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渡辺克也 オーボエ・リサイタル [コンサート感想]

渡辺克也 オーボエ・リサイタル
 
クロンマー/オーボエ四重奏曲第1番ハ長調
クルーセル/ディベルティメントハ長調
レイハ/オーボエ五重奏曲ヘ長調
 
オーボエ独奏:渡辺克也
弦楽四重奏:はやぶさ弦楽四重奏団
2018年9月1日 岡山バプテスト教会
 これは本当に掘り出し物(といったら語弊があるかな)のコンサートでした。
 アルテゾーロ・クラシカの店長が「この渡辺さんのオーボエは絶対おすすめです」と太鼓判を押していたので、まずCDを購入。さっそく聴いてみると、ふわっと広がるカラフルで聴く者を幸福で満たしてしまうような音色に魅了され、「これはコンサートにもいかねば」と。
 
 実演の渡辺克也さんのオーボエの音もとにかく素晴らしかった!!華があってカラフルでパワフルで、一瞬で場の空気を換えてしまう。
 岡山と言えば、我らが街のマエストロ、シェレンベルガーさんのオーボエもカラフルでまばゆいばかりの色彩を放つのだが、シェレンベルガーさんがハプスブルグ家のシェーブルン宮殿の色彩と華やかさだとすれば、渡辺さんのオーボエの音は同じ色彩の華やかさでも、ちょっとシックな色使いというか、ヨーロッパの森を連想させるような音。例えるならノイシュヴァンシュタイン城のインテリアの華やかさだろうか。 
 特にハイトーンの音の伸びの良さは爽快かつ重厚で、永遠に聴いていたい気持ちのいい音楽を奏でられていた。
 
 渡辺さんの経歴は、もの凄いもので、東京芸大在学中に新日本フィルに入団、その後ドイツに渡ってヴッパータール響、カールスルーエ州立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ歌劇場管の首席奏者を務めた、おそらく日本人オーボエ奏者としては宮本文昭さんと並ぶ実績の持ち主。
  こんな凄い方が、なぜ岡山に来てくれたのかというと、新日本フィル財団中に、岡大交響楽団のトレーナーをしていたことが縁で、当時の同団のオーボエ奏者だった方が熱烈に招聘して実現したとのこと。招聘するの方の情熱も凄いが、まだ20代の頃に教えていた大学オケの縁を大事にされている渡辺さんの人間性の大きさにも感銘を受ける。
 
 はやぶさ弦楽四重奏団は、岡大交響楽団OB奏者で結成されたアマチュアの弦楽カルテットで、コンサートの前は『渡辺さんの伴奏として、アマチュアのカルテットでは物足りないのではないか』と危惧していた。
 確かに、プロの奏者には技術的な面では及ばない部分はあったが、音楽を鑑賞するうえで興を削がれたるすることは全くなかった。それは、渡辺さんも演奏後に称賛されていたように、このコンサートに向けて充分な準備をして来られていた(と一口で言っても、仕事や家事、子育てに追われる一般人が、技術を維持するだけでも大変なのに、2時間ものコンサート・プログラムの曲を水準以上に仕上げてくるというのは本当に大変なことだと思う)、ということもあるのだけれど、何といっても渡辺さんと、はやぶさ弦楽四重奏団の奏でる音楽の表情が本当に豊かで、フレーズやアクセント、ダイナミクスの処理(特に音を大きくしていく場面)、楽器同士の掛け合いなどなど、楽曲の一つ一つのアクションに込められた意味を十分理解・咀嚼して、聴衆を飽きさせなかったことが大きいと思う。
 クレーセルのディベルティメントで、彼らの瞬発力のある表現、レイハのオーボエ五重奏曲(この曲、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ「春」に似たフレーズが展開していく、なかなかの名曲)でのとろけ合う様なハーモニーは本当に見事だった。
 渡辺さんのはCDでも楽しめます。こちらはミラノ・スカラ座のトップ奏者からなる弦楽四重奏団との共演。録音は、あのカラヤンも愛したベルリン・イエス・キリスト教会。間違いなく現役日本人オーボエ奏者最高峰の演奏で、世界のオーボエ奏者の中でもトップの演奏でしょう。絶対にお勧めです!!
Wings / Katsuya Watanabe, Oboe [輸入盤] [日本語帯・解説付]

Wings / Katsuya Watanabe, Oboe [輸入盤] [日本語帯・解説付]

  • アーティスト: 渡辺克也,ライヒャ,クルーセル,クロンマー,ヨハン・クリスチャン・バッハ,武満徹,クライディ・サハチ,ステーファノ・ロ・レ,シモニーデ・ブラコーニ,サンドロ・ラッフランキーニ
  • 出版社/メーカー: Profil / King International
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: CD
 実力があってもCDがなかなか出せない今のご時世にあって、これほどのラインナップの録音が出せるというのは、ヨーロッパでの渡辺さんの評価の高さが伺い知れます。
 いや、本気で全録音のCDを買おうかしら・・・

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