チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団2015 岡山公演 [コンサート感想]
チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団2015 岡山公演
スメタナ/連作交響詩『わが祖国』から「モルダウ」
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
~休憩~
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
ソリスト・アンコール/ヤナーチェク:「草かげの小径にて」第1集より 第4番「フリーデクの聖母マリア」
オーケストラ・アンコール/ドヴォルザーク:スラブ舞曲集 第2集第7番
指揮:レオシュ・スワロフスキー
ピアノ独奏:イーヴォ・カハーネク
2015年11月13日 岡山シンフォニーホール
ほぼ2~3年おきぐらいに岡山に来てくれている、ブルノ・フィルですが・・・。お客さんの入りはさみしかったですなぁ~。3階席は閉鎖で1階席が4割弱。2階席は6割ぐらいだからトータルして3割5分(700人ぐらい)の入りでしょうか。
編成は14型の2管編成通常配置、右翼はチェロがアウトでした。
7,8年前のアルトリヒテルという指揮者の時に今回とまったく同じプログラムで一度聞いています。その時も半分ぐらいしか入っていなかったが今回はもっと少なかったです。
しかしオーケストラが醸し出すハーモニーの、響きの心地よいこと。これは日本のオーケストラではなかなか出せない『味』だと思いました。モルダウのレガートの連続で盛り上げていくところなどは、なんて気持ちのいい音楽だろう、とウットリ。
ドヴォルザークの新世界では、さすがにアンサンブルのほころびは少なかったです。この曲なんて指揮者が居なくても自動演奏出来るでしょうが、かといって演奏がマンネリになっているわけでは無く、スワロフスキーの色々なエッセンスを色づけしていくタクトから、使い込まれた高級家具のような黒光りするような照りと柔らかいサウンドが発せられ、たとえトゥッティーでも音が割れたり硬くなったりせず、弦の音がしっかり聞こえてくる。終始、木のぬくもりを感じるような、素朴で自然んで五感を優しく刺激するサウンドにあふれていて、黒人霊歌のモチーフのメロディーも、彼らの手にかかれば中欧の農村を逍遥しているような感覚に襲われてしまう。
オーケストラの方も、人間の情感をどう表現につなげるか。そこに重点を置いているように思います。
ピアノ協奏曲は、カハーネクが素晴らしいテクニックとピアノを存分に鳴らしきる豪快な打鍵と、弱音部も空気が張りつめるような演奏を聞かせ、会場も大いに盛り上がりました。正直、光○社系のアーティストということであまり期待しないようにしていたんですが、ここまで聴かせる演奏になるとは、うれしい誤算でした。調べてみると既にベルリン・フィルにもデビュー済みとのこと。今後も要チェックです。
最後に、主催者にひとこと
冒頭にも触れたとおり、以前とまったく同じプログラムを持ってくるのはどうなんでしょう?その後の来日時も「新世界より」やチャイコフスキーの5番・6番が多かったように記憶しています。ブルノ・フィル以外にも、同じプロモーターによるウクライナやモスクワやアルメニア、バルト三国などの東ヨーロッパのオーケストラを招聘してのコンサートはチャイコフスキー5,6番にドヴォルザークの新世界ばかり…
このプロモーターさんは、三大都市圏以外の岡山のような中規模の地方都市でツアーを組んで下さるので、本当に貴重な存在なんですが、 地方都市ではド名曲プログラムでないと集客できないとの思い込みがあるんじゃないでしょうか。今までこの種のコンサートに行っていた客層は、典型的な『豊かな中所得者層』で、クラシックを深く掘り下げては聴かないけれど、年に何回か自分たちの生活に「クラシック音楽」をうまく取り込んで生活を豊かにしてきた層。でも、もう日本の地方都市にはそんな層は無くなりつつある。高齢化によって現役時代の半分の収入でやりくりする年金生活者には、夫婦で19000円のチケット代は出しにくい。若い世代も90年代から平均収入が100万円以上も減少している現状では、コンサートにお金は割けない。
そんなにマニアックなプログラムにしなくてもいいんです。今回のコンサートでも木管奏者を中心に前半と後半でメンバーが入れ替わってましたから、おそらく4管編成が帯同していますよね。であれば、
マーラー:交響曲第1番「巨人」、交響曲第5番
ブルックナー:交響曲第3,4,5,7,8,9番
R.シュトラウスの管弦楽曲
あたりも、やろうと思えば演奏できるわけです。実際、ブルノ・フィルは今シーズンはアレクサンダー・マルコヴィッチの指揮でマーラー5番を現地の定期演奏会で取り上げています。
僕は、このオーケストラの木質感のあるぬくもりのある音色を思えば、ブルックナーをやってほしいな、と思います。革命的・現代的なブルックナー演奏ではなく、レーグナー&ベルリン放送響のような懐の深い、おおらかな味わい深いブルックナー。それがブルノ・フィルなら提供できる。世界的にオーケストラの音が画一化していく中、あのローカル色豊かな大らかなサウンドは魅力的ですよ。
実はもう1点、要望があるんですが、これは岡山シンフォニーホール側の問題なので、また記事を改めます。
ヒロノミンV様
感想楽しみにしていました。私も昨年のN響以来、久しぶりにシンフォニーに足を運びました。二階席にいましたが、あまりの空席に申し訳ない気分でした。オーケストラは強行軍のせいか、かなりミスが目立ち、今ひとつ乗れませんでしたが、さすがに新世界あたりからエンジンがかかり、アンコールで全開だった感じがしました。ご指摘の通り、名曲コンサートのプログラムで新鮮味がなく、それでも本場の新世界が聴けるからと行った次第。同時期にチェコフィルも来日しており、もうチェコのドボルザークだからとか、ロシアのチャイコフスキーだからとかだけでは客は集まらないかも知れませんね。ともかく、岡山でもっともっとコンサートが聴きたいところです。ブルックナー、いいですね。全くの同感です。
by かず (2015-11-16 22:16)
>かずさま
コメントありがとうございます!
最近は岡山でコンサート感想のブログを書いている方も少なくなり、こうしてコメントを頂けるのが楽しみですし、励みにもなります。
これだけ空席が多いと、団員さんも気持ちが乗って来ないと思うんですよね。「新世界より」とアンコールのスラヴ舞曲集は流石の演奏でしたが、僕はもっとこの楽団のポテンシャルが発揮される楽曲が聴いてみたいと思いました。
関西のホールの関係者の方に話を聞くと、オーケストラ曲のテッパンプログラムが変わって来ていて、マーラー1番・5番・9番、ブルックナー4番・7番、幻想交響曲、ラフマニノフの2番、シベリウスの2番だそうです。岡山の聴衆の傾向もこれに近づいていると思います。
by ヒロノミンV (2015-11-17 20:49)
こんにちは。
このコンサートは、ちょっと迷ったのですが、
プログラムがあまりにも面白みがなくて、やめました。
たしかにブルックナーだったら聴きに行ったかも。
じつはまだ生で聴いたことないのです、ブルックナー。
by 木曽のあばら屋 (2015-11-17 22:25)
主催者さん、やはりプログラムをブルックナーにしたら、3人増員は確実ですよ!(笑)
>木曽のあばら屋さん
そうなんですよ!岡山・瀬戸内地方って、あんがいブルックナーがかからないんですよね。
ドヴォルザークの新世界より、も名曲には違いないんですが、コンサートの少ないこの地でも、飽きるほどかかるプログラム。
次回も同じようなプログラムなら、入場者が定員の3割を切るかもしれません。
by ヒロノミンV (2015-11-18 19:54)