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岡山フィル特別演奏会 ニューイヤーコンサート2018 シェレンベルガー指揮 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団 ニューイヤーコンサート
モーツァルト/歌劇「魔笛」ハイライト
~第1幕~
 序曲
 No2.アリア「私は鳥刺し」
 No.3アリア「なんと美しい絵姿」
 No.4レチタティーヴォとアリア
 「ああ、怖れおののかなくてもよいのです、わが子よ!」
 No.7二重唱「愛を感じる男の人達には」
~第2幕~
 No.14アリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
 No.15アリア「この聖なる殿堂では」
 No.17アリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」
 No.19三重唱「愛しい人よ、もうあなたにお会いできないのですか?」
 No.20アリア「パパゲーノ様が欲しいのは一人の可愛い娘っ子」
 No.21二重唱「パパパの二重唱」
 No.21フィナーレ「太陽の輝きが夜を追い払い」
  ~ 休 憩 ~
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」
 
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ザラストロ:渡邉寛智(バス)
タミーノ:柾木和敬(テノール)
夜の女王:阪本清香(ソプラノ)
パミーナ:池田尚子(ソプラノ)
パパゲーナ・案内役:川崎泰子(ソプラノ)
パパゲーノ:鳥山浩詩(バリトン)
ゲストコンサートマスター:依田真宣


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 「パースペクティヴ!!」
 この素晴らしいホールに岡山フィルあり!


 今日の後半のシェエラザードの演奏を、無理やり一言で表すとこれに尽きるのではないかと思う。

 ベートーヴェンやブラームスで魅せたどっしりとした構築美でもなく、去年の「ばらの騎士」組曲で魅せたロマン派の黄昏の燃えるような美しさでもなく、今日のシェエラザードはとにかく華やかにオケが鳴りまくった!開館25年を超え、熟成の極みの時期に入った岡山シンフォニーホールの絶好の音響を最大限に味方につけ、オーケストラのポテンシャルとホールのポテンシャルが見事に融合され、3Dの空間の中に遠近取り混ぜて様々な音が振って来る、このホールならではの体験ができた。 

 聴き慣れているはずのシェエラザードから、思いもしなかった音があちこちから聞こえてきて、宝石箱をひっくり返したような、どころの話ではなく、このホールそのものが美音の鉱脈であることを、今回ほど心底実感できた演奏会は無かったです。このホールには、やはり管楽器の高音や様々なパーカッションが登場するような華やかな曲が似合います(予算はかかるんでしょうが・・・)。


 シェレンベルガーさん、ベートーヴェン・ブラームスが中心レパートリーだと思っていたのですが、オーボエ演奏の録音ではフランス・イタリアものも得意だし、今回から3回連続で続くロシアものシリーズの1回目は、これ以上無いぐらいに見事に料理。今回のモーツァルト、R=コルサコフもそうですが、曲のイメージが明確で音楽が体に浸透してくるような心地よさがあります。まだまだ少なくとも10年は岡山でやっていただくレパートリーがありそうですね(笑)


 この日の編成は12型2管編成。1StVn12→2ndVn10→Va8→Vc8、上手奥にCb6本。
 お客さんの入りは8割ぐらい入ってたんじゃないでしょうか。依然として好調な動員が続いています。
 
 この日のコンサート、開演前からチェロアンサンブルにシェレンベルガーさんのプレトークと、イベントが目白押しだったんですが、予定外のことが起こって、ホールに着いたのが開演約30分後・・・。前半を聴くことは諦めていたんですが、「魔笛」のハイライトが1時間を超えるボリュームがあったので、第2幕から入れてもらえました。
 もう演奏が始まりそうだったので自席に行くのを諦め、おそらくこのホールの中で屈指の「音の悪い席」である(爆)、2階席の一番奥で聴いたんですが、6名の声楽の皆さん、その位置までよく声が届いていました。(自分が遅れたために)いきなり夜の女王のアリアから聴くことになったんですが、一気に惹きこまれた。
 
 オペラ・アリアのハイライトとはいえ、振り付けを交えて歌を歌われていて、特に鳥山さんのパパゲーノはその場面が見えるようでした。女声の3名は歌の素晴らしさはさることながら、3名とも抜群のヴィジュアルに加え、それぞれの役にあった佇まいで、僕のようにオペラにあまり馴染みのない人間には、これは大切な要素だったと思う。
 第2幕だけでも見られて本当に良かった。
 
 休憩後にいつもの定位置に戻り客席を見渡して驚いた。若い年齢層のお客さんが多い。60歳~70歳ぐらいが主要客層なのは他のオーケストラと同様だが、30代~40代ぐらいの年齢層もそれに対抗できるぐらいのボリュームがある。
 
 後半のシェエラザードが始まったのは開演から1時間20分が経過していた。シェレンベルガーが組むプログラムは、毎度毎度ボリュームが満点である。聴きに来た客を絶対に満足させるという意思が伝わってくる。
 音響の悪い席からいつもの定位置に来ると、このホールの美点:音の広がりやどんな大音量でも包み込んでしまう懐の深さ、そして細かい息遣いまで聴こえて来る繊細さを実感した。前半、音の良くない席に一度座ることで、かえってこのホールのポテンシャルを明確に実感した。
 
 今回のコンサートマスターはゲストの依田さん。東京フィルのコンサートマスターのようだ。僕は、昨年10月に就任した高畑コンマスのソロを楽しみにして来たのだが、少々肩透かしを食らった感じ。予定が合わなかったのでしょうけど。
 しかし、この依田さん、この年齢(たぶん20代後半?)で東京フィルのコンマスに採用されるだけあって、凄いソロだった。ソロがある時間帯は「これはもう、ヴァイオリン協奏曲だな」と思うほどの存在感があった。
 
 シェエラザードは和声学や管弦楽技法の大家でもあったリムスキー=コルサコフ渾身の名作で、色々なオーケストラが「勝負曲」にしている曲。それだけに去年の京響をはじめ、過去に生演奏に接した回数が多い曲。

 僕はこの曲について、愛の物語ではなく、人間不信に陥り暴君と化した権力者を、物語の読み聞かせセラピーで癒していく話、だと考えている。だから、アラビアンナイトの物語の上っ面をたんに音楽で語っているだけでは凡百の演奏に埋没してしまう。童話や昔話の中に、物事の心理や人間の業や性が描かれているように、この曲にも権力と人間の危険な関係、自我の崩壊によって新たな人格の再生があることなどを描いているように思う。
 そういう視点で聴いても、シェレンベルガーのタクトさばきは見事だった。

 まず、第1楽章の冒頭からトロンボーン・チューバ、低弦などで提示される狂気の権力者:シャリアール王のテーマが行き場のないエネルギーと、奈落の底へ落ちていく心の闇を描き出していたし、物語を読み聞かせるシェエラザードを表すヴァイオリンのソロも、夢のように美しい一方で、第1楽章から第3楽章までのソロを取る場面では物語の中に溶け込んでいつつも、一歩引いた冷静な目線を感じさせている。これによって、今聞いている世界はシェエラザードが読み聞かせている架空の世界であることを、聴く者の頭の片隅に意識させていた。このシェエラザードを表すヴァイオリンのソロの取り扱いを間違うと、この曲は単なる情景描写の交響詩になってしまう。
 
 個々の場面ではシェレンベルガーさんらしいがっしりとした曲の躯体がありつつも、節回しのこぶしの効かせ方は、フランスオーボエ名曲集やイタリアバロック協奏曲集などの名盤で聴かせる、ロマンと歌心にあふれる鮮やかなオーボエ演奏と通底するものを感じた。
フランス・オーボエ名曲集

フランス・オーボエ名曲集

  • アーティスト: シェレンベルガー(ハンスイェルク),デュティーユ,ベネット,サン=サーンス,プーランク,ボザ,ケーネン(ロルフ)
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2005/12/21
  • メディア: CD
イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集

イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集

  • アーティスト: イタリア合奏団,シェレンベルガー(ハンスイェルク),アルビノーニ,ヴィヴァルディ,サンマルティーニ,A.マルチェルロ
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2010/08/18
  • メディア: CD
 それにしても(冒頭でも書いた通り)、やっぱりこのホールは凄い!こういうパーカッションが華々しく、木管の(特に高音の)饒舌な曲でこそ、本領を発揮する。これまで十数回は生演奏で聴いているこの曲から、これまで聴こえて来なかったことがたくさん聴こえてきた。
 
 第4楽章のシンドバッドの海が荒々しく再現される場面でのハープのグリッサンドが、あれほどクリアに聴こえて来る体験は初めてのことだったし(ハープは朝比奈時代の大フィルの名ハーピストの今尾さんが乗っていた)、その際に何度も打ち鳴らされるシンバルは、振動を利用して擦りあげるような奏法で、嵐の場面を描いていると同時にシャリアール王の頑なな自我の最後の断末魔を現しているような劇的なものだった(その頑なな自我は、タムタムの一撃による倍音の中に消えていったように感じられた)。
 第2主題の金管のファンファーレに呼応して奏でられる、弦のピチカートは、さながら何百台もの竪琴が自分の意思を持って陽気に踊っているようだった。
 
 パーカッション陣も特に第4楽章では隙の無い対話を繰り広げ、金管も迫力満点ながら、デリケートなコントロールとハーモニー重視の姿勢が貫かれていた。特筆すべきは木管で、ソロも見事(ファゴットうま過ぎ!)、合奏も溶け合って素晴らしい音だった。お名前を検索すると今回の助っ人主席にはフリーの方が多かったようで、この中に正式な岡山フィル首席奏者に残ってくれる方がいらっしゃることをお祈りしたい。
 
 弦楽器も好調さを維持、高畑コンマスに代わってからオーケストラの一体感が飛躍的に向上したのだが、今回、客演コンマスが入っても、一体感は失われなかった。
 細かいダイナミクスをごく自然に表現されていることと(息が合う、というのはこういうことかと思う)、弱音部でも一つ一つの音がしっかりと演奏されていて、この曲に関してはffは近景を、ppは遠景を表していることが多く、全体を通して立体的かつパースペクティヴな音楽が、岡山シンフォニーホールの空間に響き渡った。その瞬間のなんという至福の時間であったことだろう。
 とりわけ、第4楽章の燃焼度は相当なもので、聴く者だけではなくオーケストラ奏者自身もみな、カタルシスを味わった演奏ではなかったでしょうか。
 僕は、残念ながら次回(3月)の定期演奏会は仕事のため泣く泣く欠席です。 シェレンベルガー指揮のショスタコーヴィチの5番交響曲は関西フィルで聴いていますが、きっと岡山でも素晴らしい演奏になると思います。迷われている方がいらっしゃたら聴くべし!ですよ。

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ベルリンの壁「解放」コンサート ベルリン・フィルによるベートーヴェンの7番 [クラシック音盤]

 昨年10月の岡山フィルの定期演奏会でベートーヴェンの7番を聴いていたとき、第4楽章でのあまりの熱量のある演奏と、シェレンベルガーがあまり見せない我を忘れるような激しいタクトに驚き、当日のブログにこう書きました。


『この日のコンサート、ここまでが非常にハイカロリーかつ異常な集中力連続だったので、「最後まで持つかな?」と心配したのもつかの間、シェレンベルガーのタクトの勢いは一層熱を帯びていきます。これほど激しいタクト捌きを見せたのは、東日本大震災被災者鎮魂のためのドイツ・レクイエム以来です。』


 我を忘れたように激しいタクトを見せるマエストロ、それはこの6年間で「ドイツ・レクイエム」とこのベートーヴェンの7番の2回のみ。滅多に見せない激しさに圧倒されると同時に、私はある歴史的コンサートの演奏を思い出していました。それは、ベルリンの壁崩壊のわずか3日後にベルリン・フィルハーモニーへ東ベルリン市民を招待して行われた記念コンサートです。


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「ベルリンの壁 解放記念コンサート」

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番(※)
   〃   /交響曲第7番


指揮&ピアノ独奏(※):ダニエル・バレンボイム

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1989年11月12日 ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音

ソニー・ミュージック


 第4楽章の途中で「シェレンベルガーさんは、このコンサートについて思い返しているのではないか」と感じたのだが、そのコンサートにシェレンベルガーが参加していたかどうか、その時点ではわからなかったし(ベルリン・フィルともなると2人以上もも首席奏者を擁しているので、すべてのコンサートに乗るわけではない)、「いや、やはり目の前の演奏に集中しているのだ」とも感じたので、その時は別個のこととして考えるようにしていました。


 この解放記念コンサートの演奏は、カセットテープで持っていて、家にあった唯一の(災害時用にとってあった)ラジカセでかけて聴いてみると、ベートーヴェンの7番の冒頭ののびやかで華やかなオーボエの音は、やはりシェレンベルガー以外に考えられない。HMVを検索してみると、DVD付きCDが売られている。これは買うしかない、ということで年末にようやく納品となり、それ以来何度も繰り返し聴いています。


 DVDには途中で「ベルリンの壁」についての歴史についてまとめた短編のドキュメンタリーと、指揮とソリストを務め獅子奮迅の活躍だったダニエル・バレンボイムをはじめ、当時のコンサートマスターのゲラーマンなど、ベルリン・フィルの関係者のインタビューが収録されていて、なんと楽団員代表の一員として若き日のシェレンベルガーさんもインタビューに答えています。

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 この歴史的瞬間での興奮した空気の中で(あと、インタビュアーが、空気の読めない質問をしたこともあって)、冷静沈着なシェレンベルガーさんが、興奮を隠しきれないように早口でインタビューに答えていて、このコンサートの意義と、実現するために楽団メンバーたちも最善を尽くした様子が語られています。もちろん、演奏でもシェレンベルガーさんはオーボエ首席奏者として乗っています。

 後ろには東ベルリンから聴きに来た聴衆(このベルリン・フィルハーモニーは、東西ベルリンの境界近くに位置しており、統一が成った現在では文字通りベルリン市の中心にある)が映っていて、映像で見る東ベルリン市民の服装は着の身着のままのような感じ。壁が崩壊してたった3日後のこのコンサート、様々な混乱の最中での開催で、東ドイツ政府の機構・組織もまだ存在していた時期。つい昨日まで秘密警察が跋扈し、壁を超えようとすると最悪の場合、銃殺されていた時代。聴衆の中には東ドイツ政府に近い立場の人もいただろうし、逆に政府から弾圧される立場に居た人もいたでしょう。
 旧ソ連が崩壊していく過程では、開放路線を推進した当時のゴルバチョフ大統領が拘束されるクーデターが起こっています。当時の東ドイツでもそうした不穏な動きが起こっても不思議ではなかった。
 「もう少し落ち着いてから」という意見も当然に出たはず。しかし、ベルリン・フィルのメンバーは、バレンボイムとともに、この「解放記念コンサート」を開催を目指して東奔西走を続けた。このコンサートの様子が全世界に発信されれば、歴史の反動を抑え、「壁の無い平和なベルリン」の既成事実を固める意味合いもあったはず。


 前半のバレンボイムによるベートーヴェンの1番コンチェルトについての具体的な感想は、また別の機会に書こうと思いますが、前半のソリスト&指揮者としてバレンボイムが登場した場面、そして後半のタクトをもって再びバレンボイムが登場した場面でも、スタンディング・オベーション。そしてその拍手が鳴りやまないのですよ。

 バレンボイムがうなづいて何度も謝意を示しても鳴りやまない。オーケストラに向かって腕を上げてようやく静まりますが、興奮のるつぼともいうべき会場の異様な空気が映像からでも伝わってきます。


 後半のベートーヴェンの7番の演奏、FM放送を録音したテープで聴いているときには、その熱気あふれる演奏にただただ圧倒された感想しかなかったのですが、こうしてDVDで見てみると、ベルリン・フィルのメンバーたちが、こうした尋常ではない会場の空気にのまれることがなく、どっしりと構えた鉄壁の演奏を聴かせてくれます。シェレンベルガーも第1楽章の冒頭では、興奮する聴衆を慰撫するように、優しい人間的な音で聴き手を魅了します。

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 音は、やはりフルトヴェングラー~カラヤン時代の重厚で伝統的なスタイルのアンサンブルで、たいへんに聴き応えがあります。第2楽章の大河的なアプローチは、べルリン・フィルに限らず、現在のオーケストラでは聴けない世界観。


 第3楽章以降は楽団員たちの気分の昂揚が感じられると同時に、まったく崩れないテクニックと多彩な表現、隙の無いアンサンブル、細かいところまで神経の行き届いた演奏に圧倒されます。ベルリン・フィルの圧倒的なレベルを思い知らされます。

 しかし、第4楽章の後半になるとバレンボイムの興奮したタクトに呼応して、彼らも人の子、若干感情が抑えきれないとばかりに音楽が走りだします、しかし大きな乱れはなく怒涛の勢いでフィナーレを迎えます。

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 会場はブラボーが延々と続き、カメラが客席を抜くと、みな晴れやかな笑顔でスタンディングオベーションで歓迎する様子が見て取れます。壁が出来た後、「おらが街のオーケストラ」の一つであったはずの、ベルリン・フィルの演奏を聴けなくなった旧東ベルリン市民の興奮と歓迎がストレートに表れていて、あれから30年近くたった私(当時は中学生だった・・・)もジーンと来てしまいます。


 常に前を向いて前進するマエストロゆえ、岡山フィルとの共演の最中に89年の出来事が去来したわけではないかもしれませんが、彼の音楽家人生に深く刻まれた出来事であることは間違いないわけで、そうした経験と音楽性を持った方が、オーケストラのシェフとして、そのキャリアのすべてを注いでくださっている縁を、本当に貴重なことだと思うのです。

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岡山フィルハーモニック管弦楽団2018/19シーズンプログラム [岡山フィル]

 ようやく今年初めてのエントリーです。今更ですが・・・今年もよろしくお願いします。

 12月25日に「岡山フィルの2018/19シーズンプログラムの発表は?マイシートの発売は?」という記事をエントリーした翌週に、岡山フィル公式から来シーズンのプログラムが発表されていました。
 来シーズンもマイシートが発売され、今日が発売日。今回も、次年度引継制(次のシーズンも同じ席が自動的に予約される制度)の導入は無く、一から選びなおしになりました。来シーズンはこれまで確保してきたエリアから離れ、別の場所へ移動しました。
2018年5月27日(日)15:00開演  岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第56回定期演奏会  ~心・踊る・ロシアの魂~
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ヴァイオリン独奏/福田 廉之介
 
2018年10月14日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第57回定期演奏会 ~シェレンベルガーのベートーヴェン交響曲シリーズ完結~
ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調
ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ピアノ独奏/中桐 望
 
2018年12月9日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
ベートーヴェン『第九』演奏会2018 ~巨匠 秋山 和慶 岡山フィル第九再登場~
ベートーヴェン交響曲第9番 ニ短調
指揮/秋山 和慶
ソリスト/オーディションにより選出(予定)
 
2019年1月20日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第58回定期演奏会ニューイヤーコンサート ~新年の幕開けはロッシーニの名曲の数々とモーツァルトの傑作交響曲で~
ロッシーニ:歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
ロッシーニ:名曲アリア集
ロッシーニ:「絹のはしご」序曲
モーツァルト:交響曲 第41番「ジュピター」ハ長調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト/岡山にゆかりのある声楽家の方々
 
2019年3月10日(日)15:00開演 岡山シンフォニーホール
岡山フィルハーモニック管弦楽団第59回定期演奏会 ~シェレンベルガーのブラームス交響曲シリーズ進行中~
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
ウェーバー:ファゴット協奏曲ヘ長調
ブラームス:交響曲第4番ホ短調
指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト/グスターボ・ヌニェス(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席ファゴット奏者)
 
 以前のエントリーでも触れた通り、来シーズンから主要10パートの首席奏者が就任するということで、岡山フィル本来の10型2管編成の楽曲で固めてきましたね。ソリストは4回の定期のうち3回が地元出身のソリスト・声楽を起用し、地域密着の姿勢を打ち出しています。
 あと、隠された狙いの一つに、「楽団とともに聴衆も育っていくように」との願いもこめられているように思います。
 今の聴衆層は、ベートーヴェンやドヴォルザークやチャイコフスキーなど、超メジャーな楽曲だと客足は安定していますが、超メジャーな曲を外すと(マーラーやR.シュトラウスといった後期ロマン派の人気演目でさえ)一気に客の入りが悪くなります。
 オーケストラの定期会員(マイシート)の醍醐味は、「自分は聴いた(食べた)ことが無いけれど、最高の素材(隠れた名曲)をシェフが腕によりをかけて料理したものを頂く」ことにある。
 オムライスやハンバーグ(超名曲)は確かに美味しいし、安心の選択肢ではあるけれど、せっかく地元に腕のいいコック集団(オーケストラ)が居るのだから、自分の知らないメニューに挑戦して、自分の知らなかった圧倒的な世界を味わってみたい!
 そう思う人が増えて、はじめて岡山のオーケストラ文化が育つ、ということになろうかと思います。
 来年度のプログラムは「岡フィルというお店のシェフと料理人の腕は確かですよ」という認知を拡大するための年になりそうです。店に対する信頼が出来てくると、毎回オムライスやハンバーグを頼むより、「シェフのおススメを頂こうか」という大人の楽しみ方もできるようになる。そのための仕込みの1年になりそうです。
 また、地元の風土が生んだ最高のワインたち(福田廉太郎さんや中桐望さん)が、ソムリエ(シェレンベルガー)のエスコートでどんな味わいを見せてくれるか、も楽しみです。
 1月定期は、今年と同じく地元声楽家による「オペラ・ニュー・イヤー。プログラム」を前半において、後半はモーツァルトの「ジュピター」交響曲。モーツァルトの後期交響曲は、シェレンベルガー氏の十八番でありながら、岡山フィルの首席指揮者就任後6年間封印されてきました。岡山フィルのアンサンブルが成熟するのを待って、ようやくその封印が解かれます。
  3月定期では前半にハイドン・ヴァリエーション、後半は交響曲第4番で、ブラームスの名曲を並べてきました。どちらもプロのオーケストラならば頻繁に弾かれるレパートリーですが、アンサンブル能力の高さが要求されます。新首席奏者陣のもと、どこまで成熟した演奏を聴かせられるか、シェレンベルガーの手腕に期待ですね。

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