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器楽奏者出身の指揮者のこと [クラシック雑感]

 昨日、『音楽の友』を買いに行こうと丸善へ行ったのですが、なんと置いていない!その足で紀伊国屋書店まで足を伸ばしても置いていませんでした・・・

 丸善はジュンク堂傘下に入ってからレイアウトが変更になってるんですが、同じ種類の雑誌を何列もディスプレイしている割には、欲しい雑誌がなかなか置いていない・・・、以前はこんなことは無かったんですが。
 ・・・っていうか、コンサートホールの入っているビル(ついでに言うと、県下で一番大きいヤマハ音楽教室が入っているビルでもある)の書店が『音楽の友』を置いてないって、そんなんアリ?っていう感じです。 

  閑話休題

 今回は、器楽奏者として一流を極めた音楽家が指揮者を務める、という話題について。
 シェレンベルガーやデュメイ、最近ではホルンのバボラークなど、奏者として超一流に成功した音楽家が指揮者としても活躍するということが一般的になってきています。

 日本においてはクラシック音楽文化の歴史が浅く、その歴史はほぼ20世紀の大指揮者時代と重なってしまいます。それゆえ、皮肉なことに器楽奏者としての名声が高い方ほど、指揮活動を行うと若干ビミョーな反応になってしまうことが多い気がします。
 特に音楽雑誌での評論などを見ていると、奏者から『転向』した指揮者というのは厳しい目で見られていることが多いように思う。しかしその一方で、関西フィルのデュメイのように、評価が高い奏者出身の指揮者も居ますが・・・

 岡山フィルとシェレンベルガー氏の情報を集めているときに、面白い記事にあたりました。

 大阪のフェニックスホールが2009年3月にシェレンベルガー氏に行ったインタビュー記事です。

 一般のクラシック・ファンにとっては、シェレンベルガーもやはり超一流のオーボエ奏者というイメージが強く、『指揮者』という印象は、正直まだ薄いかもしれません。

 しかし、去年の岡山フィルの定期演奏会で見せた見事な音楽づくりからは、器楽奏者から「転向」して指揮活動をされている、という枠組みの中では到底考えられない、素晴らしい世界を感じ取れました。岡山の聴衆の反応を見ても、歓迎ムードで受け入れられている感じがします。私はもちろん大歓迎、それどころかシェレンベルガー首席指揮者体制を熱烈に支持しています。

 この記事によると、シェレンベルガー氏は17歳の時にアメリカの有名な教育プログラムの指揮法クラスで学び、コンクールでも最優秀賞を取っているそうです。ミュンヘン国立音楽大学在学中も指揮法のレッスンをたびたび受けていたそうですし、自身のキャリアデザインの中に「指揮者」という選択肢は常に存在していたのだろうと推察されます。

 ケルン放送響やベルリン・フィルという超一流のオーケストラに所属しているときも、「自分はオーケストラの中だけで仕事をし続けるタイプではない」と考えていたそうで、だとすると首席オーボエ奏者という立場で一級の演奏活動を行いながら、ずっと『その先』を見つめながら研鑽していたということでしょう。

 指揮活動自体も1995年から行い、既に20年近いキャリアになるわけです。シェレンベルガー氏の中では、音楽家としてオーケストラ奏者・室内楽・オーボエ・ソロ、そして指揮者と、枠にとらわれずに様々なステージで活躍するイメージで、奏者から指揮者へ「転向」という意識も概念も無いと思います。

 去年の9~10月に岡山で見せてくれた夢のような活躍。オーケストラの指揮者、学校巡りなど精力的なアウトリーチ、世界一級の木管アンサンブルのコンサートツアー、そしてオーボエ奏者のマスタークラス・・・と、八面六臂の活躍に思えたことも、シェレンベルガー氏にとっては(まったく驚くべきことに!)すべて音楽家として自然な活動だったのかもしれません。

 関西フィルの音楽監督のオーギュスタン・デュメイのご活躍も同じだと思いますが、『奏者として』、『指揮者として』、あるいは『指導者として』、これらの活動に線を引いて考えてしまう我々の方が、頭が固いのかもしれません。思えば19世紀以前に活躍した音楽家は奏者であり指揮者であり、また作曲家でもあった。

 20世紀の指揮者専業の大巨匠の時代は既に過ぎ去り(歴史的に見ればこういう時代の方が特殊だったのかも・・・)、音楽家として培った才能をいろんな分野で発揮する、新しい時代に入っているのだろうと思います。

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コメント 6

KUMA

そこそこの(笑)器楽奏者が、名指揮者になる方が多いですね。ズヴェーデン、ヴァンスカ、ベルグルンド、、、数え切れないほどですね。
by KUMA (2014-01-28 22:00) 

ヒロノミンV

〉KUMAさん
あと、若手で言えばインキネン、デスピノーサあたりもいい指揮者になりそうです。
奏者として成功しすぎると、かえって指揮活動の環境が整いにくいかも知れませんね(だから、岡山フィルにチャンスが巡ってきたのかも知れませんが(^^;)
by ヒロノミンV (2014-01-28 22:11) 

KUMA

ズヴェーデンは、そこそこ言ったら失礼ですね(笑)。一流ソリストが日本のオケの音楽監督になるケース多いですね。 アシュケナージもそうでしたが。
by KUMA (2014-01-28 22:21) 

ヒロノミンV

>KUMAさん
 さっそくズヴェーデン&ロンドン・フィルのマーラー5番をNMLで聴いていますが、音色の引き出し方が鮮やかですね。ちょっとじっくり聴いてみたい指揮者です。
 アシュケナージはN響との公演を1度聴きましたが、「えいや!」「とりゃ!」っていう感じで、なんでこんなに力んで指揮するのか?と思ってしまいました(音楽は普通に良かったです)。

by ヒロノミンV (2014-01-28 22:47) 

木曽のあばら屋

なんと、岡山の丸善に「音楽の友」が置いてないなんて!
気を取り直して上にあがり、ヤマハ岡山店に行けば置いてあったのではないでしょうか?
かく言う私も音楽雑誌、すっかり読まなくなってしまいましたが・・・。
by 木曽のあばら屋 (2014-01-31 20:11) 

ヒロノミンV

>木曽のあばら屋さん
 なるほど!ヤマハに行けばあったかも、ですね!
 丸善の雑誌類の品ぞろえをずっと信用していたんですが、残念です。結局宮脇書店に行ったら置いていました。啓文社にも置いているそうです。岡山の本屋文化の中心は児島線沿いに移ったのでしょうか(笑)
 笑い話ではなくて・・・地方都市はどこでもそうなのでしょうが、車で行けるお店の方が利便性も品ぞろえも良い、ということになれば、ますます街中から人が消えてしまいます・・・


by ヒロノミンV (2014-01-31 20:31) 

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