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倉敷市児島の名曲喫茶「時の回廊」 [クラシック雑感]

 今月の上旬に、倉敷市児島にある、名曲喫茶「時の回廊」に伺い、ゆったりとした時間を過ごしました。
 ここ、場所がとてもわかりにくいんです(笑)。ナビに案内させると、田ノ浦から大畠へ抜けるトンネルの中で「目的地周辺に到着しました」と言われます(笑)。実際の場所はこのトンネルの上にあるのですが、そこにたどり着くのはちょっとコツが要ります。岡山市内から行く場合、鷲羽山ハイランドのボウリング場「VIVAハイランド」を目指して、その先のトンネルを抜け左折し、旧鷲羽山スカイラインの県道を降りて行き右手に海鮮料理の「ふく仙」が見えたら、150mほど先の陸橋のある交差点を左折し、細い道を突き当たり(瀬戸中央道の擁壁)まで行き、そこで車を留めます。口で説明すると、このようにたいへん複雑です(笑)
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こんな看板が見えるので、それに従って・・・
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こんな上り坂を登っていき、道なりに左にまがると到着します。
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 マスターはまだ30代の若さで、この名曲喫茶はマスターの夢の世界そのもの。
 元々、喫茶店巡りがご趣味だったとのことで、東京に住まわれていた時に友人に連れられて入った高円寺の「ネルケン」という名曲喫茶がきっかけで、名曲喫茶の世界の虜になってしまい、ついに自分でお店を作ってしまった、ということのようです。
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 スマホのカメラなので、見づらいのはご容赦ください。
 この瀬戸大橋のたもとの物件の購入・店の改装・店内の家具や調度品、オーディオ装置の購入、レコードの収集・・・と、このお店の開店のためにどれだけの投資と労力がかかったのだろうかと想像すると、ただただ凄いとしか言えません。ビジネスモデルとして名曲喫茶という形態も、当然儲けが出るものとは言えず、だからこそ平成に入ってから数々の名曲喫茶の名店がどんどん閉店していったのだろうと思いますが、そんな世の趨勢もなんのその。
 
 マスターの夢の実現に対する強い思いがないと、この空間はここに存在しなかった。そして、ここにはマスターの夢の世界でもあると同時に、ここに入店した客人も、このマスターの夢の世界の一部になれる。ここでかかるレコードも音盤が喜んで音を紡いでいるような瑞々しさに満ちています。
 私がこれまで行った名曲喫茶には、二通りあって、集中して音楽鑑賞に没頭できるよう、私語はおろか物音を立てる行為も厳禁という「名曲喫茶原理主義」タイプと、リラックスした雰囲気で音楽を楽しむ空間を提供する「居心地重視」タイプ。僕がこれまで行った名曲喫茶でいうと、神戸の花隈にあった「フルトヴェングラー」や京都の出町柳の「柳月堂」が前者のタイプ、後者は神戸の元町商店街の「アマデウス」(初代オーナー時代)になるでしょうか(岡山の田町にあった「高級喫茶 東京」の2階のオーディオルームも居心地重視タイプかな)。
 「時の回廊」は、前者のような堅苦しさは無く、ディープなクラシック音楽ファンではなくても、ゆっくりとした時間を過ごせるという点では後者に近いかもしれませんが、内装や家具調度品へのこだわり、作り込みは、あらゆる名曲喫茶の世界観を包摂する「ザ・昭和の名曲喫茶ワールド」です。その意味では超原理主義的名曲喫茶かも知れません。
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 外は気温36度を超える猛暑日でありながら、空調のよく効いた昭和の名曲喫茶で聴くシベリウスの5番は格別でした。「時の回廊」の売りは『クラシックの名曲に世界一合う自家焙煎珈琲』なのですが、僕は珈琲が飲めないので紅茶をいただきました(紅茶も美味しかったです)。珈琲は通販もされれいるので、クラシックを聴きながら珈琲を飲まれる方は、ぜひご賞味あれ。
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 建物の横には瀬戸内海の絶景が楽しめるテラス席もあります。季節の良い時期には、自家焙煎珈琲を片手にこの絶景を鑑賞するという楽しみ方もできますね。
 大音量の名曲の世界から外に出ると、そこは瀬戸内海の多島美の絶景が待ち受ける。こんな絶景の場所にあるのに、窓という窓を塞いで名曲喫茶の空間を作る、という倒錯的な(笑)ところも堪らないです。
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 こちらは駐車スペースの先の瀬戸中央道の高架下を抜けた先の絶景
名曲喫茶「時の回廊」
倉敷市下津井田之浦1−16−22

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