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どうなる!?岡山フィルの『次期』指揮者(その1) [岡山フィル]

 ブログに書きたいことは色々あるのに、時間と意欲が枯渇気味で放ったらかしになってるシリーズもあるが、今回は私の音楽鑑賞生活にとっては極めて重大な話題なので、早急に書き上げたいとは思っている。


 この記事のタイトルを見て、ほとんどの岡山フィル・ファンは『いや、どうなるもこうなるも、しばらくはシェレンベルガーの続投で安泰じゃろう』と思われたことと思うが、じつは水面下で事態が変化してきているようなのだ。

 

 発端は、3月31日に配信された『オーケストラの日2021配信~全国のオーケストラより感謝を込めて~』という日本オーケストラ連盟の主催するネット中継の番組。

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 日本オーケストラ連盟に加盟する全国38団体の演奏のダイジェストと4〜5団体ずつのグループによるオーケストラ事務局の方々によるトークセッションという内容で、全部で4時間に及ぶ番組だった。リアルタイムでは全部は見ることができなかったが、タイムシフト配信で全部拝見した。

 岡山フィルからも事務局長がリモート出演していて、コロナ禍での現状と2023年に開館する新劇場についてお話され、暗い話題が多い中での前向きな話題に、司会の西濱さん(山響)や角田さん(指揮者)も興味深そうにお話されていた。

 ところが事件は突然起こったのである。
岡山フィル「新しい劇場ではオペラやバレエの公演も予定されています。」
司会「それは本当に素晴らしいですね」
岡山フィル「それに向けて、岡山フィルの体制整備も一層進めておりまして、次の指揮者の人選も進めているところです」

視聴していた私「??!!」

 1回目に聞いたときは「新劇場のコンテンツ(オペラやバレエなど)に合わせた指揮者を別途任命するのかな」と思っていたが、念のためにもう一度聞いてみても、はっきりと「次の指揮者」と、既定路線について淡々と語っている感じだった。

 額面通り受け取ると、シェレンベルガーの次の楽団の顔になる指揮者を検討しているということになる。ちなみに、シェレンベルガーは2013年に岡山フィルの首席指揮者に就任、現在3期目に入っており、おそらく今シーズン(2021/22年シーズン)で契約が切れる。

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※すべては2013年に彼がやって来たことで変わっていった。

 これを聞いて、正直、私は動揺した。というのもコロナ禍で現在は来日が難しい状況とはいえ、現在の岡山フィルの音楽面での充実、観客動員の爆発的増加、首席コンマス・各パート首席奏者就任など楽団の体制整備など、シェレンベルガーが岡山フィルの首席指揮者に就任して以降の楽団改革は素晴らしい成果をあげている。今後も定期演奏会の充実や楽団の常設化、レパートリーの拡充などの山積する課題もシェレンベルガーを看板にして解決していくものと期待していた。もう3年、いやまだまだ6年はやっていただかなくてはいけないと思っていた。


 オーケストラの指揮者人事というのは、楽団主導で独断的に決められるのが通例だ。そこに聴衆の意見を反映させることは、じつは少ない(少なくとも国内のオーケストラで聴衆の意見を指揮者の人事に反映させるシステムを持っているオーケストラは無いと思う)。楽団が長期的視野に立って、現首席指揮者によってもたらされた豊かな音楽性や遺産を確実に継承し、より発展していくためにどういった指揮者人事を行うかを高度に専門的な判断によって進めていく。


 長年、オーケストラ・ウォッチャーをしてきた私も、そのことは重々わかっているのだが、この8年間の夢のような軌跡を目の当たりにしてきた聴衆の一人として、ここに意見を書いておくことは、それなりに意味のあることだと思う。


 まず、心配していることは、新しい劇場(岡山芸術創造劇場)の開館の話題の文脈の中で「次の指揮者」について触れられたことだ。新しい劇場の開館の話題づくりのために、人事を『リセット』しようとしていると取られなくもない。

 文化芸術において、いいものを作ろうとすれば長い年月がかかる。新劇場が開館する2023年はシェレンベルガーの岡山フィル首席指揮者就任10年目にあたり、新しい劇場でシェレンベルガーと岡山フィルの熟成されつつある音楽でオペラを上演するなど、人事をリセットするのではなく、むしろ岡フィルとシェレンベルガーという熟成されつつあるコンビの音楽的成果や聴衆の支持を新劇場へも波及させるべきではないのか?

 人事をリセットするということは、聴衆の動員もリセットされる危険性を孕んでいる。この危険性の実例は次々回のエントリーで具体的に触れたい。

 コロナ禍で現在は来日が難しい状況とはいえ、シェレンベルガーへの処遇によっては、今、急激に増やしている岡山フィルのファンを一気に失うことになるかも知れない。

 別の可能性は、シェレンベルガー・サイドがこれ以上の契約更新を望んでいない、ということだ。

 これまで彼が岡山フィルに注いでくれた情熱を考えると、引き続き岡山フィルと深い関係を築いてくれるものと思っているが、先週、シェレンベルガーの環境が大きく変わっていることが解るニュースが飛び込んできた(これについても次回以降に述べる)。


 次回は、改めて岡山フィルにとってシェレンベルガーの存在の重要性について、岡山フィルとの8年間を聴衆の立場から振り返ってみようと思う。そして西日本のオーケストラにおける、最近の指揮者交代を見ながら、岡山フィルが取りべき進路についても考えてみたい。

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5月定期もシェレンベルガー来日できず [岡山フィル]

 コロナ禍の収束までなかなか見通しが立たない状況の中、岡山フィルの5月の定期演奏会にも首席指揮者のシェレンベルガーさんは来日できず、代役に太田弦さんが起用されることが発表された。

※岡山フィルのfaebookページより



【出演者変更のお知らせ】 5月23日の岡フィル第68回定期演奏会に出演予定でした首席指揮者ハンスイェルク・シェレンベルガー氏は、新型コロナウイルス感染症拡大により来日が不可能となりました。 来日を楽しみにお待ちいただいておりました皆様には心...

岡山シンフォニーホールさんの投稿 2021年4月18日日曜日

 太田さんは来年の岡山フィルのニュー・イヤーコンサートにも登場するのだが、この5月定期も若きソリストとの共演ということで、これはこれで楽しみにしたいと思う。

 いやーーー、でもなあーーー。シューマン4番はシェレンベルガーの引き締まった音楽づくりで聴きたかったなあああああああ(魂の叫び)。


 余談になるが、去年のゲルギエフ&ウィーン・フィルの来日公演以来、今月の東京・春・音楽祭に出演するリッカルド・ムーティーや、6月の来日が発表されたバレンボイムなど、一種の「特別扱い」で来日が可能になるアーティストがいる一方で、なかなか来日が叶わないアーティストも居る。ムーティーやバレンボイムなどはもとより雲の上のような存在で、それよりもシェレンベルガーが来日するほうが、岡山の都市文化への貢献度も高いのだがなあ。



 京響の4月定期に登場する、ジョン・アクセルロッドは「首席客演指揮者就任披露記念演奏会」ということで、アマティの関係者が奔走し、アクセルロッド自身もすでにホテルで2週間以上缶詰になって、なんとか登場するそうなので、全く門戸が閉ざされているわけではなさそうなのだが、ウィーン・フィルやムーティーが2週間以上ビジネスホテルに缶詰というわけではなさそうなので、どうにも釈然としないものがある。


 シェレンベルガーさんも70歳を超えており、一般的な分類では高齢者になるし、万が一感染して管楽器奏者としての能力に影響が出てもいけないので、決して無理はしてほしくは無いが、こうしたアーティストの入国管理にあたっては日本の文化芸術での貢献度などを客観的に説明できるような基準を設けて、納得度の高い運用をしてほしいと思う。

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岡山フィル 2021/22シーズンのプログラム(随時更新) [岡山フィルのシーズンプログラム]

 昨日のコンサートで岡山フィルの来シーズンの定期演奏会プログラムが配布されていました。定期演奏会・特別演奏会のプログラムを列挙していきます。
 ※5月7日修正
 ※6月8日修正

2021年5月23日(日)
第68回定期演奏会
マエストロ・シェレンベルガーの -古典から浪漫への旅路-
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
   (変更)太田 弦
ヴァイオリン独奏:福田廉之介
ヴィオラ独奏:赤坂智子
モーツァルト/歌劇「劇場支配人」序曲
  〃   /ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K.364
シューマン/交響曲第4番
7月4日(日)
第69回定期演奏会
故郷を愛した作曲家達 -世界最高のクラリネット奏者と共に-
指揮:園田隆一郎
クラリネット独奏:ダニエル・オッテンザマー
チェロ独奏:佐藤 晴真
ワグナー/ジークフリート牧歌
ウェーバー/クラリネット協奏曲 第2番
ハイドン/チェロ協奏曲第2番
ドヴォルザーク/交響曲 第7番 ニ短調
8月12日(木)
シンフォニーは友達!夜の部「真夏の夜のベートーヴェン」
指揮:石﨑真弥奈
ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」


9月12日(日)
I am a SOLOIST スペシャル・ガラ・コンサート
〜岡山から世界にはばたくヴィルトゥオーゾたちの響宴〜
指揮:矢崎彦太郎
ヴァイオリン独奏:福田廉之助
ピアノ独奏:中桐望
ソプラノ独唱:森野美咲
グリーグ/ピアノ協奏曲(中桐望)
プッチーニ/歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父様」(森野美咲)
モーツァルト/モテット「Exsultate Jubilate(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)」(森野美咲)
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲(福田廉之助)

10月17日(日)
第70回定期演奏会
〜郷愁を誘うシェレンベルガーの秋〜
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ギター独奏:荘村清志
ボロディン/交響詩「中央アジアの草原にて」
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」


12月5日(日)
ベートーヴェン「第九」演奏会2021
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト:調整中
合唱:岡山「第九」を歌う市民の会


2022年1月16日(日)
ニュー・イヤー・コンサート
〜若きヴィルトゥオーゾ、岡山に集結〜
指揮:太田弦
ヴァイオリン:青木尚佳
チェロ:岡本侑也
メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」
ブラームス/ヴァイオリン、チェロのための二重協奏曲
メンデルスゾーン/交響曲第3番「スコットランド」


3月13日(日)
第71回定期演奏会
〜シェレンベルガー 情熱のボレロ〜
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ独奏:マルギット=アナ・シュース
ラヴェル/道化師の朝の歌
ハープ協奏曲(調整中)
モーツァルト/交響曲第31番「パリ」
ラヴェル/ボレロ


【ホール主催公演】
2021年8月29日(日)
NHK交響楽団岡山公演
指揮:広上淳一
ピアノ独奏:藤田真央
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
   〃    /交響曲第4番


10月9日(土)
THE MOST in JAPAN 2021
芥川也寸志/弦楽のための三楽章
J.S.バッハ/ピアノ協奏曲第7番
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
ドヴォルザーク/弦楽セレナーデ


 まず、目についたのが、来年のニュー・イヤー・コンサート。去年の3月定期の完全型スライド公演になりました。青木さんがミュンヘン・フィルのコンサートマスターに就任、岡本さんも引っ張りだこのオファーの中でスケジュールを空けてくださったんですね。
 ソリストで注目なのは7月のダニエル・オッテンザマーさん。父の胡エルネストと、弟のアンドレアスは岡山フィルと共演済みで、オッテンザマー・ファミリーと縁が深いのは有難い。吹奏楽やオーケストラの管セクションをやっている学生は必見でしょう。

 福田廉之助さんが「THE MOST」も含めて3回登場、9月の「I am a SOLOIST ガラ・コンサート」は中桐さんに加えて、去年のブラームス国際コンクールに優勝した森野美咲さんの凱旋公演になりそうです。年間予約(マイシート〉公演に入っていないので、チケットの争奪戦が起きそう。

 岡山出身者のソリストが多いのは、ここ数年の地元密着のオーケストラという軸に加えて、感染拡大期に入っても、地元出身であれば待期期間などを経て出演が見込めることもあるでしょう。見ず知らずの土地で2周間もホテルに缶詰というのは、かなりキツイことのようですから。
 シェレンベルガー登場回は、5月定期は去年5月に予定されていたシューマン4番がスライド。シューマン・フリークの私としては今度こそ聴きたいぞ!10月、3月はロシア、スペイン、フランス、オーストリアとさながら世界音楽旅行。来年3月には晴れ晴れとした気持ちで、マスクをせずに大編成で奏でられる「道化師の朝の歌」や「ボレロ」が聴けることを心の底から願っています。
 岡山フィル以外のホール主催公演では、8月にN響が来るようです。そして「THE MOST」は岡山国際音楽祭の時期に入る10月。なんと芥川のトリプティークを取り上げるとな!大フィルの生演奏で聴いて以来、大好きになった曲。お祭り時期にはピッタリです。

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