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至高の名演!! ブロムシュテット&バンベルク響のブルックナー4番 [コンサート感想]

 この秋初めての県外遠征は、バンベルク交響楽団の兵庫芸文公演。12時に岡山の家を出て、18時には家に帰ってくるという超強行日程だった・・・やればできるもんやな(真珠の耳飾りの少女は、またおあずけになったけど


banberg.jpg
 今日は本当に色々な事がありすぎた。しかし、本当に来て良かった。この日のブルックナー4番は、自分の音楽鑑賞人生を変えるものになる予感さえする。ブロムシュテットの85歳とは思えない鮮やかなタクトは、ある意味予想の範囲内。しかし、オーケストラは予想を超えていた。バンベルク交響楽団。これほど実力・底力のあるオーケストラだったとは・・・。とにかく金管が強力かつ鉄壁、弦も木管も実力者ぞろいだ。この実力は世界の10大オーケストラの中に入ってくるのではないだろうか?

 前半は・・・アンデルジェフスキのピアノは魔法のような繊細なタッチ、宝石のような輝き。何事もなければ今まで聞いたモーツァルト演奏ではぶっちぎりのNo.1になったでしょう。しかしそれは補聴器のハウリング音ですべて台無しになりました。アンデルジェフスキのピアノを思いだそうとすると、キーンというハウリング音まで一緒に思いだしてしまうんだな・・・

 ということで、この前半の演奏は、しばらく脳の奥底に眠らせて、色んな雑音が消えてアンデルジェススキの演奏の印象だけが取り出せるようになるまで熟成させます。
 (出来れば、もしコメント下さる方がいらっしゃったら、前半の『事件』については触れないで頂けたら、と思います。もう思い出したくありません)

 無理繰りスケジュールを調整して、岡山から出て来て、こんな目にあうなんて・・・、本当に泣きそうになりながら後半を待つ。 

 劇場GMの謝罪と、犯人探し(?)のあと(余談だけど・・・あの時、ハウリング音の主が解ってたら、どうなっていただろう・・・。また騒然となってブルックナーどころでは無くなっていたかもしれない)、まだまだ落ち着かない雰囲気の残る会場の中で、ブルックナーの演奏が始まる。

 冒頭のホルンが予想より大きな音で驚きました。ブロムシュテットの解釈なのか?会場の雰囲気を一気に音楽に引き込むためのものだったのかは解りませんが、これで聴く者の気持ちが完全に入れ替わりました。主題が出てくる前の弦のトレモロが震えるほど美しい。
 とにかく第一楽章から圧倒されました。あまりの素晴らしい響きに卒倒しそうになる。これはまさに神の祝福の演奏だ!舞台から後光が差しているように見えた。ブロムシュテットはSKDと81年にこの曲を録音し、(一部の偏狭な評論家を除いて)名盤として誉れ高い演奏。しかし、最近出たゲヴァントハウス管のと演奏は、SKDとの録音よりもさらに充実し、押し出しの強いスタイルに変わっていた。

 この日のバンベルク響のと演奏は、そのゲヴァントハウス管との演奏よりもさらに力強く・懐の深い素晴らしい演奏と思った。もちろん実演に接したというのもあるが、なにか幸せな光に包まれるような、得も言われぬ幸福感に満ちた演奏だったからだ。
 この曲でイマイチ良さが解らなかった第2楽章。これが素晴らしかった。こんなに美しくも神々しい音楽だったとは。この楽章だけで一つのドラマを描ききったようなブロムシュテットのタクトに脱帽。

 しかし、僕にとっての最大の感動は、第3楽章だった。あの金管で何度も高らかに歌い上げられる印象的なメロディー。弦のトレモロの中で、あまりにも神々しく迫力満点で鳴りきる金管のトゥッティー、そのハーモニーにつつまれている瞬間。みぞおちから首筋にかけて震えが来た!心が震える演奏、というのは 何度も経験しているつもりだったが、本当に心が文字通り『震えた』のは、初めてだったかもしれない。
 もうこのオーケストラの響きが素晴らしすぎて素晴らしすぎて・・・、第1楽章から涙腺が緩みっぱなしだったところに、一層神々しい響きが天から降り注いで・・・。ここ最近、色々と辛い事、考える事があり、それでも、お付き合いのあるブロガーさんが激賞なさっているのをみて、突き動かされるようにここまで来て、本当に良かった・・・。
 同じメロディーが少し形を変えて登場するこの『狩りのスケルツォ』。そのたびに大きな感動の渦に巻き込まれる。このまま終わってくれるな!心の中で叫びたい気持だった。

 第4楽章は、進むごとにどんどん音楽が巨大で壮大なものになっていき、その大伽藍が立ち現れどんどん迫ってくる迫力に打ちのめされた。言葉に表すとテンポやダイナミクスを動かす、ということになるのだろうが、ブロムシュテットとバンベルグ響は、もうここしかない!という阿吽の呼吸で一体となって音楽が動いていく。この楽章は普段なら少し冗長に感じる部分もあるのだが、バンベルグ響の鉄壁のアンサンブルと神々しいまでの響きを堪能するには、時間が短すぎると感じたほどだった。ブルックナーの素晴らしさを心の底から、体の隅々まで味わった、至福の70分だった。

 ずっと拍手をし続けた。やや空席が目立った会場であったが、最後は客席一体となったオベーションだった。そうだった、ここはブルックナーの東洋における聖地:大阪から15分の至近距離にある劇場なのだ。大阪の巨匠は92歳で天に召された。85歳のブロムシュテットのブルックナーは、どこまで高みに登り続けるのだろうか。

モーツァルト/ピアノ協奏曲第17番
ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
バンベルク交響楽団
ピアノ独奏:ピョートル・アンデルジェフスキ

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じゃく3

ヒロノミンVさん、こんばんは。

>なにか幸せな光に包まれるような、得も言われぬ幸福感に満ちた演奏だったからだ。

僕は東京の同プログラムの演奏会を聴きました。本当に、そのとおりでした。ブロムシュテットさんもオーケストラの方々も、それを聴く聴衆も、幸せに満たされた演奏会でした。今もこの幸福感が続いています。やがて具体的な記憶はおぼろげになっていくのかもしれないけれど、今回の体験が、心に何か残っていくような気がします。


by じゃく3 (2012-11-12 00:13) 

ヒロノミンV

>じゃく3さん
 コメントありがとうございます!無事、当日券をゲットして聴く事が出来ました。
 駅に行く途中で激しい雨に祟られたり、その他もろもろ大変な一日でしたが、こんなに凄い演奏に出会えるとは・・・
 じゃく3さんのブログを見て、自分の『聴きたい!』という衝動に従って行動して良かったと思います。本当にありがとうございました。

>やがて具体的な記憶はおぼろげになっていくのかもしれないけれど、今回の体験が、心に何か残っていくような気がします。

 本当に同感です!バンベルク響も凄いし、ブロムシュテットさんも素晴らしかったですが、ブルックナーってやっぱり凄いですね。ブルックナーだからこそ得られた深い深い感動だと思います。
by ヒロノミンV (2012-11-12 00:27) 

Masa

はじめてコメントさせて頂きます。
僕のその場におりました。三重県から遠征しました。
もう本当に最高のブルックナーでした。感動しました。
本当にお元気なブロムシュテット氏、これからもますますのご活躍を願うばかりです。

by Masa (2012-11-12 14:02) 

ヒロノミンV

>Masaさん
 こちらこそ初めまして!
 本当に最高のブルックナーでしたね!この演奏は後々までずっと記憶に残る演奏になると確信しています。
 アンデルジェフスキさんのピアノも、必ずもう一度聴きに行きたいと思っています。 
 ブログの方も拝見しました。精力的に色々な場所へ聴きにいってらっしゃるんですね。よろしければ、今後ともよろしくお願いいたします。
by ヒロノミンV (2012-11-12 19:57) 

にゃお10

マリインスキーと公演日が重ならなければ、間違いなく聴きに行っていました。
バンベルク響については、ホルスト・シュタインの追悼番組で、
確かブラームスの交響曲を放送したのを聴いて印象に残っています。
ヒロノミンVさんの感想を読ませて頂いてますと、聴き逃した感が半端ないです。
by にゃお10 (2012-11-12 22:22) 

にゃお10

追伸

すみません。
ブロムシュテット&バンベルク響で、私が行きたかったのは、京都公演です。
by にゃお10 (2012-11-12 22:32) 

ヒロノミンV

>にゃお10さん
 にゃお10さんは京都公演を検討してらしたのですか。ベートーヴェンの3番と7番、どちらもブロムシュテットの十八番で、こちらもいい演奏会だったようですね。
 個人的には、今のブロムシュテットを聴くには、ブルックナーが一番だと思っています。しかし、このブルックナーの4番は僕の予想をはるかに超えた感銘を与えてくれました。
 バンベルク響も、次回の来日の際には、ぜひ聴いてみてください!独特の個性のあるオーケストラです。
by ヒロノミンV (2012-11-13 19:19) 

トミーチョ

11/11に愛知県一宮市から兵庫に聞きに行きました。
名古屋公演ではベートヴェン・プログラムだったので(これはこれで素晴らしいのですが…)、やはりブル4を聴きたくて、愛知から兵庫に行きました。
圧倒されました! ブロムシュテットの柔らか、かつ生き生きしたフレーズも大変魅力的でしたが、なんと言ってもバンベルク響の、音の響きの美しいこと!! 弦も菅も全てが完璧と思えるひと時でした!! 人生最高のブルックナーに出会えた1日でした!! 感謝!
by トミーチョ (2012-11-13 22:34) 

ヒロノミンV

>トミーチョさん
 こんばんは!!コメントありがとうございます。
 あれから2日も経っているのですが、未だに第3楽章の狩りのスケルツォの響きがずっと頭の中で鳴り響いています。
 僕も同じく、ブロムシュテットのブルックナー4番だから、素晴らしい演奏が聴ける事は、全く疑いが無かったのですが、バンベルク響の美しくも豊かな響きにノックアウトされてしまいました。
 僕は今後、これを凌駕する(あるいは匹敵する)ブルックナー4番を聴けるだろうか・・・とさえ思います。このコンビで次回の来日を、今から期待したいです!!
by ヒロノミンV (2012-11-14 00:06) 

MU

てっきりniceを押したものだと
思っておりました。失礼いたしました。

最近はコンサートを聴きに行くことが
めっきり少なくなりました。

どんなにCDやLPが好きでもやっぱり
実演が一番だと思っているので、
私も大好きなブルックナーの実演を
聴きに行きたくなりました。

by MU (2012-11-16 09:54) 

ヒロノミンV

>MUさん
 コメントありがとうございます。
 僕も闘病中の義父のこともあるので、前売チケットを購入して、ということが出来なくなっています。
 今回のコンサートは、当日券で聴きに行きました。縁があれば素晴らしいコンサートに出会えるものですね。

 MUさんも、『今日、コンサートに行ってみようかな』という時にふらっと行ってみるのもいいかもしれませんよ。
 といっても東京・横浜は当日券が買えるコンサートは少ないかもしれませんが。
by ヒロノミンV (2012-11-16 22:14) 

ムース

素晴らしい演奏だったことが記事から伺え、大変うらやましい限りです。4番はともすると平板になりがちな曲かと思うのですが、察するにどれだけ凄かったのか、ライブであるということを差し引いても想像できません。
 それにしても少しチケットが安いような気がします。ドレスデンの半額以下ですね、大変お買い得だったと思います。
by ムース (2012-11-20 00:27) 

ヒロノミンV

>ムースさん
 コメントありがとうございます。確かにチケット代がお手頃でしたね。当日券でも12000円でそこそこの席で聴けましたから大満足です。
 あまり触れられませんでしたが、前半のソリストのアンデルジェフスキも実力派、ブロムシュテットは現役最高峰のブルックナー指揮者。そしてバンベルク響が、SKドレスデンや、ゲヴァントハウス管と並ぶ実力と個性的な響きを持つオーケストラで、大変満足しました。
by ヒロノミンV (2012-11-20 20:46) 

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