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岡山フィル第73回定期演奏会 Pf:三浦謙司 指揮:太田弦 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第73回定期演奏会

〜郷愁〜

スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
シューマン/ピアノ協奏曲イ短調
〜 休 憩 〜
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調

指揮:大田 弦
独奏:三浦謙司
コンサートマスター:藤原浜雄
2021年7月24日 岡山シンフォニーホール


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・指揮の太田弦さんは既に岡山フィル定期に2回登場している(うち1回はシェレンベルガーの代役)が、過去2回は感染拡大期と重なるなどしたため私は初聴き。


・12型2管編成。客席は1列目から客を入れる通常の方式に戻っている。1曲目はスメタナ/「売られた花嫁」序曲。一曲目からエンジン全開で演奏するのが岡フィルの美点。弦五部の瞬発力のある澄んだ音色に魅了される。見事な演奏だった。


・次にシューマン/ピアノ協奏曲。ソリストは三浦謙司さんその奏でる音から温かい人柄や懐の深さが伝わって来る。ソロの場面でもテクニックを誇示するような事がなく、温かい音で聴衆の心を包むような演奏。


・ピアノの音がとても立体的で、メロディー部分は聴き手の目の前で鳴っているように聴こえ、装飾音はステージの奥から聴こえてくるような不思議な感覚になった。特に印象的だったのが、オーケストラとのアンサンブルを心から楽しんでいること。木管とのソロの絡み合いや第1楽章終盤や第3楽章でのリズム感が最高!もう少し岡フィルがノッてくれたら・・・と思わないでもないが、愉悦に浸るには充分だった。


・アンコールはマルチェロ/オーボエと弦楽合奏のための協奏曲から第2楽章:アダージョ。「はて?どっかで聴いたことがあるな?」と思ったら、自分がよく聴いているシェレンベルガーの「イタリア・バロック・オーボエ名曲集」に収録されている曲で、実演でもシェレンベルガーと岡フィルの精鋭たちとの共演で聴いたことがあった。ピアノで演奏されるとわからんもんだなー。もう1曲アンコールがあって、1曲目のマルチェロと冒頭の音形がよく似ているが、途中からジャズの曲だと解った。ハマシアンの「Fides Tua」という曲。ラテン語で「あなたの信仰」という意味らしい。いやー、こういう聴衆を「おっ」と思わせる選曲は素晴らしい!


・後半はドヴォルザーク/交響曲第8番。この世代の指揮者に対する自分の先入観から速いテンポで押していくと思いきや、第1楽章は予想に反してじっくりと聴かせる。かと言って20世紀の巨匠風ではなく、内声の見透しの良い現代的なアンサンブルを志向。(前プロも同様だったが)指揮棒は使わず、まだ20代とは思えない淀みのないタクトさばきを見せた。円弧を幾重にも重ねて螺旋状に音楽を編んで行き、推進力も充分でコンマスの藤原浜雄さん効果なのか、ヴァイオリンを中心とした弦の音の艶が印象に残った。



・今年度の岡フィルは定期演奏会ごとにテーマを決めているようで、今回は「郷愁」がテーマだったが、今回の演奏には、陰影というものがあまりなく、郷愁に胸が焼かれる、といったものではなかった。また、溌剌とすっきりした音楽への志向とトレードオフになるのか、去年の7月定期(園田隆一郎 指揮)でのドヴォ7での竜巻のような音のうねりは感じられなかったのが、やや食い足りない感じを残した。演奏は間違いなく素晴らしかったが、5月の秋山MAとのストラヴィンスキーといい、去年までの音とはこれほどまでに変わるのか?と思うほど、音が変わった。


・この曲、管楽器のソロに聴かせどころが多いが、木管陣の奮闘がまず素晴らしい。しかし一番の殊勲賞はトランペットの小林鴻さん。彼の雲ひとつない青空の様な、抜けの良い爽やかな音は岡フィルの宝だと思う。
・舞台上を見ると若い奏者が多くなったなと改めて思う。オケ全体が世代交代が進む中で、若い指揮者によって若々しい爽快な演奏になった。しかし・・若い中にも藤原浜雄さんとティンパニの近藤高顕さんの圧倒的な名人芸も堪能。藤原さんは秋山さん以外の指揮者のでも岡フィルを牽引してくださるようで安心。75歳にしてオケの中の誰よりも燃焼していて、岡フィルを高みに引き上げようという本気を見た思い。
・客席の入りは5割も入っておらず(45%=900人ぐらい?)、covid19の第7波の影響か?と思ったが、客席の埋まり具合を見ると、1階の中央より前、2階〜3階は前列はコンスタントに埋まっているが、それ以外がガラガラという感じ。第7波の前から元々チケットは売れていなかったのではないか?ネット上やSNSの感想を見ても、コロナ禍でも来ていたようなヘビー・ゴーアーの人が今回はスルーしている方が多かったようで、それは5月の定期でも同じ傾向が見られていた。
・今回の藤原コンマスの奮闘ぶりや、今後秋山さんの存在感が増してくると、従来の聴衆も戻ってくるかもしれないが、元来、オーケストラ興行(に限らず、イベント興行)は穴の空いたバケツみたいなもので、「人についていた」ファンは対象(シェレンベルガー、高畑コンマス、あるいは退団された団員さんなど)が居なくなれば演奏会には来なくなるし、仕事や子育て、介護、自身の健康問題など、どんなにいい演奏を続けていても、徐々に減り続ける。で、あればバケツに水を注ぐ蛇口をどんどん引っ張ってくる以外に方法はない。また、これについては機会があれば述べたいと思う。

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