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広島交響楽団第19回福山定期演奏会 [コンサート感想]

広島交響楽団 第19回福山定期演奏会

ミヒャエル・ハイドン/トランペット協奏曲第1番
フンメル/トランペット協奏曲

シューマン/交響曲第3番変ホ長調「ライン」

指揮:三ツ橋敬子
トランペット独奏:ルベン・シメオ
コンサートマスター:田野倉雅秋

 この広響福山定期は、これまで土日に開催されてきたのだが、たぶんシメオ君のスケジュールの関係だったんでしょう。金曜日開催ということで、会場の埋まり方は多く見積もっても6割ぐらいにとどまり客足は鈍かった。しかし、公演内容はもう充実の一言!地元企業に招待された中高生も興奮最高潮というコンサートになった。

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(休憩時間中に撮影) 

 個人的には三ツ橋さんの指揮を楽しみにしていたのだが、前半のルベン・シメオのトランペット・ソロが極上だったですねぇ。ほんと、まだまだ若いのに音がまろやかで全く聴き疲れしない。
 まず、交響曲の父、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの弟の、ミヒャエル・ハイドンの協奏曲第1番。ハイドンよりはモーツァルトの影響の方が濃厚に感じられる作風。トランペットもバロック・トランペット(で合ってます?呼び方)で、真っ青な青空に航跡を描いていくようなさわやかな音がホールの空間を跳躍する。

 2曲目のフンメルの協奏曲の方は、ずっとトランペットが登場しっぱなしの、ハードな曲のはずだが、まるで口笛を吹いているかのような軽やかなバルブさばき。そして第3楽章が速い速い!NMLで聴くことができる、どの演奏よりも速かったなあ・・・。そしてオケも必死でついて行っているのか?と思いきや、もうメンバーの大部分が笑顔笑顔!もう、楽しくって仕方がねえぜ!っていう伴奏で、これも見事だった。そして、演奏が終わった瞬間に客席もステージ上も大盛り上がり!皆がシメオ君の超絶天才演奏に酔いしれていた。
 アンコール曲も超絶技巧の連続で、圧巻のバルブさばき。お客さんの数は多くないのに、割れんばかりの拍手だった。

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(サイン会でのルベン・シメオ)

 後半は、シューマンの交響曲第3番「ライン」。これがこれがホンマに歯ごたえのある演奏で圧倒された。三ツ橋敬子さんは、同世代にブザンソン覇者の垣内悠希、山田和樹が居て、大豊作の世代として大変注目されている。
 その指揮姿は、小澤征爾を彷彿とさせるものがあるが、音楽に込める情熱は小林研一郎ゆずりなのかもしれない。本当にエネルギーがほとばしる指揮。

 右手にタクトを持って、リズムを取りながら左手で表情をつけていく感じなのだが、時に左手の方が饒舌な指揮で、「私、こんな音が欲しいんです!」とオケに迫っていく。演奏前後のステージマナーは、本当に腰が低くて控えめな雰囲気を感じさせるのに、いざ演奏が始まると凄いんですな、これが。
 最近自分が聞いた若手指揮者さんは、みな本当にバトンテクニックが凄い。演奏する方も、さぞ指揮が見やすかろう、と思う。しかし、これほど貪欲に前のめりに音楽に没入していく指揮者は久しぶりに見た。ややもすれば冗長になるこの交響曲を、5楽章息をもつかせぬ演奏で疾走するさまは爽快だった。老練と円熟を極めた巨匠のタクトを楽しむのも醍醐味やけど、こうして若い指揮者のほとばしる情熱を感じるのも醍醐味。

 広響は若手の期待の星を盛り立てる、というよりも、一緒に楽しんじゃおう!という雰囲気が本当に良い感じ。
このオケのメンバーは、本当に音楽が好きなんだな~と思えるほど、本当に楽しそうに、充実した空気で演奏する。
 第1楽章と第5楽章の終結部へ向かう音楽の盛り上がり、この一体感、そしてこの『風』!!
 生演奏の一番の醍醐味は、オーケストラの風を感じることができるかどうか。これは家でCDを聴いていても全然感じ取れない。三ツ橋さんは音楽の流れをしっかりと掴んで、風を作り出すことができる指揮者だった。

 
 そして広響の演奏のレベルの高さには、本当に脱帽。この福山定期で年に1度は広響の演奏に接しているけれど、どんどん高みを極めていっている気がする。地方公演でこのレベルだとしたら、3日間みっちり仕込んでくる、本拠地での定期演奏会だと、どれほどの演奏を聞かせるのだろうか。今年はぜひ広島に行って確かめたいと思う。
 弦楽器の芳醇な響き、木管のレベルの高さとハーモニー、そしてそして特にこの日の金管の安定感は素晴らしかった。これほど安定した金管陣は西日本ではおそらく京響とOEKぐらいのものだろうと思う。三ツ橋さんがカーテンコールの時に、真っ先にホルンを称えたのも分かります。ラインでのホルンの演奏はずっと心に残るものとなりそう。

 この日のプログラムは、本当に良くできていて、さすがに19回目の地方定期公演ということで、お客さんの方も存分に楽しめたんじゃないだろうか?
 こういうプログラムにこそ、もっとお客さんが入って欲しいな、と思います。でないと、ドヴォルザークの新世界ばっかりになってしまいますがな。

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