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読売日本交響楽団 倉敷市特別演奏会 指揮:藤岡幸夫 Pf:清塚信也 [コンサート感想]

オーケストラキャラバン 読売日本交響楽団 倉敷市特別演奏会

藤岡&清塚のトーク(ピアノ演奏付き)
グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
チャイコフスキー/交響曲第4番 ヘ短調 作品36

指揮:藤岡幸夫
ピアノ独奏:清塚信也
コンサートマスター:長原幸太
2023年10月3日 倉敷市民会館

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・コンサート当日から3週間も経ってしまったが、詳しい感想を更新。当記事のアクセス数が普段の当ブログの5倍以上(普段400→当記事2000!)になっており、改めて清塚さんの影響力を実感。

・火曜日の夜公演なのに満席に近い入り(9割ぐらい?)。清塚さんの追っかけの方々も居られるようだったが、大部分は地元のファンが多かったのでは?清塚さん&藤岡さんの集客力をまざまざと見せつけると同時に、「くらしきコンサート」解散後も旺盛な倉敷市民のコンサート需要を感じさせた。

・編成は1stVn14→2ndVn12→Vc8→Va10、上手奥にCb6の2管編成。普段聴いている岡山フィルは10型か12型だから、久しぶりに聴くフル編成の弦五部の音の渦に溺れた。

・1曲目は序曲・前奏曲、の代わりとして、清塚さんと藤岡さんのトークで幕を開けた。チラシに記載された

『藤岡&清塚のトーク(ピアノ演奏付き)~会場を爆笑の渦に!お楽しみに』

の表記に違わない爆笑トーク(笑)どうやらこのチラシの宣伝文句は藤岡さんと清塚さんが気づいた時にはこうなっていたそうだが(笑)


・藤岡さんやお客さんと掛け合いをしたりしながら、会場の空気がどんどん温まっていく。あの藤岡さんが清塚さんのトーク力に圧倒されていましたからね(笑)途中から遅れて入ってきたお客さんを、「あっ、ゆっくり入ってくださいね~、安心してください、まだ1音も演奏されていませんから!」といじるなど、ご高齢のお客さんが慌てて入ってこないような優しさも感じられて、こういうところで人気が出るんだろうなと感じた。

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・で、チラシの(ピアノ演奏付き)は、ショパンの名フレーズをジャズ風にアレンジしたものだったのだが、軽妙でニュアンスたっぷりで、これが凄くよかった。ノクターン2番から始まり、途中、別れの曲を演奏していると思ったらいつの間にか大きな古時計に変わっていたり(この2曲、よく似ているんですね)最後は英雄ポロネーズ。

グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調
・ええ感じに暖まった会場に鳴り響いたグリーグのあの音型。清塚さんの生演奏は初めて聞いたが、強靭な音にまず驚く。それもダンパーペダルを作用をあまり使わずに、である。あの巨大なフェスティバルホールでもリサイタルされるのだから、倉敷市民会館ぐらいの空間は余裕を持って響かせる感じ。それに加えて粒立ちの良い音、ペダルを繊細に使って音の輪郭を明瞭に響かせているのが印象的。トークで「この曲って、バラエティとかで『やっちまったー』っていう時に使われたりするんだけれど、北欧の凍てつく空気・雄大な自然を表しているんです」との言葉通り、スケールの大きな風景を現出させていた。

・何よりも、藤岡さん&読響と清塚さんが盛んにアイコンタクトをはじめ、コミュニケーションを取っている。
カデンツァでは圧倒的な存在感を示しつつも、協奏する場面では、一緒に音楽しよう!と言わんばかりに密にコミュニケーションを取って、音楽を創っていく・・・例えばオーケストラの奏者が見事なソロを披露すると、そこに自己主張を控えめにしたピアノが寄り添っていったり・・・ソリストにオケが「合わせる」タイプの協奏曲とは全く違うものが出来上がっていき、「この部分いいよね」「こういうのどう?」「いいね!ここは心震えるよね」といったかんっじで、情感や情景を舞台上の全員が共感し合いながら音楽に載せて聴衆を陶酔に導いていた。

・コンチェルトが終わった後の読響の楽員さんが満たされた表情をしていたのが印象的、オーケストラを従える孤高のソリストの魅力も抗えないものがあるが、清塚さんのようなタイプのソリストは少ない、第3楽章なんてソリストもオケもどんどんノリが過熱していって、この曲の新たな魅力を発見した思い。

・休憩時間中に素敵女子に声をかけられて、ドギマギしていると、大学時代の友人だった。中学生のお嬢さんが清塚さんのファンとのこと。清塚さんがステージから去るとき、熱烈に手を振ってるおっさんがおるなあ、と思っていたら「あれはヒロノミンじゃが!」と気づいたようで・・・いやいやお恥ずかしい。

・一点、大事なことを書き残して置きたい。この協奏曲や後半のチャイコフスキー4番でも楽章間の拍手が起きた。その際、藤岡さんが客席側を少し振り返ってお礼の会釈をされたあと、オーケストラに向かって笑顔で頷いて楽団員も表情が少し笑顔になったように見えた。藤岡さんは楽章間の拍手は「クラシックになじみのない人が来ているサイン」と感じており、うれしくなると同時に気合も入るようだ。


チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調
・読響のアンサンブルが凄すぎて・・・。この曲なんて、目を瞑っていても演奏できる曲だろうが、ルーティン感を全く感じさせない、鉄壁のアンサンブルを聴かせてくれた。

・例えば最終楽章ラストの大爆音乱痴気騒ぎに見える場面で鬼のように明確なアクセントが入ってて戦慄!!。第1楽章での強奏部分では弦の音がうねりにうねって、広大な倉敷市民会館の空間をぎっしりと満たす感じ。全てにおいて神経が行き届いていて、それは統率された凄さではなく、個々の音楽を創造する能力が桁違いなのだと実感する。

・管セクションと弦セクション間の音の溶け合い方も見事で、第2楽章のゆったりとしたフレーズでは、まるでブルックナーのシンフォニーのような響きを感じた。

・あまり意味のない比較とは分かりつつも、演奏の迫力・音圧という面では同じホールで聴いた新日本フィルやNHK交響楽団を凌駕していたのではないか?海外の一流オーケストラのような椅子に押しけられるような圧倒的な音圧を感じた。

・藤岡さんのチャイコ4番は3回目だと思うけど、聴くたびに陰影が深くなる。帰りの車のカーステレオは何もかけずに無音で余韻を楽しんだ。

・読響のハイレベルな熱演に対して、久しぶりにこのホールで聞いたブラボーと嵐。読響団員さんが全員履けるまで熱烈な拍手。「くらしきコンサート」が帰って来たって感じがしたなぁ。倉敷の聴衆は熱い!

・余談というか覚書。藤岡さんがプレトークで岡山の縁について語った時に、「倉敷の北のほうに津山というホントに美しい街があるんだけれども、祖先に箕作阮甫っていう蘭学者がいて・・・母方のご先祖様なんですよ」と、いきなり岡山が産んだ幕末明治の知の巨人の名前が出てきてびっくりした。津山って秋山和慶さんの母方のルーツでもあるようだし、いやはや凄い街ですね。

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コメント 1

サンフランシスコ人

「火曜日の夜公演なのに清塚さん効果で満席に近い入り(9割ぐらい?)......」

そんなに人気があるのですか.....

「チャイコフスキー/交響曲第4番 ヘ短調 作品36.」

エサ=ペッカ・サロネンは、チャイコフスキーを滅多に振らない....
by サンフランシスコ人 (2023-10-06 01:37) 

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