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NHK交響楽団倉敷公演 指揮:ブルニエ Pf:上原彩子 [コンサート感想]

NHK交響楽団 倉敷公演
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番
 ~ 休憩 ~
ドヴォルザーク/交響曲第8番
指揮:ステファン・ブルニエ
ピアノ独奏:上原彩子
コンサートマスター:篠崎史紀
2018年3月10日 倉敷市民会館
 会場はほぼ満席。平日夜の倉敷市民会館を満席にできるのは、このN響ぐらいだろう。さすがの動員力です。
 N響岡山定期消滅後も、なんだかんだいって2年に1回は岡山に来てくれるN響。パーヴォ・ヤルヴィ就任後は、TVで見ていても、実演でもどんどん高みへと昇って行っている感がありましたが、ここ倉敷でも益々充実の演奏を披露してくれた。ソリストの上原さんは、抜群のテクニックと美しい音色、打鍵の多彩さは健在。終演後は物凄い盛り上がり。
 指揮のブルニエは、本場の歌劇場で実績を重ねる本格派。躍動感溢れる音楽が信条のようで、旋律の歌わせ方も巧みで風景が目に見えるような音楽づくり。メロディメイカー:ドヴォルザークのボヘミア愛を見事に表現。大満足のコンサートだった。
(3月16日 追記)
 コンサートから時間が経ってしまいましたが、帰りのJRの中でメモしたデータを頼りに感想を続いて書こうと思います。
 前半のラフマニノフの3番。2年前にバーミンガム市響をバックに河村尚子さんが同じホールで同じ曲を演奏し、強く心に残る演奏を披露してくたが、今回の上原さんも凄い演奏でした。どちらの演奏も甲乙付けがたい、恐ろしくハイレベルな演奏。
 上原さんは、第2楽章などでの繊細で柔らかい表現は、真綿をつかむようなタッチで、光に包まれるような幸せな音を奏でる。その一方で、第1・3楽章の強い打鍵が要求される場面の迫力も、客席で聴いていると気圧されるような迫力があった。特に、第3楽章の後半で1度ギアを上げた瞬間は驚きました。「ラスト・シーンまでには、まだまだ曲が残っているのに、すでにこんなに強い音を出して、最後はどうやって締めくくるのか?!」そう思って聴いていくと、ラストシーンではさらにもう一段ギアを上げた強い打鍵で、N響を向こうに回して大立ち回りを演じた。いやはや、これには本当に参った。
 一方で、上原さんはオケとともに大きな音楽を作って行こうとする志向が強く、指揮者だけで無くコンマスのMAROさんや、第1・2楽章の管楽器と合わせる場面では、その間パートの方を向きながら、一体的に音楽を作っていた。
 N響も冒頭からの弦の翳りのある音から「ハッ」とさせられ、宇賀神さんのファゴットに早くも心をつかまれる。木管はクラリネットもフルートもオーボエも、岡山ではなかなか聴けない見事なソロ・合奏を聴かせ、弦楽器も終始つややかで、上原さんの音とも絶妙に合っていた。
 本当に、聴き応えのあるコンチェルトだった。
 後半はドヴォルザークの交響曲第8番。このところのN響の好調さが感じられる若々しく躍動感あふれる演奏だった。
 岡山にはN響はよく来てくれる方だと思いますが、以前は、確かに文句の付け所の無い、まったく綻びの無い演奏をするんだけれども、なんとなく「管理された演奏」を聴かされるようなところがあった。
 今のN響は、本当に充実していると感じる。クラシック音楽館でも、最近は毎回のようにいい演奏を聴かせてくれているし、いい具合に世代交代が進んで、個々の奏者のモチベーションが極めて高そうだ。ヴァイオリン・ヴィオラ部隊なんて、弓ブチブチ切りながらの躍動感あふれる演奏に、「地方公演でここまでやってくれるんだ」と感激した。
 ブルニエも、さすがに歌劇場で実績のある指揮者。中央ヨーロッパの情景が目の前に浮かんでくるようで、名曲中の名曲の旋律美のうま味を骨の髄まで引き出していく。
 今やザルツブルグ音楽祭にも呼ばれるほど、国際的評価が定着したN響、これぐらいはやって当然かもしれない。同じホールでこれまで聴いて来た、パリ管・RCOやゲヴァントハウス管、これらの超・超一流オーケストラに、テクニックだけでなく音色の美しさなどでも追随してきている感じがあります。ただ1点、物足りない点を挙げると、これらのオーケストラには、トゥッティーの際には座席に体が押し付けられるような圧迫感を感じる様な音の圧力がありました。N響も決して鳴っていないわけでは無い(去年の新日本フィルよりははるかに鳴りが良かった)のですが、やはり世界の超・超一流のオーケストラが奏でる、夢のように美しい音の洪水に身体が押し倒されるような圧倒的な力・・・、この部分が欲しいな、というのが正直な感想です。
 N響の岡山定期演奏会が無くなった当時は、それを惜しむ声が聴かれましたが、4年前のヴァルチュハ&諏訪内晶子、2年前の井上道義との岡山公演など、なかなかの座組でやってきてくれています。中国・四国地方の巡回公演では、岡山は絶対に外せないマーケットなのだろう。ほぼ2年に1回のペースで聴けている印象だ。
 岡山フィルの定期演奏会の回数は増えたし、結果的に岡山のファンにとっては、これで良かったんじゃ無いでしょうか。

 アンコールは、スラヴ舞曲集第2集から第2曲。


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SCED

こんばんは。N響を聴きに行かれたようですね。

過去「最近女性問題で話題となった指揮者」と「ピアニストとして有名な指揮者」とでこのオケは聴きましたが、正直満足感は得られませんでした。

理由はヒロノミンさんの文章を引用しますが、「やはり世界の超・超一流のオーケストラが奏でる、夢のように美しい音の洪水に身体が押し倒されるような圧倒的な力が・・・」このオケには不足しているためです。

もっとも新日本フィルも上記の件は当てはまります。その分「指揮者の弦楽器に対する運弓法」など色々演奏について創意工夫が見受けられたので、他の面で補えれば良いのですが。
by SCED (2018-03-17 19:34) 

ヒロノミン

>SCEDさん
 コメントありがとうございます。
 以前のN響の演奏には、何か不完全燃焼なものを引きずったまま家路につくことが多かったのですが、今回はたいへん満足して帰った、というのは事実です。
 もしかするとTpの菊本さん、Fgの宇賀神さん、Vaの両中村さんなど、関西のオーケストラや岡山での演奏会で、その素晴らしい音楽性を披露してくださっていて、親近感がわいている分、見る目が甘くなっているかもしれません。
 「クラシック音楽館」での、最近のN響を見ていても、最後まで見通すことが多い(笑)以前は、TVをつけていても気がそぞろ、あるいはつまらなくなってチャンネルを切り替えることが多かったことを考えると、N響の演奏を楽しみにしている自分が居ます。
 しかし、もう一歩、そしてこの一歩がとてつもなく遠いのかも知れませんが、「俺の頭を真っ白にするぐらい、圧倒的なものを聴かせてくれ!」という力が欲しい、というのも正直なところです。
by ヒロノミン (2018-03-17 20:21) 

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