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ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団 姫路公演 [コンサート感想]

ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団 2017姫路公演
コネソン/フラメンシュリフト(炎の言葉)
ラヴェル/ピアノ協奏曲
 ~ 休 憩 ~
ドビュッシー/交響詩「海」
ラヴェル/ボレロ
指揮:ステファヌ・ドゥネーブ
ピアノ独奏:モナ=飛鳥
2017年6月15日 姫路市文化センター大ホール
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 会場となった姫路市文化センターは、私にとっては思い出の場所なのです。中学生の時にクラシック音楽に目覚め、元々クラシック音楽を聴く趣味があった親父に、色々なコンサートに連れて行ってもらった。
 その一つが姫路市文化センターで行われたチェコ・フィルのコンサートだった。確か、ノイマンとペシェク、ビエロフラーヴェクの3名を擁した大規模なツアーだったように記憶しているが、姫路公演の指揮者はビエロフラーヴェクで、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」だった。たぶん、ノイマンの登場する大阪公演よりも、電車賃を払っても御釣が出るぐらい、安かったのだと思う。
 少し前にロレンゼルス・フィルで海外オーケストラのパワーに圧倒されていた僕は、「今回は驚くことは無いだろう」と思って、会場に足を運んだが、今度はヨーロッパの楽団の官能的な響きに圧倒され、国によってオーケストラの音も変わることを勉強した。
 次に訪問したのが、これも20年近く前の大フィルの公演で、今回が久々の3回目の訪問になった。
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 会場の入りは6割程度か?市内の高校生にチケットが配られたようで、ロビーには高校生で溢れていました。編成は1曲目と後半は14型、1stVn14→2ndVn12→Va10→Vc8でコントラバスが上手奥。2曲目のラヴェルのコンチェルトは1stVn8→2ndVn8→Va6→Vc6でコントラバスが上手奥に4本。
 1曲目の演奏が始まる前に、ドゥネーブさんと女性の日本人奏者(ブリュッセル・フィルには3人所属しているそう)が登場。日本人奏者が「Ladys and gentleman,good evening!」、でドゥネーブさんが「みなさん、コンバンハ」とあいさつするというギャグをかましてくれました。これでやや緊張気味だった学生さんたちがほぐれていい感じに。
  1曲目はフランスの作曲家:コネソンの現代音楽。ドゥネーブさんの解説によると、ベートーヴェンの運命の「ダダダダーン」をはじめとした旋律を使って、変奏曲的に展開していく、というお話だったが、演奏が始まってみるとどれがベートーヴェンのモチーフなのかはわからなかった。断片的なモチーフを弦のオスティナートを駆使して展開させていく楽想は、オネゲルの影響が感じられ、このブリュッセル・フィルもこの曲のCDを出しているだけあって、引き締まった好演。

  ところが2曲目のラヴェルのコンチェルト、うむむ・・・、縦の線が全然合ってない?でも、木管金管のソロは全くはずさないんですよね、このオケ上手いの、そうでもない・・・の?、でも、第2楽章のオケのアンサンブルは絶品なんですよね、このブリュッセル・フィル、まるで19世紀のフランドル地方から飛び出してきたかのような、古色蒼然と、かつローカル色溢れるサウンドなんですよ。聴いていて気持ちがいい! そして、縦の線をビシッと合わせる、というような事には価値を置いていない、そう感じました。
  モナ=飛鳥さんのソロは、弱音部分の美しさが際立っていました。テクニックも万全。ただ、強い印象が残らなかったのは、このホールが音響的にも、容積もピアノ・ソロ向きとは言えないこともあるかな。岡山シンフォニーホールや、同じ姫路ならパルナソスホールで聴いてみたいですね。

  そして、今日のハイライトは間違いなく、ドビュッシーの「海」。音が煌めき、揺らぎ、そして臭い立つ19世紀のフランスの香り。決して音響は良くない姫路市文化センターに、音楽の歴史を変えた瞬間のパリの熱気をそのまま持ってきたようなドビュッシーのオーケストレーションの魔術で満たされ、心が震えた。木管陣がとにかくまろやかな音を奏でていたのが印象に残る。この曲は盛り上がったかと思ったら、最高潮になる寸前に音楽の波が収まったり、霧の中から出てくっる場面で合ったり、こういった表現はフランス語圏のオーケストラでなければ味わえないものがある。本当に見事な演奏だった。最期の窒息しそうな轟音の後の最期の一音の軽い着地が、何とも言えないエスプリが効いていた。ニクイ!
 
  ボレロはエリザベート王妃コンクールのホスト・オーケストラも務める、このオーケストラの実力を遺憾なく発揮。コンチェルトで一瞬、実力を疑ってごめんなさい(笑)
 単なるインテンポではなく、各部分のソロを受け持つ楽器の節回しにオーケストラがさりげなく寄り添っていく。ソロが終わった楽器のパートは他のメンバーと笑顔でアイコンタクトを取ったり、と、心から音楽を奏でることを楽しんでいる様子にも感銘を受けた。
 終演後には拍手が鳴りやまず、いわゆる「一般参賀」(楽団員が退場しても拍手がやまないので、指揮者が再登場して挨拶する様)まで見られた、たいへんの盛り上がったコンサートでした。
  
 会場は6割ぐらいの入りだったが、満員のような拍手に包まれる。アンコールはビゼーの「アルルの女」からファランドール。いやあ、姫路のお客さんもノリがいい!お祭り気質の播州人のノリで応えて(何を隠そう、ワタクシも播州人の血を引いている)、ドウネーブさんもご満悦でした。

 ブリュッセルと言えば、ベルギーの首都でありヨーロッパ連合の首都でもある。そんなヨーロッパの中心地で、琥珀のような、あるいは時代を感じさせる波うったガラスをとおして降り注ぐ七色の日光のような、何とも言えない味わいと輝きがありました。世界のオーケストラが個性を失いつつある、なんて言われる昨今。どうしてどうして、先月のフィンランドのタンペレ・フィルといい、このブリュッセル・フィルといい、個性的なオーケストラはたくさんある。世界は広い。
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コメント 7

今出川

ブリュッセル・フィル なかなかよい演奏でしたね。
今後に期待します。弦楽器の音色・精密さをどのように整えていくか指揮者の好みだと思うと楽しみです。
ゲルギエフがマリインスキー劇場を育てたようになると感じました。

私は管楽器の音が好きでしたので、ロシアものを聴きたいと思います。

ピアニストのモナさん、
技術は抜群だと思いました。弱い音に対する繊細さ
可憐な指の動き 今後を期待します。
ラヴェルの第2楽章 単音の綺麗さに涙しました。

ボレロは圧巻でしたね。

大変 よいコンサートでした。
レポートありがとうござました♪

by 今出川 (2017-06-16 09:36) 

ヒロノミンV

>今出川さん
 ブリュッセル・フィル、大変魅力的な音色を持ったオーケストラでした。ドゥネーブさんは、家に帰ってからネットで見てみると、かなり実力派の指揮者のようですね。おっしゃる通り、今やマリインスキー劇場管がロシアを代表するオーケストラになったように、ブリュッセル・フィルもフランス語圏を代表するオーケストラになるのを楽しみにしたいです。
 モナさんも私の席が2階席だったこともあり、充分な音が聞こえてこなかったのが悔やまれます。いいホールで聴きたいピアニストさんです。
by ヒロノミンV (2017-06-18 20:13) 

サンフランシスコ人

ステファヌ・ドゥネーブがセントルイス交響楽団の次期音楽監督に....

http://www.stlsymphony.org/deneve
by サンフランシスコ人 (2017-06-22 02:38) 

ヒロノミンV

>サンフランシスコ人さん
 情報有難うございます。そうですか、アメリカのメジャーオケに招聘されるということは、やはりオーケストラビルダーの資質を買われてのことなんですね。
by ヒロノミンV (2017-06-23 12:09) 

さぬき人

いつも楽しく拝読させて頂いてます。香川観音寺ハイスタッフホールでの講演に行きました。ベートーヴェン皇帝、英雄でした。モナさんの音色は天女のように美しかったですし素晴らしいオーケストラでいたく感動しました。また真新しいハイスタッフホール聴きにおいでて下さい。
by さぬき人 (2017-06-23 18:42) 

ヒロノミンV

>さぬき人さん
 コメントありがとうございます。いつもご覧になっていただいているようで、感謝です。
 実は、観音寺の公演があることもリサーチしていました。いいプログラムですよね。ブリュッセルはボンからも近いので、ベートーヴェンも十八番にしているとのことで、いい演奏だったのではないかと想像します。大阪に行く予定が無ければ、こちらにも行っていたかもしれません。
by ヒロノミンV (2017-06-23 22:18) 

サンフランシスコ人

来年、ステファヌ・ドゥネーブは、サンフランシスコ交響楽団に再客演...

http://www.sfsymphony.org/Buy-Tickets/2017-18/Gautier-Capucon-and-Pines-of-Rome.aspx
by サンフランシスコ人 (2017-06-28 06:51) 

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