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威風堂々クラシック 1日目 ①、③公演 [コンサート感想]

大植英次プロデュース
威風堂々クラシック in HIROSHIMA 広島の街を音楽でいっぱいに

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 文字通り、まさに広島の市街地をクラシック音楽でいっぱいにする大植さん肝入りのイベント、『威風堂々クラシック』、2公演だけ行ってきました。
 このブログを読んで下さる方には関西の方が多いと思いますが、大阪クラシックの広島バージョンと思われるかもしれません。しかし、これが全然違うということが、行ってみて初めて分かりました。街角の色々な場所を借りてゲリラ的にミニコンサートを仕掛けてく、という枠組みは同じなんですが、大阪クラシックと違うところと言えば・・・

①まず、出演者。大阪クラシックのようにプロ・オーケストラの団員さんによるコンサートではないんです。出演者は大植プロデューサー立ち合いの元、オーディションで決定されます。広響コンマスの佐久間さんや、元大フィル・チェロ首席の秋津智承さんのような、バリバリ一級のプロ奏者の方も出演しますが、おおむね若手の奏者の出演が多いようです。

②運営主体もオーケストラの事務局などではなく、大植さんの後援会を中心とした地元の有志による手弁当!1年目・2年目は本当に手探りの運営だったようです。

③出演者と聴衆の距離感の近さ。大阪クラシックも気軽に楽しめるイベントですが、威風堂々クラシクは、将来を嘱望される若手の貴重な活躍の舞台。親兄弟親戚から近所のおばちゃん・同級生まで応援に駆け付けます。あと、大阪と広島の都市規模の違いだと思いますが、雰囲気がアットホームなんですよね。大植さんも広島ご出身、中には子供のこの炉「英次君」を知っている人も居るでしょう。そんな雰囲気なんです。

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(感想の追記)

公演① 広島県立美術館 

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 第九を作曲する時には、既に聴力を失っていたベートーヴェンが、脚を外して床に置いたピアノで、ピアノから、あるいは床に伝わる振動を感じながら作曲したと言う、壮絶なエピソードを再現。
 これ、どっかで見たような。
 大阪クラシックでやっていました!その時の感想
 ただし、大阪クラシックでは、ピアノの脚をはずさせて貰えなかった。今回はホンマに脚を外してます!なので、大植さん、『世界で初めて!』を強調していました(笑)
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 観客の反応は、最初は「何?何?これ!」という感じだったのが、だんだんと第九の世界に引き込まれ、最後はものすごい拍手で喝采を送る。というのは大阪と同じでしたが、今回はコンサート専用の空間ではなく、声楽・合唱は2階の渡り廊下に位置。ピアノを弾く尾崎さん・甲斐君からは死角の位置、という悪条件。
 だから、みな大植さんの合図が頼り、この尋常ならざるシチュエーションが、異常な緊張感を呼び、最後は観客を巻き込んで、演奏する者も大変な高揚感にみな頬を紅潮させていました。

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 こういう実験的な(「的な」というより『実験』そのもの、ですね)、イベントは、威風堂々クラシックでしか味わえないんですね。こういう痺れるような場面に立ち会い、今回聴きに行った人は来年もきますよ。絶対。 

公演③ 福屋百貨店広島駅前店 6階マルチの広場 

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 駅前の福屋百貨店の6階中央のイベントスペースでの公演。
 ものすごいお客さんでした。用意されていたであろうプログラムが無くなってましたし。写真で見ると空きスペースがあるように見えるんですが、営業中の百貨店ですから、通路も売り場も確保しないといけない、ということで、仕方なく7階へ・・・ここも場所が無い、8階も・・、ということで、9階から下を除き込む感じ。

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 楽器の音は意外にも上に上がってきます。クラリネット、チューバ、サックス四重奏、という感じで次々に若手の奏者が登場。
 大阪クラシックとこの威風堂々クラシックの大きな違いは、ここなんです。
 大阪クラシックは大阪フィルなど大阪のプロオーケストラの団員さんが出演者の中心。でも、この威風堂々クラシックは、大植さん自らがオーディションで選んだ、広島を中心とした若手奏者の晴れの舞台。
 だから、その若手奏者を紹介するときの大植さんの「熱」が物凄い。

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 日本のオーケストラもクラシック音楽家も、飛躍的にレベルが上がった。でも、プロ奏者として食っていけるようになるのは、ほんの一握り。チャンスが与えられる場合はまだいい、でも、東京や関西のように大きなマーケットがあって、フリーの音楽評論家などが活動しているような街ではなく、広島ぐらいの規模の街でも若手が舞台に立てるチャンスはなかなか巡って来ない。

 そういう若い人たちにチャンスを!大植さんの思いはここにあるんでしょう。
指揮者・大植英次―バイロイト、ミネソタ、ハノーファー、大阪 四つの奇蹟

指揮者・大植英次―バイロイト、ミネソタ、ハノーファー、大阪 四つの奇蹟

  • 作者: 山田 真一
  • 出版社/メーカー: アルファベータ
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: 単行本



 この本を読むと、大植さんの音楽家人生は奇跡的な出会いの連続だったことがわかります。広島から東京の桐朋音楽高校へ進学する切っ掛け、鬼籍に入られる直前に斉藤秀夫と出会い、指揮の才能を見いだされたこと。行き違い寸前で出会えた小澤征爾との邂逅。
 「先生に絶対に嫌われた」と確信した、バーンスタインとの出会い、大植さんの才能が埋もれてしまわないようにを天が手を差し伸べたとしか思えないエピソードに彩られている。

 しかし、長年クラシック音楽の演奏を聴いていると、「才能は必ず見いだされる」というのは、クラシック演奏家の世界では当てはまらない、ということが僕のような人間にも身に染みて分かる。
 TVなどで見かける売れっ子演奏家よりも高い能力があるのに、副業をしながら細々となんとか演奏活動を続けているような演奏家を、何人も知っています。「なぜ、この人が、世に出ないんだ!」と。それでも、そういった方ですらも、演奏家として活動で来ているだけマシかもしれない。多くの人は充分なチャンスを与えられず、音楽の道を断念する。
 威風堂々クラシクの真の目的は、大植さんが故郷広島で、自らのカリスマで人を集め、才能が埋もれてしまわないように見出していくイベントなのだろうと思います。

 大阪で維新政権が継続することにより、来年以降の「大阪クラシック」の在り方が見直されることが、ほぼ確実な情勢となりました。一人の音楽家とオーケストラの仲間たちの夢と情熱から始まったイベントは、恐らく、イベントとしてゼニ・カネが大阪に落ちるようにシステム化され変容していくことでしょう。
 しかし、大植英次の夢は広島で生き続けて行く。それが威風堂々クラシックです。

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