ルネスホール ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 松本和将 [コンサート感想]
ルネスホール特別企画
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会第3回 松本和将
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番ハ短調「悲愴」
〃 / 〃 第18番ホ長調
〃 / 〃 第9番ホ長調
〃 / 〃 第30番ホ長調
ピアノ独奏:松本和将
ルネスホールが主催する、岡山出身の3名のプロ・ピアニスト(有森博、川島基、松本和将)による、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会のシリーズ。
前から注目していたシリーズなのに、他のコンサートと重なったりして、第3回目にしてようやく聴きに行くことが出来ました。
今回は松本和将さんによる、9、18,8,30番ソナタ。松本さんのピアノはたぶん片手では足りなくて両手で数えないといけないほど聴いてきましたが、僕は大きな誤解をしていたようです。その超絶技巧の持ち主にして表現のパレットの多彩さから、ショパン、リストあるいはラフマニノフ弾きという認識で、事実それらのロマン派の作曲家の演奏に接してきたのですが、彼の血となり肉となって音楽の根幹をなすものは、間違いなくベートーヴェンだということを思い知らされました。
圧巻だったのは第30番のソナタ。その美しさ、神々しさはずっと耳に残っていくであろう、素晴らしい演奏でした。
(以下、1月19日追記)
会場は満員です。固定椅子のホールではないので、チケットの売れ行きによってホールの椅子の数を調整できるんですが、今回はビッシリ並べて満席といった感じで地元での松本さんの人気の高さを感じさせます。
2曲目はピアノ・ソナタ第18番。悲愴ソナタとは雰囲気が全く違う曲で、松本さんの躍動感あふれるピアにズムと色彩の豊かさがいかんなく発揮された演奏になりました。一方でベートーヴェンの楽曲に一貫して醸し出される崇高な雰囲気がこの曲にもあります。この曲、本当にいい曲ですね。ベートーヴェンのがっしりとした構成の中にロマン的な情緒が溢れています。
最後の30番ソナタ。松本さんの思い入れも相当なもので、演奏開始まで20秒ほど時間を掛けて集中力を高めてらっしゃったのが印象的。第2楽章のピリピリとした、でも心地よい緊張感の後の、第3楽章の純白の雲の中を浮遊する様な真っ白な世界。本当に堪能しました。ピアノ演奏そのものも素晴らしいものでしたが、松本さんのこれまでの人生や人柄や(その中に確かにここ、岡山・倉敷での日々も入っているんですね)、音楽に対する真摯な姿勢が行間からにじみ出て来るような世界に心地よく身を委ねました。
このチクルスでは、スタンプラリーもやっていて、全9回のうち、9回全部あるいは5回以上聴いた人には記念品が贈られるようです。僕は第1回、2回を聞いていないのでコンプリートは無理なんですが5回出席は達成したいなあ。もしベートーヴェンのピアノ・ソナタを生演奏で全曲プロの演奏で聴けたなら記念品以上に何か大事なものを得られるんじゃないでしょうか。
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