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岡山フィル 第九演奏会 シエレンベルガー指揮 [コンサート感想]

岡山フィル ベートーヴェン「第九」演奏会

ハイドン/オーボエ協奏曲ハ長調※
~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」

指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
オーボエ独奏※ :  〃
ソプラノ:秦茂子
アルト:小林真理
テノール:柾木和敬
バス:千葉裕一
合唱:第九を歌う市民の会
 合唱指揮:羽山晃生
ゲストコンサートマスター:戸澤哲夫

 選挙特番を見ながら、今日の第九の余韻に浸っています。

 シェレンベルガーの第九、それは想像を超えるものでした。演奏時間を計っていなかったのだけれど、63分ぐらいでしたかね?12型2館編成のオーケストラも200人を超える大合唱団も、容赦なく追い込んでいくシェレンベルガーのタクトはまさに鬼気迫るもの。

 演奏的には細かいところに傷(ミスというより『落ちる』場面が)もあった演奏ですが、「今年も第九歌えてよかったね~」的なルーティンな雰囲気を破壊し、鞭を振るって光の向こう側へ一丸となって突進するステージ上の人々が神々しかった・・・・。本当に凄い演奏を聴かせてもらいました。

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 客席はほぼ満員です。が、しかしところどころ虫食いの様に空席があったのでチケットを持っていながら来なかった人が割と居た感じですね。90%少し上回るぐらいの入りか?なんと勿体ない事を・・・

 編成は前半のハイドンは10型、後半のベートーヴェンは12型の2管編成、高音弦→低音弦のステレオの通常配置でした。

 まずは、ハイドンのオーボエ協奏曲。独奏はもちろんシェレンベルガーです。この曲はヴァント&ケルン放送交響楽団とのライブ演奏で親しんでいて、「コンサートでやってくれないかな?」と思っていたので、生演奏で来けて本当に良かった。

 結論から言うと、シェレンベルガーの本来のレベルから行くと、出来は今一つ・・・だったんじゃないかな~と(なんと不遜な感想を)。やっぱり吹き振りということで、演奏者の意識のリソースがオーケストラのコントロールに取られる分、楽器の演奏の方は万全とは行かない感じなのかな。
 10月に奥さんとのリサイタルを聴いて、次元と格の違うシェレンベルガーのオーボエの世界レベルの演奏に酔いしれた記憶も新しいので、ちょっと辛口の感想にはなりましたが、それでもシェレンベルガーのオーボエの突き抜けた高音と、表情の豊かさ柔らかさは充分に堪能できましたよ。特に第2楽章は絶品でしたね。   
 意外と言ったら失礼か?オケの伴奏が非常に柔らかいサウンドでサポートしていて、その岡山フィルのサウンドがシェレンベルガーのオーボエとうまく溶け合っていて、この編成だと岡山フィルのコアメンバーが中心になるのですが、シェレンベルガーと岡山フィルのメンバーが音楽を通じて対話を楽しんでいるようで、痛快でしたね。これを聞けるのは岡山でしか聴けないのですから!こういうサウンドを聴くと、シェレンベルガーでハイドンやモーツァルトを徹底的に極めてほしいと思いますね。

 後半の第九はテンポ感はかなり速かった!楽譜はベーレンライター版でしょうね。正確な時間は分からないけど、63分ぐらいでしたかね。パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルの演奏とほぼ同じぐらいのテンポ感。アバド&ベルリン・フィルよりも速かった。
 第1楽章からシェレンベルガーの真骨頂のピュアサウンドを追及して、フレーズの終わりをシュッと切り落とすアプローチで、小気味のいい音楽が進んでいく。
 一方で、内声部が非常に充実していて、激しくがなり立てたり力で押したりしないのに、豊かな響きが広がっていくのは、もうシェレンベルガー&岡山フィルの真骨頂のサウンドと言ってもいいでしょう。
 12型の2管編成でこのテンポ感を持続し続けるためには、音の立ち上がりの切れ味が鋭くないと出来ない。この日の岡山フィルはよく対応したと思う。
 しかし、オケの中にはやはりついて行けない人も居てビシッとは揃わないんですね。第3楽章なんて、緩徐楽章だと思っていたのに、速い速い!ここの後半の弦楽器は大変だったと思う。第2楽章でもシェレンベルガーの気迫は相当なもので、この人の肉体にはベートーヴェンと同じ民族の血が流れているんだ!そのことを感じざるを得ない猛烈な説得力でもって、オケに対して容赦なく鞭を振るうように飛ばしていく。

 全体を通して感じたのは、普段聞いている第九とはイントネーションが違ったんです。第九と言えば、ここでタメが入るよな、ここでテヌートで強調するよな、という部分は全部予想を裏切られ、常に心臓の鼓動のようなリズムに溢れていた。この鼓動のリズムの流れを阻害するような余計なタメやテンポの揺らぎを徹底的に排除した演奏であったと思う。鼓動と同時に重視されたのは呼吸感。血の通った生命の呼吸、息遣いがずっと全曲通して聞こえる。

 やはり圧巻だったのは第4楽章です。例えば、あの劇的な『神の前に!』の場面の後に、不必要に長い間は置かず、流れを断ち切らないようにすぐにトルコ調マーチが立ち上がる。クライマックスは『兄弟よ、自らの道を勧め。英雄のように喜ばしく勝利を目指せ』の場面から始まっていた。ここで第1楽章から続いてきた鼓動が最高潮に達し、聴く者の心を掴みます。その昂揚感がずっと『すべての人々は兄弟となる』のあの場面まで続いたところに鳥肌が立ちっぱなしだった。

 一番最後のマーチのあと、既存の第九ならテンポをグッと落としてじっくり溜めて溜める場面も疾走するように押し切った。「喜びよ 神々の麗しき霊感よ」の場面。コバケンさんの時は20秒ぐらいかけてたけど(爆)5秒ぐらいで走り去った。このベーレンライター版独特のアクセントを生演奏で聴いたのは初めて。
 冒頭にも書いた通り、光に向かってステージ上が心を一つにして怒涛のごとく横一線にゴールテープを切る様な圧巻の最後でした。今まで慣れ親しんできた第九とは違っていたが、今聴いている第九が非常に強い説得力を持っていた。ベートーヴェンを聴いた!という充足感に満たされた。

 合唱団のコーラスからもずっと鼓動が聞こえてきて、巨大な声のパルスとなってホールを埋め尽くしました。テクニックとしては今までのイディオムは殆ど使えなかったと思うが、これも20年の積み重ねでしょうか。シェレンベルガーのタクトによくついて行ったと思います。

 ただ、欲を言えば合唱もオケももう1日合わせる時間が持てればもっと完成度は上がったのではないかと思う。(例年通りだとすると2日間で合わせたんでしょう?違いますか?)

 今まで岡山フィルの第九は、ぱっと来てさっと振って帰る客演指揮者の手によって演奏されてきた。その中にはいい演奏も確かにあった。
 しかし今回の第九は全然意味合いが違う。岡山フィルにとっても岡山の音楽文化の歴史にとっても大きな一ページになったと思う。オケの首席指揮者が振った第九演奏会。その首席指揮者が自分のイメージするベートーヴェンの第9番を妥協なく提示し、オケも合唱も声楽もそれについて行った。この日の、最後のゴールの向こう側の光へ向かって突進したステージを僕は一生忘れませんよ。

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eri yoshii

ヒロノミンさん。お久しぶりです。
いらして下さっていたのですね。ありがとうございます。
合唱との練習は、前々日のピアノプローベ
前日のオケ合わせ
当日のゲネでした。
細かいことはtwitterの方のメッセージに送らせていただきますね。
by eri yoshii (2014-12-15 23:50) 

ヒロノミンV

>eri yoshiiさん
 コメント有難うございます。と、ド素人が不遜な感想を書いてスミマセン・・・と最初に謝らせていただきます↘
 ピアノ伴奏でも指揮者と合わせていたのですね。じゃあ金曜日からみっちりということですね。お仕事もある方が多いでしょうに、本当に頭が下がります。
 今まで聴衆として沢山第九を聴いてきました。関西や広島のプロの演奏も聴きましたが、一番、説得力を持って迫って来る演奏でした。twitterの方はなぜか古いPCからしかログイン出来ないので、また明日確認させていただきます。ともかく、お疲れ様でした!来年もシェレンベルガーの指揮で第九を聴きたいです!
by ヒロノミンV (2014-12-16 00:14) 

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