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高畑壮平が贈る 弦楽五重奏で楽しむ新春のメロディー [コンサート感想]

弦楽五重奏で楽しむ新春のメロディー
~ドイツ在住コンサートマスター高畑壮平が贈る~

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テレマン/『小組曲』より 序曲ーロンドーリゴードン
ゴダール/ジョスランの子守歌
レスピーギ/『リュートのための古風な舞曲とアリア』より イタリアーナーシチリアーナ
シューベルト/『鱒』より
プッチーニ/歌劇『トスカ』より 星は光りぬ
マスカーニ/歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲
  ~ 休憩 ~
ヨハン・シュトラウスⅡ/喜歌劇「こうもり」序曲
スッペ/ボッカチオ行進曲
オッフェンバック/舟歌
ウェーバー/狩人の合唱
ヨハン・シュトラウスⅡ/南国の薔薇

ヴァイオリン:高畑壮平、中野了
ヴィオラ:橘由美子
チェロ:中村康乃理
コントラバス:嶋田真志


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・高畑さんは年に2回ほどご帰国されているそうだ。今回はいつものレクチャーではなく、地元のプロ奏者の方々との弦楽五重奏(コントラバス付き)のコンサートに足を運んだ。

・プログラムはバロックからロマン派の魅力的なメロディが詰まったクラシックの小品を中心としたもの。ドイツの州立オケの第一コンサートマスターの重責から解放され、現在はこうした「エヴァーグリーン」の名曲を採り上げるコンサートをライフワークとされている。

・過去に、当ブログの感想記事を読んでくださったようで、その時、私が書いた「辻音楽家」という表現を「私にとっては最高の褒め言葉」(失礼な事を書いたな・・・と思っていたので、その反応に私も驚いた)と仰って下さった。今回の高畑さんの生き生きとした姿を拝見して、それは本音の感想だということがよくわかった。

・コントラバスの嶋田さんは岡山フィルの所属だが、他はフリーで活動されている方々で、奏でられる音楽は、まさに五人の「自由な音楽家」といった開放感があり、高畑さんがなんだか「ボヘミアンの大将」といった感じ。

・コンサートホールの無菌室の様な空間で、100人からなる巨大管弦楽を聴く醍醐味(まさに1月の岡山フィルのような)も麻薬の様な魅力があるが、今回のような、ヨーロッパの人々の暮らしが息づく街場で演奏されるような音楽にもたまらない魅力があるんよなァ。

・聴きどころは、まずは高畑さんのヴァイオリンの音。独特のコクと光沢のある音は、高畑さんのヴァイオリンでしか聴くことが出来ない。それに加えて緊張と緩和を繰り返しながら、音楽と一緒に聴き手の心を陶酔の頂点までもっていく絶妙なフレージング。特にトスカの『星は光りぬ』やカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲での濃密なフレージングが心に残った。

・チェロの中村さんは本当によく歌う。橘さんのヴィオラは呼吸が深く、ヴァイオリンやチェロが創り出す振れ幅の大きい音楽の肌理を丁寧に埋めていくような演奏。

・コントラバスの嶋田さんは、岡フィルのトゥッティー奏者で、ソロの音を聴く機会は少ないのだが、親子deクラシックの楽器紹介で超低音の「ぞうさん」の愛嬌のあるソロの印象が強く残っている。今回は上手側の席に座ってコントラバスの音をじかに浴びる位置に坐った。ものすごく繊細な弓捌きによって、とてもデリケートな音を奏でていた。コントラバスってこんな音が出るんだという発見があった。

・そして今回の最大の発見だったのが2ndVnの中野さん。こんな素晴らしいヴァイオリニストがいたとは!という驚きがあった。これまで聴きに行った室内アンサンブルなどで、メンバーとして乗っていたかもしれない。その時に気づかなかったのは私の目が節穴ないのだが、今回は高畑さんとのアンサンブルを組むことで彼の音楽性がビンビンに伝わってきたということかも知れない。

・高畑さんの奏でる音と、これほど共鳴するヴァイオリニストは他に覚えがない。ジョスランの子守歌、で二人のユニゾンかは発せられる『泣き』の音に、涙がこみ上げる。プロフィールを見る限り、まだまだお若いと思うのだが、特に短調の悲しげな旋律、レスピーギやプッチーニの歌の旋律を、襞のある深みのある音を奏でていた。

・高畑さんは弓がブチブチに切れるような熱演!でもこれには事情があって、元々空気が乾燥している所に、空調によっていっそう乾燥が進行して、弓がパンパンに膨れるという最悪のコンディションだったそう。ドイツは日本と違って冬場は適湿だと聞くし、高温多湿の夏場も含め、日本は西洋の弦楽器には過酷な気候だな。切れた弓を毟りながら「大丈夫です、まだいっぱいあります」と笑いを誘っておられた。

・曲紹介を交えながらのコンサートだったが、ウェーバーの「狩人の合唱」について、酒場やビヤホールで男たちが野太い声で(しかも皆、上手い)大いに歌って盛り上がる曲、と紹介。まあ、これが外連味たっぷりにストップ&ゴーを繰り返す、合唱が終わる部分では一層テンポを落として「曲が終わる」と見せかけて、さらに盛り上げてフィナーレになだれ込む、遊びの要素がふんだんに詰まった演奏。高畑さん曰く、楽譜には書かれてないが、ドイツの街場では「お約束」としてやってる内容を再現したとのこと

・ちょっと話が逸れます。よくよく考えてみると、ドイツの音楽の根底にはこういう「遊び」が秘められている気がする。ブラームスの交響曲第2番の第4楽章なんて最たるもので、ドイツや東欧のオケの生演奏を聴くと、少し大げさにストップ&ゴーで盛り上げて、最後に溜まったエネルギーを爆発させる。こういうのは合わせようと思って合わせたらなかなか推進力は生まれない。高畑さん率いる五重奏の演奏は、そういう意味でも本場の音楽づくりの奥深さ、愉快さ、爽快さを体現していた。

・アンコールはムーンライトセレナーデと新日本紀行のテーマ。高畑さんはドイツに渡った後、現地に馴染みすぎて一度たりともホームシックにかかったことが無いとのこと。確かにおおらかで「陽」の空気を振りまく姿は、ちょっと日本人離れしている。しかし、そんな高畑さんが日本の山河に思いを寄せたくなる曲が、新日本紀行のテーマだそう。

・用意された椅子は8割方埋まる盛況ぶり。当日券で入れたが、次回以降は前売りを買っとかないといけないかな。

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