西日本のオーケストラの常任ポスト、世代交代が鮮明に [各地プロ・オケ情報]
当分は「岡山引き籠もり」を決めているので、遠征する機会はそんなにないだろうが、西日本を中心に来シーズンのプログラムをザッピングするのは楽しい。
そんな中で西日本諸都市のオーケストラの指揮者体制でハッキリした傾向は、指揮者の世代交代が鮮明になったことだろう。
京都市交響楽団の常任指揮者に沖澤のどかが36歳で就任。名古屋フィルは川瀬賢太郎が音楽監督に38歳で就任し、九州交響楽団は2024年シーズンから太田弦(就任時29歳)を首席指揮者に起用すると発表。
特に沖澤さんは、女性指揮者が常任ポストに就くのは、松尾葉子さん(1999年にセントラル愛知響常任指揮者に就任)以来ということで、その点でも注目を集めている。
太田弦の九響首席指揮者就任は異例の若さでの抜擢、という文字が踊るが、過去の例を思い返すと、実はそれほど異例というわけでもない。
高関健が85年に広島交響楽団音楽監督に就任したのも30歳の若さだった。その広島交響楽団は高関さんのあとに、1990年に田中良和(31歳)を音楽監督に起用、続いて十束尚宏(33歳)を音楽監督に起用するなど、若い力を楽団発展の原動力にしてきた。
九州交響楽団も1996年から山下一史(34歳)を常任指揮者に起用。
我らが岡山フィル・ミュージックアドバイザー(MA)の秋山和慶も東京交響楽団音楽監督に就任したのは27歳の1968年。岡フィル元MAの小泉和裕さんは1975年に26歳で新日本フィル音楽監督に就任している。
最近では川瀬賢太郎さんが2014年に29歳で神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者に就任した例もある。
上記に名前が出てきた指揮者たちは、現在は押しも押されぬ大指揮者になっている。若手指揮者の起用は賭けではあるが、素質が開花すれば楽団にとっても指揮者当人にとっても得るものは極めて大きいということだろう。
静岡交響楽団と浜松フィルとの合体のニュースから岡山フィルの可能性を考える [各地プロ・オケ情報]
加えて、浜松で活動していた浜松フィルハーモニー管弦楽団と合体することとなりました。同楽団の浜松地域でのレガシーを新法人が引き継ぎ、音楽活動を展開してまいります。
こうした一連の動向に伴い、楽団名を「富士山静岡交響楽団(通称:静響)」に変更し、2021年4月から「一般財団法人富士山静岡交響楽団」として新たなスタートを切ります。名実ともに静岡県を代表するプロオーケストラとして、全国に、そして世界に飛躍したいとの思いを込めた名称です。
今後、財政基盤の強化や演奏活動の拡大を図るため、2022年の公益財団法人化、日本オーケストラ連盟正会員を目標に、邁進していく所存でございます。
その静響が、同じ静岡県のオーケストラの浜松フィルと『合体』(「合併」でも「統合」でもなく『合体』と表現しているところにヒントが有る)し、新たに「富士山静岡交響楽団」として新法人を設立、2022年に公益財団法人化と日本オーケストラ連盟正会員の認証を目指すと明言されている。
- 法人格を有する非営利団体に所属するプロフェッショナル・オーケストラであること。
- 固定給与を支給しているメンバーによる2管編成以上のオーケストラであること。
- 定期会員制を採用し、年間5回以上の定期演奏会をはじめとする自主演奏会を10回以上行なっているオーケストラであること。
- 運営主体としての事務局組織を持っているオーケストラであること。
- 正会員より推薦を受けたオーケストラであること。
岡山フィル 今シーズン(20/21シーズン)下半期のスケジュール [各地プロ・オケ情報]
2020年10月18日(日) 岡山シンフォニーホール
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
独奏:郷古 廉(Vn.)
曲目:ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」全曲
※1:チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」から変更
岡山フィル特別演奏会
2020年12月6日(日) 岡山シンフォニーホール
指揮:川瀬賢太郎
曲目:ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」(※2)
岡フィルニューイヤーコンサート【特別演奏会】
2021年1月17日(日) 岡山シンフォニーホール
指揮:キンボー・イシイ
ソリスト:梅村知世(Pf)
曲目:モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲(※3)
2021年2月4日(木)(※4) 岡山シンフォニーホール
指揮/柴田真郁(※5)
ピアノ・作曲/山地真美
管弦楽/岡山フィルハーモニック管弦楽団
【曲目】
〈1部〉岡山城と後楽園を巡って Piano & Orchestra
〈2部〉日本遺産の旅「桃太郎伝説の生まれたまち おかやま」
※4:2020年6月19日から日程変更
※5:指揮者が沖澤のどか から変更
2021年3月14日(日) 岡山シンフォニーホール
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
独奏:マルギット=アナ・シュース
曲目:ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲(※6)
ボイエルデュー/ハープ協奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」(※7)
岡山フィルの2020/21シーズンプログラム発表 [各地プロ・オケ情報]
広島交響楽団の2020/21シーズンのプログラムは西日本で一番かもしれない [各地プロ・オケ情報]
岡山フィル2019/20シーズン 後期プログラム [各地プロ・オケ情報]
岡山フィルなどの2017シーズンのコンサート情報(追加版) [各地プロ・オケ情報]
遅まきながら、あけましておめでとうございます。まだ2016年のコンサート通いの総括も出来ておりませんが、とりあえず岡山フィルや津山国際総合音楽祭のコンサート情報について挙げておきます。
シェレンベルガー氏の公式ホームページによると、今年の岡山フィルの第九はシェレンベルガーが指揮するようです。
2017年12月10日(日) 岡山シンフォニーホール
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
第九演奏会にシェレンベルガーが登場するのは2回目になりますが、今年はベートーヴェンの2、5,6、7番を採り上げたうえでの9番となるので、いっそう深化した第九が聴けそうです。去年の12月の第九も飯森範親さんの元、ベーレンライター版で完成度の高い第九を仕上げたそうですから、シェレンベルガーのタクトを受け入れる下地はかなり出来ていると思います。万難を排して聴きに行きたいと思います。
2018年5月20日(日) 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第56回定期演奏会
モーツァルト/交響曲第40番
マーラー/交響曲「大地の歌」
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
独唱:不明
うーおおおお!ついに来ました『大地の歌』、シェレンベルガーが日本のオーケストラで、しかも首席指揮者である岡山フィルでやってみたいと言わしめていた名作中の名作が、ついに披露されることになります!!
それから同ホームページには、2018年の4~5月に、カメラータザルツブルグと岡山バッハカンタータ協会の共演で、ザルツブルグとウィーンへの演奏旅行の予定も記載されています。プログラムは未定ですが、先日のモーツァルトのレクイエム以外の楽曲であれば、日本での凱旋公演もあるかもしれません。
ただし、上記の予定はシェレンベルガー氏のHP上の情報であり、主催者発表情報ではありません。以前にもプログラム等が差し変わったこともあるため、あくまで参考情報として読んでください。
それからもう一つ話題を。
今年の津山国際総合音楽祭の開催概要が発表され、次のプログラムの予定が掲載されています。その中にこんなプログラムが・・・
2017年10月21日(土) 津山文化センター大ホール
マーラー/交響曲第4番
指揮:下野竜也
ソプラノ:今久保宏美
管弦楽:京都市交響楽団
津山国際音楽祭に久々に京響が登場します。これは本当に楽しみですね。
しかし、この日は「絶対に行こう!」と決めていた、イブラギモヴァが日本センチュリー響に登場するコンサートと被ってしまうんよなあぁぁ。どねーすりゃええ?
また、情報が入りましたら更新します。
岡山フィルハーモニック管弦楽団 2017/2018シーズンプログラム [各地プロ・オケ情報]
前回のエントリーで、「岡山フィルの来季のプログラムの発表は、たぶん年明け」と書いてしまいましたが、本日発表になりました(あやうく前回のエントリーがお蔵入りになるところやった)。
岡山フィル特別演奏会 ~ニューイヤーコンサート~
岡山フィル第55回定期演奏会
まずシェレンベルガー以外の指揮者が久々に登場する7月の第53回定期演奏会。岡山のファンの熱烈なる再登場の要望を受けてのシュテファン・ドールの登場。忘れもしない去年のアンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演で聴かせた、R.シュトラウスのホルン協奏曲での迫力のある鮮やかな演奏!
指揮者の三ツ橋さんは若手の実力派の指揮者です。女性指揮者(しかも美人)ということで話題になっていますが、鮮やかな指揮技術とスケールの大きい音楽づくりには定評があります(余談ですが、大阪の2管編成の某交響楽団は、思い切って三ツ橋さんを常任指揮者に据えてみてはどうか?とかねがね思っています。それぐらい僕は評価しています)。
岡山フィルにとっても、楽団の今後のことを考えるとシェレンベルガーばかりが登場する状況に頼っているわけにはいかない。他の指揮者との共演で、いかに「岡フィルらしさ」を発揮していけるのか?三ツ橋さんと岡山フィルは相性がいいと踏んでいます
この7月定演にはテーマがあって、それは「英雄」。R.シュトラウスのホルン協奏曲の調性は「英雄の調性」と言われる変ホ長調。後半のブラームスの交響曲第3番は、19世紀末の大指揮者、ハンス・リヒターが「ブラームスの英雄交響曲だ」といった、堂々たる内容を持つ曲です。
10月の第54回定期演奏会は、ソリストに青木尚佳の登場。ロン=ティボー国際コンクールで第2位に入賞しています。このコンクールは極めてハイレベルなのが特徴で、日本人の優勝者には樫本大進や山田晃子らが知られていますが、1位以外の入賞者についても、米元響子(3位)、南紫音(2位)、有希・マヌエラ・ヤンケ(5位)、長尾春花(5位)、成田達輝(2位)と錚々たるメンバーが揃います。青木さんのブルッフがたいへん楽しみです。
ブルッフのヴァイオリン協奏曲を挟むベートーヴェンの2つのシンフォニーも対照的。テーマは「絶望と絶頂」ということになるだろうか?ハイリゲンシュタットの遺書を書いた時期に書かれた2番、『傑作の森』の絶頂期に書かれた7番。しかしながら2曲とも明朗で快活な楽曲。シェレンベルガーはこの2曲をどう描き分けるのでしょうか。
1月の特別演奏会:ニュー・イヤーコンサート。これもプログラムが凝っています。テーマは「古代エジプトからアラビア 夢の物語」
『魔笛』はラムセス時代の古代エジプト。神官ザラストロとゾロアスター教との符合。フリーメイソンの暗号など謎の多い作品ではありますが、モーツァルトの時代のキリスト教・イスラム教の立教の前の時代を舞台に選んだ意味が大きい。シェエラザードは言うまでもなく「千夜一夜物語」。
そこで提案なんですが、岡山シンフォニーホールにほど近いオリエント美術館とタイアップした企画なんかがあると面白い。
「~岡山フィルニュー・イヤーコンサート特別企画~ 魔笛とアラビアンナイト」のような小さな企画展でもいいので、岡山の音楽文化と全国でも類を見ない公立の古代オリエント専門博物館とのコラボが見てみたいですね。
ベートーヴェンの8番は古典回帰の形式を取りながら、新しい時代の空気を感じさせる画期的な作品。第3楽章のメヌエットを聴いて貴族の匂いを感じる人は皆無でしょう。ベートーヴェンはこの交響曲を自分の分身のように愛し、誰にも献呈しなかった唯一の交響曲。
ショスタコーヴィチは反革命的作曲家の嫌疑をかけられ、刑務所か強制労働送りの崖っぷちで、この曲を作曲。ソ連当局の重鎮にも解りやすいよう、古典的な作風となった。シェレンベルガーが「革命」という副題をつけていないのも彼の良心を感じます。ショスタコーヴィチはこの曲のフィナーレに「私は(社会主義を・革命を)信じない!」という巧妙に隠された自己のメッセージを入れる。
現状の岡山フィルはシェレンベルガーのハイレベルな欲求に瞬時に反応できていないもどかしさは確かにあります。一方で、岡山フィルの合奏レベルは回を追うごとに向上しているのが解る。その速度は瞠目すべきスピードです。
シェレンベルガー首席指揮者5年目のシーズンは、どんなシーズンになるんでしょうね。
関西のオーケストラの2017/2018シーズンのプログラム概観(その2) [各地プロ・オケ情報]
現在は府からの補助がゼロになった楽団にとって生命線は文化庁の補助。それがオーケストラに対して付く補助金だけでなくホールの運営も手がけることで、劇場・音楽堂に対する補助金を活用することも出来るようになる。豊中文芸センターにとっても、オーケストラがあるとこで室内楽のコンサートなども展開できる。両者にとってWin-Winの関係。スポンサー企業も順調に数を増やしていて、もうかつての「公務員オケ」ではなくなりました。それもこれも人口30万人の地方都市でオーケストラを経営する飯森さんの手腕によるところが大きいのではないかと思います。
あとはシンフォニー定期の集客力を上げられるかどうかが、カギになって来るでしょうね。
関西フィルは組織的にもユニークで、特定非営利法人によって経営されている。友の会の会員一人一人が構成員となって、楽団を支えている。組織もスリムになり経営の自由度もある。