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秋冬のコンサートシーズン 地ダネ・ベタ記事 [コンサート準備]

 ワクチン接種の進展によって、元々感染リスクが少ないと言われるクラシックのコンサートも正常化への舵を切り始めた。一方で、まだまだコロナ禍の影響が残りそうなものもある。

 秋冬のコンサートシーズンへ向けて、地元のネタ(地ダネ)で、独立記事にするほどでもないベタ記事を列挙する。

■いよいよシェレンベルガーが戻ってくる!

 今年に入ってからも首席指揮者のシェレンベルガーは。入国規制による来日が叶わない状況が続いている。3月定期5月定期の指揮者が差し替えとなった。コンサートのチラシもシェレンベルガーの写真が使われず、運営側も来日を諦めている雰囲気があったが、10月の第70回定期演奏会のチラシにはシェレンベルガーの写真を掲載しはじめた。

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 ホール広報誌「FLUGEL」にも、「コロナ禍以降、予定していた演奏会全てで来日不可能となりました。今回の第70回定期演奏会は久しぶりの登場となり、シェレンベルガーさんと岡山フィルの演奏に大きな期待が高まります」との文言を掲載。また、HPやチラシの「やむを得ない事情により、出演者、曲目が変更となる場合があります」との文言も通常のサイズに縮小しており、ついに、シェレンベルガーの来日が叶うことを確信しているような文言になっている。

 それはそうだろう。オリンピックで何万人という選手・関係者の来日が許可されているのだ。これで、身元の保証が確実で、岡山の文化芸術への貢献も多大な音楽家が来日できないというのは、どう考えてもおかしい。ほんま「怒るで、しかし!」である。



■一方で、12月の第九は2年連続「中止」

 同時に、コロナ禍の影響から立ち直れない行事もある。例年、公募で募っている市民合唱団による岡山フィルの第九は今年も中止が決定したようだ。合唱の練習は9月ごろから開始されるが、まだワクチン接種が全世代に行き渡りそうにない状況で、感染リスクを考慮したのだろう。一方で、市内の合唱団体の中には活動再開しており、そうした既存の合唱団を出演させる方法も考えられるところだが、「市民合唱団による第九」のフォーマットを崩さなない決断をされたようだ。第九に代わり、シェレンベルガー指揮による特別演奏会としてプログラムが検討されているようだ。



■8月から10月にかけて、疑似『チャイコフスキー3大交響曲シリーズ』を開催。

 あくまで偶然の産物ではあるが、





 と、みんな大好き、チャイコフスキーの後期3大交響曲のコンサートを3つのオーケストラで楽しめるという、(疑似)シリーズ企画(?)。N響と都響を相手にする岡山フィルは分が悪いかも知れないが、地の利と久々の首席指揮者との共演で燃えているだろう。岡山フィルが現状、どのぐらいの位置にいるのかを確認する機会になる。



■1時間の「ちょい聴きクラシック」は将来の音楽祭への布石か?「真夏の夜のベートーヴェン



 岡山フィルが「ちょい聴きクラシック」として宣伝に力を入れているこの企画。

 昼には子供向けの「シンフォニーは友達」という公演を開催。せっかくオーケストラのメンバーが集っているのだから、ということなのだろう。夜に大人向けの1時間レクチャーコンサートの開催という新企画を出してきた。

 岡山芸術創造劇場の開館に向けて、岡山国際音楽祭の再検討が行われていると聞く。そのためのテスト公演なのではないかと(期待も込めて)推測している。

 大阪クラシックびわ湖クラシック音楽祭いしかわ金沢楽都音楽祭仙台クラシックフェスティバル威風堂々クラシック(広島市)そしてラ・フォル・ジュルネなど1時間程度のコンサートを組み合わせた音楽祭が全国の文化都市を席巻している。繁華街の2つの玄関口にそれぞれホールが立地し、ホスト・オーケストラになりうる岡山フィルを有し、さらにスペシャルタレント弦楽アンサンブルの「THE MOST」の本拠地でもある岡山。「ちょい聴きクラシック」が岡山の聴衆に受け入れられ?ラ・フォル・ジュルネ型音楽祭への試金石となるか?今回のコンサートの集客が注目される。



THE MOSTのメンバーに戸澤采紀が加入
 福田廉之助率いるスペシャルタレント弦楽アンサンブル「THE MOST」のメンバーに、史上最年少の15歳(中3)で日本音楽コンクール優勝するなど、超注目の若手ヴァイオリニストの戸澤采紀が加入。

 戸澤さんは母の実家が岡山という縁で、中高生時代から岡山で何度もリサイタルを開催し、岡山の聴衆を魅了してきた(私もその中の一人である)。父親の戸澤哲夫さん(東京シティフィルコンマス、モルゴーア・カルテットのメンバー)は、高畑首席コンマスが就任する前は、岡山フィルの実質的な首席客演コンマスといってもいいほど客演を重ねており、戸澤一家は岡山とも縁が深い。同年代の福田廉之助くんと並ぶ才能の加入で益々パワーアップしそうだ。

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【ニコ生】東響交響楽団第692回定期演奏会 ノット指揮 [ストリーミング]

東京交響楽団第692回定期演奏会【ニコニコ生放送】


R.シュトラウス/交響詩『ドン・キホーテ』

 ヴィオラ独奏:伊藤文嗣(東響首席)
 チェロ独奏:青木篤子(東響首席)

シベリウス/交響曲第5番変ホ長調


指揮:ジョナサン・ノット
2021年7月17日 サントリーホール

【配信開始しました[チャペル]#ニコ響 はこのあと18:00開演。

プログラム冊子もWEB公開中!あわせてご覧ください[→]https://t.co/EjL29gE9X3

視聴はこちら[↓]?https://t.co/xw8kmcEYtU

? 東京交響楽団 TokyoSymphony (@Tokyo_Symphony) July 17, 2021


 東響のニコ生はタイムシフト配信でほぼすべて視聴しているが、今回はこれまで見てきた中で一番良かった。特にシベリウスの5番が素晴らしく、私の手持ちの数ある名盤たちを凌駕する演奏だったように思う。配信から4日経っているが毎晩繰り返し聴いている。もし、音源が発売されたら必ず買う。

 奥行きの深いところから精緻なアンサンブルが湧き上がってくる感じで、亜寒帯の針葉樹の森の中に分け入り、湖に反射する太陽。針葉樹を揺らす風がつむじ風となり、空を白鳥の群れが飛翔する。そんなヴィジョンがありありと現出する。そして同じヴィジョンを観ている者の多くが共有していることが、画面に流れていくコメントが証明している。
「風景わかる」「ほんと風景うかぶよねシベリウスって」「ノットの棒って魔法かけてるみたい」「魔法かけてるわかる!」「きれいだなあ」
 一方で、一方で焼き鳥を片手にビールを飲んでる奴がいたりw、コシヒカリのご飯と刺身食ってる奴がいたりw、
 オーケストラ鑑賞の初心者の人が、「トランペットの先についてるお茶碗みたいなのは何」と質問したら、「ミュートだな」「笑点のオープニングみたいな音になる」と絶妙の返しをする玄人たち。
 それぞれが自分の居場所から接続して、マニアから初心者までフラットに同じ演奏を楽しむ。このニコ生の雰囲気は最高に楽しい。
 閑話休題
 演奏の感想に戻ると、いやー、ホルン隊の演奏が素晴らしかった。そして弦楽器のウネウネした音が、シベリウスの世界を見事に描き出していて、瞬間瞬間に湧き上がってくるフレッシュな音楽に感動した。

 ジョナサン・ノットは、東響の音楽監督とスイスの名門:ロマンド管弦楽団の音楽監督も兼務しているが、確かにスイス・ロマンド管弦楽団のような世界の一流オーケストラと比較しても、全く遜色のない実力を見せつけてくれた。


 前半の「ドン・キホーテ」。この曲は、自分の中ではあまり評価が高くなく、R.シュトラウスの楽曲の中では、やや散漫な印象を持っていた。「英雄の生涯」や「アルプス交響曲」があまりにも傑作すぎるので、あくまでそれと比較して・・・の話ではあるが。
 しかし、今回の東響の演奏は、まったく退屈する瞬間がない。ノットのタクトさばきが芸術的で、棒先を「チョン」と動かしただけで、音色がガラリと変わっていく。まさに魔術師ノットだ。ヴィオラとチェロの首席2人のコミカルで雄弁なソロも見事だったが、オーケストラも管楽器を中心にソロが超絶上手い。このコンビを配信で何度も聴いているうちに、ノットと東響のコミュニケーションの豊富さや関係性を感じられるようになってきた。


 これまでニコ生で聴いてきた演奏はミューザ川崎でのライブだったが、今回のサントリーホールの空間の共鳴をよく捉えてくれて、東響のシルキーな弦・絶妙のバランスで鳴る管が融合した素晴らしい音楽世界を堪能した。


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都響、新日本フィル、神奈フィル、東京シティ・フィル、OEKが瀬戸内地方へ オーケストラ・キャラバン事業 [コンサート情報]

 まだ岡山フィルの7 月定期の感想が書けていませんが、気になる情報がありましたので、先にこちらを更新します。(読者の方々との情報共有記事なので、いつもの自分語り口調ではなく、ですます調で)

 文化庁が「大規模かつ質の高い文化芸術活動を核としたアートキャラバン事業」というものを開始するようで、オーケストラ連盟が中心になって、連盟加盟正会員オーケストラが全国37会場で47公演を開催するという、前代未聞の事業が始まります。

 

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オーケストラ・キャラバンの特設ページ(日本オーケストラ連盟)

『オーケストラ・キャラバン47』は、文化庁の「大規模かつ質の高い文化芸術活動を核としたアートキャラバン事業」の一環です。文化芸術の重要性や魅力を発信し、体感して頂くことにより、コロナ禍の萎縮効果を乗り越え、地域の文化芸術の振興を推進する目的で開催されます。 全国37会場、47公演をお届けいたします。 お住まいの地域をクリックして是非ご覧ください。
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 私の住む瀬戸内地方(備前・備中・備後・美作・香川)でも、なんと6公演が開催されます。

2021/9/13[月] 東京都交響楽団 岡山公演 岡山シンフォニーホール

・グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

・メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調※

・チャイコフスキー/交響曲第5番

■指揮:下野達也

■ヴァイオリン(※):小林美樹


2021/9/24[金] オーケストラ・アンサンブル金沢 津山公演 津山文化センター

・メンデルスゾーン/序曲「美しいメルジーネの物語」
・シューマン/序曲、スケルツォとフィナーレ
・イベール/モーツァルトへのオマージュ
・モーツァルト/交響曲第41番ハ長調「ジュピター」
■指揮:川瀬賢太郎


2021/10/10[日] 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 香川公演 香川県県民ホール


2021/11/13[土] 新日本フィルハーモニー交響楽団 福山公演 ふくやま芸術文化ホール


2021/12/23[木] 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 高松公演 香川県県民ホール


2022/1/30[日] オーケストラ・アンサンブル金沢 三原公演 三原市芸術文化センターポポロ


 ※プログラムが発表されたら、その都度加筆修正します。


 都響が岡山に来るのは何十年ぶり?OEKや新日本フィルはよく岡山には来てくれるのだけれど、神奈川フィルが高松に来た記憶もないなあ。まだプログラムが発表されていないですが、超名曲プログラムであっても、これらのオーケストラを地元で聴けること自体が本当にありがたいです。


 あと、N響も8月29日(日)に岡山公演がありますので、「御三家」と言われる国内トップ3楽団のうち、2つの楽団を2週で聴き比べができるというのも、なかなか無い機会。まあ、都響がこの企画に乗るぐらいスケジュールが空いているというのが、国内トップ・オーケストラですら置かれている状況が厳しいことを物語っているですが。


 近畿地方でも、東京フィルや九響などの6公演が予定されていますが、(私の職場のルールで)まん延防止重点措置や岡山独自の感染防止措置が出されると、「生活圏内」しか行き来が出来なくなるので今回はこの6公演の中からじっくり選ぶことにしましょう。


 余談ですが、11月のウィーン・フィルの姫路公演(アクリエひめじの開館記念事業)のチケットを取ろうかどうか、かなり迷っていたのですが(コンサートが激減しているので、チケットを買う予算は工面できる(笑)、ムーティーを聴ける最後の機会になるかも知れない)、行き来できなくなるリスクを考え、このオーケストラ・キャラバンの方に予算を振り向けることにします。


 このコロナ禍で在東京、地方諸都市のオーケストラは存亡の危機と言えるほどの大打撃を被っていて、その経営支援策の側面もあると思いますが、地方都市ではオーケストラに限らずパフォーマンス系の舞台芸術に接する機会が激減しており、文化芸術体験の格差はより顕著になっています。その点でもたいへん意義深い企画といえ、できれば今後も5年ぐらいはやって欲しいですね。

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岡山フィル第69回定期演奏会 指揮:園田隆一郎 Vc:佐藤晴真 [コンサート感想]

岡山フィルハーモニック管弦楽団第69回定期演奏会

ワーグナー/ジークフリート牧歌
ハイドン/チェロ協奏曲第2番
〜 休 憩 〜
ドヴォルザーク/交響曲第7番

指揮:園田隆一郎
チェロ独奏:佐藤晴真
コンサートマスター:高畑壮平
2021年7月4日 岡山シンフォニーホール


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 弦4部のトッププルトだけの室内楽で始まるという、味のある演出で始まったジークフリート牧歌の、真綿で包まれるような柔らかい響き。チェロ協奏曲での佐藤晴真の美音など、前半も聴きどころがあったが、今日の演奏はなんと言っても後半のドヴォルザーク。

 園田さんは2年前の7月定期(ドビュッシー/イベール/ラベル編「展覧会の絵」というフレンチ・コース料理)では、緻密でバランス重視のタクト捌き、という印象だったが、君子豹変!獰猛とも言える強烈なエネルギーをオーケストラから引き出す「轟演」のドヴォルザークの7番。それでいてよく歌い、よく泣く心動かされる演奏。

 管楽器も素晴らしかったが、今回は、ティンパニと弦5部にMVPを贈りたい。オーケストラからの音のエネルギーの放射が半端ない圧力だった。


(7月15日 追記)

・感想の更新がまた延び延びになった。google keepにメモはしてあるので、それをトリガーにして演奏を思い起こす作業は楽しいが、まとまった文章として編集するのが骨折りになる。なので、箇条書きでご容赦を。

・お客さんの入りは1000人ぐらい?5月定期は緊急事態宣言期間中での開催ということも有り、500人ぐらいしか入ってなかったそうなので、回復してきた、と見るべきか。でも、この調子だと収支は大赤字だろうな。

・弦楽器はほとんどの奏者がマスクをつけての演奏。演奏に熱が入ってくると汗をかいておられるのが解る。これは大変だ。去年の秋頃はソーシャルディスタンスを取って、ノーマスクでの演奏だったが、やはりマスクをして息苦しい思いをしても、距離を縮めたほうが演奏のクオリティは上がるのだろう。

・ヴァイオリンのトゥッティに上野真樹さん(元広響・フィルハーモニアフンガリカのコンマス)がおられた。しかし、全体的には若手奏者の活躍が目立った。守屋剛志さんらと室内楽や弦楽アンサンブルを組んでいる腕のあるメンバーも何人かおられた。

・前半の編成は下手から1stVn6→2ndVn6→Vc3→Va4上手後方にCb2、木管はClとHrが2本でFl,Ob,Fgが各1本。

・ジークフリート牧歌は、ワーグナー家の家族愛が結晶となった音楽だが、私がこの曲でイメージするのは銀河英雄伝説(銀英伝)のアニメ版だ。主人公ラインハルトが、自分の身代わりとなって凶弾に倒れ夭折した、かけがえのない親友のジークフリート・キルヒアイスとの思い出を回想するシーンで印象的に使われている。なので、私には亡き友を思うような胸を掻きむしられる切なさを感じてしまう。

・このプログラム1曲めから、岡山フィルの音は素晴らしい。弱音なのに、芯のある豊かな音がホールいっぱいに拡がって、ホール全体をしっかり鳴らす。10年前の岡山フィルからはこういう音は聴かれなかった。

・冒頭では、トッププルトのみが室内楽的に掛け合いをするように始まった。指揮の園田さんのアイデアか。(緊急事態宣言中の)前回の定期は自粛して行けなかったので、4ヶ月ぶりのオーケストラの音。この冒頭の演奏は心にしみた。特に高畑コンマスの音が心の琴線に触れて感動。

・中間部での低音弦、特にコントラバスの透明なのに重厚な音の土台の上に、繊細だが華やかなハーモニーが重なっていく。

・曲の最後のピアニッシモは、ホールを柔らかな空気を満たしつつ、丁寧で繊細な終結だった。以前はこういう弱音部に差し掛かると、音に雑味があったのだが、この日は最後まで透き通るような音だった。本当に素晴らしかった。

・2曲めは、当初の発表ではダニエル・オッテンザマーの演奏による、ウェーバーのクラリネット協奏曲のはずだったが、5月ごろにソリストの差し替えの発表があった。ウェーバーのクラリネット協奏曲を激ウマのソリストで聞く機会は、今後に取っておこう。

・とは言え、去年の「THE MOST」での佐藤晴真さんのドヴォルザーク/森の静けさ を聴いた時の衝撃は忘れられない。コロナ禍で生演奏から8ヶ月も遠ざかって聴いたものだから、彼のこの美音・麗音が本当に心にしみたのである。

・余談になるが、なぜかこの日のプログラムをドヴォルザークのチェロコンだと思っていて、ステージ上の楽器が少ないことに気づいて慌ててプログラムを確認。ハイドンの2番だったことを知った。

・このハイドンの2番、第3楽章では超絶技巧を楽しませてくれたが、やはり佐藤さんの音は特別だ。本当、美音の持ち主だと思う。チェロって奏者によって音がかなり変わってくる楽器だと思っていて、古今東西さまざまな奏者の中でも、この美音は際立つものがある。

・オーケストラは堅実な伴奏だったが、少々物足りなさが。センチュリー響のハイドン・マラソンに何度も通ってわかったこと。ハイドンの音楽は耳を傾け、体中の皮膚の「耳」も傾ける感覚でシンプルに音楽に体を預けることに愉悦を感じるのだが、今回はちょっと退屈してしまった。もっとソリストの作り出す世界に、挑発したり会話を仕掛けていったり、というのが欲しかったな。

・佐藤さんも、1回めに聴いた時の衝撃(後光が差しているように見えた、といっても過言ではない)からすると、ちょっと物足りなさが残った。できれば、エルガーやドヴォルザークのコンチェルトを聴きたいな。

・アンコールのバッハ/無伴奏チェロ組曲6番から、たぶんサラバンドだったかな。

・後半のドヴォルザーク7番は、編成が拡大。1stVn12→2ndVn10→Vc8→Va8、上手奥にCb6の12型2管編成。前半とはほぼ倍の編成になった。

・この曲は中学2年の時にハマった曲で、ノイマン&チェコ・フィルの新盤をほとんど毎日のように聴いていた時期があった。その時期に聴きすぎてその後は食傷気味になり、最近は殆ど聴くことはなかったが、この曲、改めて聴くと、あの時期の青春の疾風怒濤の心情と、美しいものがとことん美しく見えた感性にピッタリくる曲だったんやなあ、と合点がいった。

・名曲は名曲だけに飽きるほど聴いてしまうことがある。それでも、あらためて実演に接して「やっぱりいい曲だなあ」と感じられるのは、その実演が素晴らしかったことの証左だ。 

・第1楽章の憂いを帯びた主題からのトゥッティーの場面でのオーケストラの鳴りっぷりにまずは驚いた。園田さん、前に振ったときとは違う。のっけからこんなに鳴らして大丈夫?と思うほどの雄渾な演奏。

・こんなに濃密な音になるのは、ヴィオラ・チェロ・コントラバスの音が

・長調に転調したあとの弦の泣きっぷり、歌いっぷりに圧倒され、酔いしれた。この弦の分厚い響と、歌いっぷりはクーベリック&ベルリン・フィルを思わせる圧巻の演奏。

・そこからの各パート感が呼応仕合い、絡み合いながら曲想が展開していく。

・この楽章最後のテンポを速めて盛り上がっていく場面は、ちょっとファナティックさすら感じるほどの盛り上がりを見せた。もうオーケストラもノリノリ!ロッケンロール!俺たちは誰にも止められない!といった感じで、この場面は僕の記憶に長く留められると思う名場面だ。

・ほんでもって、楽章の締めくくりは熱狂のあとの余韻を残しつつ、静かに終わる。ドヴォルザークの得意のパターンながら、しみじみ感じ入ってしまう。

・第1楽章もそうだったが、第2楽章も木管が良かった。空まで突き抜けそうなオーボエの音、華やぎと気品にあふれるフルート、ヨーロッパの情景が目に浮かぶようなクラリネットの音。

・第2楽章の中間部で盛り上がる場面も、オーケストラをしっかり鳴らす。トゥッティーから弱音に切り替わるところでの残響の響きが美しい。うん、本当に岡フィルからは素晴らしい音が出ている。

・第3楽章は弦楽器が浪花節的なこぶしが効きつつも、木管の生き生きとしたタンギングで、スラヴ舞曲の活気に満ちた音楽がめくるめく展開する。

・第4楽章は、まずもってティンパニ近藤さんのバチさばきに痺れた。カーテンコールでめちゃくちゃ拍手したが、なにぶん四十肩で左手が上がらないのでYMCAの「C」みたいな体勢で拍手したので、ちゃんと感謝の気持ちが伝わったか心配(笑)

・第1楽章から岡山フィルは本当によく鳴っていたが、この楽章に入ってギアがもう1段上がった感じで、私のマイシートはホールの壁から空中に突き出す感じのバルコニー席なのだが、舞台からの音と天井から降って来る音に挟まれ、座席の椅子も共鳴するし、桟敷全体が振動していた。「やっぱ生演奏はこれよなあ!」と最高の気分。

・園田さんもオケのメンバーも「いい曲だなあ」と感じながら演奏されていたのでは?楽曲への共感と献身が半端なかった。園田さんと岡山フィルとの相性もよく、このオーケストラを一段上のステージへ引き上げる指揮者だと思う。

・園田さんは2年前の7月定期にも登場していて、年間5回しか定期演奏会がないこのオーケストラで、2年間で2回も登場している。2023年には岡山芸術創造劇場が開館し、本格的なオペラ公演を指揮する指揮者を人選中というが、もしかすると意中の人は、この園田さんなのではないかと思うのだ(私の思い込みです)。オーケストラコンサートのタクトも素晴らしいが、彼の潜在能力を遺憾なく発揮する演目はイタリア・オペラだと思う。

・終演後の拍手は物凄かったなあ。半分しか入っていないとは思えないぐらいのボリューム。ドヴォルザークの7番交響曲は、8番9番のようにおなじみメロディーが目白押し、という曲ではないのに、本当に盛り上がったコンサートだった。

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