デュオ・クラングフォル演奏会vol:2

デュオ・クラングフォル演奏会vol:2　～低音の響きの世界～

チェロ：山田健史
チェロ：河本直樹
ピアノ伴奏：中島尚子

プログラム
クープラン／コンセール第13番
ヴィヴァルディ／チェロ・ソナタ第5番
スーク／バラード（コントラバス・ソロ）
ヴィヴァルディ／チェロとコントラバスのための協奏曲（原曲：２本のチェロのための協奏曲）
Ｊ．Ｓ．バッハ／ソナタハ長調
ハイドン／ヂュエット
ピアソラ／４つのタンゴ
ボッテジーニ／パッショーネ・アモローザ

２０１３年１２月６日　日本福音ルーテル岡山教会

　少し時間が経ちましたが、簡単に感想を書き留めておきます。 

　『デュオ・クラングフォル』はチェロとコントラバスの低音二重奏の室内アンサンブル、クラングフォルとはドイツ語で「響きの豊かな」という意味だそうです。その名の通り、キャパ１００人ほどの礼拝堂は、チェロとコントラバスが鳴り出すと同時に、建物全体が鳴り響く感じで、特に床からの振動はホールでのコンサートでは感じられない感覚です。

　６月に聴いて非常に印象に残ったルネスホールでの室内楽のつどい以来、特にチェロの山田健史さんのコンサートには一度行ってみたいと思っていたのです。それに加えて、コントラバスの河本さんからはいつも丁寧な手書きの案内はがきを頂いていて、会場も自転車で１０分ぐらいの場所だということで足を運んでみた次第です。

 

　本当に素敵なデザインですよね。芸大仲間のデザインでしょうか。
　岡山（に限らず地方都市はどこもそうなのでしょうが）でのこういうコンサートは、奏者の同級生や仲間内、師匠・弟子筋の内輪で盛り上がっているようなものが多く、私のようなリスナー専門の素人聴衆には入りにくいものが多いのですが、このコンサートは全くそんなことは無く、『多くの人に自分たちの音楽を聴いて欲しい』という音楽家の欲求がほとばしるものでした。プログラムからチケットに至るまで、気持ちのこもったもので、１００人ほどのコンサートでここまで丁寧な仕事に頭が下がります。

　チェロの山田さんの演奏は、やはり素晴らしく、それどころか６月に聴いたときよりもさらにハイレベルの演奏になっているように感じました。ヴィヴァルディのチェロ・ソナタ５番のアップテンポな第２、４楽章での早いパッセージは胸のすくような溌剌とした演奏、バッハのソナタでのピンと張りつめたような・・・それでいて高潔で折り目の正しいバッハの世界を見事に表現。チェロの輝かしい響きに浸ることが出来ました。
　山田さん、まだ２０代半ばぐらいですよね。これから国内外に活躍の場をますます広げることは間違いないチェリストだと思います。出来れば、地元の岡山フィルが山田さんをソリストに迎えて、定期演奏会で協奏曲を演奏するようなプログラムが組まれてもいいんじゃないでしょうか？これほど素晴らしい方が、まだまだ地元の岡山で一般的には名前が知られていないのはいかにも惜しい気がします。

　この日のハイライトはピアソラの「４つのタンゴ」だったのではないでしょうか？二人の丁々発止の音のやり取りには息をつかせぬ緊張感がありました。
　コントラバスの河本さんは、３曲目のスークのバラードでの味わい深い響きなど、心にしみわたる音で大変魅力的。椅子に座ることなく、左手を上げたり下げたり弦の上を駆け回り、同時に右手では力強いボウイングを繰り出し、近くで拝見すると本当に大変な作業だなあと。これは体にかかる負担も相当なものだろうなあ（腰を痛めたりしないのだろうか・・・）と思います。
　この日のプログラムは、例えば４曲目のヴィヴァルディ『２つのチェロのための協奏曲』をチェロのコントラバスの二重奏で演奏したりと、コントラバス以外の楽器のための楽曲を演奏されていました。そのためか、安定したチェロの演奏に対して、コントラバスの苦労が偲ばれる・・・演奏があって、若干、バランスを欠いた感じがあったのも事実です（偉そうに書いてすみません・・・）。
　しかし、このチェロとコントラバスの二重奏は、なかなか聴けないサウンドで、本当に聴いていて楽しかったのです。コントラバスの巨体から出るサウンドは、体を揺さぶるような振動はもちろん、高音では意外にチャーミングな音がでるんですよね。チェロは本当に良く歌いますね。こちらは体をやさしく包んでくれる感じ。

　当初は、チェロとコントラバス、それにプラスしてピアノとの二重奏・三重奏という、『これで２時間もつんかいな』と一瞬思ったりしましたが、聴き終わると『まだまだ聴きたい！』という気持ちになります。

　岡山でこのデュオの第3回のコンサートがあれば、また行こうかと思っています。