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ゆるび祝祭室内管弦楽団 第7回ニューイヤーコンサート Vn:石上真由子 Pf:長治昂志 [コンサート感想]

ゆるび祝祭室内管弦楽団 第7回ニューイヤーコンサート


ヴィヴァルディ/「和声と創意の試み」作品8 「四季」(全曲)
カプースチン/ヴァイオリン、ピアノ、オーケストラのための協奏曲(本邦初演)

指揮:江島幹雄
ヴァイオリン独奏:石上真由子
ピアノ独奏:長治昂志
2023年1月9日 早島町町民総合開館「ゆるびの舎」文化ホール

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・秀逸な企画による最高に愉悦に満ちたコンサートを堪能した。ゆるび室内祝祭管弦楽団(今回は弦楽合奏のみ)は岡山在住のプロの奏者で結成されており、これまでにバルトークの管弦楽曲やショスタコーヴィチの協奏曲など、岡山ではなかなか聴けない楽曲を聴衆に提供してくれている。今回もカプースチンの日本初演の曲ということで胸躍るような好奇心を持って足を運んだ。

・配置は1stvn4→2ndVn3→Vc2→Va3、上手にCb1の配置。プログラムにはコンマスの表記はなかったが、長坂拓己さん(岡フィル・アシコン)が務めた。

・まあ、なんと言ってもカプースチン、旧ソ連圏にこんな作曲家がいたのか!と驚嘆を禁じ得ない。去年はコロナ感染拡大の職場ルールで鑑賞を断念したのだけれど、ピアソラ/ブエノスアイレスの四季を取り上げたそう。今回のカプースチンもそれに匹敵/凌駕する名曲。これが国内初演とは。

・ピアノの長治さんが「ジャズといえば即興で演奏しそうだけど、実は楽譜は音符で埋め尽くされている」と仰っていたが、聴き手から見ると、ピアノ、ヴァイオリンの石上真由子さん、そしてオケメンバーが即興で弾いているとしか思えない瑞々しく躍動する演奏。

・解説も興味深い内容だった。カプースチンはウクライナ生まれでモスクワに学び、西側からの短波ラジオで流れるジャズの世界の虜になってこういう作風を身に着けていったようだ。プレトークでチェロの江島直之さんが仰っていたが、この時期に旧ソ連下で西側の影響を強く受けた楽曲の演奏を聴いたことで、思想や趣向が矯正されることがなく、皆が音楽を享受できる平和な世界に戻って欲しいと思う。

・前半のヴィヴァルディ「四季」。コロナ時代に突入してから生演奏で聴くのは3回目。聴けば聴くほど奥が深い。石上さんのソロはむやみに表に出ることなく。各パートとの豊かな対話の中に、鳥のさえずり、風、小川のせせらぎなどのモチーフを奥行きのある空間に立体的に配していく。これぞコンチェルト・グロッソの愉悦を感じさせてくれた。

・「四季」の各曲の第2楽章の美しさも際立っていた。ノン・ヴィヴラートの音が本当に美しい。音の響かせ方が巧みで、コンサートが終わった後も「またあの音を聴きたいな」と思わせる魅力があった。指揮者の江島さんはじめ、オケ奏者も彼女と演奏することが本当に楽く感じていることが伝わってきた。

・冬の第1楽章、ヴァイオリンのソロが繊細な弱音で入って来て、徐々にヴォリュームを上げていくアプローチは初めて聴いた。このアプローチもいいね。

・会場は8割近くの入り。拍手の感じから、クラシックに詳しくない聴衆も多いと感じ、このシリーズにお客さんが定着していることを実感した。指揮の江島幹雄さんは、「今後もヴィヴァルディの四季プラス何かを組み合わせたプログラムを続けていきたい」とコメント。そうやなあ・・・次回はプーランク:牝鹿もしくはシンフォニエッタあたりを聴きたいな。

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