SSブログ

初代岡山フィル首席コンサートマスター:高畑壮平さん、ありがとうございました [岡山フィル]

 ウィーン・フィルの名演に接して浮かれている時でしたが、寂しいニュースが・・・・

 岡山フィルから発表がありました。
===========================
首席コンサートマスター退任のお知らせ

2017年10月の首席コンサートマスター就任以来、様々な場面で岡フィル発展のためにご尽力いただきました高畑壮平氏が、居住地のドイツを中心に演奏活動の依頼があることから、年度途中ではありますが9月30日をもって退任されましたことをお知らせいたします。
===========================

 高畑さんは9月から年度が始まるドイツの方だし、岡山フィル首席コンマスの就任自体も10月というタイミングだっので、9月末の退任というのはさほど不自然ではないのですが、わざわざ「居住地のドイツを中心に演奏活動の依頼があることから、年度途中ではありますが」などとことわりをいれるあたり、妙に生々しい内容で、もう少し書きようがあるんじゃないか?とも思ったりします。


 あと、退任が9月末ならば、発表になぜ1ヶ月以上も時間を要したのかも不可解。9月末の岡山国際音楽祭のオープニングコンサートには出られていたそうなので、事前に告知があればラストコンサートを見に行けたかもしれないなあといううらみはあります。


 もしかすると次期首席コンマスの目処が立つまでペンディングしていたのかも?この仮説が正しければ、答えは来シーズンプログラム発表時(12月頃?)に解るかも知れない。


 高畑さんの立場に立てば、日本に一旦来てしまうと自動的に2週間(入国時)+数日(帰国時)の無為な時間(隔離待機)を過ごさねばならず、新たな年度に入った現地での仕事にも支障が出る、という状況は理解はできます。

 ラジオ番組などでの発言や漏れ聞く話によれば、高畑さんは岡山フィルのコンサートマスター職に就任するのを、ずいぶん悩まれたようです。
 40年ドイツのオーケストラでコンサートマスターを勤め上げたことで、技術やそれを保持する職人(マイスター)を大事にするドイツに於いて仕事は引く手数多の筈で、方や岡山フィルという発展途上でどこまでモノになるか解らない日本のオーケストラの初代首席コンサートマスターを引き受けるのは、リスクを取る選択肢だったはずで、よく引き受けて下さったと思う。
 故郷のオーケストラがシェレンベルガーの元で、楽団結成以来、最大の改革をしている。それに一肌脱ぐために、自分のやりたい活動をある程度犠牲にしながらやって来られたのでしょう。

 しかし、岡山フィルと、われわれ岡山の聴衆にもたらした高畑首席コンマスのインクパクトは凄い物がありました。
 かつて「無味・無臭・無色」「独自の音を持たないオーケストラ」などと言われたオーケストラが、 2013年のシェレンベルガーの首席指揮者就任、2017年の高畑首席コンマスの就任で、国内のオーケストラ業界のヒエラルキーに属さない、独自の道を歩み、独自のサウンドを創っていく方向に一気に舵を切った。キャリア的に見ても「ドイツ人コンサートマスターがやって来た」のと同じことが起こったわけです。結果、2017年〜コロナ禍前までの観客動員の大幅増を達成し、県外からも聴衆を集める「個性派オーケストラ」となりつつありました。

 高畑さんが奏でる音楽は心の琴線に触れ、(私が一度も行ったことがない)ヨーロッパの景色や人々の息遣いを眼前に見せてくれるような魅力がありました。
 すぐに思いつく限りでも、ブルックナーの4番やモーツァルトの交響曲での「ブルルン」とした本場のオーケストラのような音に痺れ、ソロではラプソディ・イン・ブルー、そして今年7月のジークフリート牧歌の弦トップの方々との掛け合いには涙腺が緩みました(今から思えば、惜別の演奏だったのでしょうか)。その音は日本で活躍されているどのヴァイオリニストからも聴けない、独特の輝きとコクのある音で、シェレンベルガーさんとともに、ドイツ直輸入の音楽を奏でてくださいました。

 他にも、私は直接会話を交わしたことはないものの、非常に気さくなお人柄が印象に残っています。シェレンベルガーさんの通訳として開演前の楽曲解説をされていたのも印象的。


 上の動画は少し違いますが、シェレンベルガーさんが英語で話しはじめると、「あっ、マエストロ、私、ドイツ語で話してもらった方が・・・」というやり取りは、毎度のお約束になっていました(笑)

 岡山の聴衆はシェレンベルガー&高畑コンマスのコンビを支持していましたし、特にコロナ禍でシェレンベルガーさんの来日が叶わずキャンセルが続いていた今年の1月に、高畑さんがコンマス席に帰ってきたとき、会場は熱い拍手で迎えましたね。私自身も、どれほど嬉しかったことか!

 高畑壮平さん、本当にありがとうございました。岡山フィルが、高畑さんの残したエッセンスを引き継いで、独自の音を作って行く。残された聴衆の一人として、しっかり見届けて行きたいと思います。

nice!(2)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 2

伊閣蝶

高畑壮平さん、コンサートマスターを辞任なさるのですか。
ヒロノミンさんの記事から、高畑さんが岡山フィルの発展にどれほど大きく寄与されたかというがひしひしと伝わってきます。
ドイツやオーストリアなどの本場の音、というのは、恐らく単なるテクニカルなものを超えた境地にあるものなのでしょうね。
風土というとちょっと違うのかもしれませんが、私はそのようなものを感じます。
日本のオーケストラにもそういう独自の響きが徐々に出来上がりつつあるとは思いますが、いわゆるクラシック音楽という地平から考えてみると、やはりそれらが底流に流れている本場の音は貴重だと思います。歴史の重み、とでもいうのでしょうか。
高畑壮平さんの今後のご活躍をお祈りするとともに、ご後任のコンサートマスターの良き選択に期待したいと思います。
by 伊閣蝶 (2021-11-14 11:42) 

ヒロノミン

>伊格蝶さん
 岡山フィルの殆どの奏者が、ヨーロッパへの留学経験もあって、西洋音楽への理解も深いと思います。
 ただ、じっさいに音楽として説得力と聴衆を惹き付ける力を持つためには、仰るとおりテクニカルを超えたものが必要なのだと思いますが。首席指揮者のシェレンベルガーさんも、高畑首席コンマスも、それを持っている方でした。
 後任の首席コンマスとなる方も、海外での経験が豊富な方が就任してくれるといいなあと思います。
by ヒロノミン (2021-11-14 22:11) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。