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雪舟と玉堂 ーふたりの里帰りー 岡山県立美術館 [展覧会・ミュージアム]

雪舟と玉堂 ーふたりの里帰りー
岡山県立美術館
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岡山県立美術館HPから================================

岡山生まれの水墨画家といえば?

雪舟と玉堂です。

 室町時代の備中赤浜(現在の岡山県総社市)出身で、明時代の中国留学も果たした禅僧・雪舟等楊(1420〜1506?)。江戸時代の岡山城下天神山(現在の岡山市北区)に生まれ、琴を奏でた文人・浦上玉堂(1745〜1820)。雪舟は10代頃、玉堂は50歳で岡山を旅立ってから、多くの出会いを経験しながら日本各地で活躍しました。それぞれにユニークな人生の魅力もさることながら、時代に先駆けた彼らの作品群は、今なお私たちに新鮮な感動をもたらします。
 本展は雪舟生誕600年と玉堂没後200年を記念して、日本美術史上で燦然と輝く巨匠ふたりに揃って「里帰り」してもらうという、これまでにない企画です。さらにこのたびは門外不出の名宝である雪舟《四季山水図巻》(国宝・毛利博物館)を特別に迎え、国宝7点を含む160点を展観します。これら名品の数々によって、彼らの創意工夫や強烈な個性、そして意外な共通点が明らかになるとともに、水墨画の真髄に触れていただけることでしょう。

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 この展覧会の目玉はなんと言っても「山水長巻」だ。3年前の京博で開催された「国宝展」でも出展されていたが、この山水長巻はⅠ期・Ⅱ期の出展(しかもⅠ期は春夏。Ⅱ期は秋冬に分けて展示された)で、私が行ったのはⅣ期。「まあ、毛利美術館だったらいつでも行けるだろう」と思っていたが、この国宝が毛利美術館で展示されるのは年に2ヶ月足らず、これに時期を合わせて行く必要があり、なかなか見ることは出来ない。
 こうして岡山で、しかも四季揃って16メートルからなる展示が見られるのは、本当に本当に貴重な機会だった。
 玉堂については、水墨画絵師としての技術力は京博120周年の国宝展でみた海北有松や狩野探幽には及ばない印象を持っていて、今回、雪舟と並んで見せられると、玉堂よりも300年以上前の雪舟のすごさの方が際立ってしまう。
 ただ、雪舟は中国の南宋水墨画の構図や技法の影響がやはり強いのに対し、玉堂の水墨画はほとんど独自の発展を遂げていて、一つの到達点だと感じた。素朴でかわいらしさすら感じる味わいは、日本人なら誰でも親近感が湧くのではないか。
 雪舟と玉堂が対照的だと感じたのは、雪舟は余白を使いながら書いているのに対し、玉堂は(作品にもよるが)余白をほとんど使わず、背景を埋め尽くしていること。そして山水の自然の地形も、雪舟は寒山拾得の住まう世界で、日本人にはどこか違う世界の物語のように感じるが、玉堂の絵もモチーフは雪舟と同じなのに、まるで日本昔ばなしに出てきそうな親近感が湧く。
 玉堂は多趣味な風流人で、水墨画だけでなく音曲や書、詩歌にも才能を発揮していたようで、玉堂の号も中国伝来の「玉堂清韻」という七弦琴の名器の名前から得ている。クラシック音楽で言えば作曲・指揮・演奏・絵画にも才能を発揮したメンデルスゾーンを思い浮かべる。
 それでは印象に残ったものを。
◯雪舟等楊/四季山水図巻(山水長巻)【国宝】毛利美術館蔵
 間違いなくこの特別展の主役、16メートルからなる巻物は圧巻、雪舟はこれを67歳で描いたというのだから恐れ入る。歴代の所有者は巻物を少しづつ見ながら楽しんでいたのだろう。16メートルもの長巻物だが、本来はディテールを見て楽しむもの。幽玄だが、街道を行き交う人々や市に集まる人々など、人間の営みが生き生きと描かれているのが印象に残った。応仁の乱で荒廃した京に代わって国内の文化面での首都的位置付けだった大内氏の栄華まで伝わってくるような気がする。
 保存状態がすこぶる良好。西洋絵画でいえば、現存する作品数が僅少といわれるエル・グレコやフェルメールよりも古い、にもかかわらず、この状態で受け継がれてきたのは、水墨画の特性もあるだろうが、やはり大内氏から毛利氏へと大切に受け継がれてきたことが大きい。戦国後期の戦乱で大内氏を追い詰めた毛利氏が近代まで伝えてくれなかったら、我々はこれを目にすることも無かったというのも数奇な運命。
◯雪舟等楊/秋冬山水図【国宝】東京国立博物館蔵
 京博120周年の国宝展では雪舟の国宝6点はすべてⅠ・Ⅱ期の出展だったため、当然これも見れていない。絵に吸い込まれそうになるのは、ジグザグに配された構図による遠近感だそう。力強い筆線と繊細なぼかしに見入ってしまった。単眼鏡を持って来るべきだった・・・。
◯雪舟等楊/山水図巻、倣李唐牧牛図(牧童)(重文)山口県立美術館蔵
 山口県立美術館には雪舟の重文が数点所蔵されているようで、これは一度行かねばと思った。雪舟が影響を受けた李唐や夏珪などの南画も色々と見てみたい。岡山県美には玉澗の廬山図があるが、色褪せが強くてもう少し状態の良いものが見たい。
◯浦上玉堂/凍雲篩雪図【国宝】川端康成記念館蔵
 川端康成が愛した作品。流石に国宝で、玉堂の作品の中でも一際輝いて見えた。キャプションや音声ガイドでは「岩も凍てつくような寒さを表現」と言われていたが、自分はどこか温かみや優しさを感じた。
◯浦上玉堂/幽谷訪隠図 個人蔵
 浦上玉堂といえば、これ、という作風。背景を埋め尽くす山々の描写は、南宋水墨画には無いオリジナリティを感じる。
 ミュージアムショップで購入したもの。
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 気に入った絵の絵葉書は特別展のたびに買っている。真ん中はなんと山水長巻のマスキングテープ。しかも和紙製という懲りようで、600円でこの長巻物を堪能できる?かも?(笑)

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