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姫路市文化コンベンションセンター『アクリエひめじ』大ホール [コンサートホール]

 ウィーン・フィルの姫路公演を聴くため、今年(2021年)9月に開館したばかりの姫路市文化コンベンションセンター「アクリエひめじ」を訪れた。

 このアクリエひめじについては、以前のエントリーでも触れたとおり、コンベンション施設と文化芸術ホールを一体整備した新しい施設である。



 2年後に開館するわが街の新しい劇場:ハレノワ、について考える上でも、非常に興味を持って中を散策した。その概要と感想を書いてみたい。



施設へのアクセス

 新幹線駅直結というのが大きな売りの一つであるが、じっさいに歩いてみた感想は『ビミョーに遠い』というものだ。


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  JRの姫路から歩く場合は、姫路城のキャッスルビューに繋がる中央改札ではなく、東改札のほうが近い。歩行者ペデッキを歩いてひたすら東へ、ホテルモントレー姫路やテラッソ姫路、専門学校などが連なっている。

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 このあたりの広大な土地には、かつて姫路操車場など鉄道施設があり昭和63年に始まった巨大な再開発事業は約30年ほどの間に3/4ほどが完了したところ。

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下の写真はコアゾーンのA〜Cブロックを東側から概観している。


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コアゾーンからイベントゾーンへ差し掛かる手前でアクリエひめじの建物の明かりが見えはじめるが、歩行者デッキはいったん途切れ、地上に降りることになる。ここで若干心が折られる感じ(苦笑)もちろん高齢者や障害者のためにエレベーターはきちんと整備されている。

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地上に降りると車通りの無い道を渡り、播但線の高架の下を少し進むことになる。


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来てみるまでは歩行者デッキが施設まで続いていると思っていたので、少々面食らったが、しっかり看板があるので迷うことは無い。


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播但線の高架下の横に逸れる形でスロープが現れた。なだらかな円弧を描く傾斜のついた美しいアプローチに息を飲む。

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神戸のメリケンパークにある「BE KOBE」パクリ オマージュのような(苦笑)モニュメントがお出迎え。


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スロープの両脇は「キャス21公園」となっており、イベント時の憩いのスペースになりそうだ。


 「意外に遠い」「歩行者デッキが途中で途切れて若干心が折れる」などと書き散らしたが、姫路駅に着きさえすれば、ホールまで鉄道乗り継ぎも信号待ちも無く12分も見ていれば確実にホールに到着する、というストレスのなさは最大の利点なのは間違い無い。19時開演のコンサートならば、姫路着18時30分の新幹線で確実に間に合うのだ。
 他のホールをみてみると、岡山シンフォニーホールは岡山駅から1km以上歩くか岡電に乗り換える必要があるし、ザ・シンフォニーホールやフェスティバルホール、京都コンサートホールも在来線や地下鉄への路線乗り換えが必要なのだから。




施設全体の概要


アクリエひめじの全体配置図を見ると・・・


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広大なエントランスホールを挟んで南と北の2つのブロックに別れており、南ブロックは展示場(コンベンションホール)となっている。

展示場の前にはギリシャ神殿形状の屋外展示場:にぎわい広場がある。音楽祭などのオープニングコンサートなどにも使えそうだ。


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南ブロックと北ブロックの間のエントランスホールは広大な吹き抜け空間。このスペースが圧巻だった。


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実はウィーン・フィル公演の開演前には(指定席にもかかわらず、なぜか)300人ぐらいの列が出来ていたのだが、余裕の収納力だった。たぶん1000人ぐらいの行列は余裕で対処できるだろう。


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右手がコンベンションホール(展示場)がある南ブロック、左手が大・中・小の各ホールがある北ブロック。プレイガイドなども左手にある。


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1階には展示場に繋がるロビーが、2階のエントランスホールとは別にある。大・中・小各ホール側と展示場側で別のイベントが開催されても導線を分けることが可能な設計になっている。



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 北ブロックには大ホール・中ホール、小ホール、スタジオや会議室などがある。コンサート開催時は会議室やスタジオが控室として機能し、コンベンション開催時は、例えば総会やパネルセッションなどは大ホールや中ホールで、分科会や専門部会は会議室やスタジオを使うのだろう。驚くべき機能性の高さ。


大ホールについて


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 満席の混雑とホール内撮影禁止のため、あまり写真は撮れなかった。全体的な雰囲気は、兵庫県立芸術文化センターやフェスティバルホールによく似ていた。それもそのはずどうやら設計者は同じ人だったらしい


※参考:フェスティバルホールのエントランス
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テラコッタの素材感の感じられる壁面はアクリエひめじにも受け継がれている

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※参考:フェスティバルホールの2階から吹き抜け空間を見る

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フェスティバルホール2階からのアングルはアクリエひめじとよく似ているが、フェスはやや高級感を出し、アクリエひめじは姫路産の木材の素材感をだしている。

あと、フェスティバルホールと比較すると、アクリエ姫路のほうが共用スペースの余裕が大きいことがわかる。展示場(コンベンションホール)も含めた広大なエントランスホールに加えて、ホール内の共用スペースにも余裕が感じられる。


写真はアクリエひめじに戻ります

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大ホールは多目的ホールではあるが、重厚な二重扉によって外部からの音の混入は完全にシャットアウトされている。


こちらは2階席の後方から。

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やはりテラコッタと姫路産木材の暖かい色調が印象に残る。

 

 客席に充分な傾斜をつけて(岡山シンフォニーホールの3階席と同等ぐらいか)いるので視界は確保されている。ただし足腰に不安のある方は気をつけて昇り降りが必要。


 座席のシートは少し難があって、角度が直角に近く身体をゆったりと預けるような姿勢が取れないため、1時間以上同じ姿勢で座っていると腰に疲労感が残る。ただし、シンポジウムや講演会などでメモを取ったりするような場面だと、この角度が丁度良いかも知れない。また、ポップスのコンサートで大半の時間立ち上がっているような場合は前席の背もたれの圧迫感がないのは利点だろう。
 気になるアコースティックな音響だが、ウィーン・フィルの感想記事でも触れたとおり、満席だとかなりデッドあるが、旧姫路市文化センターや旧フェスティバルホールのような音が瞬時に消えて無くなるような感じではなく、音の輪郭はクリアで各楽器の音の質感・音の旨味も失われることなく客席に届き、充分な迫力がある音が楽しめた。ただし、コントラバスなどの低音は茫洋とした音で、もう少し低音もクリアに響いてくれればと思う。
 総合評価としては、多目的ホールとしては音響は相当いい線を言っていると思う。姫路の周囲には岡山シンフォニーホールや大阪のザ・シンフォニーホールのような残響豊富なホールが林立しているが、それらのホールとは一線を画す個性を持っている。

最後に


 これは施設の責任ではないが、姫路市から働きかけて解決してほしいのが姫路駅の東改札口のみどりの券売機が1台しかなく、終演後は長蛇の列になっていたこと。券売機の増設は難しくてもe5489(ネット予約)の切符発券機ぐらいは別に設置しておいて欲しい。ただしこれも山陽新幹線がチケットレス特急券を導入すれば不要になるかも知れないが。


 ウィーン・フィルのコンサートの際は当日券購入のために開演1時間半前にアクリエひめじに到着したが、すでに200ぐらいの人々が集まって写真を撮りまくっていた(笑)座る場所にも事欠くほどで、急遽、中ホールのロビーを開放していたほどである。
 SNSや神戸新聞などの地元のメディアのニュースを見てもアクリエひめじのオープンはかなり話題にのぼっており、コロナ禍での逆風の中、こけら落とし公演だった日本センチュリー交響楽団の姫路公演は早々に完売。今後のオープニング・シリーズ公演の売れ行きも好調のようだ。この施設にかける姫路・播州の市民の期待は極めて熱いものがある。
 話題作りの一翼を担ったのが、兵庫県の新型コロナウイルスワクチン大規模接種会場に提供したことだ。9月の正式開館や7月の市民内覧会よりも前、まだ内装や設備工事の真っ最中の6月中旬からワクチン接種者がこの施設を訪れ、施設の写真や姫路駅からのアクセス利便性などをSNSに投稿することで情報が拡散され、播磨圏の広い地域で会館への期待の機運が一気に高まった。
 よく「ハコモノ」などと揶揄される事もあるが、新しい施設が出来るということは、それが優れた意匠や設計であればあるほど人々に夢と希望、活力を与えてくれる。アクリエひめじ内部を探検する姫路の人々の明るい表情をみてつくづくそう思った。
 2023年に開館する岡山芸術創造劇場ハレノワも、オープンへの期待機運を盛り上げるために、竣工前の内装工事段階から積極的に内覧会などを行い、SNSやYoutubeなどでどんどん発信をしてもらう、優れた建築物が街に与えてくれる活力を生かさない手はないだろう。 

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