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radikoで聴く!全国のクラシック音楽関連番組(西日本の民放ラジオ番組) [自己紹介]

 これが2020年度最後の記事になります。
 去年にRadikoプレミアム(月額350円)に加入して、エリアフリーで全国のラジオ局を聴くことができるようになり、本当にラジオを聴く時間が増えました。
radiko.png
 自宅でのプライベートタイムはもちろんのこと、通勤時間や家事の時間にもラジオを聴いています。ラジオって、仕事中に聴いている人も多いから、適度にゆるいのがいい。作業のじゃまにならないように、ある意味、よく考えられて番組が作られていると感じます。

 岡山でのクラシック音楽番組については、以前のエントリーにも書いたとおりですが、radikoプレミアムの機能で「この番組を聴いている人は、こんな番組も聴いています」という自動レコメンド機能があり、クラシック音楽の番組がどんどん表示されてくる。
 ということで、芋づる式に「日本全国の民放ラジオのクラシック音楽の専門番組を網羅する」という作業を開始したのですが、自分が思っていたよりも数多くの番組が存在し、思いついてから本記事をエントリーするまでに3ヶ月以上かかるという労作になってしまいました(笑)
 全放送局を悉皆でチェックした訳ではないので、おそらく全部の番組は拾い切れていないでしょうし、また、radikoで聴くことが出来ないコミュニティFMは対象外にしています。でも、radikoで聴ける県域・広域ラジオ局だけでもなんと2432番組もありました!今回は西日本を中心に取り上げます。自分の居住地である中国・四国地方を先にリストアップしてから、九州、近畿、中部地方と紹介していきます。
※2011年1月23日追記 竹林の住人様からの情報提供により番組を追加しています
【中国・四国地方】 5番組
ブラボー岡フィル!もっとクラシック (RSK山陽放送 日曜日15:30〜16:00)
 岡山で老若男女に愛されているRSKアナウンサーの奥富亮子さんが、岡山フィルの団員さんをゲストに招いてトークを繰り広げ、ゲストのおすすめの曲を紹介する。奥富さんが「クラシック初心者」という設定で、岡フィル団員からクラシック音楽の奥深さを知るというスタイル。
※参考番組 fresh morning okayama内、「音楽の扉」コーナー(FM岡山 主に火曜日9:24頃〜10:00)
 クラシック音楽CD専門店:アルテゾーロ・クラシカの店長が推薦盤を紹介する、第1火曜日の「音楽の扉」は毎回聞いています。
クラシカル・ホリデー (広島FM 日曜日9:30〜10:00)
 マリンバ奏者のAKIKOさんと広島FMのDJの山本三季雄さんがパーソナリティを務める。広島で活躍するゲストを招いてトークに交えながらゲストがコンサートで取り上げる曲や、おすすめの音楽を紹介する形式。ゲストおすすめの音楽はクラシックに限らない。
◎鈴木久美の日曜日のクラシック (KRY山口放送 日曜日9:00〜9:30)
→日曜日の朝にふさわしい音楽を、音楽家のエピソードを交えながら紹介していくDJスタイルの王道の構成。
クラシック空間 ゴーシュの部屋(FM香川 第3月曜日 21:00〜22:00)
 我が家のアンテナで普通に受信できるFM香川にこんな番組があったとは・・盲点だった。チェロ弾きの「ゴーシュ」とFM香川DJの千葉むつみさんがパーソナリティ。まだ回数を聴けていないので「ゴーシュ」さんの正体は不明(笑)。月1回の放送だが、毎回テーマを決めて楽曲を紹介している。
WEEKEND CLASSIC (FM愛媛 土曜日8:00〜8:30)
松山市出身のヴァイオリニストの柏原大蔵さんがパーソナリティ。地元松山や愛媛のコンサートで取り上げられる楽曲などを紹介。
【九州地方】 6番組
名曲classics (FM福岡 日曜日7:00〜7:55)
 FM福岡のDJこはまともこさんがパーソナリティ。毎月テーマに沿って楽曲を紹介していきます。1時間番組の長尺を活かして、1楽章を丸々放送できるのが強み。
おはようクラシック(KBCラジオ 日曜日 7:45〜7:55)
福岡出身のクラリネット奏者の古賀久美子さんがパーソナリティ。バックに音楽を流しつつの古賀さんのトークの後、クラシックの小品を紹介する。
だいぎんサタデイコンサート(OBSラジオ 土曜日9:15〜9:30)
 大分放送アナウンサーの村津孝人さんがパーソナリティ。スポンサーである大分銀行のフラッグシップ店舗の宗麟館で行われるウェンズデイコンサートの録音を放送している。
◎QUEEN♪アルゲリッチ~LOVE AND TRUST~(FM大分 金曜日 20:00〜20:30)
 「別府アルゲリッチ音楽祭」を主催するアルゲリッチ芸術振興財団が制作協力。アルゲリッチが登場したことがあるかは不明(でも、あるんだろうな)。テーマに沿った名曲紹介や、地元大分で活躍する音楽家のゲスト出演などがある。
日曜音楽館(エフエム長崎 日曜日6:00〜7:00)
 この番組も1時間の長尺。九州はクラシック音楽番組の宝庫だなあ。長崎を拠点に活躍するギタリストの山口修さんと小方涼花さんがパーソナリティ。毎週テーマに沿って山口さんが選曲した音楽をDJの形式で紹介する。
◎クラシック音楽千夜一夜 (mrt宮崎放送 月曜日21:00〜22:00)
 こちらの番組も1時間の長尺番組。しかも、なんとクラシック音楽番組では異例の、月曜21時代のゴールデンタイムに放送。地元宮崎の音楽科や指導者などを2週以上にわたってゲストに招いてトークをしながらゲストにちなんだ名曲などを紹介する。
【近畿地方】 2番組
ザ・シンフォニーホール・アワー(ABC朝日放送 日曜日7:05〜7:35)
 ザ・シンフォニーホールが開館した1982年以来、40年近い放送期間を誇る長寿番組。桂米團治師匠と角野アナウンサーのイメージが強いが、現在はご子息でトリオが組めるほどの音楽一家、堀江政生アナウンサーが思い入れたっぷりに過去のホールでの収録音源や楽曲紹介で構成している。
 ABC朝日放送は、ザ・シンフォニーホールを建設・運営していたことから、クラシック音楽の紹介に熱心で、「感度良好!中野涼子です」や「ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です」などでもクラシック音楽の特集や、番組リスナー向けのコンサートなどを企画している。
おしゃべり音楽マガジン「くらコレ」(FM大阪 日曜日24:00〜25:15)
 昭和〜令和の大阪のクラシック音楽シーンの表も裏も知り尽くす生き字引的存在の『なにわのヨッサン』こと、FM大阪DJの吉川智昭さんが、毎回ゲストを招いてディープなトークを展開する。朝比奈隆特集や関西歌劇団、大阪4楽団の話題など、大阪・関西ならではのディープな情報が満載。番組後半では新譜紹介コーナー「くらコレディオ」もある。
※参考番組 本日、米團治日和(KBS京都 水曜日17:30〜18:00)
 京都で活躍する様々な分野の才能をゲストに招いてトークを繰り広げる。パーソナリティの桂米團治さんは、前出のザ・シンフォニーホールアワーのパーソナリティーを長年務めていたこともあって、音楽家のゲストも多い。
【中部地方】 5番組
名フィル クラシック・スクエア(FM愛知 日曜日7:00〜7:30)
 名古屋フィルの楽団員さんや事務局の方が「名フィル・バイザー」として登場し、パーソナリティの大島由美子さんとともに、名古屋フィルの音源や直近のコンサートに登場する指揮者や音楽家、楽曲についてトークを繰り広げる。事務局の小出さんが登場する回はアーティストやマエストロの裏話などが聞ける。4つのコーナーを第1楽章〜第4楽章に見立てるなど、構成も凝っている。毎週聞いている番組。
おは・クラ・サタデー with セントラル愛知交響楽団(FM愛知 土曜日8:00〜8:30)
 FM愛知には、名フィルの番組に加えて、セントラル愛知響の番組もあるが、オーケストラの広報は最後の5分だけで(笑)大部分は、マーシー山本教授(正体はセントラル愛知響の音楽主幹。ブログはコチラ)が名曲に隠された仕掛けを解き明かしたり、リスナーからの質問への回答コーナーで占められる。FM愛知アナウンサーの佐井祐里奈さんとコンビがエエ味を出している。

アメージング・クラシック (FMとやま 日曜日8:00〜8:40)
 富山出身のピアニストの中沖いくこさんとトロンボーン奏者の廣瀬大悟さんがパーソナリティ。音楽科2人がレギュラーでコンビを組むのは珍しい形態。毎週テーマを設けて楽曲紹介や音楽家ならではの視点でトークを繰り広げる。レクサス富山がスポンサーで、レクサスの車からイメージする曲を紹介するCMコーナーや、富山のコンサート情報の紹介もある。富山の演奏家情報も土曜日に予告編として「アメージング・クラシック3minutes」もあり、かなり力の入った番組。
◎石川公美のおしゃべりクラシック (MRO北陸放送 土曜日8:45〜9:00)
 金沢出身の声楽家(ソプラノ歌手)の石川久美さんが軽快に楽曲を紹介する。バレエ音楽やオペラ・歌曲が多い印象がある。
夢みるクラシック(KNB北日本放送 日曜日 8:30〜9:00)
https://www.knb.ne.jp/bangumi/yumecla/
 富山出身のオペラ歌手の澤武紀行KNBアナウンサーの山下千晴さんがパーソナリティ。毎回テーマに沿ったトークと楽曲を紹介する。かなりフランクな雰囲気の番組で、トークの中に富山の生活情報などが盛り込まれている。
 西日本だけで1218番組もありました!
 「他に番組を知っているよ!」という情報があれば、コメント欄で教えて下さい。
 おそらく誰もやっていないであろう、結構貴重なリストになったと思うんですが・・・・。
 1月1日の記事で、東日本の番組も紹介しています。

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佐藤晴真 The Senses 〜ブラームス作品集〜 [地元で聴ける演奏家の音源]

 ※この記事は、「hironominのプレイリスト」の記事を転載しました。
 10月にTHE MOSTのコンサートで、初めて佐藤晴真さんの生演奏を聴き、言葉で表現しようのない暖かくて美しい演奏を聴いて、こんな音がチェロから出るんだ。」とビックリした。
 まさに、「一目惚れ」ならぬ『一聴惚れ』である。
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The Senses ブラームス作品集
チェロ:佐藤晴真 ピアノ:大伏啓太
ブラームス/チェロ・ソナタ第2番
 〃 /メロディーが導くように
 〃 /森に覆われた山の上から
 〃 /死、それは涼しい夜
 〃 /子守唄
 〃 /チェロ・ソナタ第1番
 私はコンサート前には出来るだけ予習(楽曲やソリストの音源をあらかじめ)するタイプで、もし、彼がTHE MOSTのコンサートの前に音源を出していたら、予習していただろう。しかし、佐藤さんの演奏を「予習」することなく、しかも、コロナ禍で生演奏から8ヶ月も遠ざかって聴いたものだから、彼のこの美音・麗音を聴いた瞬間の衝撃は忘れられないものになったと思う。

 コロナ禍の影響でレコーディングも延期になり、半年遅れで発売されたようだ。しかし、ライナーノートによると、そんなハプニングはレコーディングに好影響を及ぼしたらしく、活動自粛期間中を挟んだ後の収録では佐藤さんとピアノの大伏さんのコンビネーションが熟成し、コロナ禍以前よりも手応えのある演奏が録れたようだ。

 佐藤さんは、ドイツ音楽の正統的な演奏家の登竜門とされる、ミュンヘン国際コンクールに日本人で初めて優勝。もちろん技術的にも申し分ないのだけれど、若くて圧倒的才能を持つ『俊英』にありがちな尖ったところがなく、風格のある落ち着いた演奏で、奏でる音からは、美しさ・麗しさ・気品にあふれている。

 低音が重厚なのに暖かい「声色」でよく歌うのだ。例年よりも寒いこの冬に、この演奏を聴いていると、地面に暖かさが拡がっていき、聴き手の足元からその暖かさが染み渡ってくるような感覚になる。

 2曲のチェロ・ソナタの演奏も絶品だが、このアルバムの聞き所は、ブラームスの4つの歌曲のチェロ編曲版。チェロが持つ人間の声のような暖かさと、佐藤さんの奏でる歌を存分に堪能できる。

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『レコード芸術』誌が電子書籍でも販売 [読書(音楽本)]

 今年の11月号から、『レコード芸術』がついに電子書籍版も販売を開始した。
 この10年ほどは、ほとんど買っていなかった。気になる音源が出たときは図書館で読んだり、毎年1月号だけは付録で付いてくるイヤーブックのために買う年はあった。
 よく買っていたときは評論家の記事よりも、リーダーズ・チョイスのコーナーの方が好きで、今でも昔のムック本を音楽鑑賞の参考にすることがある、しかし今は、ブログやSNSで感想記事を読めるしねぇ。
 今、この雑誌を買うのに躊躇する一番の理由は保存場所に困るということ。子供が大きくなるに連れ、ものを減らさざるを得ず、CDやDVDもちょっとずつ中古屋さんに売りに出しているぐらいだから、このサイズの雑誌を買って置いておくスペースなどあろうはずがない。
 しかしこれが電子書籍で出るとなると話は別、保管場所の心配はなくなるし、捨てる必要が無いから保存性も高くなる。そして気になるアーティストの情報だけを得たい場合は、テキスト検索がかけられるのが大きい(と思っていた)。
 ということで早速、12月号を電子書籍で購入。
レコード芸術 2020年12月号 (2020-11-20) [雑誌]

レコード芸術 2020年12月号 (2020-11-20) [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: Kindle版
※リンクはkindle版だがじっさいに購入したのは、きちんと日本に税金を収めてくれる別のストアだ(爆)
 あの(以前よりは薄くなったとはいえ)分厚い雑誌を持ち歩く必要なく、いつでもどこでも読めるのは本当に便利ですな。
 しかし!重大なことに気づく。
 通常の電子書籍の画面には[サーチ(調べる)]虫眼鏡のマークがあって、テキスト検索がかけられるようになっている。
reco gei 1.jpg
 しかしレコード芸術を呼び出した画面には・・・・
reco gei 2.jpg
虫眼鏡[サーチ(調べる)]マークがない!
reco gei 3.jpg
 なんと、テキスト検索がかけられないしようになっていた。
 写真集などのグラフィック系雑誌は、まあこういうこともあるのですが、データベースが売りの雑誌であれば、テキスト検索には対応してほしかったぞ!音楽之友社よ!
 私が使っているストア(SONY Reader Store)だけなのかな?

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静岡交響楽団と浜松フィルとの合体のニュースから岡山フィルの可能性を考える [各地プロ・オケ情報]

 コロナ禍の中で、各地のオーケストラの経営にも影響が出ている中、岡山フィルと同じく日本オーケストラ連盟(以下、「連盟」)準会員であり、非常設オーケストラの静岡交響楽団に大きな動きがあった。
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 静岡交響楽団は創立以来32年、静岡県で唯一の常設プロオーケストラとして、定期演奏会や特別演奏会、音楽鑑賞教室、老人福祉施設訪問など積極的に取り組んできました。そしてこの度、2021年4月に特定非営利活動法人から一般財団法人への改組を行うことになりました。
 加えて、浜松で活動していた浜松フィルハーモニー管弦楽団と合体することとなりました。同楽団の浜松地域でのレガシーを新法人が引き継ぎ、音楽活動を展開してまいります。
 こうした一連の動向に伴い、楽団名を「富士山静岡交響楽団(通称:静響)」に変更し、2021年4月から「一般財団法人富士山静岡交響楽団」として新たなスタートを切ります。名実ともに静岡県を代表するプロオーケストラとして、全国に、そして世界に飛躍したいとの思いを込めた名称です。
 今後、財政基盤の強化や演奏活動の拡大を図るため、2022年の公益財団法人化、日本オーケストラ連盟正会員を目標に、邁進していく所存でございます。
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静岡交響楽団の本拠地:静岡市清水文化会館マリナート(マリナートHPより)
 以前の特集記事「国内オーケストラ業界と岡山フィル発展への研究(その1:岡山フィルの現在のポジション)」を作成している時に、日本オーケストラ連盟の準会員オーケストラの中で、正会員に近い位置にいるのは、この静岡交響楽団、もしくは名古屋の中部フィル、そして岡山フィルだろうと思っていた。国内のオーケストラ・ウォッチャーの僕としては、静岡交響楽団の動向を気にしていた。

 その静響が、同じ静岡県のオーケストラの浜松フィルと『合体』(「合併」でも「統合」でもなく『合体』と表現しているところにヒントが有る)し、新たに「富士山静岡交響楽団」として新法人を設立、2022年に公益財団法人化と日本オーケストラ連盟正会員の認証を目指すと明言されている。
 浜松フィルは人口80万人の浜松市を本拠地とし、プロ・オーケストラとして年に1〜2回程度の定期演奏会をするなど活動してきたが、従来から資金面の問題を抱えていて、このコロナ禍によって解散が決定的となったそうだ。オーケストラの解散は楽団員の活躍の場が奪われ、聴衆の楽しみが失われるだけでなく、過去の演奏会などでの経験の蓄積や共演者らと作り上げてきた楽譜などの遺産が失われてしまう。そうした問題を解決するために、静岡交響楽団が浜フィルとの『合体』という形を取ることに依って、そうした浜フィルのレガシー(遺産)を引き継ぐことになったようだ。
 日本オーケストラ連盟正会員として認証されるためには
  1. 法人格を有する非営利団体に所属するプロフェッショナル・オーケストラであること。
  2. 固定給与を支給しているメンバーによる2管編成以上のオーケストラであること。
  3. 定期会員制を採用し、年間5回以上の定期演奏会をはじめとする自主演奏会を10回以上行なっているオーケストラであること。
  4. 運営主体としての事務局組織を持っているオーケストラであること。
  5. 正会員より推薦を受けたオーケストラであること。
 という条件をすべてクリアする必要がある。とりわけ一番厳しいのが2の「固定給与を支給する」という部分で、これを達成して、「常設オーケストラ」となるためには少なく見積もっても3億円程度の予算を確保していく必要がある。
 岡フィルも静響も、現在は演奏会のたびに演奏報酬を支払う形態で、オーケストラの団員は他のオーケストラにエキストラとして出演したり、音楽教室の講師などと掛け持ちしながら生計を立てている。
 岡山にはサッカーではJ2リーグのファジアーノ岡山、あるいはVリーグの岡山シーガルズなどのプロ・スポーツチームがあるが、選手には固定給(年俸)が支払われている。もし、これが試合に出た際の報酬しか支払われず、普段はスポーツ教室などで生計を立てざるを得ないとしたら・・・そのチームが強くなれると思う人は皆無であろう。
 しかし、正会員として認められる経営基盤を確立して、固定給を支払うことが出来るようになれば、演奏に専念できる環境を求めて優秀な楽団員が集まり、演奏レベルは確実に向上する。また専業の音楽家がその街で生活することによる文化的・社会的な波及効果も大きい。
 N響や都響、大フィルや名フィルといった大都市の一流オーケストラとも同じ土俵で勝負ができるようになるわけで、対外的な街のプレゼンスも確実に向上する。実際に群馬交響楽団、オーケストラアンサンブル金沢など、岡山や静岡と同規模の都市でも高い評価を受けているオーケストラがある。山形交響楽団は岡山・静岡の半分程度の都市規模でも実力の高いオーケストラが育っている。
 ここで、静岡交響楽団と岡山フィルのデータを比較してみようと思う。それと同時に連盟正会員(常設)オーケストラの事業規模の目標値として、都市規模(人口・経済)では静岡、岡山と同規模ながら、地方都市オーケストラのトップランナーである群馬交響楽団(高崎市)のデータとも比較する。
       静岡交響楽団   岡山フィル    群馬交響楽団
設立年月日  1988年    1992年    1945年
プロ改組   1994年      〃      1947年
本拠地    静岡市      岡山市      高崎市
本拠地人口  70.5万人   72万人     37万人  
専任指揮者  高関 健    シェレンベルガー  小林研一郎
年間公演数    50回      19回    165回
主催公演数    17回      13回    127回
定期演奏会     9回       4回     12回
総事業費   1億5167万円   1億1972万円   8億3909万円
演奏収入     4887万円     4879万円   3億6719万円
総入場者数   27100人      37988人    119000人
法人格     NPO法人    公益財団法人   公益財団法人
※公演数〜会員数は2018年のデータ
 こうして見ると、静岡交響楽団と岡山フィルは本当によく似ているな、と感じる。総事業費や公演数では静岡交響楽団が大きくリードしているが、演奏収入には差がなく、総入場者数を見ると岡山フィルのほうが集客力がある。岡山フィルを運営する岡山文化芸術創造はすでに公益財団法人になっており、運営母体も岡山フィルのほうが整備されている。
 ということは、岡山フィルも静響に続いて、連盟正会員の常設オーケストラになれる可能性があるということだ。
 それにしても群馬交響楽団の公演回数や8億円を超える総事業費、3億円を超える演奏収入には驚かされるが、大都市ではない地方都市でもここまでの運営ができるのだ。
 静岡交響楽団としては人口70万人の静岡市の都市内オーケストラから脱皮し、楽器メーカーのヤマハやカワイが本社・工場を構える80万人の浜松市をも取り込んだ、静岡県域全体をカバーするオーケストラとしてアイデンティティを再構築し、静岡県全体で聴衆や協賛企業を確保することで、正会員の条件をクリアしようとしているのだろう。
 この手法は岡山にも参考になるのではないか?
 つまり、岡山市の都市内オーケストラから脱皮し、特に人口50万人の倉敷市と岡山市の両方に本拠地を置くようなオーケストラに脱皮するので。
 倉敷市が主催する音楽イベントは、主に関西からオーケストラを招聘している。私の知る限り、アルスくらしき(倉敷市文化振興財団)主催のオーケストラ・イベントで岡山フィルが呼ばれた例は殆どないと思う。
20201107.png
※こういう子供向けのコンサートでも、倉敷は岡山フィルを呼ばない。いや、たしかに大フィルの演奏で聴けるのは凄いのだが・・・
 詳しい事情はわからないが、岡山フィルは『岡山市のオーケストラ』のイメージが強く、じっさい岡山市の外郭団体が運営しており、強烈なシビック・プライドを持つ倉敷市としては岡山フィルを使う=文化面で岡山市の風下に立ちたくない、という面があるのではないか?
 岡山フィルがもし倉敷も巻き込んだ、東瀬戸経済圏全体を活躍の場とするオーケストラに成長すれば、常設オーケストラに向かう道筋が見えてくると思う。
 これについては、また(気が向いたら)記事を改めて書こうと思う。

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「親子deクラシック」に行ってきました [コンサート感想]

 自分の楽しみではなく、娘に生演奏の音楽に触れてもらうために行ったコンサート。なので、日記に書くつもりはなかったのだが、結果的には自分も大いに楽しんでしまった(笑)。最後のドヴォルザークの「新世界より」の第4楽章がたいへんな熱演で、これは記録に残しておこうと筆を取った次第。
中国銀行ドリーミーコンサート
親子deクラシック
指揮:横山 奏
管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:田中郁也
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 編成は弦は8型だったが、木管4種にホルン4人、トランペット2人、トロンボーン3人、そして打楽器を4人にハープを擁するという、コロナ禍後最大の編成となった。
 予測不能の動きをする(笑)子供の安全を考慮して、座席は1階中央よりやや後ろ。カルメンの前奏曲で、久しぶりに大管弦打楽の音の洪水を浴びて、ちょっと心が震えた。。。。
 指揮の横山さんは2018年の東京国際指揮者コンクールで第2位(1位が沖澤のどか、3位が熊倉優という超ハイレベルのコンクール、しかも皆さん岡フィルデビュー済み)に入賞後、活躍が著しい。とてもスケールの大きい指揮で、グイグイとオーケストラを統率されていた。それに加えて、司会・トークが上手い!子供にも解りやすく、相方も「面白かった!大人も勉強になったわー」と感心しきりだった。
 娘は楽器紹介でのコントラバスの嶋田さんが演奏した低音の「ぞうさん」がいたく気に入り、家に帰ってもその話ばかりをしていた。
 子供を育てていて判ったのが、言葉や論理的思考よりも前に、音楽のほうが発達が早いことだ。そして言語発達は「歌」を通じて発達するのを目の当たりにすると、人間の思考や感情は音楽や歌がベースになっている、とすら感じる。
 閑話休題
 このコンサートはチケット代が大人1000円、子供500円、これだけの編成のオーケストラで、このチケット代では、とてもじゃないがペイしないはずなので、スポンサーの中国銀行が持ち出してくれている。
 プログラムの最終曲がドヴォルザークの「新世界より」の第4楽章。冒頭でも述べたとおり、大変な熱演で、子供が聴きやすいような編曲は一切なく、楽章を丸々演奏した。オーケストラもバリバリの本気モード。オーケストラの本物の迫力を味わせたい!という意気を感じた演奏だった。
 私は通路側に座ったのだが、大ホールに来て興奮した子どもたちが階段を登ったり降りたりして遊んでいた(そりゃ小学校低学年でこんなところに来たら興奮するわい)のだけれど。中間部での主題が蒸気機関車のように疾走するように展開する場面で、オーケストラの迫力に圧倒されたのか、二人ほど思わず立ち止まって聴き入っていたのが印象に残る。弦楽器の「泣き」が素晴らしく反響していたのと、クラリネット首席の西崎さんが、第2主題のソロをはじめ冴えに冴えていた。
 横山さんの指揮は、リズム・ビートが効いていて、普段の定期演奏会では、じっと黙って聴いているのだが、子供と一緒に体を動かしながら音楽に乗って聴いた(これ、かなり楽しかった!)。
 娘は1歳でシンフォニーホール聴衆デビューを果たし、今回が2回め。僕がオーケストラの生演奏をコンサートホールで初めて聴いたのが小学校5年(いきなりベルリオーズの幻想交響曲・・・)だったから、こんな小さい子供がこんな演奏に触れられるのは素晴らしいことだ。

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岡山フィル特別演奏会(2020第九代替公演) 指揮:川瀬賢太郎 [コンサート感想]

岡山フィル特別演奏会
ベートーヴェン生誕250年記念
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
  〜 休 憩 〜
ベートーヴェン/交響曲第7番
指揮:川瀬賢太郎
コンサートマスター:福田悠一郎
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※プログラムに表示されているbeyond2020・・・オリンピックの先に、のはずが、コロナ後の世界の変わりようを表しているようだ
 本来であれば市民合唱団による『第九』のコンサートが開催されるはずだったが、covid-19の感染リスクのため、交響曲第5番/第7番に差し替えて開催された。

 川瀬さんが岡フィルを指揮するコンサートは2回目、その時に比べて、まずはオーケストラの音・反応が劇的に変化している。川瀬さんのタクトは激しく情熱的。F1レーサーで言えば、命知らずのアタックを仕掛け、シケインに乗り上げようがお構い無しに突破していく。しかし岡フィルもさる者、指揮者の情熱に呼応して音楽を盛り上げていく。
 我らがシェフのシェレンベルガーは音楽にパッションは込めつつも、全体のフォルムやバランスを崩すことはしないタイプなので、久しぶりに荒々しい岡フィルのサウンドを聴いた。

 半年以上、生演奏を聞けない時期があって、今回は始めてほぼ満席に近い会場で、あんなに捨て身とも思える爆発するような情熱的な演奏を聞かされたら・・・これを聴いて感動しないほうがおかしい。5番の第4楽章で本当に泣けた。

【12月9日追記】

 前回、川瀬さんが岡山フィルを指揮したのはちょうど10年前の2010年の第九で、川瀬さんがまだ26歳のとき。
 当時のブログ記事(今は閉鎖しており、アーカイブは保管している)を読み返してみると、川瀬さんのダイナミックな指揮は当時も強い印象を残したが、当時の岡山フィルは活動低迷期で、2009年と2010年は定期演奏会が1回づつしか開催されておらず、その定期演奏会も各パートの首席奏者は東京・関西のオーケストラから連れてききた「日替わり首席」で、リスクを取るような突っ込んだ演奏は期待できなかったし、10年前は3階席で聴いたのだが、音がなかなか飛んでこなかった。指揮者が力めば力むほどオーケストラの鳴りが悪くなり、正直、いらだちを感じたコンサートだった。
 しかし今回のコンサートを聴いて、川瀬さんのオーケストラドライブの見事さはさることながら、岡山フィル自体があの頃とは全く違うパワフルさを手に入れた、10年前の岡山フィルが1500ccの車だとしたら、今の車は2500ccぐらいにはなっている。絶対的な馬力が向上した感じ。
 
 今日のお客さんの入りは9割以上入っていた。1階席の前5列(オペラ公演時はオーケストラピットになる部分)の座席を外しているものの、全座席を開放。2階〜3階席はほぼ満席に近く、1階席の(あくまで主観だが)音がよろしくない席が空席になっている。みなさん、だんだんこのホールのことが判ってきたね(笑)
 それから、5番の第2楽章で携帯鳴動をやらかした人がいた(よりによって静かな場面に限って勃発するんよね。コンサートあるある)のを除いて、咳一つない静かな環境。

 配置は1stVn10→2ndVn8→Vc6→Va6、上手奥にCb4。ホルンを下手に配置。弦楽器はSD(ソーシャル・ディスタンス)配置を解消して1プルト2人。管楽器はまだSD配置で前後をかなりスペースを取っており、TpやTbは反響板ギリギリに座る。ティンパニは下手奥。
 岡フィルは、チェロをアウトに、ヴィオラをインに配置することが多いが、今回のように最近ヴィオラをアウト(客席側)に配置してチェロをインに配置することが多くなってきているね。

 客演コンマスの福田悠一郎さんは10月定期に続いての登場、フォアシュピューラーはこの春にコンサートマスターに就任した田中郁也さん。田中さんて後ろのプルトにいるときには気が付かなかったけれど、背筋が伸びて演奏する姿がきれいですね。そして、指揮者も若いし、この先頭プルトのコンビは若い!!

 楽団の入場は本鈴が鳴ってからではなく、予鈴の前から舞台上で音出しをして、そのまま座席で本番を迎えるアメリカンスタイル、岡フィルでは記憶がない。客席はコロナ対策で私語を謹んでいるから予鈴から本鈴まで静寂に包まれ、いつもとは違う空気になった。
 岡山シンフォニーホールは商店街の再開発ビルの中に組み込まれている関係上、舞台裏は広くはないので、控室から出てしまうと管楽器などが密な舞台裏で音出しをする状況を作らないためにステージに出るスタイルを取ったんじゃないかと思う。

 川瀬さんは、第5番、第7番ともに金管はソリッドな音を中心に、ここぞという力の入る場面にはティンパニとともにビビッドな音楽を引き出していたが、弦5部と木管は場面によって音のテクスチャーを使い分け、ざっくりと荒々しい音色を引き出したかと思うと、穏やかな場面ではシルキーな音を引き出していた。テンポの変化やダイナミクスの強弱について、身体全体で表現する川瀬さんのダイナミックな指揮にオーケストラが演奏で呼応し、それに対して川瀬さんがもっと劇的な指揮で応じる、という相乗効果は見て・聴いていて胸がすくような演奏だった。特に第5番の第3楽章から第4楽章に入り、曲のフィナーレまでの演奏は、指揮者や各パート観の緊密な連携と融合により、まるでポルトガル代表のパスサッカーを見ているよう。
 
 川瀬さんはコンサートに先立ったプレトークで
・ここに来るまでに不安や葛藤があった方もいらっしゃると思う。眼の前で奏でられる音楽を聞くことは、今生きている実感につながる、必ず来てよかったと思える演奏をする。
・この曲(5番)でベートーヴェンが「自由を、自由を、自由を!」という叫びが聞こえる。
・200年以上前の古典とされる曲だが、今、この瞬間に生まれた新鮮な音楽を届ける。
 この言葉を裏切らない演奏だった。
 コロナ禍の時代はなんと不自由な世の中になったことか。ベートーヴェンの時代のように(少なくとも我が国では)封建制も身分性も存在せず、一人ひとりの人間の存在が尊重され、社会を作っていっているはずなのだが・・・・。克服すべきは感染症そのものではなく、人の心や社会の問題であることを、ベートーヴェンの音楽が伝えてくれている。
 
 7番は第1,2楽章と第3,4楽章がそれぞれアタッカで演奏された。これは先日NHKで放送された「クラシック音楽館」での川瀬&名古屋フィルの演奏と同じ。
 前プロの5番は、かなり力技なところもあって、怒涛のような演奏だったの、7番もリズムに乗って重戦車のように突破していくかと思いきや、確かに躍動感溢れる演奏だったのだが、例えば第1楽章の中間部や第3楽章などでは、かっちりとした形式感を出し、指揮者の冷静な視点で緻密に複雑なパズルを組み上げていくようなタクト捌きに痺れた。木管陣が絶品で、Fg首席は客演の中野さん(京響)だったものの、岡フィル自慢の木管陣の実力がいかんなく発揮された。
 梅島首席が抜けたホルンは客演の方が中心で、5番と同様ナチュラルホルンのようなソリッドな音を競争する場面が続く。弦とともにホルンがオーケストラの演奏を先導して曲のモチーフをリズムを刻みながら奏でている場面が多かったため、第4楽章ではかなりバテている感じがあったが、こういう敢えてリスクを取った思い切った演奏に心が熱くなる。弦5部も素晴らしく、常に音楽を牽引し、特にチェロ・バス・ヴィオラが素晴らしい!
 そうそう、ティンパニに触れておかねば!特別首席の近藤さんはやはり得難いティンパニスト。7番では鮮やかすぎるティンパニのバチさばきに目が釘付けになった。
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※自転車でホールへ向かう途中にて。感染リスクはほぼゼロ。
 お客さんも驚くほどルールを守っていて、ブロックごとの退場ルールをほとんどの人が守り、終演後の階段や通路でも私語をしている人は少なく、でもどこか一体感や満足感を共有しているようでもあった。岡山フィルにとっては久しぶりの座席制限が解かれての公演だったが、嬉しい誤算だったのが、ご高齢の方がホールに戻ってきていることだ。ホールの徹底した感染症対策がニュースなどで伝えられたことも大きいし、やはりみんな音楽に飢えているのだ。
 先月はウィーン・フィルが超厳戒体制(チャーター機とバス・新幹線貸し切りで移動。ホテルに缶詰状態)で来日してくれたが、これは例外中の例外。岡山のような地方都市において、地元のプロの音楽家やオーケストラの演奏を聴けることが本当に貴重なことだと改めて感じた。

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