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岡山フィル ニューイヤー・コンサート2024 指揮・オーボエ:シェレンベルガー [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団 ニューイヤー・コンサート2024


ラヴェル/道化師の朝の歌
モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲(オーボエ版)K.299*

〜 休 憩 〜

モーツァルト/交響曲第31番「パリ」K.297
ラヴェル/ボレロ
指揮・オーボエ独奏*:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ独奏*:マルギット=アナ・シュース
コンサートマスター:藤原浜雄
2024年1月21日 岡山シンフォニーホール
20240121_001.jpg
・今回のプログラムは、2022年3月に予定されていた、シェレンベルガーの岡山フィル首席指揮者最終公演として企画されていたが、コロナ感染拡大による入国禁止措置のために今回に延期になったもの。

・編成は道化師の朝の歌とボレロが1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6の12型に、道化師の朝の歌の方は変則2管、ボレロは3管編成。パーカッションも多彩でホールに入った瞬間、所狭しと並ぶ楽器に『おおー』っと声を上げてしまう。2曲目のモーツァルトの協奏曲は1stVn8→2ndVn6→Vc4→Va5、上手奥にCb2の8型、3曲目のパリ交響曲は10型。

・昨年10月にTb、Hr、Fgの首席指揮者オーディションが行われたこともあり、今回からデビューがあるかと思ったが、流石に試用期間一発目でボレロは無かったか。今回も客演首席が多かった。トロンボーンは高井郁花(九響)さん、ホルンは細田昌宏さん(大響)、ファゴットは奈良和美さん(群響)、ボレロでソロがあるサックスは田畑直美さんと高畑次郎さん(ともに大阪シオン)という布陣。

・この日は近隣で注目コンサートが重なっていて、児島では福田廉之介&中桐望Duo、福山では京響の福山公演(しかもメインがボレロ+ハープ協奏曲もあるモロ被りプログラム)に客を取られないか心配していたが、私の心配をよそに客席は9割の大入り。

・1曲目前のチューニングのあと、シェレンベルガーさんが登場した瞬間、客席から沸騰するような盛大な拍手が起こった!この時点で目頭が熱くなる。やっぱ岡山人はシェレンベルガーさんが好きなんだな。

・プログラムは始めと締めにラヴェル、そのラヴェルに挟まれるモーツァルトの2曲はパリ滞在中に作曲された曲ということで、フレンチ色に彩られた粋なプログラム。
ラヴェル/道化師の朝の歌
・冒頭のピチカートが少し息が合わなかったが、トゥッティーではバシッと決めてくれる。最近、クラシックに興味のないと思っていた知り合いが、シェレンベルガーさんだけは聴きに行くという事を知って話をしてみると、「シェレンベルガーさんって、横乗りで演奏してくれるから好きになった」と言っていて、この演奏を聴いてなるほど!と。

・他のオケで聴いたときは、典型的な縦乗りのリズムで「ズンチャズンチャ」とズンドコ節になっていたのが、シェレンベルガーさんのタクトにかかれば、見事に優雅にスイングしているのだ。聴いていて楽しくなるし気持ちがいい。
・2曲目に吹き振りのコンチェルトがあることもあって、指揮台なしだったが、恐らく190cm近い身長があるので全く問題ないようだった。
モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲(オーボエ版)K.299*
・2曲目では自らオーボエを持ち、奥方で元ベルリン・フィルのマルギットさんがハープを受け持つ。プログラムには
『オーボエとフルートは、同じ木管楽器の仲間であるが、発音システムを始め様々な事柄が違う。顕著な違いは演奏可能音域である。音域が違うという事は、音楽的に美しく響く音域も全く異なる』と、このフルートをオーボエに置き換えるプログラムがいかに困難であるかを説明にしてくれている。

・さらにプログラムには、この曲を取り上げシェレンベルガーの意図を『オーボエの曲はやりつくしてしまっていて、もうやる曲がない』とストレートに書いている(笑)ハイドン、モーツァルト、R.シュトラウスはやり尽くし、室内楽でもモーツァルトやハイドン、アルビノーニ、マルチェロなど主要曲はやり尽くしている。つまりは岡山の人々は世界一級のオーボエ奏者の演奏で、主要曲をほぼ聴き尽くしているという事で、これは本当に凄いことだ。

・このK.299は、マルギットさんと元祖フルートの貴公子:グリミネッリとの共演で2014年10月定期で採り上げている。同じ素材を一味違った味付けで岡山のファンを喜ばせてあげよう、というシェレンさんの思いがこもっている。

・演奏については、確かに、音の跳躍や息の長いフレーズではオーボエでは物理的に対応できない様子は散見された(それでももしかしたら全盛期のシェレンさんなら問題にしなかった可能性もある)。しかし、それを補って余りある美しく芳醇な音!!「オーボエってこんな音が出るんだ!」と。

・本来フルートのために書かれたこの曲を、独特の柔らかい音色を持つシェレンさんのオーボエから、さらに柔らかくブリランテな音色を引き出し、マルギットさんの明快かつ柔らかく深い音色と相まって、夢のような時間が流れた。私は「死んだあとにこんな音楽が流れている世界に行けると確約されたら、死は怖くなくなるよなぁ」とさえ思った。

・オーケストラも見事。リードはシェレンベルガー3:浜雄さん7ぐらいの割合で、コンマス:藤原浜雄さんのリードが光った。しかも、第2楽章の濃厚かつ優美な音、第3楽章での切れ味鋭いが優雅さも漂わせる音は、まさにシェレンベルガーさんと岡山フィルが作り上げてきた音だった。9年間の両者の音の彫琢プロセスを見てきた私にとっては、最高に熟した果実を口にするような喜びを感じた。

・アンコールはシューマンの歌曲から「月夜」。この曲はジャン・チャクムルのピアノの伴奏でアンコールで演奏された曲。ピアノよりも幻想的なハープの音をバックに人の声のようなオーボエの歌。身体に染みました。
モーツァルト/交響曲第31番「パリ」K.297
・後半1曲目はモーツァルトのパリ交響曲。岡フィルでは比較的珍しいノン・ヴィヴラートのプレーンな響きが誠に新鮮。ターラララララララ↑という音階上昇は完全にドイツ語圏のオケのディクションで、強力な推進力に駆動される、これこそがシェレンさんのサウンド

・驚いたのがティンパニの近藤さんが道化師〜やボレロと同じ釜なのに、完全にバロックティンパニのように響かせる神業を聴かせてくれたこと!

・やっぱりシェレンさんのモーツァルトは絶品だな。28番以降、まだ演っていない交響曲を必ず岡山でも演って欲しいよ。
ラヴェル/ボレロ
・ボレロはプロと言えども緊張する曲らしく、勝手にドキドキしながら聴き始めたが、フルート畠山の柔らかくブリランテに満ちた音で我に返った。シェレンさんはで各奏者を完全に信頼して奏者の一番いい音が奏でられるよう促すようなタクト。それに気付いて、聴き手の私も各奏者の名人芸を堪能することに集中。

・この日の演奏に共通するのだがエレガントかつブリランテな音を保ちつつ、音楽が高揚していくこと。Aメロのターータタタタタタタッタタター、が、ファーーラララララララッラララ~、という感じで音の輪郭に気品をまとい、優雅な音をホールに響かせる。この曲の生演奏を聴くのは、たぶん7回目ぐらいだと思うけど、こんな響きは初めて。

・前述のフルート以外の個人技の目立ったところでは、何と言っても九響から客演首席の高井さんの柔らかいグリッサンド、小太鼓の安定度、ミュートを付けても柔らかさを失わないトランペット、などなど,管打楽器の名手たちのエキシビションの様相。

・いよいよヴァイオリン隊が弓を持ち、デュナーミクが大きくなる。そこからの迫力が圧巻で、過去に聴いたボレロよりも強い音圧を感じた。Aメロ、Bメロともに彫りの深いフレージングで、稜線を描くようなデュナーミクの強弱、その山が徐々に徐々に大きくなっていく。私の脈拍は140ぐらいになり、汗ばんで来るほどだったが、音圧に身を任せるような快感が身体を貫く。

・この感覚と同じものを味わった事がある。それは京響の2017年11月定期で聴いた、ジョン・アダムズのハルモニーレーレだ。
 その時の感想を読み返すと「自分の心臓の鼓動が共鳴して音楽との不思議な一体感がたまらなかった」とあり、まさにこの感覚をシェレンさんと岡山フィルのボレロでも感じられた。
 ボレロはミニマル・ミュージック登場の40年も先駆けて、ミニマル・ミュージックを作っていた!そして、それをシェレンベルガーさんの絶妙なフレージングで、人間のプリミティブな感性を呼び覚まし、得も言われる快感に浸らせてくれた。

・豊かな倍音に包まれる幸福感に満ちたラスト。岡山シンフォニーホールの「バケモノ音響」を感じるに相応しい楽曲だった。あれだけ大音量で鳴っても、各パートの解像度が高いまま聴こえて来るのは驚異的。銅鑼やバスドラムの爆音に負けずに弦楽器や木管の音がハッキリ聴こえた。今年の7月にはマーラー5番がある、オーケストラ福山定期で採り上げられるアルプス交響曲とか、ショスタコーヴィチの交響曲とか、このホールの本領が発揮される音楽をもっと聴きたい。

・この日の会場で一番不幸(?)なのは、実はステージ上の奏者の皆さんだったかも。だって客席でこの音が聴けないなんて・・・そんなことを思ってしまった。

・今回のパリに因んだプログラムは、中間の2曲はフランス革命前のアンシャン・レジーム晩年の音楽で、貴族的な雰囲気が濃厚。道化師の朝の歌は1905年の作曲で、フランス革命以来100年に亘った政治的混乱期を脱して第三共和政の全盛期に入り、音楽文化の面でも世界の中心に君臨していた時期だろう。その当時の空気を内包し現代にも通じるセンスの塊みたいな曲。ボレロは第一次世界大戦を経た1928年の作曲。ロマン派の終焉と厭世的な時代の空気にラヴェル自身も動揺し、前衛や即物主義に押されつつも決然としたエネルギーをもって作られた、その魂を感じた。一言で「パリゆかりの選曲」と言っても、これほどの違いがある、その一方で人の心を捉え、感動させ、時代は代わっても受け継がれるものも感じさせた。本当にいいプログラムだった。

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「オーケストラ福山定期」爆誕! ①リーデンローズと広響・京響のねらい [オーケストラ研究]

 年明けに発表された福山リーデンローズの「オーケストラ福山定期」事業。広島交響楽団と京都市交響楽団という2つの有力オーケストラが、年間5回もの定期演奏会(うち、2回づつは中学生の招待公演)をリーデンローズ大ホールで開催するという前代未聞の試み。

 この事業について、ネット上でも衝撃と好意をもって受け止められた。 

 

 まずはリーデンローズからの公式発表を見てみよう。



『オーケストラ福山定期は、“音楽で心を育む街”、“文化都市福山”として福山市の国内外での知名度向上、住み易い魅力的な創造都市の形成を目指し実施されるものです。年10回の公演のうち、4公演は福山・府中圏域内の中学生2年生を全員招待公演となります。』



 東京交響楽団の新潟定期演奏会のように、大都市のオーケストラがフランチャイズ契約を結んで継続的に出演するという例はこれまでもあったが、2つのオーケストラが一つの会場・企画に競い合うように出演する、というのは前代未聞。広響、京響ともによく引き受けたなと思う。
 リーデンローズに限らず、地元にプロ・オーケストラを持たない地方都市では公演の絶対数が少ない上に、プロ・オケの地方公演はベートーヴェン・チャイコフスキー・ブラームス・ドヴォルザークなどのごく限られた楽曲でプログラムが組まれ、練習期間も1〜2日程度で仕上げられる。もちろんプロだから水準以上の演奏は聞けるが、私の経験上この手のコンサートは本拠地定期演奏会に比べると「これは途轍もないものを聴いた!」という経験は正直言って少ない。

 プロ・オーケストラの本拠地で主催公演として実施、する『定期演奏会』は特別な意味を持つ。定期演奏会には評論家や、長年、そのオーケストラを支えている耳の肥えた聴衆が聴きに来る。彼ら満足させるために本格的なプログラムを練り上げ、時間をかけて仕上げられ(初めて演奏するような曲は、何か月も前から個人練習を重ね、オーケストラが集まっての練習は3日間みっちり行うのが通例)、文字通りそのオーケストラの評価を賭して全精力を傾けて演奏される。その定期演奏会をリーデンローズ側が「興行リスクは被るから、とにかく本拠地定期演奏会と同じものを市民に聴かせてやってくれ!」と、大都市との「本物体験の格差」を一気に埋めにかかったことが極めて画期的なのだ。

 福山の聴衆が年間10回もの本格的な公演に接し「これは途轍もないものを聴いた!」という体験をするわけで、いかに前代未聞の企画であるかおわかりいただけるかと思う。


 リーデンローズ側も、赤字リスクを一方的に背負っているかと言えば、決してそうでは無い。本拠地定期の引っ越し公演の招聘には「本物体験の格差を一気に埋める」という最大のメリット以外にも、コスト面・興行面でもメリットがある。

 例えば東京のオーケストラを招聘して名曲で固めたような【よくある地方公演】を福山で実施すると仮定する。
 何十回と演奏してきた名曲と言っても、ソリストとの合わせや、指揮者の意図する音楽を表現するために、リハーサルは最低で1日は必要だろう(リハ1日は、かなりやっつけ感が強いが・・・)。前日からホールに入ってリハーサルを行うことになるから宿泊費もかかる。
 ここで【よくある地方公演】のコストを計算してみよう。想定はチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲+交響曲第5番。


 楽員・スタッフの宿泊料:60人×1.2万円=72万円
 人件費(平均を1日一人3万円として)
            :60人×3万円×2日で360万円
 旅費:60人×4万円=240万円
 楽譜など諸経費:30万円
 チラシやプログラム等の販促費:30万円
 指揮者+ソリストのギャラ:100万円
 運搬・セッティング費:30万円
しめて総額860万円程度の経費がかかる。

  平均3000円のチケット代で、リーデンローズの普段の集客力=1200人だと、チケット収入は360万円。したがって差し引き500万円の赤字になる。

 これが広響・京響による≪本拠地定期引越し公演≫のパターンだと、本拠地定期演奏会の段階で既に演奏は完成されているからリハーサルは不要。広響は当日移動が可能、京響も開演時間をわざわざ16:00にしているので、午前中に各自で京都から移動し、本番前ゲネプロは12:00開始ぐらいでやるのだろう、したがって広響と同じく宿泊費は不要。
 本拠地定期と同一プロの翌日公演だから、リーデンローズ側が負担すべき楽員・スタッフの拘束日数は1日のため人件費も1日分で済む。

 ざっくり計算して≪本拠地定期引越し公演≫は【よくある地方公演】に比べて、意外にもにも370万円ほどの経費が浮く。
 アルプス交響曲やショスタコーヴィチなどは、編成も巨大で人件費のみならず特殊楽器のレンタル料や運搬料などもかかってくる、指揮者やソリストの実績やネームバリューによっては報酬は100万円単位で高くなるだろう。それを加味しても【よくある地方公演】と同程度のコストで回すことは充分に可能であり、世界一流レベルのソロ演奏や巨大管弦楽による大スペクタクルの特別な体験として聴衆に還元される。

 9月(京響)、11月(京響)、2月(広響)のような60人程度の古典派・前期ロマン派の編成なら、【よくある地方公演】よりも安くなるパターンも充分に有り得る。

 リーデンローズ側だけでなく、オーケストラ側にもメリットはある。京都市交響楽団は 2008年の広上淳一常任指揮者就任以来、定期演奏会2日連続公演の完全実施を悲願としてきた。日程が2日間あると、聴衆も都合がつけやすいし、何より『本番』を2日経験することによるオーケストラの演奏能力の向上というメリットは大きい。私も京都観光を兼ねて、土日の2日とも京響の定期演奏会に足を運んだりしていたが、2日目の公演で、演奏内容の次元が一段上がるような体験をしたことも多い。

 2019年の事務局さんのインタビューでは
「いずれは定期演奏会全てを2日公演にしたいのですが、現在は偶数月が1日、奇数月が2日公演と決めています。集客を考えて、出演者やプログラミングに工夫をしてはいますが、2日公演をいっぱいにするのは大変なことが多いのが現状です。しかし、ここで1日に戻してしまえば、今、キャパ1800を超えてご来場くださっているお客様に聴いて頂けなくなります。まだまだ大変な道のりですが、2日公演3600の客席をいっぱいに出来るように、今が踏ん張りどころだと思っています。」

 とのコメントを出している。
 しかし、コロナ禍で状況が一変し、京都コンサートホールの立地の悪さ(大阪から1時間以上かかる)も災いして集客力が低下。そのため日曜日公演を廃止し、金・土連続公演の場合は金曜日公演を『フライデーナイトスペシャル』と称し、プログラムを土曜日公演よりチケット代を1500円ほど安くする戦略に転換していた。

 来年度からの福山定期5公演(一般公演3公演+中学生招待2公演)の参入によって、変則ではあるが定期演奏会2日連続公演の完全実施に一気に近づくことになったわけだ。

 広響も、『プレミアム定期』や大阪・東京公演などを除いて、定期演奏会は原則1日しかないが、年に5回も2日連続公演が組まれるようになれば、演奏力が向上する足掛かりになるだろう。

 次に考察するのは、リーデンローズだけでなく、それをバックアップする福山市の狙いである。
 年間10回のプロ・オケの本拠地定期引越し公演、しかも4回はチケット代を取らない中学生招待公演となれば、4000万円~5000万円の補助金が必要になるだろう。これは岡山市が岡山フィルに対して支出する補助金を軽く凌駕する。

 ここまでの予算を組むメリットはどこにあるのか?冒頭にも掲載した、リーデンローズからの公式発表の中に、重要な言葉があった。

『オーケストラ福山定期は、“音楽で心を育む街”、“文化都市福山”として福山市の国内外での知名度向上、住み易い魅力的な創造都市の形成を目指し実施されるものです。年10回の公演のうち、4公演は福山・府中圏域内の中学生2年生を全員招待公演となります。』

 拙ブログを以前からお読みいただいている方はピンときたのではないですか?
 続きは記事を改めます。

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瀬戸内地方のオーケストラ公演 2024/2025シーズン [瀬戸内地方のオのプロオケ公演]

 広響と京響という2つのオーケストラを取り込んだ、福山リーデンローズの「オーケストラ定期」の公表がネット上で大きな反響となっている。岡山フィルの定期公演なども併せて、瀬戸内地方のオーケストラ公演の情報を纏めてみようと思う。



オーケストラ福山定期【1】 広島交響楽団
2024年4月14日(日)14:00開演 福山リーデンローズ大ホール

 指揮:クリスティアン・アルミンク
 ピアノ:ティル・フェルナー
 管弦楽:広島交響楽団

 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
 リヒャルト・シュトラウス/アルプス交響曲Op.64



佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 with 角野隼斗(ピアノ
5月25日(土)15:00開演 倉敷市民会館
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
    〃   /交響曲第5番 ホ短調 作品64



岡山フィル第80回定期演奏会
5月25日(土)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~必聴!英雄伝説!~

指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



岡山フィル第2回津山定期演奏会
5月26日(日)15:00開演 津山文化センター
~必聴!英雄伝説!~
指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



【2】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
6月23日(日) 16:00開演 福山リーデンローズ
指揮:井上道義
チェロ:アレクサンドル・クニャーゼフ
合唱:京響コーラス

ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番ト長調 Op.126
ショスタコーヴィチ/交響曲第2番ロ長調 Op.14「十月革命」



ハンガリー・ブダペスト交響楽団 高松公演

6月29日(土) 14:00開演 レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール

指揮:小林研一郎
ピアノ:亀井聖矢

ロッシーニ/歌劇「セヴィリャの理髪師」序曲
リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調



岡山フィル第81回定期演奏会

7月7日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~ウィーン夏物語~
指揮:キンボー・イシイ
ピアノ:津田裕也

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番
マーラー/交響曲第5番



瀬戸フィル定期演奏会
9月22日(日) 14:00開演 サンポートホール高松
指揮:大友直人
ピアノ:青柳晋
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
  〃   /交響曲第2番


【3】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
9月23日(月・休)16:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮:阪哲朗

ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 Op.88
ブラームス/ハンガリー舞曲集より第1番、第4番、第5番、第6番、第7番、第10番
ドヴォルザーク/チェコ組曲ニ長調 Op.39



岡山フィル第82回定期演奏会
10月20日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~熟練のタクトが導くチャイコフスキーの世界~
指揮:秋山和慶
ピアノ:中桐望

チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー/交響曲第5番



THE MOST in JAPAN 2024岡山公演
10月25日(金) 19:00開演 岡山シンフォニーホール
エルガー/弦楽セレナーデ
チャイコフスキー/フィレンツェ思い出 ほか



【4】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
11月17日(日) 16:00開演 福山リーデンローズ 大ホール
指揮:沖澤のどか(京都市交響楽団常任指揮者/2023~)
ヴァイオリン:ジョシュア・ブラウン

ブラームス/セレナード第1番ニ長調 Op.11
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61



岡山フィル ベートーヴェン“第九”演奏会2024
12月8日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~巨匠秋山和慶が届ける円熟の「第九」~
指揮:秋山和慶
ソリスト:調整中
合唱:一般公募による「第九を歌う市民の会」

ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調「合唱付き」



岡山フィル ニューイヤーコンサート
2025年1月26日(日)14:00開演 岡山シンフォニーホール
~新春に聴く イタリアオペラの決定版~
指揮:キンボー・イシイ
ソリスト:調整中

第1部 ワルツ ほか
第2部 イタリアオペラを中心としたオペラガラコンサート



【5】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2月8日(土) 14:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮:マティアス・バーメルト
ヴァイオリン:金川真弓

チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調 Op.64



岡山フィル第83回定期演奏会
3月2日(日) 14:00開演 岡山シンフォニーホール
~巨匠達が創り出す極上のひととき~
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:竹澤恭子

モーツァルト/歌劇「魔笛」より序曲
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 
ブラームス/交響曲第2番



【6】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
3月9日(日) 14:00開演 福山リーデンローズ大ホール
指揮・ピアノ:ウェイン・マーシャル

ガーシュウィン/「ストライク・アップ・ザ・バンド」序曲
  〃    /ラプソディ・イン・ブルー
  〃    /キューバ序曲
  〃    /セカンド・ラプソディ(オリジナル版)
ガーシュウィン(ベネット編曲)/交響的絵画「ポーギーとベス」




瀬戸フィル定期演奏会

3月頃? レクザムホール大ホール



 改めて俯瞰してみると、岡山フィル定期とオーケストラ福山定期の両企画が、お互いかぶらないように出来ているため、あたかも計画された定期演奏会ラインナップのような装いになっている。


 加筆等があったらどんどん変更していきます。


 

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福山リーデンローズ 広響・京響による「オーケストラ福山定期演奏会」シリーズを発表 [コンサート準備]

 去年から地元ではザワザワと噂されていた、広響、京響による福山リーデンローズでの「オーケストラ福山定期演奏会」シリーズ。本日(1月11日)、ついに公式発表されました。


【1】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2024年4月14日(日) 大ホール 14:00開演

 指揮:クリスティアン・アルミンク
 ピアノ:ティル・フェルナー
 管弦楽:広島交響楽団

 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
 リヒャルト・シュトラウス/アルプス交響曲Op.64


【2】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年6月23日(日) 大ホール 16:00開演
 指揮:井上道義
 チェロ:アレクサンドル・クニャーゼフ
 合唱:京響コーラス
 管弦楽:京都市交響楽団

 ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第1番変ホ長調 Op.107
 ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番ト長調 Op.126
 ショスタコーヴィチ/交響曲第2番ロ長調 Op.14「十月革命」


【3】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年9月23日(月・休) 大ホール 16:00開演
 指揮:阪哲朗
 管弦楽:京都市交響楽団

 ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 Op.88
 ブラームス/ハンガリー舞曲集より第1番、第4番、第5番、第6番、第7番、第10番
 ドヴォルザーク/チェコ組曲ニ長調 Op.39


【4】オーケストラ福山定期 京都市交響楽団
2024年11月17日(日) 大ホール 16:00開演
 指揮:沖澤のどか(京都市交響楽団常任指揮者/2023~)
 ヴァイオリン:ジョシュア・ブラウン
 管弦楽:京都市交響楽団

 ブラームス/セレナード第1番ニ長調 Op.11
 ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61


【5】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2025年2月8日(土) 大ホール  14:00開演
 指揮:マティアス・バーメルト
 ヴァイオリン:金川真弓
 管弦楽:広島交響楽団

 チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
 チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調 Op.64


【6】オーケストラ福山定期 広島交響楽団
2025年3月9日(日)大ホール 14:00開演

 指揮・ピアノ:ウェイン・マーシャル
 管弦楽:広島交響楽団

 ガーシュウィン/「ストライク・アップ・ザ・バンド」序曲
         ラプソディ・イン・ブルー
         キューバ序曲
         セカンド・ラプソディ(オリジナル版)
 ガーシュウィン(ベネット編曲)/交響的絵画「ポーギーとベス」



 いやあ、凄いことになりましたね。4月にいきなりアルミンク&広響によるアルプス交響曲で幕開け、クニャーゼフ&井上道義・京響のショスタコ、阪哲郎のチェコづくし、バーメルト、沖澤さん、にウェイン・マーシャル!どれもこれも、広響・京響の本拠地での定期演奏会のプログラムを持ってくる超本格派プログラムに今から興奮しています。

 特筆すべきは、うまいこと岡山フィル定期(5,7,10,1,3月)と重ならないようにプログラムを組んでいること。この「オーケストラ福山定期」という大事業を成功させるカギは定期会員を獲得できるかにかかってるわけで、岡山フィルのマイシート会員の取り込みをかなり綿密に検討した感じを受ける。

 これにプラスして、5月9日~12日には『ばらのまち福山国際音楽祭』も開催され、瀬戸内地方のクラシック音楽文化の台風の目になりますね。
https://fukuyama-music-fes.jp/
 岡山フィル・岡山シンフォニーホール・岡山芸術創造劇場ハレノワもうかうかしていられません。

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岡山フィルの2024/25seasonプログラム [岡山フィル]

 岡山フィルの2024/25シーズン・プログラムの速報が昨年末の12月27日に発表になった。今年度=2023/24シーズンは年明けの発表だっただけに、年末発表にこだわった岡山フィル事務局に感謝したい。

 お正月になると「今年はどこに行こうか」と色々考える時間が出来る。その時にプログラムや日程が判っていないと、話題の俎上にも上がらない。だから、この時期の発表は大正解。


 プログラムは全て「予定」とのこと。まずは情報を見ていこう。


第80回定期演奏会

~必聴!英雄伝説!~

5月25日(土)14時〜

指揮:秋山和慶

チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲

チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲

ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



第2回津山定期演奏会

~必聴!英雄伝説!~

5月26日(日)15時〜

指揮:秋山和慶

チェロ:上村文乃

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より序曲

 チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲

 ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」



第81回定期演奏会

~ウィーン夏物語~

7月7日(日)14時〜

指揮:キンボー・イシイ

ピアノ:津田裕也

モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番

マーラー/交響曲第5番



第82回定期演奏会

~熟練のタクトが導くチャイコフスキーの世界~

10月20日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ピアノ:中桐望

チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”

チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番

チャイコフスキー/交響曲第5番



ベートーヴェン“第九”演奏会2024

~巨匠秋山和慶が届ける円熟の「第九」~

12月8日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ソリスト:調整中

合唱:一般公募による「第九を歌う市民の会」



ニューイヤーコンサート

~新春に聴く イタリアオペラの決定版~

2025年1月26日(日)14時〜

指揮:キンボー・イシイ

ソリスト:調整中

第1部 ワルツ ほか

第2部 イタリアオペラを中心としたオペラガラコンサート



第83回定期演奏会

~巨匠達が創り出す極上のひととき~ 

3月2日(日)14時〜

指揮:秋山和慶

ヴァイオリン:竹澤恭子

モーツァルト/歌劇「魔笛」より序曲

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 

ブラームス/交響曲第2番



 「良くやった!」と「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」が入り混じっている、というのが正直な感想。

 まず一番に目を引くのが7月に取り上げる大曲:マーラー/交響曲第5番だろう。岡山フィルでは初めて取り上げることになる。激しい情動表現・美しい旋律を駆使し、管弦楽の音を限界まで追求したオーケストラ音楽の究極の作品を、ようやっと岡山フィルの演奏で、最高の音響環境の岡山シンフォニーホールで楽しめるのだ。

 指揮は秋山さんではなくキンボー・イシイさん。ヨーロッパの歌劇場の現場叩き上げの指揮者で、岡山フィルとは2011年のニュー・イヤーコンサートで共演。旋律の歌わせ方・内声の響かせ方・テンポ感すべてが一体となって音楽へ瑞々しい生命を吹き込んでいくさまは、この方はちょっと、いやかなりモノが違うなと感じさせた。来年度は1月のニューイヤー・コンサート(イタリア・オペラのガラ・コンサート)の指揮を執る。ついにキンボーさんの真骨頂のオペラが楽しめるわけだ。できれば岡山フィルとは末永く関係を築いていってほしい指揮者。

 あと、去年の10月に実施された、ホルン・トロンボーン・ファゴットの首席奏者オーディション。恐らく候補者の方は半年の試用期間を経て、この7月定期おたりでデビューするのでは?いきなりマーラー5番ですか・・・それも注目点。。

 秋山さんの回で最注目なのは3月定期。ご自身の回想録「ところで今日、指揮したのは」で「私にって特別な曲」と述べられたブラームス/交響曲第2番は、秋山さんの指揮者デビューの曲であり、ヴァンクーヴァー交響楽団、ロサンゼルス・フィル、アメリカ交響楽団それぞれのデビュー時にもこの曲を選んだ勝負曲。岡山フィルでこの曲を取り上げるのは、何か意味がある筈。
 この回の全プロはシベリウス/ヴァイオリン協奏曲で、秋山さんとは北米時代から共演を重ねてこられた竹澤恭子さん。これは聞き逃せませんよ、絶対に!!
 私は数ある古今のヴァイオリン協奏曲の中で、このシベリウスの協奏曲が一番だと思う。特に第2楽章の美しさは他の作曲家の協奏曲の追随を許さない。それを秋山・竹澤のコンビで聴ける、この幸せを何と表現すればよいか。

 5月は、THE MOSTの元メンバーでもあった上村文乃さんを迎えてのチャイコ/ロココと、ベートーヴェンの英雄。英雄は2021年3月定期でも採り上げており、正直「間が詰まりすぎ」の感はあるが、秋山さんはこのところ英雄を重点的に取り上げているので(特に去年の近衛秀麿編の英雄は関西の話題をさらった、これは秋山さんの希望かも知れない。来年は12月の第九も指揮する。

 「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」と思ったのは10月定期。なんで「ひっでえ」のかと言えば、このプログラムは秋山さんが選んだのではない(最終的に承認されたとはいっても)と確信をもって断言できるからだ
 秋山さんの回想録に『オーケストラは古い曲ばかり演奏しているとマンネリに陥る。指揮者の中にはジャンルを決めている人もいるが、私はどんな曲でもこなせるようにしなくてはならないーーという信念を持っている』とある。だから、こんな酷いプログラムを自ら進んで組はずがないのだ。恐らく集客などを勘案して事務局が作った案ではないのか?
 秋山さんをよく知る音楽ファンがこのプログラムを見ると「岡山フィルはあまり重要視していないのかな」「こんな酷いプログラムを定期演奏会で秋山さんにやらせてはいけない」と思うだろう。

 秋山さんは常にそのオーケストラがやったことがない曲をレパートリーに組み込むことを、人生をかけてやってこられたから、メインがチャイコフスキーの交響曲第5番の場合、例えば、隠れた十八番である交響曲第1番「冬の日の幻想」や、ピアノ協奏曲を採用するとしてもスパイスの効いた曲を選んでいたはずだ。
 中桐さんの起用は「地元出身音楽家にスポットライトを当てる」という従来からの方針だと思うが、これまでもこの先もいくらでも共演機会があるチャイコフスキーの協奏曲ではなく、中桐さんが履歴書に書けるような曲目でないと、本当の意味でスポットを当てることにはならないだろう。
 私はかねてから中桐さんのソロでバーンスタイン/交響曲第2番「不安の時代」や、シマノフスキー/交響曲第4番「協奏交響曲」などを聴いてみたいと思っている。プロコフィエフの協奏曲でもいい。中桐さんが自分のプロフィールに「2024年には岡山フィルとバーンスタイン作曲、交響曲第2番「不安の時代」を演奏、好評を博す」と書くような、彼女の音楽家人生のマイルストーンとなるようなコンサートに立ち会いたいのだ。


 まあ、大きな不満はこの10月定期のプログラムだけなのだが、こういうプログラムを組まれると、「そろそろ岡フィルのコンサート全てに付き合う必要もなくなったかな?」という気になってきた。来年度はマイシートを更新せず、福山リーデンローズで開始する広響や京響による本格的な「福山定期演奏会シリーズ」のプログラムも見極めながら、行きたいものをだけをつまみ食いしようかと考えている。

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