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大阪クラシック2013 第100公演 [コンサート感想]

 まずは最終公演から感想を整理します。

大阪クラシック2013 第100公演(最終公演)

モーツァルト/交響曲第41番「ジュピター」第4楽章から
チャイコフスキー/交響曲第4番

大植英次指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

 8回目の大阪クラシック、僕が参加したのは4回目ですが、最終公演に来れたのはこれが2回目。中之島の公会堂で聴く最終公演は初めての経験です。
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館内の雰囲気も、昼間とは一変しますね。
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 自分の座席はさ行の列だったんですが、大集会室のステージにはオーケストラは乗り切れないためか、普段は座席になっている位置にオケが陣取り、実質前から3列目というかぶりつきの位置になりました(汗)
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 オケの目線と同じ高さなので、かぶりつきの割にオケ全体が良く見渡せます。音は高音弦と木管の音は天井から降って来る感じ、低音弦・金管・打楽器の音は床から突き上げて来るような感じで、オーケストラの音の渦の渦中に置かれるような貴重な体験になりました。

 まずは大植プロデューサーさんのお話、
・音階の1オクターブは7音、だから8で1周したことになる。だから今回は第1回の最終公演で演奏したチャイコフスキーの4番を持ってきた。
・今回は『8』に拘った。日本語の八は末広がり、数字の『8』は横に倒すとインフィニティ(∞=無限大)
・(モーツアルトのジュピターの第4楽章から、冒頭と終結部を演奏して)このジュピター音階、ド・レ・ファ・ミは永遠に続いていくようなフーガ。インフィニティを表している。
・今回、僕が特別公演を1公演付け加えた、ことによってこの公演は101公演目になるが、それと同時に来年に続く第1回の公演にもつながる。ここに居る人々は次回の大阪クラシックの第1公演に繋がる証人になる。

 このように大植プロデューサーは、この大阪クラシックにかける思いを真剣に語りかける。僕が前回聴いた最終公演では、その傍らに盟友:平松前市長が居たが、今回は大植さん一人。今回の公演にまつわる数々のエピソードはおまじない・願掛けのように感じ、なおさらこの大阪クラシックの命運の厳しさ、大フィルはじめ大阪の楽団が置かれた状況の厳しさがひしひしと伝わって来る。
 そんなことを思っているとき。『この大阪クラシックは、これだけは終わらせません、命のある限り続けます』という宣言が飛び出した。

 大植さんなら、市がびた一文お金を出さなくなっても、公会堂や市役所の会場から締め出しを食らっても、音楽仲間とともに、御堂筋のいろんなところでゲリラライブを実施していくだろう・・・、2011年の震災チャリティーライブのように。

 チャイコフスキーの4番が始まります。冒頭のホルンに始まる金管のハーモニーを、地鳴りのように床から体に伝わってきます。
 目の前で鳴る第1ヴァイオリンの野太い音は、まさに大フィルが誇る弦パートのサウンド。ファゴットの見事な音は、なんと8月一杯で退団した宇賀神さんが吹いてらっしゃる。ご自身も大事な時期に、このイベントのために一肌脱いだのだろうな・・・

 大植さんのチャイコフスキーは7月に5番を聴きましたが、その際はやや情熱的過ぎて大植サウンドの真骨頂の一つである、繊細な美しさというものが今一つだった気がしました。今回の4番は、『ああ、これが大植さん&大フィルにしか出せない音だ!』という」瞬間がいくつもあり、心が震えました。たとえば第2楽章のハーモニーは、情熱的でありながらも、パイプオルガンが鳴っているような壮麗な美しさに満ちていた。この曲からこんなブルックナーのような音が隠れていたんだ・・・と驚きました。

 第1楽章は第1主題は、まるで色々な問題に行き詰って、動くことも止まることも許されない現在の日本のような、やるせない悲壮感に満ち溢れていて、濃厚に濃密に描かれていきます。そして第2主題が木管に導かれて、そのあとヴァイオリン軍群が美しい高音で主題を奏でる場面で、すでにギアが高速に変わっている(こんな演奏は初めて聞きました)、そこから暗い地の底から一気に駆け上がり、かりそめの勝利の凱歌を謳い上げたかと思ったら、すぐに真っ逆さまに地の底に落ちてゆく・・・
 全曲を通して、やるせない理不尽さ・暗さと、それを覆そうという開き直った明るさ、そしてまた落ちる・・・というような病的な躁鬱感に支配された、恐ろしい・オトロシイ演奏だったと思います。

 第3楽章のピチカートも、コミカルさではなく、何かに追いかけられているような・・・あるいは何かを追いかけているような緊迫感があるものだったし、続いて第4楽章の冒頭!いや~、速い速い!!最初からこんなに飛ばしてどないすんねん!という突っ込みが、無言の客席から入ったであろう高速なパッセージを駆け抜ける。自分を鼓舞して全力で何かから逃げるように明るく突っ走って来たのに、第1楽章の運命の第1主題が覆いつくしてしまう。それでも雲間から太陽が覗いて、最後は大団円。やけくそでも開き直りでもいいから、とにかく前に進まなければならない・・・。
 

 定期演奏会に持ってきても遜色の無い、いやそれ以上に熱い熱いチャイコフスキーの四番でした。この8年間、世の中・そして自分自身の身にも降りかかってきた様々な「理不尽」に立ち向かう勇気が湧いて来るような・・・そんな鼓舞される演奏でした。 

 アンコールは『8』にちなんで、リムスキ=コルサコフの「クマンバチの飛行」。こういう拘りは最後まで大植さんらしい(笑)
「大阪の皆さんは世界のどこよりも、本当に素晴らしい!」「大フィルは世界一のオーケストラ!」、他に人が言ったらリップ・サービスに思える、そんな言葉も、この大阪クラシックの最後の公演で、大植さんの口から飛び出せば、本当にそう思ってらっしゃるんだと信じてしまう。

 夕焼け小焼け・七つの子・ふるさとをお客さんと一緒に合唱したあと、最後は「八木節」を踊ってお開き。今回の大植さんが着ていた法被には金色に輝く『澪標』。それが本当にまぶしかった。
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大阪を見守ってきたライオンも誇らしげな夜
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