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民音名曲コンサート 岡山フィル 指揮:太田弦 Vn:黒川侑 [コンサート感想]

民音クラシック名曲コンサート ベートーヴェン&メンデルスゾーン 珠玉の響き

メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」Op.26
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
ベートーヴェン/交響曲 第7番 イ長調 Op.92

指揮:太田 弦
ヴァイオリン独奏/黒川 侑
管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:福田悠一郎


2023年10月1日 岡山シンフォニーホール大ホール

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・民音主催とあって安定した集客が見られ、客席は7割ぐらいの入り。定期演奏会とは明らかに客層が違い、中高年の女性のグループが多い印象。

・編成は1stVn10-2ndVn8-Vc6-Va6 上手奥にCb4の2管編成。客演奏者はホルン首席に柿本さん(京響)、クラリネット首席に高尾さん(広響、以前は岡山フィルに頻繁に乗ってらっしゃった)、他にもセカンド首席とヴィオラ首席も客演の方。

・コンサートマスターは福田悠一郎さん。私は別の方と見間違えてしまい、twitterに投稿してしまった。コロナ禍でシェレンベルガーさんも高畑さんも来日出来ない時期にコンマスとして何度も記憶に残る演奏を披露してくれた方(ホンマ恩知らずですみません)。



メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」
・「音の風景画家」メンデルスゾーンの音楽に花を添える木管、弦楽器群の音も素晴らしい。序曲からこのクオリティでの演奏は、やはり岡山フィルの演奏は誠実だ。



メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
・このコンサートのチケットを買った時の最大のお目当ては、黒川侑さんのメンデスルゾーンの協奏曲だ。今年の3月定期で演奏されたベートーヴェンの協奏曲が素晴らしすぎて・・・・。彼の音は特別なんですよね。まろやかで温かくて、琥珀の輝きがあって、そして芯が強い。

・メンデルスゾーンの協奏曲は、チャイコフスキーやパガニーニのような特別なヴィルトゥオージティが必要な曲には見えない(適切な音程を取るのはプロでも難しい・・・とは聞くけれど)、その分ソリストの「音色・質感」そのものがさらけ出される曲のように思う。

・第一音が響いた瞬間から「これこれ、メンコンはこれやわー」という説得力のある音色・表現。彼のヴァイオリンの音は、色んな意味で「格別」なんです。聴いていて「幸せだな~」「いつまでも聞いていたいな~」と感じさせられる。

・特に第2楽章は夢のような時間だった。彼にしか出せない音、その音が作り出す世界は輝きに満ちていた。そして彼のソロに付ける岡山フィルの弱音も素晴らしい。本当に弱音時の弦のアンサンブルが良くなったと思う。

・黒川さんの理想のヴァイオリニストはグリュミオーだそうだ。工藤・小栗門下からウィーンとブリュッセルで研鑽を積み、エコール・ノルマルで学んだ経歴を見ると、おそらく10代のころから彼の理想の音が明確にあって、周囲が超絶技巧の習得に躍起になるのを横目に、理想の音の体得に邁進されていたのではないだろうか。こんな音を持っている奏者は、中堅・若手どころでは彼ぐらいしか思い浮かばない(僕の中では実はもう一人いるけれど、彼女はジストニアのため、恐らく当分は聴くことは叶わない・・・)。

・いや、黒川さんは超絶技巧も超一流なのだ。それは京響とのプロコフィエフの録音を聴けば明らか。でも、彼は超絶技巧を魅せることに重きを置いていない感じがするんだよな(違っていたらごめんなさい)。人の心の琴線に触れる音楽を追い求めている感じ。

・アンコールはJ.S.バッハの無伴奏ソナタ1番のシチリアーナ。




ベートーヴェン/交響曲 第7番 イ長調
・実は、この曲に関してはさほど期待していなかった。というのも、去年の7月定期(ドヴォルザークの8番)で太田さんの指揮を聴いて、内声の見通しの良いサウンドを纏める指揮巧者との印象の一方で、なんというか引っ掛かりが無い、物足りなかったなあ、というネガティブな印象があったからだ。



・ところが、あーた!君子豹変とはこのことかと思うほど、個性的な指揮を見せてくれた。強烈なリズムと、深い叙情性あふれるベト7。さすがに30歳という若さで九州交響楽団の常任指揮者に指名された才能だなと感じさせるに十分だった。指揮の太田さんは勿論、コンマスの福田悠一郎さんも全身を使ってのリードが冴え渡っていた。



・岡山フィルのテンションも、ほとんどガチンコの定期演奏会のような熱演だったことにも感動。今回のコンサートは民音が主催してチケットを売り、岡山フィルは一定の金額のギャラを受け取るという、いわゆるお座敷の名曲コンサート。これまで岡山で開催される民音のコンサートは広島交響楽団が取っていたが、今回は初めて岡山フィルが取れた。今後のことを考えると、1,2年に一回は確実に開催されるこのコンサートの出演権を取ることは非常に重要で、楽団員の気合が入っていたのかもしれない。




・個々の奏者では第1楽章第一主題からフルートの畠山さんが華のある音を見せつけ、ティンパニの近藤さんの一貫した確信の叩きには痺れた。フルート以外の木簡も第2楽章での哀愁あふれる音、そして弦楽器は弱音の表現が磨きがかかっていた。



・岡山フィルはシェレンベルガー時代にも7番を取り上げていたが、仕事の都合で行けなかった。その私の中でのミッシングリンクを繋ぎ合わせるような演奏。これは忘れられない。

・アンコールはシューベルトのロザムンデの第三幕間奏曲。これってコロナ禍でコンサートが半年以上中止になってから再開後初の定期で演奏された曲よなあ。その時の指揮者は熊倉優さんだったから、単なる偶然かもしれないけど、あのしんどい頃に光明を指してくれた曲ということで、グッとくるものがあった。



・近席の中高年女性グループの方々が「岡山フィルって岡山の人たち?」「すごい演奏じゃったわー」「なんか汗かいたわ」と口々に絶賛されていたのが印象的。楽章間の拍手も起こっていて、普段コンサートに来ない客層に対して充分なアピールができたんじゃないだろうか?

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コメント 2

サンフランシスコ人

「岡山で開催される民音のコンサートは広島交響楽団が取っていたが、今回は初めて岡山フィルが取れた...」

広島響の人気が減った?

「中高年の女性のグループが多い印象....」

サンフランシスコ響の定期の場合、平日午後がそうですね.....

「岡山フィルはシェレンベルガー時代にも7番を取り上げていたが、仕事の都合で行けなかった.....」

大変残念でしたね....

by サンフランシスコ人 (2023-10-10 01:30) 

ヒロノミン

〉サンフランシスコ人さん
 民音(民主音楽協会)主催の名曲コンサートは、開催地域のプロオケで演奏されますが、広響の人気が下がったのではなく、民音側が岡山公演は岡山フィルでOKだと判断して起用するようになった、ということだと思います。
by ヒロノミン (2023-10-21 19:40) 

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