話の中に、鳥のさえずり、風、小川のせせらぎなどのモチーフを奥行きのある空間に立体的に配していく。これぞコンチェルト・グロッソの愉悦を感じさせてくれた。

・「四季」の各曲の第2楽章の美しさも際立っていた。ノン・ヴィヴラートの音が本当に美しい。音の響かせ方が巧みで、コンサートが終わった後も「またあの音を聴きたいな」と思わせる魅力があった。指揮者の江島さんはじめ、オケ奏者も彼女と演奏することが本当に楽く感じていることが伝わってきた。

・冬の第1楽章、ヴァイオリンのソロが繊細な弱音で入って来て、徐々にヴォリュームを上げていくアプローチは初めて聴いた。このアプローチもいいね。

・会場は8割近くの入り。拍手の感じから、クラシックに詳しくない聴衆も多いと感じ、このシリーズにお客さんが定着していることを実感した。指揮の江島幹雄さんは、「今後もヴィヴァルディの四季プラス何かを組み合わせたプログラムを続けていきたい」とコメント。そうやなあ・・・次回はプーランク:牝鹿もしくはシンフォニエッタあたりを聴きたいな。

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2023年2月に「The MOST Music Festival 2023」開催 [コンサート情報]

岡山出身のヴァイオリニスト、福田廉之介さんが代表を務める、The MOSTが、2月に岡山で
【The MOST Music Festival 2023】
という音楽祭を開催するようです。

以下、引用

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突然の発表となりますが、一般社団法人The MOSTは 2023年2月に岡山にて音楽祭を開催いたします!

有料公演は全4公演。
岡山にゆかりがある演奏家、大御所の方々にも演奏していただきます。
また無料公演も開催し、様々な場所で1回20分程度の公演を予定しています。皆様にお立ち寄りいただき、上質な音楽をお届けできるよう努めて参ります!

ぜひ皆様楽しみに、詳細の情報公開までお待ちください[ほっとした顔]

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid02LhJLVwiDbpfm77npxRFUUG3q9fwD3nKeZgCGGAmErWWVXLYjDbsxDxff7zRAC9Gzl&id=100036214813117


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 廉之介さんのラジオなどで、音楽祭を企画・プロデュースしたい、と発言されていましたが、まさかこんなに早く実現させるとは。
 
 日程や会場についてはまだ未発表ですが、恐らく2月のどこかの週の週末あたりで、室内楽や弦楽アンサンブルを中心に、市内のホールや人が集まれるイベントスペースの何箇所かでコンサートが開かれそう。

 「大御所の方々」というのも気になります。


 あと2ヶ月切っている状況で、準備が間に合うのか?ちょっと心配な面もありますが、次の発表を楽しみに待ちたいと思います。

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「親子deクラシック」 指揮:松元宏康 [コンサート感想]

 少し時間が経ってしまったが子供も連れて親子deクラシックに行った感想を。

中国銀行ドリーミーコンサート
親子deクラシック
20221218_001.jpg


20221218_002.jpg
指揮:松元宏康
コンマス:近藤浩子
2022年12月18日 岡山シンフォニーホール

 チケットはなんと完売!3階席まで埋まった客席を見たのはコロナ後でははじめて。そして指揮者の松元宏康さんのトークがキレキレである。クラシック音楽業界には全く居ないタイプ。それもそのはず、彼の経歴には「M-1三回戦進出」とある。そう彼はコメディアンと指揮者という2足のわらじ(彼が言うには究極の二刀流)を履いているのだ。

 1曲目後のトークの見事なアイスブレーキングで会場を温め、終始「演奏は岡山フィルハーモニック管弦楽団、覚えて帰ってね」「地元にこんな素晴らしいプロフェッショナルのオーケストラはあるって、本当に凄いことですよ!」と宣伝。上のパンフレットには岡山フィルの表示が無いので、松元さんが機転を効かせたのだろう。

 スポンサーの中国銀行のクレジットにも余念がない。あまり客席が食いついてないな、と感じたらすぐにトーク内容を切り替える柔軟性もあり、加えて自己PRの推しが強い強い(笑)「先日もコンサートでいっぱい宣伝したんですけど、twitterのフォロワーが2人減ってました」と自虐ネタで爆笑を取る。


 何事にも奥ゆかしい人が多いこの業界には、こういうアクの強いタイプの人は必要。

 指揮についても運動(音楽)神経が良さが感じられるしなやかで軽やかな指揮。
 岡フィルも東京組の首席は不在だったがトランペットの首席の小林さんとホルン客演首席に大フィルの藤原雄一さんが乗り、ルパン三世のテーマでの見事なソロに会場もうっとり。観客の手拍子・足踏みが驚くほど息がぴったりで楽しかった。

 個人的には小六禮次郎の烏城浪漫が聴けたのも良かった。こういう委嘱作品の再演は、定期演奏会でもやって欲しい。
 今回は1階バルコニー(屋根かぶり)席に座ったので、迫力には欠ける印象だったが、ゆったりと観ることができた。親子ともに大いに楽しんだコンサートだった。

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姫路・高松でベルリン・フィルの2023年来日公演開催決定 [コンサート情報]

 来年の海外アーティストの来日情報が聞こえてきていますが、なんとベルリン・フィルの来日公演がアクリエ姫路とレクザムホール(香川県県民ホール)で開催されるとの情報が発表されています。

 日程はこんな感じ

ベルリンフィル2023.png



 アクリエひめじは昨年のウィーン・フィルに続いて超一流の招聘が続きます。瀬戸内地域での海外一流アーティストの招聘事業の中心地は、倉敷から姫路に移りましたね。レクザムホール(香川県県民ホール)での高松公演を引き受けたのはどこだろう?OHKか、ホールか?


 ウチは小さい子供が居るので、コロナが完全収束するまでは高額チケットはよう買わへんわけですが、去年のウィーン・フィルと同じく、私は当日券狙いで行きます。主催はラトル時代から変わらず、フジテレビということで、チケット代はS席で4万円を超えることは確実、今年のパリ管弦楽団(岡山)や去年のウィーン・フィル(姫路)で充分に当日券で買えたことを考えると、このご時世、天下のベルリン・フィルといえども(特に高松は)完売は難しいんじゃないかと予想。

 あとはプログラムがどうなるか?

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アマオケの岡山交響楽団で、ドヴォルザークの6番を堪能する [コンサート感想]

・岡山を代表するアマオケの岡響を久々に聴いた。


岡山交響楽団で第74回定期演奏会


スッペ/喜歌劇「詩人と農夫」序曲

グリーグ/ノルウェー舞曲

 〜 休 憩 〜

ドヴォルザーク/交響曲第6番


指揮:杉本賢志


2022年11月20日 岡山シンフォニーホール


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・配られたプログラムに過去の定期演奏会が掲載されているのだが、それを見ると2019年のブルックナー4番以来になるんやなー。その後、コロナの影響で2回中止、1回は無観客演奏という苦難の道のりを辿る。今日は大好きなドヴォルザークの6番がかかるので馳せ参じた次第。


・編成は1stVn9→2ndVn11→Vc9→Va9、上手にCb5というやや変則的な編成。奏者が揃わないパートには賛助奏者(プロ)が入って補強していた。

・3年ぶりの岡響サウンド、やっぱりいいもんですね。楽章の最後やトゥッティのあとの休符の際にホールに響き渡るサウンドが、このオーケストラ独特の柔らかいサウンドで、岡響健在を確認できた。

・音の迫力も充分でノルウェー舞曲はビシビシとトゥッティが決まって素晴らしかった。

・さあお目当てのドヴォルザークの6番。私のドヴォルザークの交響曲遍歴は、まず中学生の頃に9番にハマり、続いて8番、7番にドはまりした。6番は銀河英雄伝説のアニメで頻繁に使われていたので馴染みはあったものの、本当の良さに気づいたのは大人になってプロで実演(大阪シンフォニカー交響楽団、指揮はヴァーレクだったか)で聴いてから、そしてこの岡響の演奏で実演は2回目の鑑賞。

・ロマン派きってのメロディーメイカー、ドヴォルザークの面目躍如ですよね。第1楽章〜第2楽章はこれでもか!というほど魅力的なメロディーが惜しげもなく使われている。

・岡響はこの曲を偏愛する自分が「ここはこういう風に演奏してほしい」と思っている部分を、ほとんど叶えてくれた。自然賛歌を歌い上げる弦の泣きっぷり、そよ風が吹くようなティンパニ。木質感とぬくもりのある管楽器の音。そしてオルガニストだったドヴォルザークのハーモニー感覚を再現したようなオーケストラの全体の響き。どれも素晴らしかった。


・プロだと涼しい顔して通り過ぎていく部分も、こうして聞くと結構難所のある曲だということも解った。それらはすべてクリアされていたが、舞台上に「ここ、気をつけよう!」という空気が走るので、よくわかるのだ。第1楽章の提示部の部分からして落とし穴のような所がある。第4楽章に至っては、かなりの集中力とスタミナが必要な印象。

・そう、この曲は題3楽章までは第1級の名曲なのだ。しかし、第4楽章は演奏者の労多くして功少なし、の印象は否めない。ブラームスを意識せずに、交響曲題8番のようにドヴォルザーク自身の筆に任せて書き上げていたら、「後期4大交響曲」として一角を占める傑作になっただろうに。

・ともあれ、2〜3日で仕上げなければならないプロとは違って、半年の時間をかけて身体に染み渡った音楽をステージ上で出していく。聴き手も暖炉の火にあたっているような味わい深い温かみを感じながら音楽に没頭する、音楽を聴くことの一つの醍醐味を存分に味わった。

次回の定期演奏会は2023年5月14日。元N響首席ホルンの福川さんを迎えてのグリエール/ホルン協奏曲にメインはシベリウスの1番!これは聴き逃がせない。

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西日本のオーケストラの常任ポスト、世代交代が鮮明に [各地プロ・オケ情報]

 日本の諸都市オーケストラ(当ブログでは「地方オーケストラ」という表現はなるべく使わないようにしている)の来シーズンの体制・プログラムの発表が進んでいる。
 当分は「岡山引き籠もり」を決めているので、遠征する機会はそんなにないだろうが、西日本を中心に来シーズンのプログラムをザッピングするのは楽しい。

 そんな中で西日本諸都市のオーケストラの指揮者体制でハッキリした傾向は、指揮者の世代交代が鮮明になったことだろう。

 京都市交響楽団の常任指揮者に沖澤のどかが36歳で就任。名古屋フィルは川瀬賢太郎が音楽監督に38歳で就任し、九州交響楽団は2024年シーズンから太田弦(就任時29歳)を首席指揮者に起用すると発表。

 特に沖澤さんは、女性指揮者が常任ポストに就くのは、松尾葉子さん(1999年にセントラル愛知響常任指揮者に就任)以来ということで、その点でも注目を集めている。

 太田弦の九響首席指揮者就任は異例の若さでの抜擢、という文字が踊るが、過去の例を思い返すと、実はそれほど異例というわけでもない。

 高関健が85年に広島交響楽団音楽監督に就任したのも30歳の若さだった。その広島交響楽団は高関さんのあとに、1990年に田中良和(31歳)を音楽監督に起用、続いて十束尚宏(33歳)を音楽監督に起用するなど、若い力を楽団発展の原動力にしてきた。
 九州交響楽団も1996年から山下一史(34歳)を常任指揮者に起用。
 我らが岡山フィル・ミュージックアドバイザー(MA)の秋山和慶も東京交響楽団音楽監督に就任したのは27歳の1968年。岡フィル元MAの小泉和裕さんは1975年に26歳で新日本フィル音楽監督に就任している。

 そういえば小泉さんは今年度は名古屋フィル音楽監督にラストイヤーで来年度は九響のラストイヤー。ここ3年は来日キャンセルになった指揮者の代役(聴衆が納得する実力者はそうは居ませんから・・・)としても獅子奮迅のご活躍だった。少しお時間が出来るようなら再度岡山フィルへの来演をお願いできないものかな?


 最近では川瀬賢太郎さんが2014年に29歳で神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任した例もある。

 上記に名前が出てきた指揮者たちは、現在は押しも押されぬ大指揮者になっている。若手指揮者の起用は賭けではあるが、素質が開花すれば楽団にとっても指揮者当人にとっても得るものは極めて大きいということだろう。

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