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高畑壮平が贈る 弦楽五重奏で楽しむ新春のメロディー [コンサート感想]

弦楽五重奏で楽しむ新春のメロディー
~ドイツ在住コンサートマスター高畑壮平が贈る~

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テレマン/『小組曲』より 序曲ーロンドーリゴードン
ゴダール/ジョスランの子守歌
レスピーギ/『リュートのための古風な舞曲とアリア』より イタリアーナーシチリアーナ
シューベルト/『鱒』より
プッチーニ/歌劇『トスカ』より 星は光りぬ
マスカーニ/歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲
  ~ 休憩 ~
ヨハン・シュトラウスⅡ/喜歌劇「こうもり」序曲
スッペ/ボッカチオ行進曲
オッフェンバック/舟歌
ウェーバー/狩人の合唱
ヨハン・シュトラウスⅡ/南国の薔薇

ヴァイオリン:高畑壮平、中野了
ヴィオラ:橘由美子
チェロ:中村康乃理
コントラバス:嶋田真志


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・高畑さんは年に2回ほどご帰国されているそうだ。今回はいつものレクチャーではなく、地元のプロ奏者の方々との弦楽五重奏(コントラバス付き)のコンサートに足を運んだ。

・プログラムはバロックからロマン派の魅力的なメロディが詰まったクラシックの小品を中心としたもの。ドイツの州立オケの第一コンサートマスターの重責から解放され、現在はこうした「エヴァーグリーン」の名曲を採り上げるコンサートをライフワークとされている。

・過去に、当ブログの感想記事を読んでくださったようで、その時、私が書いた「辻音楽家」という表現を「私にとっては最高の褒め言葉」(失礼な事を書いたな・・・と思っていたので、その反応に私も驚いた)と仰って下さった。今回の高畑さんの生き生きとした姿を拝見して、それは本音の感想だということがよくわかった。

・コントラバスの嶋田さんは岡山フィルの所属だが、他はフリーで活動されている方々で、奏でられる音楽は、まさに五人の「自由な音楽家」といった開放感があり、高畑さんがなんだか「ボヘミアンの大将」といった感じ。

・コンサートホールの無菌室の様な空間で、100人からなる巨大管弦楽を聴く醍醐味(まさに1月の岡山フィルのような)も麻薬の様な魅力があるが、今回のような、ヨーロッパの人々の暮らしが息づく街場で演奏されるような音楽にもたまらない魅力があるんよなァ。

・聴きどころは、まずは高畑さんのヴァイオリンの音。独特のコクと光沢のある音は、高畑さんのヴァイオリンでしか聴くことが出来ない。それに加えて緊張と緩和を繰り返しながら、音楽と一緒に聴き手の心を陶酔の頂点までもっていく絶妙なフレージング。特にトスカの『星は光りぬ』やカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲での濃密なフレージングが心に残った。

・チェロの中村さんは本当によく歌う。橘さんのヴィオラは呼吸が深く、ヴァイオリンやチェロが創り出す振れ幅の大きい音楽の肌理を丁寧に埋めていくような演奏。

・コントラバスの嶋田さんは、岡フィルのトゥッティー奏者で、ソロの音を聴く機会は少ないのだが、親子deクラシックの楽器紹介で超低音の「ぞうさん」の愛嬌のあるソロの印象が強く残っている。今回は上手側の席に座ってコントラバスの音をじかに浴びる位置に坐った。ものすごく繊細な弓捌きによって、とてもデリケートな音を奏でていた。コントラバスってこんな音が出るんだという発見があった。

・そして今回の最大の発見だったのが2ndVnの中野さん。こんな素晴らしいヴァイオリニストがいたとは!という驚きがあった。これまで聴きに行った室内アンサンブルなどで、メンバーとして乗っていたかもしれない。その時に気づかなかったのは私の目が節穴ないのだが、今回は高畑さんとのアンサンブルを組むことで彼の音楽性がビンビンに伝わってきたということかも知れない。

・高畑さんの奏でる音と、これほど共鳴するヴァイオリニストは他に覚えがない。ジョスランの子守歌、で二人のユニゾンかは発せられる『泣き』の音に、涙がこみ上げる。プロフィールを見る限り、まだまだお若いと思うのだが、特に短調の悲しげな旋律、レスピーギやプッチーニの歌の旋律を、襞のある深みのある音を奏でていた。

・高畑さんは弓がブチブチに切れるような熱演!でもこれには事情があって、元々空気が乾燥している所に、空調によっていっそう乾燥が進行して、弓がパンパンに膨れるという最悪のコンディションだったそう。ドイツは日本と違って冬場は適湿だと聞くし、高温多湿の夏場も含め、日本は西洋の弦楽器には過酷な気候だな。切れた弓を毟りながら「大丈夫です、まだいっぱいあります」と笑いを誘っておられた。

・曲紹介を交えながらのコンサートだったが、ウェーバーの「狩人の合唱」について、酒場やビヤホールで男たちが野太い声で(しかも皆、上手い)大いに歌って盛り上がる曲、と紹介。まあ、これが外連味たっぷりにストップ&ゴーを繰り返す、合唱が終わる部分では一層テンポを落として「曲が終わる」と見せかけて、さらに盛り上げてフィナーレになだれ込む、遊びの要素がふんだんに詰まった演奏。高畑さん曰く、楽譜には書かれてないが、ドイツの街場では「お約束」としてやってる内容を再現したとのこと

・ちょっと話が逸れます。よくよく考えてみると、ドイツの音楽の根底にはこういう「遊び」が秘められている気がする。ブラームスの交響曲第2番の第4楽章なんて最たるもので、ドイツや東欧のオケの生演奏を聴くと、少し大げさにストップ&ゴーで盛り上げて、最後に溜まったエネルギーを爆発させる。こういうのは合わせようと思って合わせたらなかなか推進力は生まれない。高畑さん率いる五重奏の演奏は、そういう意味でも本場の音楽づくりの奥深さ、愉快さ、爽快さを体現していた。

・アンコールはムーンライトセレナーデと新日本紀行のテーマ。高畑さんはドイツに渡った後、現地に馴染みすぎて一度たりともホームシックにかかったことが無いとのこと。確かにおおらかで「陽」の空気を振りまく姿は、ちょっと日本人離れしている。しかし、そんな高畑さんが日本の山河に思いを寄せたくなる曲が、新日本紀行のテーマだそう。

・用意された椅子は8割方埋まる盛況ぶり。当日券で入れたが、次回以降は前売りを買っとかないといけないかな。

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シェレンベルガー&アナ・シュース デュオ・リサイタル [コンサート感想]

プレミアムコンサート
シェレンベルガー&アナ・シュース デュオ・リサイタル

C.P.E バッハ/ソナタト短調Wq.135(オーボエとハープ版)
J.S. バッハ/無伴奏フルートのためのパルティータ(オーボエ・ソロ版)
シュポーア/幻想曲ハ短調 op.35(ハープ・ソロ)
J.S. バッハ/ソナタハ長調 BWV1033(オーボエとハープ版)
  ~ 休 憩 ~
サン=サーンス/オーボエ・ソナタニ長調 op.166(オーボエとハープ版)
ブリテン/オウィディウスによる6つのメタモルフォーゼop49
フォーレ/即興曲変ニ長調(ハープ・ソロ)
パスクッリ/ベッリーニへのオマージュ(コーラングレとハープ版)


オーボエ・コーラングレ:ハンスイェルク・シェレンベルガー

ハープ:マルギット=アナ・シュース


2024年2月4日 岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場


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・プレミアムコンサートと銘打たれており、出演者・内容は間違いなくプレミアムなのに、チケット代が3000円(会員割で2700円、ちなみに京都は5000円、東京は5500円)という、全然プレミアムじゃないのが有難い。

・客席は1階席はほぼ満席だったものの。私が陣取った2階席は空席が多く、快適な環境だった。入りは650人ぐらい?Jホールやルネスホールだと席が足りひんわな。

・聴いてから1週間たっているのに、まだ余韻が凄い。実はシェレンベルガーさんの年齢(75歳)からはやむを得ない(というより、この年齢でここまでの演奏ができるのは超人以外の何物でもないのだが)呼吸筋の衰えに起因する演奏上の瑕疵はあった、確かにあったのだが、二人の華麗で優美で格調高い音、その演奏の存在感、圧倒的な表現力は比類のないものだった。


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・徹頭徹尾、美しい音色と響きに満たされ、私の脳はとろけてしまいそうだった。シェレンベルガー&アナ・シュースの二人が作り上げていた世界は完ぺきで美しい秩序を作っていた。こういう感覚は、振り返ってみると、ピョートル・アンデルジェフスキさんや、内田光子さんのリサイタルなどで感じて以来だな。聴いている最中も「この世でもっとも美しい音楽を体験している」と確信を持って音楽に身も心も委ねていた。

・一つ一つの作品が、一つの人生のように生命を得て瑞々しく表現されていた。それを象徴するのが、C.P.E バッハのソナタ、J.S.バッハのソナタの終結部分。最後の一音にまで神経が行きとどいていて、長くのばされる一つの音が緊張し、最後にゆっくりと息を引き取るように緩んで集結する。一つの作品が二人の演奏によって生命を得て、人の一生が終わるように集結する。  

前回のお二人のデュオ・リサイタルを聴いたのは2014年の10月。岡山大学の鹿田キャンパスにあるJホールだった。あのガラス張りで外の世界へ開かれたJホールも素敵な空間だが、このハレノワ中ホールは黒基調の内装や客席と部隊との親密な距離感があり、表現者と観客の集中力を引き出すような「場」としての空気を感じた。このホールでの室内楽は2回目で、今回も2階席に座ったのだが、オーボエの音の抜けはよく、反響板の効果でハープもよく響いていた。この劇場での初めてのコンサートでは弦楽器の音が耳にキツイと感じたのだが、アナ・シュースさんのハープは全く問題にしない感じだった。

・そのハープ。これが本当に素晴らしかった。バッハ親子での音の輪郭がくっきりとした音、サン=サーンスやパスクッリでの歌心や自然賛歌。まさに千変万化する音色を堪能。圧巻だったのはソロ演奏。ハープって1台でこんなに迫力のある音が出るのか!と驚くような音圧に圧倒される。しかも、音は大きくなっても柔らかさや気品はいっそう増している。フォーレの即興曲は10年前のコンサートでも聴いた曲だったが、ハレノワ中劇場の空間に響きわたるアナ・シュースさんのグリッサンドは、このホールのポテンシャルを感じさせるに十分なダイナミックな演奏だった。シュポアの幻想曲も、40年クラシックの音源を渉猟してきても、まだまだこんな超名曲があったんだという素晴らしい曲との出会いを最高の演奏で体験できた。

・サン=サーンスのオーボエソナタは、かなり晩年の曲。サン=サーンスはロマン派音楽の正統ラインに乗って権力を振い、ドビュッシーなどからはかなり疎まれていたようだが、この曲をはじめ晩年の作品の無駄な部分を全てそぎ落として純化された音楽を聴くと、ロマン派音楽を極め切ってひとつの到達点に至ったのだと思う。

この曲のロルフ・ケーネン(Pf)とのデュオのCD「フランス・オーボエ名曲集」を買ったのは私が就職1年目で、当時は軽量鉄骨の安いアパートに住当時は壁の薄いアパートに住んでいたからこういった室内楽のCDをよく買っていたのだった。慣れない仕事で疲れた心を癒してくれた1枚。解説には「音色、感性、趣味の良さ、どれをとってもフランス人以上にフランス的」とあり、インタビューでシェレンさんは「牧童が野に坐って笛を吹き、自由に即興を楽しんでいるかのように見える」と答えている。


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(ジャケ写のシェレンベルガーさん、お若くてイケメン!!)

・第2楽章を聴いていると、高い空に浮かぶ白い雲、眼前に拡がる広大な牧場の緑、そこに村人たちがステップを踏んでダンスをする。第3楽章はまさに自由に即興を楽しむ。ピアノ版でも早く感じる伴奏なのに、アナ・シュースさんの手にかかれば、ハープの音が1音一音とてもクリアなのに、シェレンさんとの即興を事も無げに楽しんでいる。会場は沸騰したようなやんやの喝采。

・オーボエ・ソロで演奏されたブリテン/オウィディウスによる6つのメタモルフォーゼは、ローマ時代の詩人オウィディウスの詩「変身物語」を題材にした6曲だが、元ネタはギリシャ神話。シェレンベルガーは1曲づつ物語を説明しながら演奏してくれた(解説は英語)のだが、その言葉が聴きやすくてビックリ。岡山シンフォニーホールならこうはいかない(その代わり音楽を聴くのは最高の音響)。流石は演劇特化型の劇場だけある(笑)

・一曲目は「パン」。古今の様々な作曲家(特にドビュッシー)が曲想に取り入れた、半人半獣のパンとシリンクスとの物語がモチーフ。シェレンさんのオーボエで聴くのは2回目だが、初めの「タララ〜」のモチーフが聴こえた瞬間一気に神話の世界のアルカディアの森に惹き込まれる。最後、シリンクスが葦に姿を変えてドロンする瞬間まで、2人の神々のやりとりが見えるよう。

・2曲目はフェートン。苦難を乗り越えてようやく会えた父ヘリオスに渋々乗ることを認められた太陽の戦車。未熟であったがゆえに操ることが出来ず地上を焼き尽くしたためにゼウスの怒りを買って、最後には撃ち落とされる物語。サン=サーンスの交響詩「ファエトン」など、これも作曲家に愛されたストーリー。変拍子の連続をものともしない超絶技巧を駆使した演奏。余談だがフォルクスワーゲンが「フェートン」という高級車を売っていたが、なぜこんな不吉な結末のフェートンの名前を付けたのだろう?と思っていたらすぐにラインナップから消えていた。

・3曲目はニオベ。シェレンさんの説明ではオブラートに包んでいたが、7人の息子と娘を設けたニオベが、女神レートーに二人しか子供がいないことを揶揄。嫉妬した女神レートーは息子のアポロンと娘アルテミスに銘じてニオベの14人の子供を殺してしまうという残酷なエピソード。音楽はその壮絶なシーンではなく、一人残されたニオベの空虚な悲しみを表しているかのよう。またまた余談だが、西洋の神話・故事にはこういう「親族皆殺しエピソード」が多い。ナチスのホロコーストや、現在進行しているガザ地区のパレスチナ人虐殺などを暗示しているようで怖いものがある。

・4曲目はバッカス。いわずと知れたお酒の神様で、シェレンさんがおどけながら解説すると、会場には笑いが起こった。いやー、これもシェレンベルガーさんの自由自在な表現で印象的な音楽だった。早いパッセージでのキー捌きが圧巻。

・5曲目はナルキッソス。湖の水面に映った自分の姿に恋をして、最後は溺れ死んだ美少年で「ナルシスト」の語源になった。。ナルキッソスに一目ぼれをしたエコーは、あまりにお喋りが過ぎたために、相手が発した言葉を繰り返すことしかできないという罰を与えられていた。それで、ナルキッソスはエコーと文字通りエコーのような会話(?)をするのだが、シェレンベルガーさんの立体感ある表現に驚いた。舞台上にナルキッソスがいて、エコーは少し遠いところに居るようにしか聴こえないのだ。

・6曲目はアレトゥーサ。河の神アルペイオスの求愛から逃れるため、女神アルテミスに助けを求め、河の水とは交わらない泉に変えられてしまった妖精アレトゥーサのお話。古来から西洋絵画のモチーフにも頻繁に取り上げられているお話をオーボエ一本で表現。何かから逃げるような切迫感がありながら、優雅さも失わないオーボエの音。力強い最後の音の伸びが今でも耳に残る。

・最後は2014年のリサイタルでもトリをつとめた(?)このデュオの十八番のパスクッリ/ベッリーニへのオマージュ。「オーボエのパガニーニ」と称されたオーボエの名手が、ベッリーニのオペラ『夢遊病の女』『海賊』のモチーフを散りばめた作品。もうこれは『至芸』という他はない。序奏の大見得を切ったハープのグリッサンドの後、名歌手が登場したように大いに歌うコーラングレ!日本語には「芝居がかっている」というと少し否定的なニュアンスを含むが、イタリア音楽はここまで吹っ切らないと盛り上がらない!

・シェレンさんとアナ・シュースさんの音楽は推進力を得て、どんどん熱を帯びる。途中、ハープ・オーボエ双方にカデンツァがあり、妙技を披露。「あー、いいなあ~」と思っていると、さらなる高みへと誘ってくれる。その盛り上がりは直線的ではなく、寄せては返す波をいくつも超えながら、頂点へと向かっていく。1月の岡フィルでのボレロでも同じような音楽の作り方だった。

・先に紹介したCDの解説の言葉を借りるなら、「音色、歌心、ドラマ、どれをとってもイタリア人以上にイタリア的」であろうか。

アンコールは
・ヴィラ ロボス:ブラック スワン(イングリッシュ ホルンとハープ)
・シューマン:リーダクライスより「月夜」(オーボエとハープ)

・2013年10月13日。ベートーヴェンの「英雄」冒頭の2発の和音。思えばあれがシェレンベルガーさんと岡山の人々との関係が始まる号砲だった。あれから11年、両者の関係は家族のように親密になり、この日のコンサートも濃密で穏やかな空気が流れていた。

・岡山フィルのニュー・イヤーCでのパリにちなんだプログラムに、このリサイタル・・・・「シェレンベルガー祭りが終わった・・・・」というさみしさが付きまとう。スケジュール的に毎年は無理でも、2年後ぐらいには再びシェレンベルガーさんの音楽に触れられることを願っている。

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岡山フィル ニューイヤー・コンサート2024 指揮・オーボエ:シェレンベルガー [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団 ニューイヤー・コンサート2024


ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲(オーボエ版)K.299*

〜 休 憩 〜

モーツァルト/交響曲第31番「パリ」K.297
ラヴェル/ボレロ
指揮・オーボエ独奏*:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ独奏*:マルギット=アナ・シュース
コンサートマスター:藤原浜雄
2024年1月21日 岡山シンフォニーホール
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・今回のプログラムは、2022年3月に予定されていた、シェレンベルガーの岡山フィル首席指揮者最終公演として企画されていたが、コロナ感染拡大による入国禁止措置のために今回に延期になったもの。

・編成は道化師の朝の歌とボレロが1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6の12型に、道化師の朝の歌の方は変則2管、ボレロは3管編成。パーカッションも多彩でホールに入った瞬間、所狭しと並ぶ楽器に『おおー』っと声を上げてしまう。2曲目のモーツァルトの協奏曲は1stVn8→2ndVn6→Vc4→Va5、上手奥にCb2の8型、3曲目のパリ交響曲は10型。

・昨年10月にTb、Hr、Fgの首席指揮者オーディションが行われたこともあり、今回からデビューがあるかと思ったが、流石に試用期間一発目でボレロは無かったか。今回も客演首席が多かった。トロンボーンは高井郁花(九響)さん、ホルンは細田昌宏さん(大響)、ファゴットは奈良和美さん(群響)、ボレロでソロがあるサックスは田畑直美さんと高畑次郎さん(ともに大阪シオン)という布陣。

・この日は近隣で注目コンサートが重なっていて、児島では福田廉之介&中桐望Duo、福山では京響の福山公演(しかもメインがボレロ+ハープ協奏曲もあるモロ被りプログラム)に客を取られないか心配していたが、私の心配をよそに客席は9割の大入り。

・1曲目前のチューニングのあと、シェレンベルガーさんが登場した瞬間、客席から沸騰するような盛大な拍手が起こった!この時点で目頭が熱くなる。やっぱ岡山人はシェレンベルガーさんが好きなんだな。

・プログラムは始めと締めにラヴェル、そのラヴェルに挟まれるモーツァルトの2曲はパリ滞在中に作曲された曲ということで、フレンチ色に彩られた粋なプログラム。
ラヴェル/道化師の朝の歌
・冒頭のピチカートが少し息が合わなかったが、トゥッティーではバシッと決めてくれる。最近、クラシックに興味のないと思っていた知り合いが、シェレンベルガーさんだけは聴きに行くという事を知って話をしてみると、「シェレンベルガーさんって、横乗りで演奏してくれるから好きになった」と言っていて、この演奏を聴いてなるほど!と。

・他のオケで聴いたときは、典型的な縦乗りのリズムで「ズンチャズンチャ」とズンドコ節になっていたのが、シェレンベルガーさんのタクトにかかれば、見事に優雅にスイングしているのだ。聴いていて楽しくなるし気持ちがいい。
・2曲目に吹き振りのコンチェルトがあることもあって、指揮台なしだったが、恐らく190cm近い身長があるので全く問題ないようだった。
モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲(オーボエ版)K.299*
・2曲目では自らオーボエを持ち、奥方で元ベルリン・フィルのマルギットさんがハープを受け持つ。プログラムには
『オーボエとフルートは、同じ木管楽器の仲間であるが、発音システムを始め様々な事柄が違う。顕著な違いは演奏可能音域である。音域が違うという事は、音楽的に美しく響く音域も全く異なる』と、このフルートをオーボエに置き換えるプログラムがいかに困難であるかを説明にしてくれている。

・さらにプログラムには、この曲を取り上げシェレンベルガーの意図を『オーボエの曲はやりつくしてしまっていて、もうやる曲がない』とストレートに書いている(笑)ハイドン、モーツァルト、R.シュトラウスはやり尽くし、室内楽でもモーツァルトやハイドン、アルビノーニ、マルチェロなど主要曲はやり尽くしている。つまりは岡山の人々は世界一級のオーボエ奏者の演奏で、主要曲をほぼ聴き尽くしているという事で、これは本当に凄いことだ。

・このK.299は、マルギットさんと元祖フルートの貴公子:グリミネッリとの共演で2014年10月定期で採り上げている。同じ素材を一味違った味付けで岡山のファンを喜ばせてあげよう、というシェレンさんの思いがこもっている。

・演奏については、確かに、音の跳躍や息の長いフレーズではオーボエでは物理的に対応できない様子は散見された(それでももしかしたら全盛期のシェレンさんなら問題にしなかった可能性もある)。しかし、それを補って余りある美しく芳醇な音!!「オーボエってこんな音が出るんだ!」と。

・本来フルートのために書かれたこの曲を、独特の柔らかい音色を持つシェレンさんのオーボエから、さらに柔らかくブリランテな音色を引き出し、マルギットさんの明快かつ柔らかく深い音色と相まって、夢のような時間が流れた。私は「死んだあとにこんな音楽が流れている世界に行けると確約されたら、死は怖くなくなるよなぁ」とさえ思った。

・オーケストラも見事。リードはシェレンベルガー3:浜雄さん7ぐらいの割合で、コンマス:藤原浜雄さんのリードが光った。しかも、第2楽章の濃厚かつ優美な音、第3楽章での切れ味鋭いが優雅さも漂わせる音は、まさにシェレンベルガーさんと岡山フィルが作り上げてきた音だった。9年間の両者の音の彫琢プロセスを見てきた私にとっては、最高に熟した果実を口にするような喜びを感じた。

・アンコールはシューマンの歌曲から「月夜」。この曲はジャン・チャクムルのピアノの伴奏でアンコールで演奏された曲。ピアノよりも幻想的なハープの音をバックに人の声のようなオーボエの歌。身体に染みました。
モーツァルト/交響曲第31番「パリ」K.297
・後半1曲目はモーツァルトのパリ交響曲。岡フィルでは比較的珍しいノン・ヴィヴラートのプレーンな響きが誠に新鮮。ターラララララララ↑という音階上昇は完全にドイツ語圏のオケのディクションで、強力な推進力に駆動される、これこそがシェレンさんのサウンド

・驚いたのがティンパニの近藤さんが道化師〜やボレロと同じ釜なのに、完全にバロックティンパニのように響かせる神業を聴かせてくれたこと!

・やっぱりシェレンさんのモーツァルトは絶品だな。28番以降、まだ演っていない交響曲を必ず岡山でも演って欲しいよ。
ラヴェル/ボレロ
・ボレロはプロと言えども緊張する曲らしく、勝手にドキドキしながら聴き始めたが、フルート畠山の柔らかくブリランテに満ちた音で我に返った。シェレンさんはで各奏者を完全に信頼して奏者の一番いい音が奏でられるよう促すようなタクト。それに気付いて、聴き手の私も各奏者の名人芸を堪能することに集中。

・この日の演奏に共通するのだがエレガントかつブリランテな音を保ちつつ、音楽が高揚していくこと。Aメロのターータタタタタタタッタタター、が、ファーーラララララララッラララ~、という感じで音の輪郭に気品をまとい、優雅な音をホールに響かせる。この曲の生演奏を聴くのは、たぶん7回目ぐらいだと思うけど、こんな響きは初めて。

・前述のフルート以外の個人技の目立ったところでは、何と言っても九響から客演首席の高井さんの柔らかいグリッサンド、小太鼓の安定度、ミュートを付けても柔らかさを失わないトランペット、などなど,管打楽器の名手たちのエキシビションの様相。

・いよいよヴァイオリン隊が弓を持ち、デュナーミクが大きくなる。そこからの迫力が圧巻で、過去に聴いたボレロよりも強い音圧を感じた。Aメロ、Bメロともに彫りの深いフレージングで、稜線を描くようなデュナーミクの強弱、その山が徐々に徐々に大きくなっていく。私の脈拍は140ぐらいになり、汗ばんで来るほどだったが、音圧に身を任せるような快感が身体を貫く。

・この感覚と同じものを味わった事がある。それは京響の2017年11月定期で聴いた、ジョン・アダムズのハルモニーレーレだ。
 その時の感想を読み返すと「自分の心臓の鼓動が共鳴して音楽との不思議な一体感がたまらなかった」とあり、まさにこの感覚をシェレンさんと岡山フィルのボレロでも感じられた。
 ボレロはミニマル・ミュージック登場の40年も先駆けて、ミニマル・ミュージックを作っていた!そして、それをシェレンベルガーさんの絶妙なフレージングで、人間のプリミティブな感性を呼び覚まし、得も言われる快感に浸らせてくれた。

・豊かな倍音に包まれる幸福感に満ちたラスト。岡山シンフォニーホールの「バケモノ音響」を感じるに相応しい楽曲だった。あれだけ大音量で鳴っても、各パートの解像度が高いまま聴こえて来るのは驚異的。銅鑼やバスドラムの爆音に負けずに弦楽器や木管の音がハッキリ聴こえた。今年の7月にはマーラー5番がある、オーケストラ福山定期で採り上げられるアルプス交響曲とか、ショスタコーヴィチの交響曲とか、このホールの本領が発揮される音楽をもっと聴きたい。

・この日の会場で一番不幸(?)なのは、実はステージ上の奏者の皆さんだったかも。だって客席でこの音が聴けないなんて・・・そんなことを思ってしまった。

・今回のパリに因んだプログラムは、中間の2曲はフランス革命前のアンシャン・レジーム晩年の音楽で、貴族的な雰囲気が濃厚。道化師の朝の歌は1905年の作曲で、フランス革命以来100年に亘った政治的混乱期を脱して第三共和政の全盛期に入り、音楽文化の面でも世界の中心に君臨していた時期だろう。その当時の空気を内包し現代にも通じるセンスの塊みたいな曲。ボレロは第一次世界大戦を経た1928年の作曲。ロマン派の終焉と厭世的な時代の空気にラヴェル自身も動揺し、前衛や即物主義に押されつつも決然としたエネルギーをもって作られた、その魂を感じた。一言で「パリゆかりの選曲」と言っても、これほどの違いがある、その一方で人の心を捉え、感動させ、時代は代わっても受け継がれるものも感じさせた。本当にいいプログラムだった。

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「オーケストラ福山定期」爆誕! ①リーデンローズと広響・京響のねらい [オーケストラ研究]

 年明けに発表された福山リーデンローズの「オーケストラ福山定期」事業。広島交響楽団と京都市交響楽団という2つの有力オーケストラが、年間5回もの定期演奏会(うち、2回づつは中学生の招待公演)をリーデンローズ大ホールで開催するという前代未聞の試み。

 この事業について、ネット上でも衝撃と好意をもって受け止められた。 

 

 まずはリーデンローズからの公式発表を見てみよう。



『オーケストラ福山定期は、“音楽で心を育む街”、“文化都市福山”として福山市の国内外での知名度向上、住み易い魅力的な創造都市の形成を目指し実施されるものです。年10回の公演のうち、4公演は福山・府中圏域内の中学生2年生を全員招待公演となります。』



 東京交響楽団の新潟定期演奏会のように、大都市のオーケストラがフランチャイズ契約を結んで継続的に出演するという例はこれまでもあったが、2つのオーケストラが一つの会場・企画に競い合うように出演する、というのは前代未聞。広響、京響ともによく引き受けたなと思う。
 リーデンローズに限らず、地元にプロ・オーケストラを持たない地方都市では公演の絶対数が少ない上に、プロ・オケの地方公演はベートーヴェン・チャイコフスキー・ブラームス・ドヴォルザークなどのごく限られた楽曲でプログラムが組まれ、練習期間も1〜2日程度で仕上げられる。もちろんプロだから水準以上の演奏は聞けるが、私の経験上この手のコンサートは本拠地定期演奏会に比べると「これは途轍もないものを聴いた!」という経験は正直言って少ない。

 プロ・オーケストラの本拠地で主催公演として実施、する『定期演奏会』は特別な意味を持つ。定期演奏会には評論家や、長年、そのオーケストラを支えている耳の肥えた聴衆が聴きに来る。彼ら満足させるために本格的なプログラムを練り上げ、時間をかけて仕上げられ(初めて演奏するような曲は、何か月も前から個人練習を重ね、オーケストラが集まっての練習は3日間みっちり行うのが通例)、文字通りそのオーケストラの評価を賭して全精力を傾けて演奏される。その定期演奏会をリーデンローズ側が「興行リスクは被るから、とにかく本拠地定期演奏会と同じものを市民に聴かせてやってくれ!」と、大都市との「本物体験の格差」を一気に埋めにかかったことが極めて画期的なのだ。

 福山の聴衆が年間10回もの本格的な公演に接し「これは途轍もないものを聴いた!」という体験をするわけで、いかに前代未聞の企画であるかおわかりいただけるかと思う。


 リーデンローズ側も、赤字リスクを一方的に背負っているかと言えば、決してそうでは無い。本拠地定期の引っ越し公演の招聘には「本物体験の格差を一気に埋める」という最大のメリット以外にも、コスト面・興行面でもメリットがある。

 例えば東京のオーケストラを招聘して名曲で固めたような【よくある地方公演】を福山で実施すると仮定する。
 何十回と演奏してきた名曲と言っても、ソリストとの合わせや、指揮者の意図する音楽を表現するために、リハーサルは最低で1日は必要だろう(リハ1日は、かなりやっつけ感が強いが・・・)。前日からホールに入ってリハーサルを行うことになるから宿泊費もかかる。
 ここで【よくある地方公演】のコストを計算してみよう。想定はチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲+交響曲第5番。


 楽員・スタッフの宿泊料:60人×1.2万円=72万円
 人件費(平均を1日一人3万円として)
            :60人×3万円×2日で360万円
 旅費:60人×4万円=240万円
 楽譜など諸経費:30万円
 チラシやプログラム等の販促費:30万円
 指揮者+ソリストのギャラ:100万円
 運搬・セッティング費:30万円
しめて総額860万円程度の経費がかかる。

  平均3000円のチケット代で、リーデンローズの普段の集客力=1200人だと、チケット収入は360万円。したがって差し引き500万円の赤字になる。

 これが広響・京響による≪本拠地定期引越し公演≫のパターンだと、本拠地定期演奏会の段階で既に演奏は完成されているからリハーサルは不要。広響は当日移動が可能、京響も開演時間をわざわざ16:00にしているので、午前中に各自で京都から移動し、本番前ゲネプロは12:00開始ぐらいでやるのだろう、したがって広響と同じく宿泊費は不要。
 本拠地定期と同一プロの翌日公演だから、リーデンローズ側が負担すべき楽員・スタッフの拘束日数は1日のため人件費も1日分で済む。

 ざっくり計算して≪本拠地定期引越し公演≫は【よくある地方公演】に比べて、意外にもにも370万円ほどの経費が浮く。
 アルプス交響曲やショスタコーヴィチなどは、編成も巨大で人件費のみならず特殊楽器のレンタル料や運搬料などもかかってくる、指揮者やソリストの実績やネームバリューによっては報酬は100万円単位で高くなるだろう。それを加味しても【よくある地方公演】と同程度のコストで回すことは充分に可能であり、世界一流レベルのソロ演奏や巨大管弦楽による大スペクタクルの特別な体験として聴衆に還元される。

 9月(京響)、11月(京響)、2月(広響)のような60人程度の古典派・前期ロマン派の編成なら、【よくある地方公演】よりも安くなるパターンも充分に有り得る。

 リーデンローズ側だけでなく、オーケストラ側にもメリットはある。京都市交響楽団は 2008年の広上淳一常任指揮者就任以来、定期演奏会2日連続公演の完全実施を悲願としてきた。日程が2日間あると、聴衆も都合がつけやすいし、何より『本番』を2日経験することによるオーケストラの演奏能力の向上というメリットは大きい。私も京都観光を兼ねて、土日の2日とも京響の定期演奏会に足を運んだりしていたが、2日目の公演で、演奏内容の次元が一段上がるような体験をしたことも多い。

 2019年の事務局さんのインタビューでは
「いずれは定期演奏会全てを2日公演にしたいのですが、現在は偶数月が1日、奇数月が2日公演と決めています。集客を考えて、出演者やプログラミングに工夫をしてはいますが、2日公演をいっぱいにするのは大変なことが多いのが現状です。しかし、ここで1日に戻してしまえば、今、キャパ1800を超えてご来場くださっているお客様に聴いて頂けなくなります。まだまだ大変な道のりですが、2日公演3600の客席をいっぱいに出来るように、今が踏ん張りどころだと思っています。」

 とのコメントを出している。
 しかし、コロナ禍で状況が一変し、京都コンサートホールの立地の悪さ(大阪から1時間以上かかる)も災いして集客力が低下。そのため日曜日公演を廃止し、金・土連続公演の場合は金曜日公演を『フライデーナイトスペシャル』と称し、プログラムを土曜日公演よりチケット代を1500円ほど安くする戦略に転換していた。

 来年度からの福山定期5公演(一般公演3公演+中学生招待2公演)の参入によって、変則ではあるが定期演奏会2日連続公演の完全実施に一気に近づくことになったわけだ。

 広響も、『プレミアム定期』や大阪・東京公演などを除いて、定期演奏会は原則1日しかないが、年に5回も2日連続公演が組まれるようになれば、演奏力が向上する足掛かりになるだろう。

 次に考察するのは、リーデンローズだけでなく、それをバックアップする福山市の狙いである。
 年間10回のプロ・オケの本拠地定期引越し公演、しかも4回はチケット代を取らない中学生招待公演となれば、4000万円~5000万円の補助金が必要になるだろう。これは岡山市が岡山フィルに対して支出する補助金を軽く凌駕する。

 ここまでの予算を組むメリットはどこにあるのか?冒頭にも掲載した、リーデンローズからの公式発表の中に、重要な言葉があった。

『オーケストラ福山定期は、“音楽で心を育む街”、“文化都市福山”として福山市の国内外での知名度向上、住み易い魅力的な創造都市の形成を目指し実施されるものです。年10回の公演のうち、4公演は福山・府中圏域内の中学生2年生を全員招待公演となります。』

 拙ブログを以前からお読みいただいている方はピンときたのではないですか?
 続きは記事を改めます。

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瀬戸内地方のオーケストラ公演 2024/2025シーズン [瀬戸内地方のオのプロオケ公演]

 広響と京響という2つのオーケストラを取り込んだ、福山リーデンローズの「オーケストラ定期」の公表がネット上で大きな反響となっている。岡山フィルの定期公演なども併せて、瀬戸内地方のオーケストラ公演の情報を纏めてみようと思う。



オーケストラ福山定期【1】 広島交響楽団
2024年4月14日(日)14:00開演 福山リーデンローズ大ホール

 指揮:クリスティアン・アルミンク
 ピアノ:ティル・フェルナー
 管弦楽:広島交響楽団

 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
 リヒャルト・シュトラウス/アルプス交響曲Op.64



佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 with 角野隼斗(ピアノ
5月25日(土)15:00開演 倉敷市民会館
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
    〃   /交響曲第5番 ホ短調 作品64



岡山フィル第80回定期演奏会
5月25日(土)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~必聴!英雄伝説!~

指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



岡山フィル第2回津山定期演奏会
5月26日(日)15:00開演 津山文化センター
~必聴!英雄伝説!~
指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



【2】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
6月23日(日) 16:00開演 福山リーデンローズ
指揮:井上道義
チェロ:アレクサンドル・クニャーゼフ
合唱:京響コーラス

ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番ト長調 Op.126
ショスタコーヴィチ/交響曲第2番ロ長調 Op.14「十月革命」



ハンガリー・ブダペスト交響楽団 高松公演

6月29日(土) 14:00開演 レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール

指揮:小林研一郎
ピアノ:亀井聖矢

ロッシーニ/歌劇「セヴィリャの理髪師」序曲
リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調



岡山フィル第81回定期演奏会

7月7日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~ウィーン夏物語~
指揮:キンボー・イシイ
ピアノ:津田裕也

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番
マーラー/交響曲第5番



瀬戸フィル定期演奏会
9月22日(日) 14:00開演 サンポートホール高松
指揮:大友直人
ピアノ:青柳晋
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
  〃   /交響曲第2番


【3】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
9月23日(月・休)16:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮:阪哲朗

ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 Op.88
ブラームス/ハンガリー舞曲集より第1番、第4番、第5番、第6番、第7番、第10番
ドヴォルザーク/チェコ組曲ニ長調 Op.39



岡山フィル第82回定期演奏会
10月20日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~熟練のタクトが導くチャイコフスキーの世界~
指揮:秋山和慶
ピアノ:中桐望

チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー/交響曲第5番



THE MOST in JAPAN 2024岡山公演
10月25日(金) 19:00開演 岡山シンフォニーホール
エルガー/弦楽セレナーデ
チャイコフスキー/フィレンツェ思い出 ほか



【4】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
11月17日(日) 16:00開演 福山リーデンローズ 大ホール
指揮:沖澤のどか(京都市交響楽団常任指揮者/2023~)
ヴァイオリン:ジョシュア・ブラウン

ブラームス/セレナード第1番ニ長調 Op.11
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61



岡山フィル ベートーヴェン“第九”演奏会2024
12月8日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~巨匠秋山和慶が届ける円熟の「第九」~
指揮:秋山和慶
ソリスト:調整中
合唱:一般公募による「第九を歌う市民の会」

ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調「合唱付き」



岡山フィル ニューイヤーコンサート
2025年1月26日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~新春に聴く イタリアオペラの決定版~
指揮:キンボー・イシイ
ソリスト:調整中

第1部 ワルツ ほか
第2部 イタリアオペラを中心としたオペラガラコンサート



【5】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2月8日(土) 14:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮:マティアス・バーメルト
ヴァイオリン:金川真弓

チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調 Op.64



岡山フィル第83回定期演奏会
3月2日(日) 14:00開演 岡山シンフォニーホール
~巨匠達が創り出す極上のひととき~
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:竹澤恭子

モーツァルト/歌劇「魔笛」より序曲
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 
ブラームス/交響曲第2番



【6】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
3月9日(日) 14:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮・ピアノ:ウェイン・マーシャル

ガーシュウィン/「ストライク・アップ・ザ・バンド」序曲
  〃    /ラプソディ・イン・ブルー
  〃    /キューバ序曲
  〃    /セカンド・ラプソディ(オリジナル版)
ガーシュウィン(ベネット編曲)/交響的絵画「ポーギーとベス」




瀬戸フィル定期演奏会

3月頃? レクザムホール大ホール



 改めて俯瞰してみると、岡山フィル定期とオーケストラ福山定期の両企画が、お互いかぶらないように出来ているため、あたかも計画された定期演奏会ラインナップのような装いになっている。


 加筆等があったらどんどん変更していきます。


 

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福山リーデンローズ 広響・京響による「オーケストラ福山定期演奏会」シリーズを発表 [コンサート準備]

 去年から地元ではザワザワと噂されていた、広響、京響による福山リーデンローズでの「オーケストラ福山定期演奏会」シリーズ。本日(1月11日)、ついに公式発表されました。


【1】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2024年4月14日(日) 大ホール 14:00開演

 指揮:クリスティアン・アルミンク
 ピアノ:ティル・フェルナー
 管弦楽:広島交響楽団

 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
 リヒャルト・シュトラウス/アルプス交響曲Op.64


【2】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年6月23日(日) 大ホール 16:00開演
 指揮:井上道義
 チェロ:アレクサンドル・クニャーゼフ
 合唱:京響コーラス
 管弦楽:京都市交響楽団

 ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107
 ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番ト長調 Op.126
 ショスタコーヴィチ/交響曲第2番ロ長調 Op.14「十月革命」


【3】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年9月23日(月・休) 大ホール 16:00開演
 指揮:阪哲朗
 管弦楽:京都市交響楽団

 ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 Op.88
 ブラームス/ハンガリー舞曲集より第1番、第4番、第5番、第6番、第7番、第10番
 ドヴォルザーク/チェコ組曲ニ長調 Op.39


【4】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年11月17日(日) 大ホール 16:00開演
 指揮:沖澤のどか(京都市交響楽団常任指揮者/2023~)
 ヴァイオリン:ジョシュア・ブラウン
 管弦楽:京都市交響楽団

 ブラームス/セレナード第1番ニ長調 Op.11
 ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61


【5】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2025年2月8日(土) 大ホール  14:00開演
 指揮:マティアス・バーメルト
 ヴァイオリン:金川真弓
 管弦楽:広島交響楽団

 チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
 チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調 Op.64


【6】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2025年3月9日(日)大ホール 14:00開演

 指揮・ピアノ:ウェイン・マーシャル
 管弦楽:広島交響楽団

 ガーシュウィン/「ストライク・アップ・ザ・バンド」序曲
         ラプソディ・イン・ブルー
         キューバ序曲
         セカンド・ラプソディ(オリジナル版)
 ガーシュウィン(ベネット編曲)/交響的絵画「ポーギーとベス」



 いやあ、凄いことになりましたね。4月にいきなりアルミンク&広響によるアルプス交響曲で幕開け、クニャーゼフ&井上道義・京響のショスタコ、阪哲郎のチェコづくし、バーメルト、沖澤さん、にウェイン・マーシャル!どれもこれも、広響・京響の本拠地での定期演奏会のプログラムを持ってくる超本格派プログラムに今から興奮しています。

 特筆すべきは、うまいこと岡山フィル定期(5,7,10,1,3月)と重ならないようにプログラムを組んでいること。この「オーケストラ福山定期」という大事業を成功させるカギは定期会員を獲得できるかにかかってるわけで、岡山フィルのマイシート会員の取り込みをかなり綿密に検討した感じを受ける。

 これにプラスして、5月9日~12日には『ばらのまち福山国際音楽祭』も開催され、瀬戸内地方のクラシック音楽文化の台風の目になりますね。
https://fukuyama-music-fes.jp/
 岡山フィル・岡山シンフォニーホール・岡山芸術創造劇場ハレノワもうかうかしていられません。

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岡山フィルの2024/25seasonプログラム [岡山フィル]

 岡山フィルの2024/25シーズン・プログラムの速報が昨年末の12月27日に発表になった。今年度=2023/24シーズンは年明けの発表だっただけに、年末発表にこだわった岡山フィル事務局に感謝したい。

 お正月になると「今年はどこに行こうか」と色々考える時間が出来る。その時にプログラムや日程が判っていないと、話題の俎上にも上がらない。だから、この時期の発表は大正解。


 プログラムは全て「予定」とのこと。まずは情報を見ていこう。


第80回定期演奏会

~必聴!英雄伝説!~

5月25日(土)14時〜

指揮:秋山和慶

チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲

チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲

ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



第2回津山定期演奏会

~必聴!英雄伝説!~

5月26日(日)15時〜

指揮:秋山和慶

チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲

 チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲

 ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



第81回定期演奏会

~ウィーン夏物語~

7月7日(日)14時〜

指揮:キンボー・イシイ

ピアノ:津田裕也

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番

マーラー/交響曲第5番



第82回定期演奏会

~熟練のタクトが導くチャイコフスキーの世界~

10月20日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ピアノ:中桐望

チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”

チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番

チャイコフスキー/交響曲第5番



ベートーヴェン“第九”演奏会2024

~巨匠秋山和慶が届ける円熟の「第九」~

12月8日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ソリスト:調整中

合唱:一般公募による「第九を歌う市民の会」



ニューイヤーコンサート

~新春に聴く イタリアオペラの決定版~

2025年1月26日(日)14時〜

指揮:キンボー・イシイ

ソリスト:調整中

第1部 ワルツ ほか

第2部 イタリアオペラを中心としたオペラガラコンサート



第83回定期演奏会

~巨匠達が創り出す極上のひととき~ 

3月2日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ヴァイオリン:竹澤恭子

モーツァルト/歌劇「魔笛」より序曲

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 

ブラームス/交響曲第2番



 「良くやった!」と「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」が入り混じっている、というのが正直な感想。

 まず一番に目を引くのが7月に取り上げる大曲:マーラー/交響曲第5番だろう。岡山フィルでは初めて取り上げることになる。激しい情動表現・美しい旋律を駆使し、管弦楽の音を限界まで追求したオーケストラ音楽の究極の作品を、ようやっと岡山フィルの演奏で、最高の音響環境の岡山シンフォニーホールで楽しめるのだ。

 指揮は秋山さんではなくキンボー・イシイさん。ヨーロッパの歌劇場の現場叩き上げの指揮者で、岡山フィルとは2011年のニュー・イヤーコンサートで共演。旋律の歌わせ方・内声の響かせ方・テンポ感すべてが一体となって音楽へ瑞々しい生命を吹き込んでいくさまは、この方はちょっと、いやかなりモノが違うなと感じさせた。来年度は1月のニューイヤー・コンサート(イタリア・オペラのガラ・コンサート)の指揮を執る。ついにキンボーさんの真骨頂のオペラが楽しめるわけだ。できれば岡山フィルとは末永く関係を築いていってほしい指揮者。

 あと、去年の10月に実施された、ホルン・トロンボーン・ファゴットの首席奏者オーディション。恐らく候補者の方は半年の試用期間を経て、この7月定期おたりでデビューするのでは?いきなりマーラー5番ですか・・・それも注目点。。

 秋山さんの回で最注目なのは3月定期。ご自身の回想録「ところで今日、指揮したのは」で「私にって特別な曲」と述べられたブラームス/交響曲第2番は、秋山さんの指揮者デビューの曲であり、ヴァンクーヴァー交響楽団、ロサンゼルス・フィル、アメリカ交響楽団それぞれのデビュー時にもこの曲を選んだ勝負曲。岡山フィルでこの曲を取り上げるのは、何か意味がある筈。
 この回の全プロはシベリウス/ヴァイオリン協奏曲で、秋山さんとは北米時代から共演を重ねてこられた竹澤恭子さん。これは聞き逃せませんよ、絶対に!!
 私は数ある古今のヴァイオリン協奏曲の中で、このシベリウスの協奏曲が一番だと思う。特に第2楽章の美しさは他の作曲家の協奏曲の追随を許さない。それを秋山・竹澤のコンビで聴ける、この幸せを何と表現すればよいか。

 5月は、THE MOSTの元メンバーでもあった上村文乃さんを迎えてのチャイコ/ロココと、ベートーヴェンの英雄。英雄は2021年3月定期でも採り上げており、正直「間が詰まりすぎ」の感はあるが、秋山さんはこのところ英雄を重点的に取り上げているので(特に去年の近衛秀麿編の英雄は関西の話題をさらった、これは秋山さんの希望かも知れない。来年は12月の第九も指揮する。

 「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」と思ったのは10月定期。なんで「ひっでえ」のかと言えば、このプログラムは秋山さんが選んだのではない(最終的に承認されたとはいっても)と確信をもって断言できるからだ
 秋山さんの回想録に『オーケストラは古い曲ばかり演奏しているとマンネリに陥る。指揮者の中にはジャンルを決めている人もいるが、私はどんな曲でもこなせるようにしなくてはならないーーという信念を持っている』とある。だから、こんな酷いプログラムを自ら進んで組はずがないのだ。恐らく集客などを勘案して事務局が作った案ではないのか?
 秋山さんをよく知る音楽ファンがこのプログラムを見ると「岡山フィルはあまり重要視していないのかな」「こんな酷いプログラムを定期演奏会で秋山さんにやらせてはいけない」と思うだろう。

 秋山さんは常にそのオーケストラがやったことがない曲をレパートリーに組み込むことを、人生をかけてやってこられたから、メインがチャイコフスキーの交響曲第5番の場合、例えば、隠れた十八番である交響曲第1番「冬の日の幻想」や、ピアノ協奏曲を採用するとしてもスパイスの効いた曲を選んでいたはずだ。
 中桐さんの起用は「地元出身音楽家にスポットライトを当てる」という従来からの方針だと思うが、これまでもこの先もいくらでも共演機会があるチャイコフスキーの協奏曲ではなく、中桐さんが履歴書に書けるような曲目でないと、本当の意味でスポットを当てることにはならないだろう。
 私はかねてから中桐さんのソロでバーンスタイン/交響曲第2番「不安の時代」や、シマノフスキー/交響曲第4番「協奏交響曲」などを聴いてみたいと思っている。プロコフィエフの協奏曲でもいい。中桐さんが自分のプロフィールに「2024年には岡山フィルとバーンスタイン作曲、交響曲第2番「不安の時代」を演奏、好評を博す」と書くような、彼女の音楽家人生のマイルストーンとなるようなコンサートに立ち会いたいのだ。


 まあ、大きな不満はこの10月定期のプログラムだけなのだが、こういうプログラムを組まれると、「そろそろ岡フィルのコンサート全てに付き合う必要もなくなったかな?」という気になってきた。来年度はマイシートを更新せず、福山リーデンローズで開始する広響や京響による本格的な「福山定期演奏会シリーズ」のプログラムも見極めながら、行きたいものをだけをつまみ食いしようかと考えている。

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九州交響楽団 2023岡山公演 [コンサート感想]

オーケストラ・キャラバン
九州交響楽団岡山公演

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
伊藤康英/アルト・サクソフォーンと吹奏楽のための幻想的協奏曲(管弦楽版)※世界初演(☆)
A.リード/春の猟犬(管弦楽版)
 ~ 休憩 ~
マンジオーネ/サンチェスの子供たち(エリック・ミヤシロ編)(◆)
バーンスタイン/映画「ウエストサイド・ストーリー」よりマリア(エリック・ミヤシロ編)(◆)
コンティ/映画「ロッキー」よりテーマ曲(エリック・ミヤシロ編)(◆)
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」

指揮:渡邊一正
サクソフォーン:須川展也(☆)
トランペット:エリック・ミヤシロ(◆)
コンサートマスター:扇谷泰朋

2023年12月20日 岡山シンフォニーホール

20231220_001.jpg


(1月7日にやっと更新!!)


・九響が再び岡山に来てくれた。このオケのサウンドは本当に気持ちいい。ホールという閉鎖空間で聞きているのに、まるで広大な世界に身をおいているよう。音楽もオケの持つ雰囲気もオープンマインド。「来てくれたからには絶対楽しませる!」というのがビンビンに伝わってくる。

・お客さんの入りは開演時は5割強だったが、1曲目、2曲目の後にみるみる席が埋まって、最終的には65%ぐらい。岡山は中心部のオフィス街が貧弱なので(郊外に立地する企業が多い)、平日18:30開園はキツいんよなあ。

・編成は1stVn14→2ndVn12→Vc8→10Va、上手奥にCb7の14型変則2管編成。舞台狭しと打楽器群が並ぶのは壮観。

・チケット代は2000円〜4000円だったが、私がいつも座っている席(普通はS席)までB席2000円。差額でタオルハンカチを買ってしまった。

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
・渡邊一正さんの指揮を久しぶりに聞いたが、オーケストラのドライブ力や旋律の歌わせ方は健在。やはりいい指揮者だなと思う。

伊藤康英/アルト・サクソフォーンと吹奏楽のための幻想的協奏曲(管弦楽版)
・本当に九響は油断ならない!通俗名曲ばかりではなく、こういう未知の楽曲との出会いを提起する姿勢が凄い。余白の多い幽玄な世界に迷い込み、余白が段々と詰まってきて後半は変拍子の連続するオケと須川さんの神業のサックスが対峙し・融合する。最後は、大見得を切るサクソフォン・ソロやオーケストラに合わせて、歌舞伎や浄瑠璃のように舞台両脇と奥に三人の拍子木を持った奏者が「付け」を打つ。九響屋ァ、と思わず掛け声をかけたくなるようなラスト。

・須川さんの神業も凄かったが、変拍子をモノともせずでもグワッグワッと強烈なクレッシェンドをかけて畳み掛ける九響サウンドにも圧倒される。ビートも強烈に効いていた。いやー凄かった。

A.リード/春の猟犬(管弦楽版)
・伊藤康英の曲での演奏が圧倒的すぎて、あまり頭に入って来なかったが、管楽器の音が素晴らしかった。

マンジオーネ/サンチェスの子供たち(エリック・ミヤシロ編)(◆)
バーンスタイン/映画「ウエストサイド・ストーリー」よりマリア(エリック・ミヤシロ編)(◆)
コンティ/映画「ロッキー」よりテーマ曲(エリック・ミヤシロ編)(◆)

・後半のうち3曲はエリック・ミヤシロ、オンステージだ。コンマスの扇谷さんを巻き込んでのパフォーマンスなどで聴衆を惹きつけつつ、ソロ演奏では圧倒的存在感。連続ハイトーンで場を支配したかと思ったら、天上からの光が指すような柔らかい暖かい音に胸が震える。九響もさながら「九響ポップスオーケストラ」となって、管セクションを中心に獅子奮迅の活躍。特にトランペット首席の松居さんのパフォーマンス、エリックさんに対して一歩も引かない、凄かった。名前を覚えとかないと。

・演奏の前にエリックさんのバーンスタインのウエストサイド・ストーリーのマリアの和声に関する解説。中世の教会音楽では「悪魔の和音」として演奏を禁じられていたものを、バーンスタインは敢えて使った、とのこと。バーンスタインとの出会いに関するぶっ飛びエピソードなど興味深かった。

・エリックさんは、サポートメンバーとしてベーシストの川村竜さんと、ドラマーの川口千里さんを招聘。ステージの上手に陣取っていた。オーケストラの音とのバランスはかなり繊細な調整を必要としたはずで、わずか3曲、時間にして30分に対してそこまでするか!と。

・特に川口さんのカデンツァ?ソロセッションの場面は驚嘆だった。

チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
・後半2曲目のエリックさんとのバーンスタイン/WEST SIDE STORYとつながるというストーリーか?よく考えられたプログラム。さっきまでベースとドラム、トランペットが席巻していたステージから一気に19世紀ロマン派の音楽に引き戻す。正直、演奏精度という点ではリハの時間も限られた仲だったのか、イマイチ詰め切れていない感じはあったが、ダイナミクスあふれるオーケストラの迫力あるサウンド、その中にさりげないトリルに至るまで、『聴かせる』演奏に徹していたのは流石。

・12月に入って、父が倒れて入院するなど今後の事など考える事が多く、睡眠不足と気疲れで肩や背中がバキバキに張ってたのに、須川展也さんとエリック・ミヤシロさんという、大スターの演奏と、九響「ポップス・オーケストラ」のゴージャス・ノリノリサウンドで身体も心も軽くなった。本当に感謝。

・グッズ販売からプログラムやチラシも本気度100%で「こんなに貰っても福岡まで行けないよ〜」と思いつつも、年間プログラムを見てしまうと、いくつか行きたいな・・・と思わされる。いつかは本拠地で聴きたいと思わされます。

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岡山フィル ベートーヴェン”第九”演奏会2023 指揮:飯森範親 [コンサート感想]

岡山フィル ベートーヴェン”第九”演奏会2023 指揮:飯森範親


ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調『合唱付き』


指揮:飯森範親

ソプラノ:森野美咲

メゾソプラノ:金子美香

テノール:中島康博

バス:大西凌

合唱:岡山”第九”を歌う会


2023年12月10日 岡山シンフォニーホール


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・典型的な瀬戸内地方の小春日和。長袖シャツにジャケット1枚を羽織って自転車をチャリチャリ漕いで出かけるにふさわしい気候。

・客席は8割位の入り、久しぶりに3階席に座ったが、合唱の音もオケの音もビンビンに飛んでくる。舞台から遠いことを除けばここは最高の音で聴けるんだよなあ。

・オケの編成は1stVn12-2ndVn10-Vc8-Va8 上手奥にCb6の2管編成。木管の後ろが合唱団のひな壇。ティンパニやバスドラムほか打楽器群、トランペット、ホルンは下手側、トロンボーンは上手側に配置。合唱団はコロナ前よりも間隔を開けて(といってもソーシャル・ディスタンス配置ほどは距離を取らない)いる。ステージは張出しは無いのでギッシリである。

・岡山フィルは10月にホルン、ファゴット、トロンボーンの首席奏者オーディションがあったはずで、今回から試用期間に入るかも、と期待していたが、ホルン首席は京響の名手:柿本さん、トロンボーンは日フィル首席の伊藤雄太さん、ファゴットは元OEKの柳浦さんということで、お披露目は無かった。そうそう、クラリネットが西﨑さん降り番の代役で、なんと京響の小谷口さんが座っていた。小谷口さんのムードメーカーっぷりは岡フィルでも発揮されていて、フルートの畠山さんとも打ち解けている様子を見てニンマリ。

・第九だけでは早く終わりすぎる事もあって(今回はベーレンライター版を採用したため、1時間強ぐらいか)飯森さんのプレトーク。一番印象に残ったのが「第1〜3楽章と第4楽章とのあいだに、断絶がある」という話が印象的。

・第1〜第3楽章の経過を第4楽章は全て否定する。ここまでは今までも聞いてきた話だったが、飯森さんは一層踏み込んで、「だから、第4楽章の大団円の気配を感じさせる合唱団や歌手は、第3楽章が終わるまではステージに居てはいけないんです」とのことで、合唱の入場は第3楽章のあと。なので、皆さん、合唱団が入場しても拍手しないでね、と。

・最近は第2楽章のあとに入場し、第3楽章から第4楽章はアタッカで繋ぐことで、安らかで幸福感のある音楽から奈落の底に突き落とすような効果を狙った解釈が多かったように思う。今回の飯森さんの解釈は初体験だ。

・第1楽章、冒頭の6連符から繊細かつ明確に鳴らす。提示部の繰り返しはなし。ベーレンライター版や新ブライトコプフ版の特徴の、いわゆる「81小節問題」は、木管の音の跳躍を容れた解釈を取ったが、私にはやはり「慣れの問題」もあり非常に違和感がある。飯森さんと同年代の藤岡幸夫さんは音の跳躍は容れない立場のようだ

 ベーレンライター版を採用していたシェレンベルガーとの第九も音の跳躍は採用していない
 もっともこれは慣れの問題かも知れない。例えばエロイカの第1楽章の658小節問題、楽章の最後の方でトランペットが主題を2回目吹くパターンから、2回吹かずに木管のタンギングが前面に出るパターンに変わった時も、はじめは「なんじゃこりゃー」だったが、今では全く違和感が無い。やはり慣れの要素は大きい。


・第2楽章で特徴的だったのはティンパニ「タン・トトン」5連発、一回目は同じ強さ(5回目に音を落とさい)、2回めはだんだん弱く。このパターンもはじめて聴いた。

・第1楽章〜第2楽章の飯森さんのエネルギーは凄まじい。それに応える岡山フィルの燃焼っぷりもまた激しいものがあった。ティンパニが終始硬質のマレットで叩き上げ、金管を中心にバリッとした質感で引き上げるので、大音量トゥッティの場面では雷鳴の鳴り響く嵐の中、といった感じになる。一方で落ち着いた場面では弦や木管賀しっとりとした音を奏で、両場面の対比が明瞭。

・この日の白眉の一つが第3楽章。磨き抜かれた弦の音にふくよかな木管・ホルンの天国的な音が溶け合い、彼岸を感じずには居られない麻薬的な美しい世界。特にクラリネット客演首席の小谷口さん(京響)の演奏が本当に素晴らしかった。私が一時期、京響に足を運んでいた理由の一つご彼女のクラリネットを聴くことだった。岡山シンフォニーホールではこんな風に響くのか〜、と感嘆するばかり、最高に幸せだった。

・飯森さんのプレトークでは、この第3楽章はベートーヴェンが厳しさから目を背ける「現実逃避」として描いたという面があるようだ。ベーレンライター版としては、冒頭はかなりゆっくりとしたテンポだったが、途中からテンポを少し上げていた。なんだか、この楽章でコンサートが終わってもおかしくない雰囲気。それは前3楽章と巨大な最終楽章との断絶を意味する。

・少し間を起き、合唱団が静寂の中、入場しひな壇に座る。飯森さんのプレトークでのお願いを、皆、律儀に守り、拍手は起きない。3〜4分ぐらいの間が置かれたため、オーケストラはチューニングから開始。

・慣れないやり方だからか、第4楽章冒頭はオケが息が合わない。ところがチェロ・バスのレチタティーヴォが始まった瞬間。ガラッと空気が変わった。

・第1楽章〜第3楽章までは、様々な困難に「翻弄される人間」または「癒やされる人間」というような受動的な存在として描かれているが、この楽章のチェロ・バスの音をきくと、明らかに主客逆転して「我々」が決然と語りだす。飯森さんの今回の解釈?演出?は、それを強調する効果を生んでいる。

・合唱団はコロナ前のような公募の方法に戻ったそうだが、やはり人数は少なめ。特にテノール、バスの男声合唱が少ない。コロナ前からそういう傾向はあったが・・・

・となると、やはり男声パートが女声パートに押されるのは仕方がないが、行進曲手前の決め台詞のGottの場面では人数を感じさせない迫力!

・前回聞いた秋山さんのタクトでの第九は、合唱指揮のホリヤンの指導で、声を張り上げるような合唱だった。それはそれで壮絶だったが・・・。今回は声の質感重視で、男声合唱が目立つ部分の出し入れや、二重フーガでの合唱とソリスト、オーケストラの音の溶け合い方は、これまで聴いた第九のなかでも群を抜いて素晴らしかった。

・そうそう歌手陣の舞台への登場は、オーケストラだけの歓喜の歌で自然にかつ堂々と入ってこられた。歌もみなさん良かったが、(あくまで3階席前列での話だが)森野さんと他の歌手の歌の聴こえ方/響き方が違った。他の3方が音源(歌手の身体)から飛んてきた歌を受け止める感じなのに対し、森野さんはホール全体の空気の共鳴を浴びる、という感じ。もちろん森野さんにとっては「実質的なホームでの勝手知ったる」ということもあろうが、彼女だけがオーケストラや合唱団に声が埋もれなかったこともまた事実である。

・飯森さんも還暦かー。岡山シンフォニーホールのこけら落としオペラ「ワカヒメ」で指揮したことや、その「ワカヒメ」で吉備上道田狭の兄君役で出演したテノール歌手のご令嬢が、今回のソプラノの森野美咲さんであることなどをプレトークでお話しされていた。「私も歳を取るわけですね」と。

・とにかく余韻が半端ない第九だった。帰宅途中の旭川の川原で10分だけこの余韻を味わって、日常に戻った。

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