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九州交響楽団 岡山公演 Sax:須川伸也 現田茂夫指揮 [コンサート感想]

オーケストラ・キャラバン
九州交響楽団 岡山公演


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J.ドーシー/ウードルズ・オブ・ヌードルズ(※)
真島俊夫/シーガル(※)
石川亮太/日本民謡による狂詩曲(※)
A.リード(中原達彦編)/アルメニアン・ダンス パート1
 〜 休憩  〜
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
ラヴェル/ボレロ

指揮:現田茂夫
サクソフォン独奏(※):須川展也
コンサートマスター:扇谷泰朋

2022年6月17日 岡山シンフォニーホール

・九州交響楽団が岡山に来ることは極めて珍しく、公式twitterでも31年ぶりとのことだ。岡山県内に範囲を広げても15年前の津山国際総合音楽祭でマーラー10番を演奏したことぐらいしか記憶には無い。

・で、実はこのコンサートは文化庁補助のオーケストラ・キャラバン事業の一環だった。この事業、コアなクラシック音楽ファンだけでなく、今回のように吹奏楽関係や学生さんなどにも鑑賞機会の拡大に貢献している。

・1stVn14→2ndvn12→Vc8→Va10、上手奥にCb7。管楽器は2管+αにパーカッションが7名という80人を超える堂々たる編成を前にすると、心が浮き立ってしまう。余談だが、ヴィオラには岡山フィルの島田さんも乗っていた。

・3曲目までは須川さんのサックス・ソロだったのだが、ウードルズ・オブ・ヌードルズから技巧と多彩な表現に惹き込まれた。シーガルも「サックスの音って、こんなに心に響くんや」と涙腺が緩む。白眉だったのが「日本民謡による狂詩曲」。津軽三味線や尺八の表現に唖然驚愕!サックスってこんなことが出来るの?の連続技。須川さんによる委嘱作品で、他に方にはなかなか演奏できないかも知れないが、未来の日本人サックス奏者の十八番にしてほしい名曲。

・アルメニアン・ダンスⅡと後半は2曲目も須川さんがオケパートに入っての演奏。ソロを取る部分は、もう唸るしか無い素晴らしい演奏だが、トゥッティーでは完全にオーケストラに溶け込んでしまう。ボレロでは永瀬敏和さんも加わって、吹奏楽関係者は「大阪市音と東京佼成のコンマスの共演!」という興奮要素があったようだ。

・そしてなんと言っても九響のサウンドの素晴らしさよ!まず、よく鳴るんだよな。動画などで管楽器セクションが強力なのは感じていたが、弦楽器も気持ちいい鳴りっぷり。「シーガル」「日本民謡による狂詩曲」「アルメニアン・ダンス・パート1」の3曲はまさに「祭り国のオーケストラ」といった強烈なサウンド・リズム。一方で弦のしっとりとした音も素晴らしく、ppでの音にこのオケの実力の高さを実感。

・これは現田さんのタクトによるところも大きいのだが、大音量の時でもすべてのパートが理想的なバランスで鳴っており、テンポのストップ&ゴーでも全く乱れることが無く、音色の変化も自然、その度に「巧いなー」と感心してしまった。

・若い奏者もとても優秀で、特に「アルルの女」と「ボレロ」で大活躍だったフルートの八木さんが素晴らしかった。そうそう、プログラムには顔写真まで載っていて、「うまっ、この人誰?」と思い立ったらすぐにお名前を覚えられるのだ。

・ボレロは岡山フィルの3月定期で取り上げられる筈だった曲(シェレンベルガーさんの来日不可でプログラム差し替えになった)。個人的には結構渇望感があった。ビル全体が震撼する熱演に体が震えた。途中、コントラバスがピチカートから弓に持ち替えるあたりで既に大爆音になっていて、「最後はどうなるんや!?」と思っていたら転調するところでギアがマックスになって、「息できん!」と思うような空気の密度に背筋が震えた。声出し禁止の中、ブラボーが飛び交ったのもやむを得ない、と思う熱演だった。

・大爆音だけでなく、ピッコロの”人口倍音”の部分とかチェレスタの音とか、録音で聴いているだけでは感じられない音がパースペクティブに聴くことが出来た。いやはやラベルは天才だ。

・アンコールはリード/星条旗よ永遠なれ。これまた管楽器セクションのブラバン魂が炸裂。途中で管楽器が全員立奏で、ノリノリのパフォーマンスにやんやの喝采。奏者の皆さん楽しんでやってますな。

・陳腐な表現で、書くのは恥ずかしいのだけれど、『夢のいっぱい詰まった』コンサートだった。聴衆を満足させるだけの「何か」がいっぱい詰まったコンサート。正直、この九響のサウンドに惚れてしまった。そんな僕のような聴衆のために、プログラムにはライブ配信の予定が掲載されていた。マーラーの復活は絶対に見ようと思う。

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・僕は細々とtwitterをやっていて、ざっくりとした感想を書いてみると、フォロワーが140人しかいない自分のアカウントに一晩で20以上も「いいね!」がついた。中には何人かの団員さんからも「いいね!」をいただいた。こういうのは素直に嬉しいですね。

・SNSの中にはネガティブな意見も少なからず目にするだろう。特に私のような音楽的素養や知識のない聴衆が的はずれな感想を書いている事も多く、それに対する反論も立場上なかなかできないだろう。それでも個人の感想を検索して目を通すという、覚悟と自信が必要な作業を行うのは。やはり多くの聴衆に聴いてもらおう、感想を次の演奏に活かそうという前向きな楽団の雰囲気があるのだろうと想像する。なかなか出来ないことである。

・そして九響を応援している方々が九州を中心に来岡していたようだ。それだけこのオーケストラの音に魅了されている人が多いということだろう。

・最後に運営の苦言を。今回はシンフォニーホールのスタッフではなく、岡山音協&山陽新聞のスタッフの対応だったが、注意事項をやたらと大声で喚き散らしていた。アコースティックな美しい音楽を聴いて、この余韻を持って帰って何日も楽しもうというところに、終演後も「止まらずに間隔を取ってご退場ください!」とか「ご来場ありがとうございました!」とか大声で喚き散らす。これは余韻の破壊行為ではないか?

・クラシックが特別と言っているわけではなく、楽器の音をアンプを使わずに響かせる音楽は、特別な余韻を残す。だからそういう音楽には相応のレセプションの対応が不可欠なのだ。10月のパリ管も岡山音協主催だが、同じような対応をしたら、他県から来た聴衆とのトラブルに発展しかねない。岡山シンフォニーホールにはサントリーホールのメソッドで研修を受けたレセプショニストが居るのだから、餅は餅屋でそのスタッフを確保して対応してほしいものだ。

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今年のオーケストラキャラバン、岡山は九響と都響。あと海外オケの公演など [コンサート準備]

 文化芸術の重要性や魅力を発信することによりコロナ禍による萎縮を乗り越え、社会全体の活性化を図ることを目的とした、文化庁のアートキャラバン事業。その中の一つであるオーケストラキャラバンが今年度も実施されるようだ。


 岡山・倉敷では2公演を開催。

2022 6/17(金)
九州交響楽団岡山公演
岡山シンフォニーホール

指揮:現田茂夫
サクソフォン:須川展也

J.ドーシー/ウードルズ・オブ・ヌードルズ
真島俊夫/シーガル
石川亮太/日本民謡による狂詩曲
A.リード(中原達彦編)/アルメニアン・ダンス パート1
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
ラヴェル/ボレロ


2022 8/28(日)
東京都交響楽団岡山公演
倉敷市民会館

※以下参考 高知公演のプログラム
指揮:下野竜也
ピアノ:牛田智大

ニコライ/歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調
ドヴォルザーク/交響曲第8番 ト長調



 去年に続いて都響を聴けるのは実に楽しみ。翌日の高知公演のプログラムは発表済で、倉敷も同じプログラムだろう。九響も30年振りぐらい?の岡山公演じゃないだろうか。岡山フィルの3月定期のプログラム変更で聴けなかったボレロが聴けるのが嬉しい。

 10月29日には香川の観音寺に名フィルが来るらしく、ガチンコ本格派のプログラムなら検討してみようと思う。



 オーケストラ・キャラバン以外だと、海外オーケストラは9月14日(水)にポーランド国立放送響@岡山シンフォニーホールが予定されている。コロナ後最大とも言える大規模ツアーで、ぜひ成功させて欲しい。

 10月21日には飛ぶ鳥を落とす勢いのクラウス・マケラ指揮・パリ管弦楽団@岡山シンフォニーホール。ヒャッホー!!岡山公演のチケット代は不明だが、サントリーホール公演のチケット代が28K〜12K、これならなんとか手が出るな。今年のコンサートのハイライトになりそう。


 近隣では赤穂にケルン・ギュルツェニヒ管(なんと、指揮はロト、Vnは樫本大進!!プログラムも最高!)が7月5日(火)に来るが・・・。18:30開演はちょっとキツいな〜

 なんだか色々な選択肢が増えてくると、わくわくしますね〜

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