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I am a SOLOIST あなたも岡山フィルと共演しませんか XⅣ [コンサート感想]

I am a SOLOIST あなたも岡山フィルと共演しませんか シリーズXⅣ
第一部
岩崎 史(Vn) メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲から第1楽章
奥原 幸(Vn) サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番から第
※所用要により、筆者はここから参加
片岡 健都(Pf) ハイドン/ピアノ協奏曲第11番から第1楽章
天野 響(Pf) モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番から第1楽章
萩谷 奈々子(Pf) シューマン/ピアノ協奏曲から第1楽章
第二部
ゲスト演奏:松本 和将
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
指揮:村上 寿昭
コンサートマスター:高畑壮平
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 所用によりヴァイオリンの2名の演奏を聴くことは叶わなかった。実は、お目当ては松本和将さんのピアノだったのだが、ピアノの3名の演奏も大いに楽しめた。
 片岡さんのハイドンはとっても清新な演奏で、彼の心の純粋さがにじみ出ているようだった。第2部の松本さんのトークにもあったように、「経験を積んでいくと出せない音がある」まさにそんな音楽だった。
 天野さんは中学生のようだが、この年齢でこれだけモーツァルトが弾けるというのは驚異!暖かみのある音は師匠の一人である関本さんの影響かも、関本さんのモーツァルトもとても暖かみのある音楽だった。
 萩谷さんは大学生で、さすがにこの年齢になると表現の幅も色彩も豊富になる。堂々たる演奏だったが、オーケストラに合わせるような機会がもっと与えられれば(それはとても難しいことだけれど)、もっと良くなるように思う。
 もう一つの注目点でもあった、岡山フィルの伴奏だが、これはもう見事というほかなかった。10月から採用になる7名の新首席奏者は居ない状態で、客演首席もホルンの蒲生さん(大フィル)とチェロの田中さんなど少数、それでもこれほどの演奏を聴かせてくれたのは、指揮者の村上さんの手腕も大きいとは思うが、やはりシェレンベルガー時代に入ってからの蓄積がものを言っているように思う。
 私自身5月の定期演奏会以来、岡山フィルを聴く機会が無く、フルサイズのオーケストラの演奏会自体も6月の日本センチュリー響のブルックナー7番以来で、体全体を包むようなオーケストラ・サウンドに飢えていたのだが、ハイドン・モーツァルトで聴かせた愉悦あふれるピュアなサウンド、シューマンで聴かせた重厚かつ芳醇なサウンドに酔いしれた。

 個々の奏者ではオーボエの沼さん、クラリネットの松本さんが光った。特にチャイコフスキーでのオーボエのソロは見事だった。ここに、10月からは首席奏者が加わって、オーボエの工藤・沼、クラリネットの西崎・松本という布陣は、在阪・在広オーケストラにも対抗できる布陣ではないだろうか。
 実は、グリーグのコンチェルトの冒頭のピアノ→木管のソロが終わった後の北欧の景色を思わせるような部分で、パート同士の連携の足並みが乱れが見られたのだが、村上さんの指揮はいかにも斎藤秀雄直系で、小澤さん秋山さんの薫陶を受けたバトンさばきですぐに収拾された。指揮者だけでなく、ここでのコンマスの高畑さんが、決して「俺についてこい!」という感じではなく、「大丈夫大丈夫、呼吸を合わせていこう」という感じの落ち着いた対応をしているのが印象的で、なるほど、シェレンベルガーさんが三顧の礼で首席コンマスに迎えたは、こういうことだったか、と高畑コンマスの楽団を導いていく手腕を感じられた。
 5年ほど前までの、時折音が固くなったり、音楽の生気が物足りない場面があった岡山フィルとは、もう別のオーケストラだ。音楽の瑞々しさや生気溢れる息遣いは、岡山フィルに深く刻まれている。
 さて、第2部の松本さんによるチャイコフスキーの1番コンチェルト。オーケストラに導かれて、ピアノの和音の跳躍を聴いた瞬間、涙腺が緩むほどに感激した。これが世界レベルの輝かしい音なのか。スタインウェイが喜んで鳴っているようだ。
 松本さんは終始、たいへんな熱演で、プロ奏者によるエキシビションというテンションではなく、まるで定期演奏会のメイン曲のようだ。オーケストラも松本さんに呼応して、勢いのある充溢した演奏を聴かせ、特に第3楽章ではソリストとオーケストラの音楽が互いを刺激し合い、ステージと会場の熱気がシンクロする幸福な時間が訪れた。コンマスの高畑さんが笑みを浮かべ、指揮者の村上さんが音楽に酔いしれる様な表情を浮かべていたことが、このコンチェルトの演奏の充実ぶりを顕著に表していたように思う。

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