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指揮者とオーケストラに関する雑感 [クラシック雑感]

 今日は、ある指揮者の方(仮にZ氏とします)が書かれたブログについて、思うところがあったので記事にしました。事情を知っている方は「ああ、あのことか」とわかると思いますが、混乱に拍車をかけるのは本意では無いので、知らない人は「なんのことやら」という記事になっていますがご容赦ください。

 話は、財政面で窮地に追い込まれた『オーケストラX(以下Xオケ)』が、もっと集客を伸ばして収益構造を改善するために、指揮者Z氏が任命されたところまでさかのぼります。

 それまでX市に多大なる貢献をしてきたXオケ。事実、市民が気軽に参加できるまちかど音楽祭でクラシック音楽のイベントとしては空前の5万人以上を集客し、街の人々を彼らの磨き抜いた技で魅了し、また野外演奏会では雨の中でも必死で演奏するXオケのメンバーに胸を打たれた市民は多く居た。

 しかし、政変が起こり、政変を支持する熱狂的な市民たちが、「彼らの仕事は公(おおやけ)のお金を投入する価値なし」との暴論に同意し、Xオケを経済的に追い詰めると同時に、楽団員たちは自分たちの仕事が認められないことに落胆し自信を失いつつあった。

 そんな逆境のなか指揮者Z氏が就任。Z氏がすべき仕事は、①彼らの仕事の価値は他には代えられないものであり、自信を取り戻させ前指揮者の全盛の時代の勢いを取り戻すこと。➁楽団創設者が手塩にかけて築いてきた歴史と伝統を継承し、オンリー・ワンの存在を維持すること。この2つだと私は思っていた。

 しかし、Z氏が行ったのは、楽団員のプライドをズタズタに引き裂くような演奏批判と伝統の奏法の否定だった。しかもネット上に晒すという方法で。
 それでも楽団員は批判を真摯に受け止めた一方で、ある楽団員は「ネットに書くのではなく直接言ってほしい」との意見表明をした。楽団創設以来の危機の苦境の中、ともに頑張っていくはずのリーダーが、後ろから鉄砲で打ちかけた。こんな状態では両者に真の信頼関係は生まれ得ないだろう。書き込みは1日で消去されたことも謎として残った。

 今の世の中、「言いたいことを言うことが正義」「自分の意見を押し殺して言いたいことを言わないのはバカ」、そんな価値観が大手を振ってまかり通っている。
 私に言わせれば、こういう主張をする手合いは『子供』なのだ。彼らは「リスクを取って自己責任で自分の意見を言う」ことが、なれ合いのムラ社会の日本を変えるのだ!などと思っているが、ほとんどの場合、彼らは自分が起こした混乱を自分で収拾することがはない。

 少し話はそれるが、私の友人にX市で教師をしている者が居るが、「言いたいことを言うことが正義」の政治家どもが、何の考えも無しに導入した公募校長が不祥事で辞職した後、子供や地域や親の信頼回復のために、砂を噛むような思いをしながら事態を収拾したそうだ。
 その政治勢力は大変な思いをしながら事態を収拾して回っている、真面目で善良な人々をバカにし。逆に「またムラ社会のやり方で根回しをしている」と吹聴して混乱を煽る。人心は荒廃し様々な分野で優秀な人材ほど流出していく。オーケストラ業界もその例に漏れない。

 話を元に戻す。Xオケは500回の記念定期演奏会を迎えた。その際もZ氏は「500回という数字に意味は無い」と言った。関係者は逆境にある楽団の中でも目出度い節目を盛り上げようと、様々な企画を行った。採算を度外視し、長年のファンのために特別記念誌まで作った、そんな関係者の努力と汗に思いをはせることが出来る人間なら、あえて言わなくてもいい「格好付け」「自己演出」の言葉は言わないはず。Z氏は要するに『子供』なのだ。

 今回、記事を書いた理由はZ氏がまたネットにXオケの内情を暴露したからだ。今回は確かに悪口は書いていない、しかし「Xオケは良くなった」と単純に書けばいいのに、以前の演奏批判を蒸し返し、挙げ句、1日でその記事が削除されたのは、「事務局長に口止めされた」と暴露した。要するに自分が良くした、ということを強調したいのだろう。これを見て「これではXオケの楽団員さんたちの立場が無い」と心底心配する。

 私はXオケのコンサートの席でZ氏が他の指揮者の演奏批判をするのを聴いて、「音楽を聴きに来たのに、なんでこんな不愉快な思いをせなあかんのか」と思い、Z氏の出るXオケのコンサートには行っていない。だから、彼がどこまでXオケを良くしたのかの物差しを持たない。
 
 しかし、こんな言動をするリーダーに誰がついていきますか?前指揮者はXオケの悪口を一切言わなかった。それどころか創立指揮者の音楽作りに感服し、「世界中探してもどこにも無い音」と言った。
 僕が忘れられないのは、前指揮者がドイツの楽団を率いてX市に来た際、楽屋裏でのファンとの会話の中で、あるファンが「ドイツのオーケストラは、Xオケとは違いますね。凄い音ですね」と言ったとき、「Xオケだって凄いですよ、あんな音を出せるオーケストラはドイツにも無い。もし、物足りなかったとしたら僕の指揮が下手なんです」と真剣な目をして話していた。
 オケを一切批判せず「自分の指揮が下手」と全責任を負う指揮者、ネットに何度も批判を展開し、周囲の努力と汗を自己演出の薄っぺらい言葉で無にする指揮者。僕は後者を支持することは出来ない。

 Xオケの歴史と伝統に根差した独特のサウンド、あの魅力は抗いがたいものがある。これからもずっとあの音楽を聴かせてほしいし、そのための応援は惜しまないが・・・Z氏にこのまま期待して、願いを託していいのか?僕は今、ジレンマの中にいる。


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サンフランシスコ人

ピッツバーグ響のファンもジレンマの中にいますよ...

http://www.post-gazette.com/ae/music/2016/11/22/Pittsburgh-Symphony-Orchestra-musicians-and-management-could-be-close-to-a-deal/stories/201611220145
by サンフランシスコ人 (2016-11-24 02:16) 

ヒロノミンV

>サンフランシスコ人さん
 結局のところ、行きつくところはお金の問題なんでしょうね。
by ヒロノミンV (2016-11-24 18:50) 

サンフランシスコ人

近年、米国では、経済活動が活発な場所と一流オーケストラが所在している場所が分離してしまいました....
by サンフランシスコ人 (2016-11-27 04:08) 

ヒロノミンV

 本日、発表されました。
 指揮者交代!再出発です。
by ヒロノミンV (2016-11-28 21:09) 

伊閣蝶

このお話、当該為政者とその取り巻きが、そもそも自分の理解の及ばない芸術に関して、単なる金食い虫的な決めつけをしてきたことが発端なのでしょう。
それに同調した指揮者のZ氏の見識は、まさに度し難いものがありますが、プロ中のプロとしてオケを支えてきたメンバーの皆様の高潔な想いに胸を打たれます。
Xオケは、世界に誇ることのできる稀有の存在だと私は思います。
指揮者が交代して再出発ということですから、今後に期待ですね。


by 伊閣蝶 (2016-11-29 23:33) 

ヒロノミンV

>伊閣蝶さん
 このようなゴシップ記事にまでコメントいただき恐縮です。
 Z氏がXオケの暴露話を再度書かれたのは今月に入ってから・・・そして月末には指揮者交代のニュース。
 今から思えばイタチの最後っ屁みたいなものだったかもしれません。
 音楽的にどんなに優れていても、人格的に優れているまでは必要ないかもしれませんが、せめて「大人」として振る舞える人じゃないと、オーケストラのシェフになってはいけないと思います。
by ヒロノミンV (2016-11-30 22:39) 

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