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SACDは短命なメディアになるのか? [ネットワークオーディオの愉しみ]

 ハイレゾ音源を購入して聴くようになると、SACDを滅多に購入することは無くなった。そうはいってもまだまだSACDのラインナップに比べると、ハイレゾ音源のラインナップは貧弱で、SACDでないと購入できない演奏は多いのだけれど、それでも今はSACDの購入をなるべくやめている。
 やはり、SACDは未来が無い、と思うからだ。
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 SACDの音楽メディアとしての優秀性には異論の余地は無い。SACDの音盤を最初に購入して聴いた瞬間の感動は今でも忘れられない。まるでホールにいるような臨場感、オーケストラの弦の音はCDだとやや金属的な音がするのに、SACDのシルキーでマイルドな音、自分の目の前で歌っているかのようなヴォーカルの声。その音楽世界の素晴らしさに心が震えるような感動があった。僕の棚にも現在200枚ぐらいのSACDがある。
 しかし、SACDには決定的な弱点がある。それはコピー制限があるため高音質音源が取り出せないこと(ハイブリッドなら普通のCDレベルの音は取り出せるが・・・)。moraやe-onkyoでDSD音源を購入すると、1回の購入につき10回までダウンロードできるので、NASだけで無く、スマホやタブレットの本体、あるいはUSBメモリーに保存して車で聞いたり外出先で聞いたりすることも可能。それに比べて、常に専用プレーヤーを必要とするSACDのなんと不自由なことだろうか。
 音質面ではNASに保存したDSD音源と、SACDの音がほぼ同格、いい勝負をするんです。ノラ・ジョーンズの「Come away with me」はSACDとDSD音源の両方持っているが、SACDを定価ベース16万円のSACDプレーヤー(Marantz SA-15S1)で聞く音と、1.5万円のNASに保存したDSD音源を4万円のNAP(YAMAHA NP-S303)で聞く音がほとんど同格というのは衝撃的・・・。もちろんマランツと、YAMAHAでは、味付けには違いがありますが、音そのものの良さではそれほど大差ない。
 こうなってくると、音源をSACDで持つ意味はあるのか?という話になる。
 おそらくSACDの時代が終焉するのは、そう遠くない気がする。SACDの登場からまだ20年経っていない。ラインナップが充実して一般的に普及してからだと12年ぐらい?そんな短期間で役割を終えてしまう。そうなれば、この200枚のSACDはどうしましょうかねぇ(笑)今のプレーヤーが生きているうちは大丈夫だとは思うが、CDプレーヤーというのは駆動部や読み取り部に寿命があり、あと10年持てばいい方だろう。
 せめて、同じ音源をmoraやe-onkyoなどでダウンロードできるような救済措置をとってくれないかな?と思いますね。

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RSKメッセージ特別篇「新たなるシンフォニーへの招待」 [岡山フィル]

 放送から時間が経過してしまいましたが、岡山フィルの演奏が地上波TVで放送されるという機会もそうそうないと思うので、少しばかり感想を。
 
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・ショスタコーヴィチ/交響曲第5番から第1楽章ダイジェスト
・チャイコフスキー/交響曲第5番から第2、4楽章ダイジェスト
 
 今回の放送では、6月20日放送のドキュメンタリー「おらが街のオーケストラ 岡山フィルの新たな挑戦」の取材の際に収録されていた映像を使って、演奏の模様が1時間にまとめて放送された。楽章抜粋の上にダイジェスト版ということでしたが、音楽の切れ目をうまく繋げていて、普段クラシックを聞き込んでない方には全く違和感の無いものに仕上がっていたと思う。
 
 シェレンベルガー&岡山フィルの演奏は、ショスタコーヴィチとチャイコフスキーという、ロシアの音楽という共通項はあったものの、アプローチは全く異なっていた。
 私はショスタコーヴィチの交響曲第5番についてシェレンベルガーの指揮では関西フィルの演奏で聴いているが、その時と印象はほぼ同じ、この曲にまつわる様々な時代背景やエピソードを排し、純粋に音楽としての美しさを際立たせたものだった。
 第1楽章では、透明感のある響きと、大音量の場面でも決して濁らないアンサンブルを貫き、強引に押していくような場面は全くなかった。新首席奏者陣の奮闘もあって磨きに磨き抜いた美しさが光る演奏だった。チェロとヴィオラのユニゾンの作りだすピュアな世界は、まるでこの世のものとは思えない無機的な美しさで、出来れば第3楽章も聴いてみたかったなあ・・・と思わされた。
 一方で、生演奏でも聴くことが出来たチャイコフスキーの交響曲第2番の2・4楽章。第2楽での美しさは中高音のユニゾン多様によるピュアサウンドが特長だったショスタコーヴィチとは違い、和音のハーモニーの柔らかさが光る美しさだった。その一方で、第4楽章では、当日の感想でも書いたとおり、バーバリアニズムを感じさせる野性的な演奏。ボウイングを深く取り、油絵を何層にも塗り込めるような、ちょっと語弊はあるが、チャイコフスキーの音楽特有の一種『暑苦しさ』を見事に表現している。テンポの速い場面で弦楽器の音がもっと一本筋の通った統一感が欲しい、とは思う。
 岡山フィルは、以前、youtubeで定期演奏会の動画を配信していた時期もあったが、現在はケーブルテレビ(オニ・ビジョン)での放送に切り替えた。私のようにマンション住まいで容易にケーブルテレビに入れない者に取っては、こういう地上波の放送は本当にありがたいのです。深夜枠でもいいから、今後もこういう機会を作って欲しいと、切に願う次第です。

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I am a SOLIST から巣立った演奏家たち Vn:岸本萌乃加、Cl:西崎智子、Pf:梅村知世 [コンサート感想]

Jホールレインボーコンサート Vol.57
「I am a SOLIST」 から巣立った演奏家たち
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ヴァイオリン:岸本萌乃加
 イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番から、第1,2,4楽章
 モンティ/チャルダッシュ
クラリネット:西崎智子
 ウェーバー/グランド・デュオ・コンチェルタント変ホ長調
ピアノ:梅村知世
 シューマン/アラベスク
   〃  /幻想小曲集から飛翔
 ショパン/バラード第1番ト短調
 ショパン/英雄ポロネーズ
 シューマン(リスト編曲)/献呈
トリオ
 ミヨー/クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための組曲
2018年8月21日 岡山大学Jホール
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 「I am a SOLOST」というのは、オーディションを経て、岡山フィルをバックに、岡山シンフォニーホールでコンチェルトを演奏するという企画。オーケストラをバックに最初で最後のつもりで出演するもよし、将来を嘱望される地元のジュニアや若手奏者たちが登場するもよし、非常に間口が広いイベントだが、今回のJホールでのコンサートでは、将来を嘱望され登場した地元のジュニアや若手奏者たちのうち、本当にプロの「SOLOIST」として飛び立った人たちが登場した。
 岸本さんはジュニアの頃からすでに地元では、その豊かな才能が話題で、岡山フィルだけでなく、岡響や倉管といった地元のアマチュア・トップオケのソリストに招聘されて、すでにファンが多く付いている。日本音コン3位という実績もある。
 イザイの2番ソナタを聴き、「これは、すでにプロ・オーケストラ奏者として呼ばれても充分に仕事が出来る方だな」と感じた。高音の抜けが良く、一方で低音の響きが太くて、彼女の演奏でブラームス、あるいは十八番のシベリウスのコンチェルトを聴いてみたい!と思わされた(岡山フィルの定期演奏会への招聘を!ぜひ!)。
 将来はソリスト1本で行かれるのか、室内楽かあるいはオーケストラへの就職を目指すのか、今ちょうど岐路に立っているところかもしれない。出来れば、国内外の有力オーケストラのコンマスとして活躍しつつ、ソリストとしても活躍して岡山でも年に1回はリサイタルを開いてほしいと思う。
 西崎さんは、中高生時代から地元岡山の管楽器サークルの中で名前が知られた存在だったそうだが、現在は東京を拠点に活躍され、時々岡山フィルにも客演されていた。今年10月には正式に岡山フィルの初代クラリネット首席奏者に就任予定。
 演奏されたウェーバーの「グランド・ヂュオ・コンチェルタント」は、音源も含めて初めて聴いた。西崎さんご自身「ピアノパートが本当に大変で」と仰っていたが、クラリネット・パートもなかなかに大変そう。しかし万全のテクニックで堂々たる演奏。クラリネットの表情豊かな世界を堪能した。クラリネット協奏曲ぐらいしか知らなかったウェーバーの作品がもっと身近になった。
 岡山フィルも、西崎さんのような首席奏者の技を、一般市民に向けて、発表する場を設けてほしい(今年の岡山国際音楽祭では、岡フィルの方々の出番がかなり増えたが、全然足りない)、プロのクラシック音楽の奏者の集客力の凄さは、大阪クラシックなどのイベントで証明済み。仕掛け方次第だと思う。
 話を戻すと、彼女のような実力の持ち主を首席奏者として招聘出来て、岡山フィルの将来が本当に楽しみです。
 最後は、梅村さん。すでにCDも発売、大阪の名門ホール、ザ・シンフォニーホール主催公演のリサイタルにも出演されている。
 与えられた持ち時間(恐らく30分)を最大限に生かして、ショパンのバラード1番を中心に据えたシンメトリーな構成で、聴衆に強烈な印象を残した。
 フォルテシモの場面では、ピアノが鳴る、というよりステージの床ごと鳴る迫力、それでも常に気品を湛えた表現に魅了された。良きピアノ聴き・ショパン聴きではない自分だが、ショパンの余りにも甘くてロマンティックな世界に没入しすぎることがない梅村さんの演奏は、ショパンが苦手な僕のような、『聴き手が置いていかれる』ことが無かった。
 最後はクラリネット・ヴァイオリン・ピアノによるトリオでのミヨー/クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための組曲。一度生演奏で聴いてみたかった曲で(大阪クラシックで、ブルックス・トーンさんらの公演に行くつもりで予習までしていたが、聴きに行けなかった・・・)、映画音楽のようなとても聴きやすい曲。生演奏で聴いてみると、巧みな和音構成で飛翔感・透明感があり、一気に好きになった。
 3名とも、演奏も素晴らしかったうえに所作や雰囲気に輝きが感じられ、テクニックや表現力だけでなく、プロとして成功するためには、最後は人間力、人を魅了する力だと思った。お昼下がりの軽めのコンサートという企画だったが、3名の方の誠実な演奏に立ち去りがたい思いに駆られ、大学内の図書館に併設されているカフェで、しばし余韻に浸った。
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ネットワーク・オーディオ・プレーヤー選び [ネットワークオーディオの愉しみ]

 ネットワーク・オーディオ・プレイヤー(NAP)について一言で言い表すとすると、「ネットワーク機能付のDAC」ということになるだろうか?しかし、それではNAPの革命的に便利で楽しい機能を、だいぶスポイルした表現になってします。

 もう少し詳しく表現すると、「ネット上の音源やハードディスクに保存している音源の再生についてパソコンを介さずオーディオ用に特化した再生機」と言い表すことが出来るかな?

 しかし、これだけだとまだまだ言葉足らずで、
①スマホやタブレットなどで簡単に再生操作ができ、プレイリスト機能などを使えば、物理的操作(CDプレーヤーのトレイにCDを乗せるなどの操作)無しに、延々と所有しているの音源ライブラリーの音楽を流し続けることが出来る。
②インターネットラジオが聴ける(Radikoも聴ける)
 など、ネットワーク接続ならではの様々な魅力的な機能がある。
 そして、NAPの最大の魅力は③『ハイレゾ』音源の高音質の世界を体験できること、これに尽きる。

 僕がNAPについて、一番フィットするのは・・・

「自宅のCD棚にある何千曲という音源に加えて、ネット上にある星の数ほどの音源にも片手でアクセス・再生できる、高音質再生機」

 という表現になるだろうか?

 NAPには様々な機能があるだけに、様々なタイプが存在する。

〇ハードディスク内蔵のタイプ
 SONYのHAP-S1、あるいはパソコン周辺機器でなじみ深いBUFFALOのオーディオブランド:DELAのHA-N1AH20/2などがあるが、ハードディスク付きのNAPというのは少数派だと思う。

 パソコンを介さない自動リッピングや音源販売サイトからの自動ダウンロードが可能。ただし、ハードディスクは消耗品(4,5年で壊れる)であることと、容量/価格比はどんどん低廉な方向へ向かっているので、ハードディスク装置は別で購入する方法が主流になる。


〇CDプレーヤー内蔵のタイプ
 YAMAHA/CD-N301やDENONのRCD-N9のように、数万円の初級機にこのタイプのラインナップが豊富。
DENON CDレシーバー Bluetooth/NFC/ハイレゾ音源対応/ネットワーク機能 ホワイト RCD-N9-W

DENON CDレシーバー Bluetooth/NFC/ハイレゾ音源対応/ネットワーク機能 ホワイト RCD-N9-W

  • 出版社/メーカー: デノン
  • メディア: エレクトロニクス

 NAPにはもともとDACが載っているのだから、CDの駆動部分も乗せてしまったた全体的なコストダウンにつながる、という考え方は合理的。アンプとこれさえあれば、ほぼ何でも出来る。MarantzのM-CR611のようにアンプも内蔵したオールインワンタイプ(昔で言えばシステムミニコンポみたいな)もある。コストパフォーマンスは最強だろう。

〇NAP機能のみのタイプ
 ネットワーク機能とDAC機能+スマホ等で操作するアプリのセットのみのタイプ。アンプやCDプレーヤーが既にある人は、このタイプを選択することになる。僕が検討したのもこのタイプ。

 値段も文字通りピンからキリまでで、高級機になると数百万円もの値付けになっている。ネットワークオーディオは、オーディオ業界を再び活況に導いているようで、それは当然と言えば当然の帰結。

 CDというフォーマットの登場以来、オーディオ・マニアたちは100万円以上を投資して16bit/48khzのCD音源から血道を上げていい音を引き出してきた。しかし、2.8Mhz(2800khz)のDSD音源(あるいは24bit/96khzのPCMなどの)のような、CD企画から考えたらお化けのようなスペックの、ハイレゾ音源が販売されるようになった今、スタートラインからして土台違うわけだから、いい音を追及するマニアたちがハイレゾ対応のネットワークオーディオを組まない選択肢は無い。DSD音源の生の楽器の音に近い、奏者の息づかいが手に取るように分かる、そんな音を聞いたら、もう戻れないわけです。
 以前からマニアの間ではCDからいい音を引き出すには限界が見えた、としてアナログ(LP)に立ち返って最上の音を引き出す一派もあった。今後もこの2極に分かれていくでしょうね。

 ハイレゾ音源の出現は、我々庶民にとっても数万円で従来聴いていたものとは桁違いに音がいい鑑賞空間を作ることが出来るようにした。

 話を戻して、僕のNAP選びのポイントとしては

・NAP単体では5万円程度の予算
・AAC、WAVE、MP3、FLAC、DSDなどあらゆるファイル形式に対応、とりわけFLAC、DSDは絶対条件
・せっかくだからネットラジオやRadiko対応であること
・spotifyなどのストリーミングサービスへの対応も欲しい

 実は、一番「良さそうだな」 候補はTEAC NT-503だったんです。実売価格が9万円。色々なサイトでのレビューの音質に関する評価がずば抜けて高い。サイズはコンパクトながら、プロ・ユースのような無骨なデザインはなかなか格好いい。しかし、Radikoとairplayやspotifyに非対応で、やはり価格面でNASの購入費用も含めると12万円ほどかかってしまうため、今回は見送り。
 ネットワーク・オーディオはパソコンと同じでドッグ・イヤーで進化することを考えると、ここはやはり5万円以下に抑えておきたいところです。

 最終審査(?)に残ったのがこの4機種

〇Marantz/NA6005

〇Pioneer N-30AE


〇ONKYO NS-6130

〇YAMAHA 
※シルバーもあります。僕が買ったのはシルバーです。



 我が家のオーディオ・システムは、アンプがMarantz/PM15-S1で、SACDプレーヤーもMarantz/SA15-S1という構成なので、Marantz NA6005にしておくと、外観上の統一性も高いし、リモコンは共通になるなど、何かと便利。試聴した感じも安心のマランツサウンドで、非常に好印象。オーディオ部分は言うことは無いんですが、レビューを見ると、まず、ネットワーク回路の不具合が多いらしく、不具合が起きるたびに電源ケーブルを抜き差しして対応しているようなユーザーさんもいるようで、しかもUSBメディアの認識不良もあるらしい・・・。レビューの中には『パイオニアもオンキョーもヤマハも、自社内にカーオーディオやネットワーク機器の生産部門があって、ネットワークに関する技術が高いのに対し、D&M(デノン・マランツ)はそこら辺が弱い、もう少し進化を待った方がいい』という意見もあるようで。今回は、マランツは見送り。

 オンキョーのNS-6130は全般的によくまとまっているんだけれど、試聴した音が好みでは無かった(僕がもっとも重要視している、「本物の楽器の音に近い」という点で弦楽器の音がちょっと違和感があった)、この3製品を試聴した感じでは、ヤマハの音が(楽器の原音再現性という点で)一歩リードしている感じがあった。
 最後は、木管や金管の音が伸びやかに聴こえたパイオニア/N-30AEとの一騎打ちになったが、パイオニアがBluetooth非対応ということで、最終的にはヤマハに決めました。あと、ヤマハはネットワーク技術、特に無線LANルーターのメーカーとして業界内でも評価が高く、そのあたり安心して使えそうだという要素もありました。
 しかし、そこまでこだわったBluetooth搭載だったが、購入後にNP-S303では自分が想定していた事が、すべて出来るわけでは無いことが発覚。これについては記事を改めて(笑)。まあ基本的には、Bluetoothは一番最初のペアリングさえうまくいけば、Wifiよりは通信は安定しているので、間違った選択ではなかったとは思っています。

 しばらく、ネットワーク・オーディオの記事が増えると思います。


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ポーラ美術館コレクション 岡山県立美術館(2回目の訪問) [展覧会・ミュージアム]

ポーラ美術館コレクション 「モネ、ルノワールからピカソまで」 (2回目の訪問)
岡山県立美術館
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 再び行って参りました。展覧会はできれば2~3回行った方がよい、行くたびに自分の感じ方が変わる、というのは大原美術館のギャラリートークで教えていただいたのだが、2回行くことによって1回目ではあまり感じなかった作品の魅力に気付いたり、1回目とは違う見方が出来たように思う。
 1回目・2回目を含めて、印象に残った作品を10作品選んでみます。今回の特別展は、一部(というか、4割ぐらいの作品が)写真撮影OKだったので、画像に取ったものと、写真撮影不可のものは絵葉書を間接撮影したものを掲載します。
10位:カミーユ・ピサロ 「エラニー村の入口」1884
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 点描、結構好きです。シニャックやマルタンも良いけれど、緑のパストラーレの風景を描かせたら、ピサロの右に出るものはいないですね。
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9位:ジョルジュ・ブラック 「レスタックの家」1907
 写真は無し、家並みのような岩山のような、力強いタッチは頭の中に強く残る。
8位:ピエール・ボナール 「浴槽、ブルーのハーモニー」1917
 写真は無し、まさに「青色のハーモニー」が見事。魚眼レンズ的な構図も作品の中に引き込まれる。
7位:アルベール・マルケ 「冬の太陽、パリ」1904
 写真は無し、ヨーロッパの冬の厳しさと、太陽への渇望がよく伝わってくる。
6位:カミーユ・ピサロ 「エヌリー街道の眺め」1879
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 構図が凄い。それほど大きくはない絵なのに、すごく大きな絵のように感じる。緑色の配色も見事。
5位:クロード・モネ 「グランド・ジャッド島」1878
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 これぞ「ジャポニズムの影響を受けた印象派」の代表的作品。ここ1週間の間に、原田マハさんの「ジヴェルニーの食卓」、そして「モネのあしあと」を読んで、もっとモネの世界に引き込まれました。
ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/06/30
  • メディア: Kindle版
モネのあしあと 私の印象派鑑賞術 (幻冬舎新書)

モネのあしあと 私の印象派鑑賞術 (幻冬舎新書)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 新書
4位:ポール・セザンヌ 「砂糖壺、梨とテーブルクロス」1893-94
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ピンボケですみません。食卓から零れ落ちそうな檸檬、静物画なのに動きが感じられる。すごい!
3位:ピエール・ボナール 「ミモザのある階段」1946
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絵葉書から。この原色配置のバランス・色彩感覚は衝撃的。今回の特別展でボナールがますます好きになった。
2位:ピエール・オーギュスト・ルノワール 「レースの帽子の少女」1891
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 ふわりとした少女の髪の毛の質感がリアルに感じられ、実物を見ると凄い作品と認めざるを得ない。
1位:クロード・モネ 「花咲く堤、アルジャントゥイユ」1877
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 印象派の発展は、鉄道網の発達を象徴とした技術革新が不可欠だった。画家たちはパリを出て郊外へ向かった、工業化と自然の風景という、印象派の時代をこれほど克明に表した作品はないと思う。構図も見事で奥行き感がはんぱない。

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戸澤采紀ヴァイオリン・リサイタル 岡山(早島)公演 [コンサート感想]

戸澤采紀ヴァイオリン・リサイタル 岡山(早島)公演
モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ第18番
ミルシテイン/パガニーニアーナ
イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番
 ~ 休 憩 ~
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調
プーランク/ヴァイオリン・ソナタ
ヴァイオリン:戸澤采紀
ピアノ:丸山晟民
2018年8月10日 早島町町民総合会館ゆるびの舎
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 いやー、すごいもんを聴いてしもうた。今夜も若き才能にひれ伏した。こんな高校生が居ていいのか?というほど完成されたヴァイオリンに圧倒された。
 1曲目のモーツァルトは庄司さんのリサイタルの際にも1曲目に持って来ていた曲。なかなかかわいらしい曲で、可憐な十代の天才ソリストの演奏を堪能して聴いていた。
 しかし、2曲目からが凄かった。ミルシテインのパガニーニアーナは、例のパガニーニのカプリス第24番を「それでは物足りない」とばかりに、20世紀の大巨匠のミルシテインがさらに難しく編曲したような曲。技術的にまったく綻びは見えなかったことはおろか、変奏が進むごとに変化する多彩な表現に魅了された。この時点で、「これは天才少女の演奏を聴きに来たんじゃない。一人の1人前のソリストとして聴かないと」という気持ちにさせられた。
 3曲目のイザイは、百戦錬磨のプロの奏者でも大きな挑戦と位置付ける曲。6曲ある無伴奏ソナタだが、4楽章形式の第2番から第6番へかけて、よりシンプルに、より難しくなる。戸澤さんは完全に曲を自分のものにして、静寂をも支配するような圧巻の演奏。第1楽章は「夜明け」と名付けられているが、宇宙的なスケールを感じたし、第2楽章の「田舎の踊り」も素朴な田舎の祭りというよりは、神々の降臨を呼ぶような踊りに感じた。演奏終了後、会場で「ほお~」というため息が漏れたのが印象的。
 後半の1曲目はベートーヴェンのソナタの8番。この演奏で彼女がもう完成されたソリストであることを確信させられた。音楽の骨太さ、舞台上で発するオーラ、ベートーヴェンに必要な要素はすでに兼ね備えられていた。この曲の第3楽章で、大きく盛り上がった後に休止がある(つまり、誤って聴衆が拍手するポイントでもある)のだが、そこで客席に正面から顔を向けて、その彼女の視線とオーラに支配されたように客席の時間が止まった瞬間には鳥肌が立った。
 最後のプーランクのソナタも、なかなかに激しく、そして難しい曲。伴奏者の丸山さん(東京芸大在学中)の演奏も素晴らしく、プーランクこの曲に込めた、友人の死への悲しみや戦争への怒りを、2人の体当たりな演奏で見事に表現されていた。
 戸澤さんは、東京シティフィルのコンマスで、モルゴーアQのメンバーの戸澤哲夫さんのご息女。現在、東京芸大附属高校の3年生。早島公演は、9月の浜離宮朝日ホールでのリサイタルに先駆けての疲労だったとのこと。十八番はシベリウスのヴァイオリン協奏曲だそうなので、手の届かないところに行ってしまう前に、岡フィルさん、来年あたりシベリウスのコンチェルトで定期演奏会に招聘、なんてどうでしょうか。
※追記
今回のリサイタル(8月岡山、9月東京)に向けた戸澤さんのインタビューです。
 なんと、戸澤采紀さんはオーケストラ奏者志望で、ベルリン・フィルに入団するのが夢なんですね。マーラーの交響曲を全曲演奏するまで死ねない、というほどマーラ好きでもある。実力が高くても入れるかどうかはわからないのがベルリン・フィルですが、彼女なら大丈夫だと思ってしまいます。

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福田廉之助 ヴァイオリン・リサイタル [コンサート感想]

ルネス・クラシックシリーズVol.7
福田廉之助 ヴァイオリン・リサイタル
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第7番
ヒンデミット/ヴァイオリン・ソナタ第2番
 ~ 休 憩 ~
ストラヴィンスキー/ディベルティメント
サン=サーンス(イザイ編曲)/ワルツ形式のカプリス(6つの練習曲第6番)
 5月の岡山フィルの定期演奏会でチャイコフスキーのコンチェルトで、度肝を抜く完璧な演奏を聴いて以来の福田さんのコンサートでした。
 
 彼は本当に美音の持ち主で、高音の伸びと艶やかさ、中低音のまろやかさ、どの瞬間をとっても聴いていて気持ちいい。
 ヒンデミットの無伴奏の2番は、国内のオーケストラ奏者の方の演奏を聴いたことがあったのだが、福田君の方が1枚も2枚も上手の堂々たる演奏だった。
 後半の、イザイが編曲したワルツ形式のカプリスも、ハイテンポでノリノリのリズムで弾いて、観客を熱狂の渦に誘い込む一方で、勢いに任せて弾くような場面は一切無く、人一つの音符を確実にとらえていくのは、本当に聴いていて気持ちがいいです。
 
 一方で、彼が『怪物』ではなく、18歳の進化の途上にある若者であることが分かったのはベートーヴェン。ベートーヴェンらしい高潔な旋律をぐいぐい推進していく演奏は見事な一方で、第2楽章のような音譜の密度が薄くなる場面では、聞き手を惹きつける続けるような吸引力に不足していた。超一流のヴァイオリニストは、こういう場面でこそ、一層密度の濃い演奏を聴かせるのを思うと、この辺が課題なのかな?って、ワタクシ、物凄い難しいことを要求していますね。それぐらい、18歳の彼が現在到達している境地が物凄いということだと思う。
 
 何年後かに、オーケストラとの共演でどっしり構えた濃密なベートーヴェンやブラームスのコンチェルトを聴ける日を楽しみに待ちたいと思います。
 
 彼は僕よりも20歳ほど年下だから、僕が85歳ぐらいまで長生きできれば、彼がどこまでの境地にたどり着いたのか、見届けることができます。ずっと見続けていきたい芸術家がいる、というのは本当に幸せなことです。

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音楽鑑賞ライフの『革命』を起こしてくれそうな、ネットワーク・オーディオ・プレイヤー購入 [ネットワークオーディオの愉しみ]

 岡山において、平成最悪の大災害となった『西日本豪雨』からの復旧がなかなか進まない中、自分の趣味を追及するのも気が引けるところもあるのですが、観光地へ来るお客さんも1/4程度に落ち込み、夜の飲食店の売り上げも激減しているとのことで、このままでは地元経済が壊滅してしまいますので、復興の妨げにならない(エアコンや冷蔵庫などの生活家電などは除いた)ものを地元で購入しよう(というこじつけですが)といことて、少しでも経済が回ることを祈りながら買いました。


 それは、ネットワーク・オーディオ・プレーヤー(NAP)です。PCオーディオ自体は10年近く前から取り組んでいたんですが、NAPの導入でパソコンを介さないネットワークオーディオのストレスの無い世界は、想像以上に快適なものでした。これは、CDプレーヤーの登場以来のディープインパクトなテクノロジー革命だと思う。
 ここでPCオーディオとNAPの違いを簡単に整理しておくと、PCオーディオはPCを介してパソコンのハードディスクやNAS(ネットワーク上に置かれたハードディスク)からの音源をDACを介してアンプ・スピーカーへ流して音楽を鑑賞する方法。もちろんYoutubeやSpotify、ナクソス・ミュージック・ライブラリーなどのネット上のストリーミング音源をアンプ・スピーカーで聴くことも出来ます。
 NAPはPCを介さずにこれらの音源の音楽を聴く方法です。音源の指定や選曲動作は、タブレットやスマホを通じて行いますが、音楽データはNASとNAPが直接やり取りするので、音切れやノイズのリスクが格段に少なくなります。アプリを使えば(機種によりますが)Spotifyなどのストリーミング音源を聴くこともできます。もちろん、コンピュータの中のライブラリーの音源もアクセス出来ます。
 イメージ図はこんな感じです(YAMAHA NP-S303の場合)
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 僕がPCオーディオ自体に取り組み始めたのは10年ほど前になります。CDをリッピングするなどしてパソコンで音源を取り込んでDAC(デジタル/アナログ・コンバータ)を経由させて、アンプ・スピーカーに流すタイプで運用してきました。
 しかし、最近はあまりPCオーディオ経由での音楽鑑賞はしていませんでした。なぜならPCオーディオには様々な欠点があったからです。
 
・PCの電源を入れて、OSを立ち上げて再生用ソフトウェアを起動させまでに時間がかかり、しかも面倒
・YoutubeやNMLなどのストリーミング音源は、割と頻繁に再生が途中で途切れたりする
・ノイズが発生することが多い。それもオーディオマニア的可聴域を超えるような微細なノイズではなく、「ブチッ」とか「ブブッ」とか、看過できないノイズが発生する
・PCで音源を再生中に、PC内で他の作業(OSやセキュリティ・ソフトのアップデートなど)が始まると、ノートPCのファンが回り出し、その音が鑑賞の妨げになるとともに、音飛びの回数も増える
 PCオーディオの持つこれらの欠点により鑑賞の興が削がれることが多く、ハイレゾ音源などの驚異的な音質は、やはり「すごい・・・」と思うものの、どっぷりと音楽に心を浸したいときは、安心できるCDやSACDによる鑑賞に落ち着いていました。
 ネット上やパソコン情報誌にはPCオーディオの設定の追い込み方の情報がたくさんありますし、どうやらwindowsではなく、Linax系のOSの方が良いらしい、ということも解ってきましたが、私のようにド文系の人間で、仕事でも嫌々パソコンを覚え、何かトラブったらすぐにお手上げ・・・みたいな人種にとっては、あまりにもハードルが高すぎるんですね。PCオーディオのセッティングは、その作業を楽しんでできる人にしか難しいのではないか?と思います。
 
 話を戻すと、我が家のPCオーディオの様々な問題点を解決するには高スペックCPU・メモリを装備したパソコンを音楽鑑賞専門機に特化するしかないかな?と思っていましたが、先々月ふらっと立ち寄ったオーディオショップで、実売5万円ほどのマランツのオールインワン(アンプ・CDプレーヤー・DAC・ネットワーク機能)のコンポから出るハイレゾ(DSD)音源の鬼のようにクリア解像度と、管楽器奏者の息遣いまで聞こえてくるような音に衝撃を受けました。「ハイレゾ音源って、こんなに凄かったんや・・・」という衝撃。
 PCオーディオでハイレゾ音源の潜在能力を発揮させることは、自分には難しいが、ネットワーク専用機なら?という希望が湧いてきました。
 その衝撃を受けた後、moraで購入したDSD音源(ノラ・ジョーンズの「Come away with me」〔blue note〕)とインバル&都響のマーラー:交響曲第5番〔エクストン〕)をUSBメモリに入れて、USBメモリ対応のNAPやNAP搭載のコンポーネントで視聴を繰り返した。
 結果、どのネットワークオーディオ専用機も、抜群の高音質と音場の広がり、そしてヴォーカルやオーケストラの各楽器が、まるで目の前や真横で演奏しているような息づかいに感動。
 
 よくよく考えると、パソコンをもう一台購入するぐらいなら、ネットワーク機能付DAC=ネットワークプレイヤーを購入したほうがいいかもしれない・・・。そう思って、雑誌やネットで情報を集め、電気店やオーディオショップなどで視聴した結果、YAMAHA NP-S303 に行き着きました。購入までの機種選びの紆余曲折については、また別エントリーに起こす予定です。
 
  まだ購入して1ケ月も経っていませんが、このネットワークプレイヤーというのは音楽鑑賞ライフを劇的に変えてくれました!
 
◇PCオーディオの際にストレスだったノイズや音切れからまったく解放された!この半月の間、ストリーミングにしろ、NAS(ネットワーク接続ストレージ)からの流し込みにしろ、ノイズは皆無で音が飛んだり切れたりしたことも1回もありません。
 
◇スマホやタブレットからすべて操作が可能、ヤマハの操作アプリ『MUSIC CAST』は、なかなかに使い勝手がよく。アプリはバックグラウンドでも再生できるため、タブレットで本を読みながらでも、オーディオを手元ですべて操作できる。
 
◇NASからの流し込みの音源がとにかく素晴らしい音で鳴ってくれる!アプリでプレイリストを作っておけば、CDのようにディスクの出し入れ無しに、次々と音楽が聴ける。
 
◇PCオーディオ時代にも、CDプレイヤーよりもリッピングした音源のほうが音が良いことがある経験はしていたが、ノイズや音飛びから解放されたことで、心置きなく微細な音まで聴けるようになった。 
◇DSD音源はSACDプレーヤーからの再生と全く遜色が無い。3万6千円のネットワークオーディオプレーヤーと15万円のSACDプレーヤーの音が同レベルというのはすごいことだと思う。そして、SACDプレーヤー(マランツ)とは違うメーカーにしたことで、違うテイストを楽しめる。
 
◇インターネットラジオが想像以上に楽しい。ハイレゾ配信しているインターネットラジオは星の数ほど存在し、特色のある選曲で自分の知らない世界に連れて行ってくれる。
 
◇設定がとにかく簡単
 ①初期設定は、ものすごく簡単。アナログ(もしくはデジタル)ケーブルでアンプにつないで、スマホやタブレットにYAMAHAのNAPの操作アプリ『MUSIC CAST』をインストール。本体のCONNECTボタンを長押しすれば、スマホ・タブレット同士、あるいはNASやPC,はたまたほかのブルートゥース対応機器(ヘッドホンやウォークマン・iPOD)までぜんぶ繋いでくれる。
 
 ②PCオーディオはネットワークやPCに関する知識がある程度必要だったが、ネットワークプレイヤーは、最近の多機能テレビやハードディスクレコーダーよりも設定が簡単かもしれない。
 
 このNAPの革命的な便利さは、なかなか書ききれないんですが、まさに「音楽を聴く」行為を革命的に便利に、より高音質にする画期的なハードウェアだと思います。ネットワークオーディオの世界はソフト面も含めるとまだまだ色々なことが出来る可能性があり、そのプロセスを記録する意味でも、今後も記事に起こしていきますね。
 

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