SSブログ

観客のいない音楽会「Live from Muza!」 東京交響楽団名曲全集第155回 [ハイレゾ音源]

 ニコニコ生放送で配信された、東京交響楽団の無観客ライヴ、愛してやまないサン=サーンスの交響曲第3番のコレクションの中でも、愛聴音源になりそうな素晴らしい演奏だった。
観客のいない音楽会「Live From Muza !」 東京交響楽団名曲全集第155回 
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調(ソリスト:黒沼香恋)
サン=サーンス/交響曲第3番「オルガン付き」(オルガン:大木麻理)
指揮:大友直人
20200506 toukyou.png
 メインの「オルガン付き」から。「こんなに超高速だったっけ!?」と驚いた。ライヴ配信当日も「速いな〜」とは思っていたが、あのときは自分の気分も高揚していたからそこまで感じなかった。自分が持ってる同曲の演奏な中でも最速の部類に入る。今から聴いても、この演奏は「何か大事なもの」を賭けて演奏しているような鬼気迫るものを感じる。
 決して「整った」演奏ではない。しかし、東響は上手い。弦がやや走り気味になる場面があるのだが、すぐに他のパートがカバーして音楽の大きなうねりの中に取り込んでしまう。無尽蔵に湧いてくる情熱を音楽に昇華させる高度な技術がある。彼ら演奏は、過小評価されがちだったこの曲を、ベートーヴェンの5番やブラームスの1番に並ぶ傑作であることを証明している。収録日が「3月6日・8日」とクレジットされているが、あのニコ生で聴いた疾走する(というよりも爆走するような)情熱的な演奏という印象はいっそう強くなり、この熱量は大部分を生配信当日の演奏の音源を使っていることを表しているように思う。ただし、オルガンの音は当日よりバランス大きめになっていて、ここは手が加わっているだろう。
 牧神の午後への前奏曲も、あの日のどんどん視聴者数が増やしていった魅力的な演奏を再度感じられた。ラベルのピアノ協奏曲のソリストも、あらためて音源で冷静に聴いても素晴らしい演奏。第2楽章をここまで聴かせる演奏は相当な実力の持ち主。ソリストのお名前は存じ上げなかったのだが、それもそのはず、まだ世に出ていない期待の若手をオーディションで発掘する趣旨のプログラムでだったようで、黒沼さんは東京芸大に在学中の方だそう。通常モードの「観客が埋まったコンサート」でも、晴れ舞台を踏めただろうが、自分のソロ演奏が20万人以上に視聴され、加えてハイレゾ音源が発売されてしまうなんて・・・このコンサートで彼女の人生が一番変わったかも知れないな。
 ニコ生で聴いた時に「ニコ生は音がいいなあ」と思っていたが、オクタヴィアのスタッフが録音していたということで、当日の高音質の謎が解けました。EXTONレーベルの高品質ハイレゾ音源のおかげで映像がなくても当日の東響メンバーの情熱や息遣いが感じられる。特に管楽器の音は生の音そのものだ。数ある「オルガン付き」の音源の中でも『今日はガツン!とした演奏を聴きたい』という日には第一選択肢に入る演奏になりそう。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽