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岡山フィル第42回定期演奏家 シェレンベルガー首席指揮者就任記念 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団 第42回定期演奏会
~シェレンベルガー首席指揮者就任記念~

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調 ※
ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調『英雄』

指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ヴァイオリン独奏※:堀米ゆず子
ゲストコンサートマスター:崔文洙
2013年10月13日 岡山シンフォニーホール

 今日ほど岡山フィルが、そして岡山シンフォニーのステージが光り輝いて見えた日はありません!瞬間瞬間に泉のように新鮮な音楽が湧き上って来る!そんな素晴らしい演奏会になりました。
 前半のブラームスの協奏曲は、仕事の関係で無理かなあ・・・と思っていましたが、職場からホールまで一度しか信号に引っかからないという奇跡が起き(笑)かつ地下の駐輪場も空いていたので開演五分前にホールに着きました。いや~、この堀米さんの協奏曲を、もし聴けなかったらとんでもなく後悔するところでした。
 また、のちほど更新します。

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ホールに上がるエスカレーターから見える首席指揮者のサイン入り写真


(10月14日追記)
  お客さんの入りは、8割ぐらいでしょうか。できれば満員にしたかったですね、世間では三連休の中日ですし、当日はマーチング・イン・オカヤマも開催されていて、音楽ファンの客足が分散した感じもあります。

 編成は12型、1stVn12-2ndVn10-Va8-Vc6-Cb4の通常配置2管編成。ティンパニは上手の奥のコーナーに。ブラームスの協奏曲もベートーヴェンの英雄も同じ編成でした。

 ブラームスの協奏曲は冒頭はオーケストラの聴かせ処ですが、これが格調高いドイツの響きで一瞬で魅了されました。堀米さんソロが入って来ると、やはりブラームス演奏の第一人者。流石に素晴らしい演奏ですね。ステージを支配する圧倒的なオーラ、そしてどれだけ表現の幅が広いのだろうと、ため息しか出ない音の数々。トリル一つとっても色々な表現があって、ヴィヴラートも何種類も使い分ける。時には音が渦を巻くようにうねるようなヴィヴラートも繰り出されます。音色もザラリとした音から天衣無縫のピュアな音。その一音一音の味わい深い音!
 演奏が終わった後に感じたのは、『ブラームスって、なんという名曲を書いたのか!』ということでした。いや、ホンマにエエ曲ですね。改めて思いました。そう思わせる堀米さんのヴァイオリンがやはり素晴らしかったのだという結論になってしまうのだけれど、名曲を『やっぱりこの曲は、名曲だよなァ』としみじみ思わされる演奏、至福の35分間でした。

 僕が一番印象に残ったのは第3楽章。レントラー調のノリのいい楽章ですが、途中からステージがヒートアップしていって、堀米さんとシェレンベルガー、岡山フィル、この3者が瞬間瞬間の音楽の火花を散らし、とてもエキサイティングな演奏になりました。
 オケはちょっとついていくの大変そうだったけど(笑)
 でも、「岡山フィルってこんなに弾けた演奏をするんだ!」と、新たな一面を見て、シェレンベルガー氏と岡フィルが、堀米さんという強力な触媒によって、何か通じ合ったものがあるんじゃないか?もしそうだとしたら、素晴らしい瞬間に立ち会えた気がします

 鳴りやまない拍手にこたえて、おそらく予定外(?)のアンコール。バッハから1曲。舞台袖でひっそりと堀米さんの演奏に聴き入るシェレンベルガー氏の姿が印象に残ります。

 後半の英雄に話が移る前に、エキストラの話題。今回の曲目の編成だと岡山フィルの正団員さん中心でオケが組めますが、今回も一部主要なポジションには在阪・在京のオケからの応援がありました。しかしそのメンバー選びは今まで岡フィルで何度も演奏して下さった方にこだわって連れてきていて、それが今回のオケのサウンドの一体感に繋がったのかな?と。
 トランペットの辻本さん安藤さん(東フィル)、ホルンは野田さん、山本さん(大フィル)、特にオーボエの浅川さん(大フィル)はシェレンベルガーという史上最高の現役Ob奏者を前に演奏するわけですからプレッシャーは大変なものがあったのではないでしょうか。しかし、協奏曲ではシェレンベルガー氏は真っ先に浅川さんを称えていましたし、英雄でのパフォーマンスも素晴らしかったです。そしてトランペットの辻本さん!この方はガーシュインやストラヴィンスキーのようなTpが前面に出る曲目でも圧倒されましたが、今回のプログラムは全体の音を支える場面が多い。しかし、シェレンベルガーが作る見通しのいいハーモニーの中から聴こえて来るトランペットの音が、本当にほれぼれするような音で、岡山フィルもこういう方を正団員として呼べれようになっ欲しいな・・・と思います。

 後半の英雄です。昨日のリハーサルでは第2楽章の途中から聴きましたが、昨日のリハーサルは、やはりリハーサルであって、本番は別物でした。昨日は流麗でピュアなサウンドに心打たれましたが、今日は紛れもないドイツのシンフォニーの音がしました。低音が重厚に鳴り響き、中音・高音域もぎっしり目の詰まったサウンドで鳴ります。しかし、その重厚なサウンドは力でゴリゴリ鳴らすことを嫌い、色々な楽器の音が合わさった純粋なエネルギーで鳴らし切る。惚れ惚れするオーケストラのサウンドです。それでいて音の積み重なりの中から内声部が聴こえて来る。特にヴィオラの音や木管の各楽器の音が絶妙のハーモニーを奏でているのに、色々な音が聞こえてくるのは驚きました。

 まさにシェレンベルガー・マジック。

 昨日聞けなかった第1楽章ですが、『おおぅ!こうなっていたのか~』と、思いのほかテンポに起伏がありました。昨日聞いた範囲では解釈としては非常にオーソドックスな演奏になるのかな?と思っていましたので、予想外。
 テンポがギア・チェンジする場面で、若干ばらついたりする場面が(1か所ヒヤッとする危ない場面も)あったことは事実です。しかし、はっきり言ってそんなことはどうでもいい事だと。打ち合わせ通りに完璧な音楽が展開される、そんな予定調和では無く、その場その場でステージ上で交わされる何かインスピレーションのようなものを大事にして、どんどん泉のように音楽があふれ出て来るようなフレッシュな感じ。退屈する時間はみじんもなし、息をつかせぬ充実した時間に感じられ、胸が熱くなります。

 第2楽章は陰鬱な場面と輝かしい場面のコントラストが見事。ハ短調の陰鬱で足取りの重さ、そして光が差しハ長調に移ってポリフォニーが美しく響き渡る。再び単調に映った後の重厚でドラマティックな和音。7年前に大植&大フィルでこの楽章の壮絶な演奏を聴いたとき、『英雄交響曲』はこの楽章に魂が入るかどうかが肝なんだ、と思いましたが。まさに『魂』の入った凄い演奏でした。

 第3楽章はハーモニー・リズム完璧、言うことなし!それでいて、ここでも生き生きと音楽の泉がこんこんと湧いてくる感じ。良かったですわ~。
 白眉だったのは、ややアタッカ気味で入った第4楽章。昨日のリハーサルでも本当に美しいと思ったけれど、どこまでも美しく生き生きとした世界で神々しさすら感じました。これは自然への礼賛ですね。4音の音型がどんどん変化していく変奏曲。ああ~自由な世界だな~、背中を伸ばして大きく息を吸い込んで空を見上げながら・・・そんな伸びやかな音楽に何とも言えない感慨が湧いてきます。ホール隅々に行きわたる、この充実した響き、客席を包む昂揚感。

 演奏が終わっても、会場の興奮は冷めやらず、定期演奏会では珍しいアンコール。モーツァルトの魔笛序曲。最後はコンマスの崔さんが一礼して楽団員がステージを離れるまで拍手の熱気は下がることはありませんでした。

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 本当に生き生きとした演奏でした。瞬間瞬間に生まれては消えていく音楽に、指揮者だけではなく、ステージの中で一瞬生まれるインスピレーションが皆に共有されて、瑞々しいオーケストラの響きとしてホールに響き渡る幸福な時間。
 思い出してみると、今まで聴いた岡山フィルの演奏の中にも、そんな瞬間はありました。小泉和裕、ヴィンシャーマン、飯守泰次郎・・・挙げればきりがありません。
20年間の楽団の歴史があり、その中でオケの中に育ってきていたものが、世界最高のオーケストラを知る男がやってきて見事な花を咲かせた。

 そして、この先もこのストーリーは続いていく、ということ。そして自分がそれを見守る聴衆の一員であるということ、これぞ『オーケストラのある街』の醍醐味です。願わくば、この千載一遇のチャンスに、岡山市がこのシェレンベルガー&岡山フィルにもっと投資をしをして、街の顔として育てて入ってほしい。今やらなくてどうする!?っていうぐらい、今回の演奏会には無限の可能性を感じました。この至福の時間が、年に2~3回では少なすぎる!(笑)

 余談・・・ファンなら買うでしょ!買うなら今でしょ!っていうことで、シェレンベルガーTシャツを購入しました。けっこうしっかりした生地で、値段も1300円とお手頃です。シェレ様、岡山フィルのために一肌も二肌も脱ぎますねぇ。

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木曽のあばら屋

こんにちは。
私も聴きました。
良かったです!
ブラコンも英雄も素晴らしかった・・・。
堀米さん、ノってましたね。
さすがの切れ味、随所で(たぶん)快心の笑みがこぼれてました。

英雄は流麗な演奏で、たくましさの中にも優雅さを感じました。
コンマスの崔氏の音が一頭地を抜いて突き抜けていたのが印象的。

by 木曽のあばら屋 (2013-10-13 22:07) 

ヒロノミンV

>木曽のあばら屋さん
 いらっしゃっていたんですね!この素晴らしい時間を共有できて嬉しいです。
 まさに演奏中の堀米さんの豪快な笑みがこの日の演奏の素晴らしさを物語っていました。
 英雄は決して力づくではない、芳醇な響きの中にドイツのシンフォニーのどっしりとしたサウンドが息づいていて、本当に良かったと思います。崔さんの好リードが光りましたね!
by ヒロノミンV (2013-10-14 10:31) 

MU

素晴らしい演奏が聴けて良かったですねー。
私は亡くなったシュルツさんとの二重奏のコンサート
やアンサンブルウィーン=ベルリンにはよく行った
んですが、シェレンベルガーさんの指揮は知らない
ですし、想像ができません。

指揮者としてもたのしみですね!!!
by MU (2013-10-14 22:08) 

ヒロノミンV

>MUさん
 こんばんは。いつも聴いている街のオーケストラがシェレンベルガーさんとともに、素晴らしい音楽を紡ぎだしている、そんな瞬間に立ち会えて幸せでした。
 この就任披露定期に先立って、岡山県北部の学校での公演をこなして、楽団員との関係も密接になった状態でのコンサートだったようです。
 県内の学生を集めて木管のクリニックをやったり、マスタークラスを開いたり・・・。まだ就任して間もないのに獅子奮迅のご活躍です。
 まだ公式発表されていませんが、シェレンベルガー&岡山フィルの東京公演が企画されているようなので、その際、時間がありましたらぜひ行ってみてください。
by ヒロノミンV (2013-10-14 23:29) 

ムース

おー これは 素晴らしい Tシャツですね・・・。しかも値段も素晴らしい。
2000円なら悩みますが1300円なら私も買うでしょうね・・・。
by ムース (2013-10-18 00:51) 

ヒロノミンV

>ムースさん
 個人的には2000円ぐらいとって、オケの運営資金に充てはったらええのに、と思いました。
 近所の健康ランドで風呂上がりに着てみましたが、誰も気づいてくれませんでした(笑)
by ヒロノミンV (2013-10-18 19:20) 

珍言亭ムジクス

関西フィルのHPを見ていたら、来年シェレンベルガーがショスタコーヴィチ5番を振るのを見つけました。
http://www.kansaiphil.jp/modules/concert/index.php?content_id=690
指揮者として日本で幅広く活動していくつもりなのでしょうか。
by 珍言亭ムジクス (2013-10-28 00:04) 

ヒロノミンV

>珍言亭ムジクス様
 情報、ありがとうございます!
 ということは、音友9月号に掲載済みの2月・10月・12月に加えて、7月にも来日ということになるんですね。
 関西フィルは、何度も指揮されているので、これを持ってシェレンベルガー氏の指揮活動の方向性を推し量ることはできませんが、もし7月にも岡山でプログラムが組まれると非常に楽しみなことだと思います。
by ヒロノミンV (2013-10-28 21:44) 

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