大阪フィル第４８８回定期（１日目） 準・メルクル指揮

大阪フィルハーモニー交響楽団第４８８回定期演奏会

ストラヴィンスキー／幻想曲「花火」
ドビュッシー／バレエ組曲「カンマ」
～intermission～
ベルリオーズ／幻想交響曲

指揮：準・メルクル
２０１５年５月１５日（１日目公演）　フェスティバルホール

　隣の、そのまた隣の県からはるばる聴きにやって来た回がありました。これほどの充実した大フィルサウンドを全身に浴びたのは久しぶりです。
　良かった、本当に聴きに来て良かった、コンサート終了後に何度も思いました。
　このような爽快感、99年の宝塚記念でグラスワンダーに破れ、京都大賞典でも惨敗し、しかしその鬱憤を晴らすかのように最後方からぶっちぎって秋の天皇賞を勝ったスペシャルウィークのようです（競馬ファン以外の方は、なんのことやらという感じですね、、、）。

　前半も1曲目のストラヴィンスキーの小品から精妙でニュアンス溢れる演奏を大いに堪能。休憩時間のトイレでの他のお客さんの会話「やっぱりこのぐらいレベルの高い指揮者が来たら、大フィルもひと味も二味もちゃうな」
　「ほんまほんま、もういつもの大フィルと全然違う音が出てましたなあ」

　この会話がすべてを言い表していたと思う。

　ドビュッシーのバレエ組曲「カンマ」は、管弦楽曲全集なんかには必ず納められているのだけれど、どなたかのブログに書かれていた「バレエの演技と共に感じる曲で、単体の管弦楽曲としては物足りない」という意見になんとなく納得させられていたんですが。。。
　やはりフランス音楽にも造詣が深いメルクル、手先足先まで神経が行き届き、しなやかに舞う演技さながらに、この曲の旨味を提示して見せた。もう一度生演奏で聴きたい！と思う夢のような素敵な20分間だった。このカンマ、も花火、も野津さんのフルートの音が堪能できて良かったなあ。

　後半のベルリオーズ。
　前半は大フィルの新境地を見た思いでしたが、後半は「これぞ大フィル」というサウンドのオンパレード。
ド迫力、重戦車のような。。いろいろと形容される大フィルサウンド、しかし、僕はこの人間の喜怒哀楽、人生の悲哀や喜びをこれほど音楽表現に盛り込める、これが大フィルサウンドの真骨頂だと思う。
　第２楽章のワルツが、本当に狂おしいほど切なく心に響くとは…舞台上のメルクルと団員さんの一体となったワルツは、大フィルの自慢の艶やかな弦が夢のような世界を描く。喜びも悲しみもみなまとめて引き受けたような演奏に、思わず目頭が熱くなり、心が震えました。第２楽章が終わったあと、会場からはため息が漏れる。

　第３楽章も持続する緊張感をベースに、しなやかに展開していきます。中間部のプレストで弦が追い込んでくる場面の弦の音に、「これこれ、これが聴きたかった！」

　第４楽章、第５楽章は、音楽の流れを重視した前半楽章とは一転、外連味たっぷりに聴かせた。メルクルのオーケストラを統率する力は尋常なものではなく、ビシバシと決めていく。
　金管・打楽器がどれ程咆哮しても、弦の音は埋まらない。とにかく、今日の演奏についてどれほど満足したかというと、明日、別のコンサートのチケットを買っていて、その最寄り駅までの阪急の休日回数券をチケットショップで買って、万全の準備が出来ているにもかかわらず、どうしても、もう一度メルクル&大フィルのコンサートに行きたい誘惑を振り払えずにいることが、その証し。
　明日に向けて色々な面でも上澄みが、もっと高みが目指せそうな、そういう期待を抱かせるコンビです。
はまったときの大フィルサウンド、それは麻薬のようなもので、それに抗うすべを私は持ち合わせていないんです。
　終演後、皆があまりの熱演に拍手するのも忘れるような、一瞬の間があり、そしてブラボーの嵐、明日のチケットを買い求めるロビーの列。
　僕にとっての永遠のスペシャルオーケストラの大フィルが帰ってきた瞬間でした。

コメント 2

ヒロノミンVさんこんにちは。大フィル、良かったんですね。こういうお話をきくと、とてもうれしいです。
by じゃく3 (2015-05-17 04:25) 

>じゃく３さん
　コメントありがとうございます！
　奇しくも住民投票の前日、中之島周辺には両陣営のデモ隊が声を上げる中でのコンサートでした。
　大フィルだけはこれまでの積み重ね、これからもずっとあのサウンドを聴かせてくれる、そう確信した素晴らしいコンサートでした。
by ヒロノミンＶ (2015-05-17 23:38)