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プロオケ32楽団、聴衆400万…欧州も凌駕する“ジャパン・パワー” [クラシック雑感]

 韓国の新聞社の記事です。興味深かったので転載。

プロオケ32楽団、聴衆400万…欧州も凌駕する“ジャパン・パワー”
2014年05月23日15時21分  中央日報日本語版

 日本は世界古典音楽界の強者に挙げられる。クラシックビジネス専門家の間で、東京のマーケットは最大の管弦楽市場だ。最高水準を誇る世界的な交響楽団や演奏者たちが日本の舞台に進出しようと心を砕いている。主にソウルだと1~2回の演奏会しか開催しない韓国舞台に比べ、8~10都市の巡回演奏会が保証されている日本が、アジアのクラシック市場を制覇しているのは当然のことだ。最近では中国がその後を追っているが、まだ日本には及ばないという評価だ。それだけ日本は舞台・客席ともに長きにわたる歴史とともに厚い人的構成を誇っているということだ。ロンドン・ベルリン・パリとは違う独特さを持ち、クラシック・ミュージックの本場である欧州の水準を超えている。

  日本は特にオーケストラ分野が強い。日本オーケストラ連盟に所属しているプロオーケストラは32楽団にのぼる。これら楽団の音楽を聞きに年間400万人の聴衆がコンサートホールを訪れる。400万人という数字は、海外オーケストラ公演は除外した純粋な自国交響楽団演奏会における観客数だ。アマチュア同好会オーケストラや吹奏楽団も全国に3000団体を越える。楽器を買って定期的に練習する人々は20万人だ。楽器市場に資金がよく巡り、音盤売り場が健在な背景だ。自国オーケストラを愛する管弦楽ファンが日本クラシックの底力というわけだ。

  日本オーケストラの強みとして、専門家はスター指揮者の招聘、感覚的なプログラム構成、専用ホールの運営など3要素を挙げる。2007年、日本オーケストラ連盟でインターンとして所属し、日本交響楽団と東京音楽市場を研究したハン・ジョンホ氏は「NHK交響楽団と新日本フィルハーモニー交響楽団など7大プロ交響楽団は、著名な外国人指揮者を招いて自国の指揮者と競い合わせながら演奏力を向上させた」と分析した。

  6月1日午後8時、ソウル芸術の殿堂コンサートホールで8年ぶりに来韓公演するNHK交響楽団の場合、シャルル・デュトワ、ウラディーミル・アシュケナージ、アンドレ・プレヴィンら全盛期に国際的な名声を得た指揮者を音楽監督や客員指揮者として招いて短期間に大きな発展を成し遂げた。彼らを前に出しつつ、外山雄三や尾高忠明のような自国の指揮者を共同常任指揮者に指名し、一緒に成長させていく体制を整えた。ヘルベルト・フォン・カラヤンをはじめ、ピエール・ブーレーズ、マクシム・ショスタコーヴィチのような巨匠指揮者がしばしばNHKを訓練したのも力となった。         
 

 もうひとつ、辺境交響楽団で世界トップを目指そうとする果敢なチャンレンジ精神も一役買っている。今回のソウル公演でも披露されるマーラー交響曲第4番は、1930年NHK交響楽団が世界で初めて録音し、今でも驚きがあると評価される。最近でこそマーラー交響曲が人気演奏曲目となっているが、80年余り前はマーラーは聞きなれない非主流の作曲家だった。西洋音楽を積極的に受け入れようとする姿勢が、果敢な冒険につながり記録が残ることになった。

  NHK交響楽団と比べて若々しいスタイルの新日本フィルハーモニー交響楽団は、感覚的なプログラム選定と拠点ホールを持つことで育っていったケースだ。今月29日午後8時、ソウル芸術の殿堂コンサートホールの舞台に立つ新日本フィルハーモニー交響楽団は、2010年にインゴ・メッツマッハーを音楽監督に、ダニエル・ハーディングを音楽パートナーに迎え入れながら、日本管弦楽ファンの耳を引きつけている。特に、ルネサンス、バロック、古典派など過去の音楽をその時代の楽器や演奏法で演奏する「古楽」専門家であるフランス・ブリュッヘンにハイドンの主要な交響曲セットを任せ、久石譲に映画音楽演奏を任せるという卓越した感覚を見せた。このような方法で躍動感あふれる交響楽団のイメージを築いてきた。

  そのうえ音響が卓越し楽団がいつも練習できる「すみだトリフォニーホール」は、団員の演奏力を確実に向上させた。ソウル市立交響楽団が専用コンサートホールを持たずにさまざまな演奏ホールを転々としていることと比較される。このホール以外にも、東京交響楽団が「ミューザ川崎シンフォニーホール」を、札幌交響楽団が「札幌コンサートホール Kitara」など独立した演奏ホールを拠点としている。

  ソウル大西洋音楽研究所のイ・ジャンジク特任研究員は「来韓する2つの日本オーケストラは跳躍期に入った韓国の交響楽団が今後心して研究して目を向けているべきスタディケース」と話した。         

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「自国オーケストラを愛する管弦楽ファンが日本クラシックの底力というわけだ。」
 なるほど、僕なんかは典型的なタイプですね(笑)この記事自体はN響が韓国公演を行うタイミングで書かれたもので、色々と政治的な面で問題を抱える中に来韓して演奏を披露する楽団への敬意と公演の成功を企図したもので、いくらかヨイショの部分はあるのでしょうが、韓国から日本のクラシック音楽市場を客観的に鋭く概観・分析した内容に、興味深いものを感じます。

 岡山フィル(記事中の日本オーケストラ連盟に加入するプロ32楽団には残念ながら入っていませんが・・・)の首席指揮者に就任したシェレンベルガー氏は、その就任時に「日本は欧州に比べると若い聴衆が多く、期待が持てる」と仰っていて、正直、「えっ!」という感じだったんですが、総数としてはやはり50~60代以上の聴衆が多数を占めるものの、先月・今月と岡山や京都・大阪足を運んだ演奏会で冷静に観察すると、30代ぐらいの特に女性の聴衆が着実に増加しているかもしれません。

 ここ数年、大阪のオーケストラが直面している危機(あれは人災という気もしますが)や、世界的なレコード会社の倒産やレーベルの消滅、国内CD販売店の閉店などの急激な変化を見てきた自分としては、悲観的なシナリオしか見えていなかったんですが、こういうポジティブなニュースを見ると、例えばNAXOSミュージックライブラリーの登場と隆盛、大阪の惨状を横目にしたたかに飛躍を遂げた京響、広響の急激なレベルアップ、そして岡山フィルのポストにまさかのシェレンベルガー氏の就任、と、ポジティブなニュースも少なくなかったんですね。

 クラシックから話はそれますが、Jポップ市場もCDの売り上げは半減したのに対し、複数のアーティストが共演する「フェス」形式などのライブの動員が爆発的に増加しているようで、自分の周囲でもこの季節になると、どこどこのフェスに行ってきたという話題で盛り上がっています。こちらも負けじと、大阪クラシックの話題なんかを振ってみると「へぇ~、クラシックって家で高価なオーディオに向かって聴くもんやと思ってたけど、こんな面白そうなイベントもあるねんな」と、意外に良好な反応も帰ってきますし。
 音楽を「消費する」時代から生で「感じる」時代へシフトしているのかもしれません。


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narkejp

なるほど、おもしろい視点ですね。とくに、「海外のスター指揮者の招聘」と「日本人指揮者の育成」とを並行して行ったという指摘は、なるほどと思いました。外部の刺激を取り入れつつ、内部の実力養成を図る、というのは、レベルアップの定石だと思いますね~。

by narkejp (2014-08-03 15:46) 

ヒロノミンV

>narkejpさん
 一聴衆としては、一つ一つのコンサートの興業としては見れていても、長期的な育成の観点で見ることは少ない気がします。
 東京のオーケストラは海外のスター指揮者と日本人指揮者の2頭体制を採ることが多いですね。そして実力を付けた指揮者が地方オーケストラを牽引して、国内全体のレベルアップが図られてきたんでしょうね。
 日本とは対照的に、韓国も国策としてクラシック音楽の振興に(特に資金面で)力を入れているようで、これに分厚い聴衆層が形成されれば、日本もうかうかしていられない気もします。
by ヒロノミンV (2014-08-03 23:52) 

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