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東京都交響楽団倉敷公演 指揮:下野竜也 Pf:牛田智大 [コンサート感想]

オーケストラキャラバン2022
東京都交響楽団倉敷公演

ニコライ/歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調
 〜 休憩 〜
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調

指揮:下野竜也
ピアノ独奏:牛田智大
コンサートマスター:山本友重


2022年8月28日 倉敷市民会館


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・コロナ禍における文化芸術団体の振興事業のオーケストラ・キャラバン。去年に続いて都響が岡山に来てくれた。今年は倉敷市民会館へ。指揮は下野竜也さん。

・今年も岡山シンフォニーホールで聴きたかったのが正直なところ。倉敷市民会館の開館は1972年ということで、今年で50周年を迎える。この時期のホールとしては音響はかなりいい方だと思うが、1980年代のコンサートホール革命を経て1992年に開館した岡山シンフォニーホールの音響性能とは歴然とした差があるからだ。

・客席は9割近い入り。平日夜に開催された昨年の岡山公演よりも席は埋まっていた。 演奏中の客席の雰囲気も心地よい静寂があり、くらしきコンサートの解散後もこの良質な聴衆層という遺産は生き続けているようだ。

・編成は2管編成で、弦五部は協奏曲は1stvn12→2ndvn10→Vc6→Va8、上手奥にCb4、序曲と交響曲は1stvn14→2ndvn12→Vc8→Va10、上手奥にCb6。14型の弦部隊は岡山ではなかなか聴けなくなっているので、思う存分味わった。

・1曲目はウィンザーの陽気な女房序曲。全体的にはウォーミングアップな感じが漂う演奏(たぶん通しで1回ほどやっただけだでは?)で、演奏精度は都響の水準にはなかったが、それを個々の奏者の技倆で補って余りある。冒頭のヴィヴラートを抑えたピアニッシモから息を呑む美しさに惚れ惚れ・・・

・2曲目はベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番。ソリストは牛田智大さん。この曲は5(+1)曲あるピアノ協奏曲の中でも最も好きな曲だ。この曲こそがベートーヴェンの素の姿に触れられる曲なのだと確信する。

・9つの傑作交響曲、特に奇数番の第1楽章のような、力強い破壊力のある楽曲のイメージが強いベートーヴェン。しかし彼の緩徐楽章の美しさは比類ないもの。この4番協奏曲はベートーヴェンの豊かな感受性と繊細さを如実に現している。それだけに演奏によっては退屈するような演奏も出てきてしまう。

・牛田さんの生演奏は初聴き。リリカルでありながら一音一音を繊細に組み上げていき、曲が進んでいくにつれて聴き手のビジョンに現れるのは組木細工を見るような構築美。

・オーケストラも緻密な伴奏を付け、ピアノと共に創り上げるハーモニーの清冽なこと!牛田さん&都響は、そよ風でさえも水面にさざなみが立つように、豊かで繊細すぎるベートーヴェンの感受性を受け止めて音列に魂を込めるように表現。そうなんよ、ベートーヴェンって本当はこういう人なんよな。

・アンコールはシューマンのトロイメライ。心に染みる演奏。訥々と繊細に組み上げていく音の輝きのなかに、牛田智大というピアニストの深い部分に触れるような感覚があった。

・後半はドヴォルザークの8番。下野さんのタクトが冴え渡り、オーケストラもさすがの表現力で、終始都響サウンドに酔いしれた。2階席に飛んでくる音の圧力は、欧米の一流楽団と比べても全く遜色のない迫力で、木管・金管(トランペット首席の方は岡山出身みたい、素晴らしかった!!)は言わずもがな、弦の歌いっぷり、泣きっぷりは艷やかでグラマラス。

・第1楽章や第4 楽章の後半のテンションが張り詰めたとき、この曲で各声部がこれほど厳格に整然と鳴っている演奏は初めて聴いたように思う。弦部隊の分厚さ、馬力全開の管楽器も「無理してる」感は皆無なのだ。下野さんのバトンテクニックも素晴らしく、音量、音色、表情、どの旋律を浮き立たせるかなど、素人が見てもよく解る。

・惜しむらくは、岡山シンフォニーホールだと内声に回ったヴィオラ、チェロや金管の音や動きがはっきりわかって、もっと凄さを感じられたのにな〜ということかな。

・大いに盛り上がった会場を鎮めるかのように、プーランクの「平和のためにお祈りください」という歌曲を下野さん自身の編曲で演奏された。余韻に浸りつつ会場を後にすると、舞台裏では慌ただしく撤収作業や楽員さんたちがタクシーに乗り込んでいく。どうやら楽員の皆さん、17:05岡山発の特急南風に乗って高知に向かったみたい(笑)今年も都響 サウンドを聴けて本当に良かったです。次にこのオーケストラの音を聴けるのはいつになるかな。

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秋山和慶 岡山フィルミュージック・アドバイザー就任会見の記事から [岡山フィル]

 これまた随分時間が経ってしまったが、5月の岡山フィル定期演奏会の直前に、秋山和慶ミュージック・アドバイザーの就任会見でが開かれ、地元紙や放送局で報道された。

 記事を書きはじめたものの、完成させられないままお蔵入りしていたが、時間ができたので記録として書き残しておこうと思う。


「一目置かれるプロオケに」 岡フィル 秋山氏、藤原氏就任会見:山陽新聞デジタル|さんデジ https://www.sanyonews.jp/article/1264115


岡山放送



山陽放送




これらの地元マスコミで報道された、就任会見での秋山さんのコメントをまとめてみた。


「岡フィルで最初に指揮した時、団員の目つきが違うと思った。これは楽しみなオーケストラになるなと」
「日本で指折りの楽団となるにふさわしい状況が整っている。」
「中国地方で一目置かれるようなプロオケを創り上げていく」
「名だたる楽団に比べると小編成だが、一生懸命でアドレナリンが湧き出るような充実した演奏会ができた。もっと楽しく、面白い楽団になっていく」
「子どもたちへの演奏会を大事にしたい」
「小さな演奏会でも演奏家たちが真摯に取り組む姿勢を見てもらうことがとても大事」



 秋山さんが「ミュージック・アドバイザー」に、藤原浜雄さんが「ゲストソロ・コンサートマスター」に就任するというニュースに接した際、一抹の不安を覚えていた。理由は、そのポスト名にある。

 これまでの首席指揮者:シェレンベルガーさん、首席コンサートマスター:高畑さん、は楽団の顔として責任を背負う感じがあったが、「ミュージック・アドバイザー」「ゲストソロ・コンサートマスター」というポスト名には、どうも一歩引いたというか、深入りを避けた様な印象を覚えたのだ。


 しかし、秋山さんの会見でのお話は、意欲と情熱に溢れるとともに、具体的なプランが示されており、定期演奏会だけではなく小さは地域コンサートや教育的コンサートにも力を入れるという、広響などで見せた秋山イズムを強く感じさせるもので安堵した。藤原さんも富士山静岡響でも同じポスト名でご活躍とのことで、それに合わせたのだろうが、一般の聴衆から見た印象では損をしている。どうもこの音楽業界のポストは複雑怪奇で、名前と仕事内容や責任は必ずしも一致しないというのはクラシック、オーケストラ界の「悪弊」といって良く、世間から見た敷居の高さにも繋がっているのではないだろうか。


 秋山さんの発言内容の具体化の参考になるのは広島交響楽団の事例だろう。広響をよく知るファンの方が「川上作戦」(元来は地方の小さな集落から演説を開始して都市部に攻め上るという国政選挙の必勝戦略から来ているようだが)と仰っていたが、岡山での川上作戦はどのようになるだろうか。


 まずは学校訪問の公演の規模や回数は増加するだろう。子供たちだけでなく、地域住民にも開放されるようなコンサートを積み重ねて、一見、岡山シンフォニーホールから遠いように思える人々に、岡山フィルの強い印象を植え付ける。

 次は、「マイタウンオーケストラ」という地域の500人〜1000人規模のコミュニティ・コンサート。広島市の場合には全8区に区民センターがあり、立派なホールで事業展開されているが、岡山市は広島市のような地域インフラとしてのホールは充分には整備されていない。そんな中で可能性があるのは


 中区:岡山ふれあいセンター 約300席

 南区:岡山南ふれあいセンターふれあいホール 約200席
 東区:百花プラザ多目的ホール 約560席
    西大寺公民館大ホール 約800席
    西大寺ふれあいセンター 約300席


 あたりが会場候補になるだろうか?うーん、オーケストラ演奏に耐えうる規模となると、百花プラザ多目的ホール、西大寺公民館大ホールぐらいしかないか?



 最後には「地域定期」

 岡山フィルは県からの補助を得て、県内各地域での公演を行っているが、どうも集客は芳しくないようだ。やはり、開催場所を固定して毎年あるいは2年に1回の「恒例行事」にしないと固定客が着かないだろう。

 倉敷・笠岡・高梁(または新見)・津山あたりが地域定期の固定開催地候補になるだろうか。


 とりわけ重要なのが、倉敷との関係。

 私は兼ねてから岡山フィルが飛躍するためには、いかにして倉敷に進出するかにかかっている、と主張している。静岡交響楽団が浜松に進出して富士山静岡交響楽団(静岡定期・浜松定期の2公演体制)に発展しているのを見て、確信を深めた。
 シビックプライドの高い倉敷は、子供向けのコンサートなども含め、コストがかかっても在阪オーケストラを招聘し、岡山フィルを相手にしていないように見える。


 ここにどう食い込むか?


 倉敷のプライドに配慮した形、例えば楽団の理事会に倉敷市やくらしき作陽大学音楽学部などを取り込んだ形にするなどの思い切った方法を取る必要があるのではないか?

 静岡市と浜松市の2都市をフランチャイズとする富士山静岡交響楽団のプログラムをみると瞠目の充実度だ。


 静岡・浜松の2都市での定期演奏会2日制に加え、元東京カルテットの原田幸一郎さん(倉敷音楽祭の音楽監督?もされていたと思う)によるハイドンシリーズ、定期演奏会とは別ラインナップでの名曲コンサートなど、全方位で楽団の発展に目配りした素晴らしい年間プログラム。

 5年ほど前までは財政規模や主催公演の数は岡山フィルと変わらなかった(集客者数は岡山フィルのほうが勝っていた)のに、静岡・浜松両都市のタッグによってこれほどまでに差がつくとは。


 秋山&岡フィル体制になって静響のように、これまでの殻を破れるだろうか。

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岡山フィル第73回定期演奏会 Pf:三浦謙司 指揮:太田弦 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第73回定期演奏会

〜郷愁〜

スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
シューマン/ピアノ協奏曲イ短調
〜 休 憩 〜
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調

指揮:大田 弦
独奏:三浦謙司
コンサートマスター:藤原浜雄
2021年7月24日 岡山シンフォニーホール


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・指揮の太田弦さんは既に岡山フィル定期に2回登場している(うち1回はシェレンベルガーの代役)が、過去2回は感染拡大期と重なるなどしたため私は初聴き。


・12型2管編成。客席は1列目から客を入れる通常の方式に戻っている。1曲目はスメタナ/「売られた花嫁」序曲。一曲目からエンジン全開で演奏するのが岡フィルの美点。弦五部の瞬発力のある澄んだ音色に魅了される。見事な演奏だった。


・次にシューマン/ピアノ協奏曲。ソリストは三浦謙司さんその奏でる音から温かい人柄や懐の深さが伝わって来る。ソロの場面でもテクニックを誇示するような事がなく、温かい音で聴衆の心を包むような演奏。


・ピアノの音がとても立体的で、メロディー部分は聴き手の目の前で鳴っているように聴こえ、装飾音はステージの奥から聴こえてくるような不思議な感覚になった。特に印象的だったのが、オーケストラとのアンサンブルを心から楽しんでいること。木管とのソロの絡み合いや第1楽章終盤や第3楽章でのリズム感が最高!もう少し岡フィルがノッてくれたら・・・と思わないでもないが、愉悦に浸るには充分だった。


・アンコールはマルチェロ/オーボエと弦楽合奏のための協奏曲から第2楽章:アダージョ。「はて?どっかで聴いたことがあるな?」と思ったら、自分がよく聴いているシェレンベルガーの「イタリア・バロック・オーボエ名曲集」に収録されている曲で、実演でもシェレンベルガーと岡フィルの精鋭たちとの共演で聴いたことがあった。ピアノで演奏されるとわからんもんだなー。もう1曲アンコールがあって、1曲目のマルチェロと冒頭の音形がよく似ているが、途中からジャズの曲だと解った。ハマシアンの「Fides Tua」という曲。ラテン語で「あなたの信仰」という意味らしい。いやー、こういう聴衆を「おっ」と思わせる選曲は素晴らしい!


・後半はドヴォルザーク/交響曲第8番。この世代の指揮者に対する自分の先入観から速いテンポで押していくと思いきや、第1楽章は予想に反してじっくりと聴かせる。かと言って20世紀の巨匠風ではなく、内声の見透しの良い現代的なアンサンブルを志向。(前プロも同様だったが)指揮棒は使わず、まだ20代とは思えない淀みのないタクトさばきを見せた。円弧を幾重にも重ねて螺旋状に音楽を編んで行き、推進力も充分でコンマスの藤原浜雄さん効果なのか、ヴァイオリンを中心とした弦の音の艶が印象に残った。



・今年度の岡フィルは定期演奏会ごとにテーマを決めているようで、今回は「郷愁」がテーマだったが、今回の演奏には、陰影というものがあまりなく、郷愁に胸が焼かれる、といったものではなかった。また、溌剌とすっきりした音楽への志向とトレードオフになるのか、去年の7月定期(園田隆一郎 指揮)でのドヴォ7での竜巻のような音のうねりは感じられなかったのが、やや食い足りない感じを残した。演奏は間違いなく素晴らしかったが、5月の秋山MAとのストラヴィンスキーといい、去年までの音とはこれほどまでに変わるのか?と思うほど、音が変わった。


・この曲、管楽器のソロに聴かせどころが多いが、木管陣の奮闘がまず素晴らしい。しかし一番の殊勲賞はトランペットの小林鴻さん。彼の雲ひとつない青空の様な、抜けの良い爽やかな音は岡フィルの宝だと思う。
・舞台上を見ると若い奏者が多くなったなと改めて思う。オケ全体が世代交代が進む中で、若い指揮者によって若々しい爽快な演奏になった。しかし・・若い中にも藤原浜雄さんとティンパニの近藤高顕さんの圧倒的な名人芸も堪能。藤原さんは秋山さん以外の指揮者のでも岡フィルを牽引してくださるようで安心。75歳にしてオケの中の誰よりも燃焼していて、岡フィルを高みに引き上げようという本気を見た思い。
・客席の入りは5割も入っておらず(45%=900人ぐらい?)、covid19の第7波の影響か?と思ったが、客席の埋まり具合を見ると、1階の中央より前、2階〜3階は前列はコンスタントに埋まっているが、それ以外がガラガラという感じ。第7波の前から元々チケットは売れていなかったのではないか?ネット上やSNSの感想を見ても、コロナ禍でも来ていたようなヘビー・ゴーアーの人が今回はスルーしている方が多かったようで、それは5月の定期でも同じ傾向が見られていた。
・今回の藤原コンマスの奮闘ぶりや、今後秋山さんの存在感が増してくると、従来の聴衆も戻ってくるかもしれないが、元来、オーケストラ興行(に限らず、イベント興行)は穴の空いたバケツみたいなもので、「人についていた」ファンは対象(シェレンベルガー、高畑コンマス、あるいは退団された団員さんなど)が居なくなれば演奏会には来なくなるし、仕事や子育て、介護、自身の健康問題など、どんなにいい演奏を続けていても、徐々に減り続ける。で、あればバケツに水を注ぐ蛇口をどんどん引っ張ってくる以外に方法はない。また、これについては機会があれば述べたいと思う。

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九州交響楽団 岡山公演 Sax:須川伸也 現田茂夫指揮 [コンサート感想]

オーケストラ・キャラバン
九州交響楽団 岡山公演


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J.ドーシー/ウードルズ・オブ・ヌードルズ(※)
真島俊夫/シーガル(※)
石川亮太/日本民謡による狂詩曲(※)
A.リード(中原達彦編)/アルメニアン・ダンス パート1
 〜 休憩  〜
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
ラヴェル/ボレロ

指揮:現田茂夫
サクソフォン独奏(※):須川展也
コンサートマスター:扇谷泰朋

2022年6月17日 岡山シンフォニーホール

・九州交響楽団が岡山に来ることは極めて珍しく、公式twitterでも31年ぶりとのことだ。岡山県内に範囲を広げても15年前の津山国際総合音楽祭でマーラー10番を演奏したことぐらいしか記憶には無い。

・で、実はこのコンサートは文化庁補助のオーケストラ・キャラバン事業の一環だった。この事業、コアなクラシック音楽ファンだけでなく、今回のように吹奏楽関係や学生さんなどにも鑑賞機会の拡大に貢献している。

・1stVn14→2ndvn12→Vc8→Va10、上手奥にCb7。管楽器は2管+αにパーカッションが7名という80人を超える堂々たる編成を前にすると、心が浮き立ってしまう。余談だが、ヴィオラには岡山フィルの島田さんも乗っていた。

・3曲目までは須川さんのサックス・ソロだったのだが、ウードルズ・オブ・ヌードルズから技巧と多彩な表現に惹き込まれた。シーガルも「サックスの音って、こんなに心に響くんや」と涙腺が緩む。白眉だったのが「日本民謡による狂詩曲」。津軽三味線や尺八の表現に唖然驚愕!サックスってこんなことが出来るの?の連続技。須川さんによる委嘱作品で、他に方にはなかなか演奏できないかも知れないが、未来の日本人サックス奏者の十八番にしてほしい名曲。

・アルメニアン・ダンスⅡと後半は2曲目も須川さんがオケパートに入っての演奏。ソロを取る部分は、もう唸るしか無い素晴らしい演奏だが、トゥッティーでは完全にオーケストラに溶け込んでしまう。ボレロでは永瀬敏和さんも加わって、吹奏楽関係者は「大阪市音と東京佼成のコンマスの共演!」という興奮要素があったようだ。

・そしてなんと言っても九響のサウンドの素晴らしさよ!まず、よく鳴るんだよな。動画などで管楽器セクションが強力なのは感じていたが、弦楽器も気持ちいい鳴りっぷり。「シーガル」「日本民謡による狂詩曲」「アルメニアン・ダンス・パート1」の3曲はまさに「祭り国のオーケストラ」といった強烈なサウンド・リズム。一方で弦のしっとりとした音も素晴らしく、ppでの音にこのオケの実力の高さを実感。

・これは現田さんのタクトによるところも大きいのだが、大音量の時でもすべてのパートが理想的なバランスで鳴っており、テンポのストップ&ゴーでも全く乱れることが無く、音色の変化も自然、その度に「巧いなー」と感心してしまった。

・若い奏者もとても優秀で、特に「アルルの女」と「ボレロ」で大活躍だったフルートの八木さんが素晴らしかった。そうそう、プログラムには顔写真まで載っていて、「うまっ、この人誰?」と思い立ったらすぐにお名前を覚えられるのだ。

・ボレロは岡山フィルの3月定期で取り上げられる筈だった曲(シェレンベルガーさんの来日不可でプログラム差し替えになった)。個人的には結構渇望感があった。ビル全体が震撼する熱演に体が震えた。途中、コントラバスがピチカートから弓に持ち替えるあたりで既に大爆音になっていて、「最後はどうなるんや!?」と思っていたら転調するところでギアがマックスになって、「息できん!」と思うような空気の密度に背筋が震えた。声出し禁止の中、ブラボーが飛び交ったのもやむを得ない、と思う熱演だった。

・大爆音だけでなく、ピッコロの”人口倍音”の部分とかチェレスタの音とか、録音で聴いているだけでは感じられない音がパースペクティブに聴くことが出来た。いやはやラベルは天才だ。

・アンコールはリード/星条旗よ永遠なれ。これまた管楽器セクションのブラバン魂が炸裂。途中で管楽器が全員立奏で、ノリノリのパフォーマンスにやんやの喝采。奏者の皆さん楽しんでやってますな。

・陳腐な表現で、書くのは恥ずかしいのだけれど、『夢のいっぱい詰まった』コンサートだった。聴衆を満足させるだけの「何か」がいっぱい詰まったコンサート。正直、この九響のサウンドに惚れてしまった。そんな僕のような聴衆のために、プログラムにはライブ配信の予定が掲載されていた。マーラーの復活は絶対に見ようと思う。

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・僕は細々とtwitterをやっていて、ざっくりとした感想を書いてみると、フォロワーが140人しかいない自分のアカウントに一晩で20以上も「いいね!」がついた。中には何人かの団員さんからも「いいね!」をいただいた。こういうのは素直に嬉しいですね。

・SNSの中にはネガティブな意見も少なからず目にするだろう。特に私のような音楽的素養や知識のない聴衆が的はずれな感想を書いている事も多く、それに対する反論も立場上なかなかできないだろう。それでも個人の感想を検索して目を通すという、覚悟と自信が必要な作業を行うのは。やはり多くの聴衆に聴いてもらおう、感想を次の演奏に活かそうという前向きな楽団の雰囲気があるのだろうと想像する。なかなか出来ないことである。

・そして九響を応援している方々が九州を中心に来岡していたようだ。それだけこのオーケストラの音に魅了されている人が多いということだろう。

・最後に運営の苦言を。今回はシンフォニーホールのスタッフではなく、岡山音協&山陽新聞のスタッフの対応だったが、注意事項をやたらと大声で喚き散らしていた。アコースティックな美しい音楽を聴いて、この余韻を持って帰って何日も楽しもうというところに、終演後も「止まらずに間隔を取ってご退場ください!」とか「ご来場ありがとうございました!」とか大声で喚き散らす。これは余韻の破壊行為ではないか?

・クラシックが特別と言っているわけではなく、楽器の音をアンプを使わずに響かせる音楽は、特別な余韻を残す。だからそういう音楽には相応のレセプションの対応が不可欠なのだ。10月のパリ管も岡山音協主催だが、同じような対応をしたら、他県から来た聴衆とのトラブルに発展しかねない。岡山シンフォニーホールにはサントリーホールのメソッドで研修を受けたレセプショニストが居るのだから、餅は餅屋でそのスタッフを確保して対応してほしいものだ。

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今年のオーケストラキャラバン、岡山は九響と都響。あと海外オケの公演など [コンサート準備]

 文化芸術の重要性や魅力を発信することによりコロナ禍による萎縮を乗り越え、社会全体の活性化を図ることを目的とした、文化庁のアートキャラバン事業。その中の一つであるオーケストラキャラバンが今年度も実施されるようだ。


 岡山・倉敷では2公演を開催。

2022 6/17(金)
九州交響楽団岡山公演
岡山シンフォニーホール

指揮:現田茂夫
サクソフォン:須川展也

J.ドーシー/ウードルズ・オブ・ヌードルズ
真島俊夫/シーガル
石川亮太/日本民謡による狂詩曲
A.リード(中原達彦編)/アルメニアン・ダンス パート1
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
ラヴェル/ボレロ


2022 8/28(日)
東京都交響楽団岡山公演
倉敷市民会館

※以下参考 高知公演のプログラム
指揮:下野竜也
ピアノ:牛田智大

ニコライ/歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調
ドヴォルザーク/交響曲第8番 ト長調



 去年に続いて都響を聴けるのは実に楽しみ。翌日の高知公演のプログラムは発表済で、倉敷も同じプログラムだろう。九響も30年振りぐらい?の岡山公演じゃないだろうか。岡山フィルの3月定期のプログラム変更で聴けなかったボレロが聴けるのが嬉しい。

 10月29日には香川の観音寺に名フィルが来るらしく、ガチンコ本格派のプログラムなら検討してみようと思う。



 オーケストラ・キャラバン以外だと、海外オーケストラは9月14日(水)にポーランド国立放送響@岡山シンフォニーホールが予定されている。コロナ後最大とも言える大規模ツアーで、ぜひ成功させて欲しい。

 10月21日には飛ぶ鳥を落とす勢いのクラウス・マケラ指揮・パリ管弦楽団@岡山シンフォニーホール。ヒャッホー!!岡山公演のチケット代は不明だが、サントリーホール公演のチケット代が28K〜12K、これならなんとか手が出るな。今年のコンサートのハイライトになりそう。


 近隣では赤穂にケルン・ギュルツェニヒ管(なんと、指揮はロト、Vnは樫本大進!!プログラムも最高!)が7月5日(火)に来るが・・・。18:30開演はちょっとキツいな〜

 なんだか色々な選択肢が増えてくると、わくわくしますね〜

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岡山フィル第72回定期演奏会 Pf:松本和将 指揮:秋山和慶 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第72回定期演奏会

〜岡山フィルハーモニック管弦楽団設立30周年記念〜

〜秋山和慶ミュージック・アドバイザー就任記念〜

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調
〜 休 憩 〜
ムソルグスキー(R=コルサコフ改訂版)/交響詩「禿山の一夜」

ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919版)

指揮:秋山和慶
ピアノ独奏:松本和将
コンサートマスター:藤原浜雄


2022年5月22日 岡山シンフォニーホール



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・岡山フィル設立30周年記念、秋山和慶ミュージックアドバイザー就任記念と銘打ち、新しい時代の幕開けに相応しい、入魂の演奏になった。

・客席は9割の入り、と一瞬見積もったが、コロナ禍以来、密集を避けバラけて席取りをするので、実際には8割ぐらいの入りか。

・前後半とも弦は1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6。火の鳥はストラヴィンスキーのなかでは編成は少ない方だが、それでもステージ狭しと並ぶ打・管楽器群は圧巻だ。

・ラフマニノフPfコン3番。ソロは松本和将。ピアノはスタインウェイ:CD75というホロヴィッツがツアーに連れて歩いた愛器のようだ。

・よく「スタインウェイらしい綺羅びやかな音」とか「ヤマハは華は無いが粒立ちが良い」などと言われたりするが、正直、僕はメーカーや機種による音の違いが解らないんよなぁ(というか、皆さん、そんなんホンマに聴き取れてるの?とさえ思っている)。ピアノメーカーの個性よりもピアニストの手腕や特徴に依ることの方が大きい、というのが僕の見解だ。スタインウェイでも全然響かないと感じる時もあるし、小曽根真が弾けばヤマハもこれ以上ない華やかな音を出すのだし。

・しかし、今回のCD75の音は私のようなアホ耳でも「このピアノは違う!」と感じさせるほどの特徴があった。

・冒頭の旋律を聴いたときは、少しくすんだスモーキーな音だったが強奏する場面では眩いばかりの輝きを放ってピアノの鳴りっぷりが凄まじい。ちょっと躁鬱なところがありそうな器体に思える。松本さんは、その躁状態の鳴りっぷりのCD75を、まるでロデオの名騎手のように見事に制御しているのが印象に残った。また、ダンパーペダル使用を最小限にして、第3楽章では今まで聴こえなかったリズム・鼓動が感じられたり、第2楽章で教会の鐘の音のように聴こえる箇所があるなど再発見の連続。

・この曲はこれまでにベレゾフスキー(ロシア侵攻に関する自身の発言によって、西側では当分聴けないだろうな)、横山幸雄、河村尚子、上原彩子など、名だたるピアニストで聴いてきたが、今回の松本和将&岡フィルの演奏はオーケストラとソリストとの一体感、経験のないような表現の多彩・多才さと深み、強靭なピアニズム、といった点で、僕の中では特別な感銘を残す演奏になった。

・第1楽章後にアクシデントで10分程の中断があったが集中力が途切れなかったのも凄い。もし、並の若手ピアニストだったらどうなっていた事か・・・。

・秋山さんは 松本さんとアイコンタクトを取ることもなく、それどころか後ろを振り返ることすらない。それなのにピッタリと寄り添い。トゥッティの場面では絶妙のさじ加減で12型のオーケストラの音とピアノのバランスを取っていた。

・オーケストラも奮闘した。松本さんの強靭なピアニズムに対し、かなりパワフルに鳴らしていた。他のオーケストラだと後プロに馬力の必要な曲を控えている今回のようなコンサートだと、セーブしたような演奏に接して要求不満になることも多いが、岡山フィルからは微塵も感じさせなかった。この直向きさがこのオーケストラを聴く醍醐味だと思う。今年の定期ラインナップは協奏曲との組み合わせが続くが、これなら聴衆もついてくる。

・沸騰した会場を慰撫するかのようなアンコールはラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ。涙腺が緩むような美しい音が響き渡る。

・後半はムソルグスキー(R=コルサコフ改訂版)/「禿山の一夜」そしてストラヴィンスキー/「火の鳥」。ともに秋山さんらしい音の質感に徹底的にこだわった繊細で緻密な演奏だった。秋山さんの指揮は、そのタクトさばき自体が芸術と思えるほど美しく、まさに岡フィル奏者たちが導かれるように極上のハーモニーで聴衆を魅了した。

・秋山さんが「団員の目つきが違う」「一生懸命でアドレナリンが湧き出るような演奏」と就任会見で語っていたように、狂おしいほど懸命に演奏した岡フィルに心を撃たれたが、秋山さんの緻密で繊細な音楽への欲求に対して随所で粗さが感じられた。例えば「禿山の一夜」の終盤や「火の鳥」の第6曲などでのヴァイオリンの弱音の表現の粗さなど・・・。今回は「えっ!」と思うような実力奏者がトゥッティに入っていたりしたのだが。

・また、例えば去年10月のシェレンベルガーとの「悲愴」で聴かせたような、音の渦が見えるような「音のうねり」はあまり感じられなかった。広響や大フィルで聴く秋山さんの音楽は、緻密でありながらもっと重量感・重厚感があったのだが・・・。もっとも、これはストラヴィンスキーの管楽器主導のオーケストレーションゆえかも知れない。

・目立ったのは木管楽器の首席奏者たち。常連客演首席のFg皆神さんとHr森博文さんのソロは聴衆を陶酔させる素晴らしさ。岡フィル金看板のOb工藤・Fl畠山・Cl西崎のトリオも文句なし。金管は最後はスタミナがギリギリな感じだったがうまく纏めた。

・岡山シンフォニーホールはこういう楽曲が最高にマッチするな、とつくづく思う。京都コンサートホールよりも芳醇に鳴り、フェスティバルホールよりも繊細な音が聴こえ、ザ・シンフォニーホールよりも懐が深く、兵庫芸術文化センターよりも弦が艶やかに鳴る。マーラー、R.シュトラウス、ストラヴィンスキー、レスピーギあたりを演るには西日本随一のホールだろう。10型2管編成の岡フィルにとってはお金もかかるし、なかなか取り上げにくいのだろうが・・・・

・全体の感想としては、シェレンベルガーの時とくらべてかなり音が変わったと感じた。それ以上に変わったのは音楽の造形だ。シェレンさんの音楽は常に「運動」しており、本場の(肉食民族の血が踊るような)推進力が感じられるものだった。絵画で言えばカスパー・ダヴィド・フリードリヒのようなイメージ。そうすると緻密で繊細な音楽を要求する秋山和慶のタクトは伊藤若冲になろうか?魂は細部に宿る、というイメージ。それだけに演奏者に対する要求が高く、結果として粗の多い印象を残したのかも知れない。秋山さんの指揮は大フィルや広響で聴いてきたので、どうしてもそれらの有力オーケストラの演奏と比較してしまう。

・ただ、シェレンベルガーも秋山和慶も、外連味や自己主張を排し音楽をストイックに追求するタクトという点では、路線は共通しているのではないか。10月定期のブラームスでは、3月定期の福田廉之介と作り上げたような火の玉サウンドや、シェレンベルガーと9年間で作り上げた、ドイツ語のディクションが感じられるような肉食系疾風怒濤の音楽を、秋山和慶にぶつけて行って欲しい。その結果生まれる音楽がどの様になるか?を楽しみに足を運びたいと思う。

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【ニコ生】東京交響楽団 名曲全集 第177回 Live from Muza! 指揮:ジョナサン・ノット [ストリーミング]

 月イチのニコニコ生放送で「東響サウンド」を堪能するのが、楽しみになっている。




 極限まで柔らかく、ニュアンスたっぷりに仕上げた牧神、日本初演の現代音楽を圧倒的な技術の高さで表現したデュサパン、でも、ここまではある意味想定通り。

 驚いたのはブラームスの交響曲第3番。自分が聴いてきたノット&東響の音源から、サクサク行くのかと思いきや、全くその逆。かなりのスローテンポで柔らかくじっくりと気の長いフレーズを紡いでいく。でも、聴いていくと斬新な解釈と思っていたテンポやフレージングは「これ以外に無い!」と思うような説得力に満ち溢れている。聴いていて本当に心地よい。どこまでも澄み渡る青空のような爽やかさ。いや、これはもはやこの世のものとは思えず、彼岸の先の理想郷かも知れない。

 そして最終楽章に入って、美しさはそのままに音楽が疾走を始める。ホント鳥肌が立ちっぱなしの演奏。

 岡山シンフォニーホールのステージで馴染みのある方のお顔も。フルートの畠山さんは今回は2番に座る。そうそうコンサートマスターには「THE MOST」の小林壱成さん。

 東響によると、ノットは「未来に向かって前に進んでいく作品を選んだ」そうだ。聴き終わったあと、自分の中でエネルギーが沸き起こるような演奏だった。これ、音源で発売されたら絶対買うね!

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RSKメッセージ特別編 さよならシェレンベルガー ~岡フィル指揮9年の集大成をここに~ [岡山フィル]

 SSブログは一定期間更新(おそらく50日ぐらい)が無いと、「広告非表示設定」が解除されてゴテゴテと広告が表情されてしまうので、月に1回は更新するようにしていたのだが、久しぶりに覗いてみると無惨な状態(しばらく家を空けていて、帰ってきたら雑草がボーボー、みたいな・・・)になっており、もう完全に時期を逸したネタではあるが、保守も兼ねて更新しようと思う。


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2013年に岡山フィルハーモニック管弦楽団の首席指揮者に就任したハンスイェルク・シェレンベルガー氏(ドイツ在住)が3月末で3期9年の契約を終える。世界最高峰といわれるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でソロ・オーボエ奏者をつとめた卓越した音楽性を発揮し、岡フィルの名を全国のクラシックファンに知らしめた。しかし、コロナ禍で来日そのものがままならなくなり、最後のステージとなる筈だった3月の第71回定期演奏会も別のプログラムに差し替えられる事態に。
番組では、1年9か月ぶりに来日した2021年10月の岡フィル第70回定期演奏会と自身もオーボエを披露した12月の特別演奏会をダイジェストで紹介。幻のサヨナラ公演に代わるフィナーレを当番組で飾る。

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 RSK山陽放送のドキュメンタリー番組:メッセージは、以前にも岡山フィルの楽団改革や、演奏会の録画を放送しており、加えてラジオ放送でも「ブラヴォー・岡山フィル」という番組を放送するなど、全国的に見ても例がないほどメディアの露出が多いオーケストラになった。シェレンベルガーが首席指揮者に就任する前の、全く目立たない存在だった頃を思うと、隔世の感がある。



 番組HPの概要にもあるとおり、本来であればシェレンベルガーの首席指揮者としてのラストコンサートを追うドキュメンタリーを撮影し、ゴールデンタイムの本来の時間帯に放送する手筈だったのだろう。それが叶わず、これまでに撮りためていたインタビューや昨年の10月の定期演奏会により構成されていた。私としては、去年の10月定期でのチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」の演奏シーンをじっくり見ることができたのは幸いだった。


 第1楽章の陰鬱とした序奏のあとの第1主題、弦、特にヴァイオリンがテンポ感を掴みきれていない感じがあり、当日の感想には「ここは充分に詰めきれていなかったか」と書いたが、奏者たちの「えっ!?」という感じの表情を見ると、もしかしたらリハーサルの時よりテンポが早かったのかもしれない。これがなんとも言えない切迫感を出していて、シェレンさんの狙い通りだったのかも知れない。

 第2主題に入り、これはコンサートでも感じたが、安らかにはならず、足を引き摺るような弦の下降音階の刻みが不安感を増幅させ、クラリネットの音をグロテスクに際立たせていたのはやはり意図されたものだったことが解った。

 劇的な展開部でのビートの聴かせ方、岡山フィルの鉄壁のアンサンブルは、録画で聴いても鬼気迫るものがある。一方で、会場で聴いた弦の狂ったようなうねりは、やはり録画では撮り切れていない、会場で聴いたものだけの体験になった。


 第4楽章も主要部分が放送され、心の奥深くに沈んでいくような演奏は、緻密な演奏設計と繊細な表現で成り立っていたことがよく解った。


 録画放送を見て改めて思ったのは、この日の演奏を貫いていたのは、異常なまでの緊張感である。 (実際には12月の特別演奏会には来日が叶ったわけだが)二度と来られない・聴けないかも知れない、という思いを、指揮者も奏者も頭の片隅に置きながらの音楽づくりだったのだろう。


 この番組のおかげで、私自身、シェレンベルガーさんとの夢のような9年間にピリオドを打つことが出来たように思う。秋山新体制になっても、テレビで取り上げてくれるように願っている。  

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岡山フィル第71回定期演奏会 指揮&Vn:福田廉之介 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第71回定期演奏会

〜 FOUR SEASONS 〜


ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「和製と創意への試み」から『四季』
〜 休 憩 〜
ピアソラ(デシャトニコフ編)/ブエノスアイレスの四季「夏・秋・冬・春」


指揮・ヴァイオリン独奏:福田廉之介
ゲストコンサートマスター:関朋岳
2022年3月13日 岡山シンフォニーホール


20220313oka_phil.jpg


 後日更新します。数行の簡単な感想にしようと思っていたが、あの演奏を聴いてしまうと、もっと丁寧な感想を残しておかないと自分が後悔する。

 とりあえずひとことだけ。福田廉之介さんを産み育てた岡山を、そして今日のような演奏を聴かせてくれる岡山フィルを心から誇りに思います。岡山フィルは30周年だが、私がこの街に住み始めてから29年。こんなに豊かな時間を共有できることに感謝したい。


・今年は岡山フィル創立30周年の記念の年のようだ。しかし、1月の定期演奏会は感染者数の爆発的増加のために鑑賞を自粛したので、私にとっては今年はじめての岡フィルの演奏になる。

・当初の予定では、今回のコンサートはシェレンベルガーの岡山フィル首席指揮者としてのファイナル・コンサートだった。しかし例によって新型コロナウイルス蔓延防止のための入国制限により、外国籍の方の入国が事実上不可能に。そこで楽団から、2023年度に「延期」されることが発表され、代役として岡山フィルが白羽の矢を立てたのが福田廉之介だった。


20220313oka_phil_2.jpg

※右がプログラム、左は変更後のチラシ


・コンサートマスターは廉之介くんが主宰する「THE MOST」のメンバーの関朋岳さん。廉之介くんと掛け合う場面でのソロも素晴らしかったが、それ以上に彼の目となり耳となって、オーケストラ全体に廉之介くんの意図を(目立つことなしに)スマートにさりげなく波及させていたのが印象に残った。

・廉之介くんはデジタル楽譜をiPadに入れているようで、足元に譜めくり用のスイッチを置いて(おそらくBluetooth接続になっているのだろう)、足で踏みながら無線で譜めくりしていた。もっとも、譜面を見るのは要所要所を確認するのみ、な感じで、ほぼ頭に入っている様子ではあった。

・コンサートから2ヶ月近く経過してから、当時のメモを基に感想を書いているわけだが、時間を置くことで見えてくるものも、入ってくる情報もある。情報として大きかったのは、福田さんのラジオ番組(福田廉之助の音楽の旅:レディオMOMIO、FreshmorningOKAYAMA内の「音楽の扉」ゲスト出演:FM岡山)で、今回のコンサートの裏話を聴けたことだ。

・コンサート直後に、twitterでこんな感想を書いた


「岡山フィル71回定期。福田廉之介の弾き振りによるヴィヴァルディとピアソラの四季。控えめに言って「最高だった!」。廉之介くんのソロの技巧や表現力も凄いが岡フィルもメンバーもすごい。奏者一人ひとりの「音の表情」や個性がよく見え、個と個がぶつかって、大きな世界を描き出す演奏に圧倒された。」

「今回は弦楽合奏だったが、奏者の個性が爆発したとき、これぞ岡山フィルの音が感じられたのが面白い。前半も後半もオーケストラが退場するとき、ソリストに捧げるものと同じ熱さの会場の拍手が、今回の演奏を物語っていた。廉之介くんは岡山の救世主、本当にありがとう。」

このときの印象は基本的には今でも変わらない。恐らく、廉之助くんが幼少の頃から共演を重ねてきた岡山フィルの関係性に基づいた、充実したリハーサルが展開されたことははっきりとわかった。しかし、廉之助くんがラジオ番組で語っていたリハーサルの様子から、舞台裏では僕の想像を超えることが起こっていたようだ。

・このコンサートにあたり、4時間✕3日間のリハーサル+ゲネプロという時間が与えられたそうだ。4時間という時間はあくまで最大限の時間枠であって、ある程度仕上がってくると早めに切り上げることが通例のようだ。しかし、廉之助くんが言うにはやるべきこと・徹底すべきことが沢山あり、時間の枠をほぼすべて使い切った。その過程で廉之介くんの声が潰れて、事務局がのど飴を差し入れるなどしていた。

・時間面だけでなく、廉之介くんのラジオ番組での発言を借りると、岡山フィルメンバーに対してかなり「キツイことを言った」らしく、それは廉之介くんと古くからの付き合いのある楽員から「廉之介じゃなかったら、みんなキレてたよ」と言われるほどだったという。

・廉之介くんは「音楽面では絶対に妥協しない」ことと、年齢やキャリアで上下関係を作るのではなく、音楽家同士が意見をぶつけ合って音楽を作り上げること、この2点を信条としているそうだ。恐らく、岡山フィルの個々の奏者の実力もよく解っているから、「もっと出来るのでは無いか?」という思いで忌憚ない指摘や指示が出せたのだろう。客演で振りに来る指揮者だと「今回はこのあたりで纏めよう」と目処を付けて音楽を創ることもあろうが、廉之助くんと岡山フィルは時間いっぱい使ってギリギリまで攻めていった。それが今回のコンサートを聴いた聴衆たちに特別な感動を与えたのだ。そして、リハーサルが進むに連れて岡フィルからも「こうしてはどうか」という意見が出始め、そのことにも手応えを感じたようだ。

・廉之介くんの信頼は聴衆に対しても示されている。今回の定期演奏会のシェレンベルガーの来日不可によるプログラム・出演者の変更後、ほとんどキャンセルが出なかったそうで、終演後に「本当にありがたかった、ありがとうございました」と頭を下げていた。
 しかし、彼は岡山フィルとの共演で度々、その成長する姿を岡山の聴衆に披露してきたし、「THE MOST」の構成メンバーの大部分が東京を拠点にしているにも関わらず、法人の事務局は岡山に置いている。そんな廉之介くんの岡山への思い入れを岡山の聴衆もよく解っている。


◆ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「和製と創意への試み」から『四季』

・前半は1stVn4→2ndVn3→中央にチェンバロ→Vc2→Va2、Vcの後ろにCb1名という編成。2年前の郷古廉さんの弾き振りによる「四季」の時と比べると半分ぐらいの編成。舞台上の配置を見た時は「さすがにこのサイズだと、音量的に物足りないのではないか?」と思ったのだが、それは完全な杞憂に終わった。本当に豊かな響きがホールを満たしたのには驚いた。

・全12楽章の場面ごとの音楽の描き分けが見事で、それぞれの曲のキャラクターの立った演奏だった。例えば「春」の第1楽章での鳥のさえずりの表現にナチュラルな間を取ったり、新緑の中を流れる川は、雪解け水の冷たさも感じるようだったし、春のつむじ風は舞台から実際に風が吹いているようだ。

・廉之介くんのヴァイオリンは、まさに天衣無縫というにピッタリの音で、常に13人のオケメンバーと対話しながら、色々なアイデアを盛り込んでいく。その場で生まれたものもたくさんあったのだろう。各パート首席との掛け合いの場面では、「よし来た!」と言わんばかりに首席メンバーが腕前を披露、廉之介くんもそれを受けて、いっそう挑発していき、オーケストラがまたそれに答える。

・この曲の見せ場の一つ、「夏」の第3楽章(プレスト)でのマッシヴな音には圧倒され、その中から突き抜けてくる廉之介くんのヴァイオリンにも圧倒された。特に一丁しかないコントラバスがこれほど多彩な音と豊かな響きを奏でられることは驚きだった。この日の演奏に限らず、首席の谷口さんが今の岡山フィルの音・表現の幅を決定づけていると思う。本拠地は東京の方だが、末永く岡山フィルにいて欲しい逸材。

・よく、いい演奏の表現として、絵を見ているような、と言われることがあるが、この日の演奏は四季12場面の中に、自分が身を置いているかのようなリアルさがあった。

・岡山フィル✕廉之介くんの共演、というよりは、個性を持った13人の職人たちと一人のヴィルトゥオーゾによる、とても手の込んだ「手仕事」を感じさせる演奏だった。奏者たちの個性が出れば出るほど、岡山フィルの特徴である暖かく明るいサウンドが前面に出てくる。

・休憩時間に入り、頭がのぼせてることに気づく。カフェテリアでドリンクを注文してゆっくりした時間を過ごしたいが、生憎、コロナ対策で営業していないので、入館前に買っておいたるペットボトルの紅茶をロビーで喫する。このホールはロビーでの節度を守った飲食は見逃してくれるのがいい。


◆ピアソラ(デシャトニコフ編)/ブエノスアイレスの四季「夏・秋・冬・春」

・後半は前半の倍の1stvn8→2ndvn6→Vc4→Va4、Vcの後ろにCb2名という編成。前後半ともに立奏だった。舞台上は赤いライティングの演出が施されていて、これは廉之介くんのアイデアなのだろうと思う。

・廉之介くんが、プログラムをどうするか、楽団事務局と相談した際、「ボレロ」に負けない曲目として推したのが、このピアソラの四季だったようだ。ヴァイオリン・ソロのの楽曲の中では大曲とも言えるこの2曲を並べるヴァイタリティーには脱帽だ。それだけ岡山の聴衆の期待に応えたいという思いの現れだろう。
 
・いやー、廉之介くんのソロは凄かった。この曲をこの日本でこれほどまでにエキサイティングな演奏が出来るヴァイオリニストは一握りだろう。

・そして岡山フィルの演奏もよく練られていて、鳥肌が立つ場面が幾度となく訪れた。決して岡山フィルの実力を低く見積もっていたわけではないが、ここまでの演奏を聴かせてくれるとは、ホンマに思わなかった。予習用として聴いていた、クレーメル&クレメラータ・バルティカの演奏と比べても遜色のないものだった。心底「すげーな、この人たち」と思った。

・各パートの首席との絡みでは、チェロの松岡さんが獅子奮迅の活躍。都響での長年の経験を故郷の岡山フィルに注いで下さっているが、オーケストラの中の誰よりも燃焼し弾けていた!こういう楽曲は得意中の得意にしているのかも知れない。心をうつ演奏を聴かせてくれた。

・松岡さんに限らず、奏者たちの「顔の見える」演奏だった。自身の音楽性を前面に出して音をぶつけあって合わさって・・・・プロが本気になって「遊んで」いる。この日にはじめて会場に聴きに来た聴衆は、クラシックの、岡山フィルの見方が180度変わったと思う。

・廉之介くんがラジオ番組で、「ここが決まったらカッコいいのに、と思っていたところがバッチリ決まった!」と言っていたのは第2楽章の終結部ではなかったか。ちゃいますか?ボウイングを弓の半分で止め、何かが突然終わるショック状態を演出していた。歌舞伎的な大見得を切る形になり、見せ方としても最高だった。

・第3楽章での廉之介くんのソロは心を鷲掴みにする美しさだった。ただでさえ平々凡々とした日常を送っていた自分であったが、コロナ禍でその傾向にますます拍車がかかり(日常を恙無く過ごすことは尊い営みであることは無論なのだが)、自分の人生から輝きが失われたような感覚になっていたところに、この演奏を聴いて涙腺が緩まないわけがない。コロナ下でのモノクロームの日常世界に輝きをもたらせてくれるような演奏に泪した。

・第4楽章に入って演奏に益々熱が帯び、まさに火花散るような演奏になっていく。「ここでカルロス火を吹いた」ならぬ「ここで廉之助と岡フィル火を吹いた」である

・終演後の会場の聴衆・ソリスト・オーケストラ奏者の心が一つになったような時間が印象に残った。オーケストラがはけたあとも拍手が続き、廉之介くん呼び戻しての一般参賀。このオーケストラのコンサートに(途中、足が遠ざかる期間はあったにせよ)30年近く通ってきた者として、こんなに豊かな時間を共有できることに感謝したい。福田廉之介を産み育てた岡山を、そして今日のような演奏を聴かせてくれる岡山フィルを心から誇りに思う。

・5月から秋山体制へ移行する訳だが、これほどの音楽的成果を岡山フィルにもたらせてくれる廉之介くんを、正式に何らかのポストを委嘱したほうが良いのではないか?お忙しいのは重々承知だが、しがみついてでも岡山フィルと関わってもらう方策を考えてほしいと思う。

・まずは今回の演奏、youtubeにアップしてもらえないだろうか。もしくは先日のような深夜のテレビ放送でもいい。

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シェレンベルガー、首席指揮者最終公演は2023年に『延期』 [岡山フィル]

 少し前の話になるが、記録として残しておく意味は(自分の中では)あるだろう。
 1月31日にホールチケットセンターから電話があり、「外国人の入国制限の緩和の見込みが立たず、やむを得ずシェレンベルガー氏の出演を断念した。ついてはチケットを払い戻すか代替公演に来るかを選択して欲しい」とのことだった。もちろん私は代替公演に行くことを伝えた。

 楽団HPには既に代替公演のプログラムが掲載され、福田廉之助さんの弾き振りによるヴィヴァルディとピアソラの「四季」を採り上げるという、意欲的なプログラム。


 2月1日には楽団のFacebookに
「今回の定期演奏会は、3月末で退任するシェレンベルガー氏の最終公演の予定でした。その節目のために氏が選んだプログラムであることから、2023年度の良い時期を選び、再度同じプログラムで、名誉指揮者として必ずシンフォニーホールに戻ってタクトを振っていただくことをお約束いたします。」とのコメントを記載。


 山陽新聞にも記事が掲載。
シェレンベルガー氏 来日できず 3月の岡フィル定演、コロナ影響:山陽新聞デジタル|さんデジ https://www.sanyonews.jp/article/1224413

 2月2日に楽団からの会員向けDMが到着。シェレンベルガーさんからのメッセージが掲載されていた(以下、転載)。
 「このオーケストラの『名誉指揮者』として必ずや喜んで戻ってまいります。そして皆さんにお会いできるのを楽しみにしています」

 一方で2月2日には、3月上旬に開催予定だった倉敷音楽祭の3年連続の中止が発表された。福田廉之介も出演する「4人のヴァイオリニストの響宴」も中止に。

 水際対策が仮に緩和され来日が叶い公演が実施されても、シェレンベルガー首席指揮者最後の公演に来られない聴衆も多く発生しただろう。
 楽団からの2023年度での出演の確約と、シェレンベルガーからの岡山フィル、岡山への思いが発表されたことで、秋山新体制に移行したあとも、岡山フィルとシェレンベルガーの関係が継続する流れが明確になったことはかえってよかったのではないか(と自分に言い聞かせる)。

 シェレンベルガー時代の終焉を飾るコンサートの代役という、難しい仕事を引き受けた廉之助くんの決断にも感謝!感謝!だ。多忙を極める中のコロナ禍のストレスで、去年の夏には体調を崩されたと聞く。今回は倉敷音楽祭の中止で空いた枠にうまくハマったところもあるのだろう。各都市のオーケストラの中には、感染者の発生による公演の中止が相次いでいるが、この代替プログラムなら編成も小規模で岡山組を中心に組むことも可能で、よく考えられたプログラムだと思う。
 公演の中止、出演者の差し替え、色んな想定外の事件が起こる中で、複雑なパズルを組み合わせるように興行を止めないように奔走する関係者の努力にも敬意を表したい。

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