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大阪クラシック第61公演「Piano Spectacular」 [コンサート感想]

 この公演をどう説明したらいいのか・・・・・

大阪クラシック第61公演「Piano Spectacular」

バーンスタイン/「キャンディード」組曲より
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調より

ピアノ:大植英次、尾崎有飛、甲斐史郎
独唱:西田真由子(ソプラノ)、福嶋あかね(アルト)、松原友(テノール)、大谷圭介(バリトン)
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団

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 まず、説明のしやすい1曲目から(笑)、甲斐史郎という映画俳優みたいなカッコいいお名前のピアニストは、実はまだあどけなさの残る16歳高校1年生。大植さんが第九ひろしま(1万人の第九の広島版ともいえる巨大イベント)のオーケストラを指揮した際、トランペットを吹いていた甲斐史郎君。一緒に演奏した「キャンディード」組曲を、オーケストラの演奏の音を聴いただけで(もちろんスコアを見ることなしに)あの複雑な音をピアノで再現してしまったという・・・。その甲斐君の才能に大植さんが惚れ込み、今回晴れてザ・シンフォニーホール・デヒューとなったもの。

 とにかく甲斐君を紹介する大植さんの興奮ぶりがハンパなかったです。ピアノ演奏はプロのピアニストを目指す少年としてはごく標準的なレベルだと思いますが、彼がオーケストラ曲を耳だけでピアノ曲に編曲したと・・・・これは本当に凄い事です。このキャンディード組曲はバーンスタインから大植さんに直接献呈された曲(題名の無い音楽会のOPで流れるのは「キャンディード」の序曲。組曲はもっと複雑でドラマティック!)で、大植さんにとってはとりわけ思い入れが強い曲。その曲を耳で聞いただけで再現する天才少年に、何かを感じたのでしょう。なんとバーンスタインからもらったという真紅のチーフを甲斐君に渡してしまいました。

 さて、驚愕の2曲目はピアノ3台版での第九。客席側におかれたピアノに大植さん、舞台奥に向かい合わせで2台のピアノ、上手に尾崎有飛さん、下手に先ほどの甲斐史郎君という配置。っと、演奏前に手前のピアノの奏者の位置に何やら大きな台が置かれ・・・

 大植さんが登場し、このコンサートの趣旨を説明、なんとドイツでベートーヴェンの自筆譜を研究しつくした大植さん自身が作曲当時のベートーヴェンになりきり(衣裳までベートーヴェンの着ていたものと同じデザイン!)、ベートーヴェンの頭の中で鳴っている音楽を、舞台後方の2台のピアノ+第4楽章で登場する独唱者と合唱団が表現する・・・

 ベートーヴェンは第九作曲時にはほとんど耳が聞こえない状態だった。ピアノの脚を外して直接床に置き、床やピアノの躯体に伝わって来る振動を感じながら作曲した・・・、ということで実際にピアノの脚を外すわけにはいかないので、ピアノの脚と同じ高さの台を作成し、そこに大植さんが寝そべって、床に伝わる振動を感じながら苦悶の表情で音を紡ぎだしていく。その音を2人のピアニストが連弾で表現していく・・・

 まだ、分かりにくいですか?取りあえず大フィルのブログを見てください。

 ドイツのオーケストラで名誉指揮者に任ぜられ、州政府から勲章まで授与された、正真正銘の世界のマエストロがピアノの前で寝そべっている、どう表現したらいいのか不明なシュールな構図に、会場からは笑いが起こります。しかし、大植さんは至って真面目。だってベートーヴェンはこうやって作曲してのだから・・・
 個人的には頸椎に故障を抱える大植さんの症状が再発しないだろうか・・・とハラハラしながら見てしまいました。
 演奏は冒頭から熱の入ったものでした。第1楽章の序奏から第1主題のトゥッティへ向かい部分に全く間を置かず、怒涛のように突っ込んでいったり、楽章終結部でフワッと着地する様な解釈など、僕自身が過去に3回聴いた大植さんの第九、そのものの解釈です。これだけ聞いてもこのコンサート、本当に作りこまれているなあと思いました。
 尾崎有飛さんというピアニスト、大植さんがハノーファーからわざわざ連れてきた方、この尾崎さんが大植さんの意図にシンクロして本当に見事な演奏。第2楽章は省略されましたが、第1、3、4楽章はノーカットで演奏されました。

 なんともシュールなステージにはじめは笑いが起こった客席でしたが、第3楽章あたりになると、すっかり大植ワールドに弾きこまれています。ベートーヴェンがここまでして、この第3楽章の神様が与えたとしか思えない美しい旋律を掴み取っていったのだとしたら・・・、なんか胸がジーンとしてしまったんですね。

 第4楽章に入ると、ピアノの演奏が進む中、オペラの演技のように声楽人が登場。その後合唱団も50人ほどの小編成で登場。この第4楽章が秀逸で、まさに今産声をあげるかのように、瑞々しい歓喜の歌を謳い上げました。大編成オーケストラ&巨大合唱団では味わうことのできない新鮮なサウンドに、ベートーヴェンのイメージしていた音楽とは、こういうものだったのか?と目から鱗の落ちる思いでした。

 最終的には、なんだかベートーベンがすごいのか、この企画を練った大植さんがすごいのか、よくわからなくなりましたが(笑)感動のうちに幕を閉じたこのコンサート、大変な満足感の中、会場を後にしました。

 今年の自分にとっての大阪クラシックはこの1公演のみ。なかなか休みが合わない嫁さんとの久しぶりの長期旅行のため、京都に向かいました。

最後にグルメメモ

前から気になっていた「ふな定 福島庵」さんへ
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7月に北浜の「柴藤」に伺って以来、本場大阪のパリッと焼いた鰻の虜になってしまいました。
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上うな重3050円也

たれは柴藤さんよりも、このふな定福島庵さんの方が自分の好みかも知れません。皮までパリパリに焼かれた鰻の絶品な事!

そう毎回は来れませんが(笑)、またホールに行くときには寄ってみたいですね。


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じゃく3

ヒロノミンVさんこんにちは。驚愕の第九コンサートの様子を拝見しました。相変わらず大植さん元気たっぷりのようで安心しました。声楽陣の入場は、大植さんが東京フィルを振った第九のときも、第四楽章の途中からしずしずと入場してきて、感動的でした。

私、体調がある程度回復してきたので、今度の大植さんの悲劇的を聴きに行くことにしました。
by じゃく3 (2014-09-23 11:15) 

ヒロノミンV

>じゃく3さん
 コメントありがとうございます!
 大植さん、台の上で寝そべりながら、かなり激しいアクションで演じてらっしゃったので、首や腰をないだろうか?とヒヤヒヤしました。
 さすがに音楽的には素晴らしい仕上がりで、合唱の清新な響きに、この第九の新たな一面を発見した思いです。

 腰の方は順調に回復なさっているんですね。ご予定の公演日は金曜日(2日目)でしょうか?
 僕も金曜日(2日目)公演のチケット(2階席)は確保していますが、当日(定休日のはずが・・・)仕事が入ってしまい、大阪まで行けるかどうか?微妙なところなんです。。。。
by ヒロノミンV (2014-09-23 15:59) 

じゃく3

体調的にはまだまだ無理はききませんが、少し歩いて多少座って、おとなしくしているぶんには大丈夫(^^;)との自信がつきました。今年一番聴きたい演奏会なので、かねてからの予定通り、敢行することにしました!一応両日聴きます。二日目は、1階の前方センターです。

ヒロノミンVさんのお仕事が順調にすすんで、無事大阪まで来られることを願っています!
by じゃく3 (2014-09-23 17:13) 

ヒロノミンV

>じゃく3さん
 まだまだ回復途上・・・といったところなんですね。どうかお大事になさってくださいね。特に大阪の人混みは、人の流れも速くて強引な割り込みなんかもありますので・・・
 それでも大阪までいらっしゃるというじゃくさんの情熱には心を打たれます。僕は半分あきらめかけていたんですが、明日・明後日と全力で仕事を片付けて大阪に行けるように頑張りたいと思います!
by ヒロノミンV (2014-09-23 23:02) 

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