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スペシャル・ガラ・コンサート 中桐望(Pf)、森野美咲(Spo)、福田廉之助(Vn)、矢崎彦太郎&岡山フィル [コンサート感想]

岡山シンフォニーホール開館30周年記念 スペシャル・ガラ・コンサート

I am a SOLOIST から世界にはばたくヴィルトゥオーゾたちの饗演

20210912.jpg


グリーグ/ピアノ協奏曲(※1)

モーツァルト/モテット「Exsultate Jubilate」(※2)
プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父様」(※2)

山田耕筰/からたちの花(※2)

〜 休 憩 〜

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲(※3)


指揮:矢崎 彦太郎
ピアノ独奏:中桐望(※1)

ソプラノ独唱:森野美咲(※2)

ヴァイオリン独奏(※3)

管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:高畑壮平


2021年9月12日 岡山シンフォニーホール


 このガラ・コンサートと、都響の岡山公演が2日連続するという、盆と正月がいっぺんにやってきた状態だが、今は自由時間が30分ぐらいしか取れないので、徐々に更新していこうと思う。よろしければ気長にお付き合いを。


 今回も箇条書きにします。


・このコンサートも緊急事態宣言にかかってしまったため、3人の故郷が生んだスターによる折角の凱旋公演ではあったが、発令と同時にチケット売止、会場は1200人ぐらいだったかな。


・今回のコンサートは、岡山シンフォニーホールの開館30周年の記念行事でもあり、記念品(ボールペン)も頂いた。プログラムはこの30年のあゆみを簡単に振り返る記事もあった。「いらんこと言い」の自分としては、小泉和裕ミュージック・アドヴァイザーに関する記述が一切無いのはどうなのか?と言いたくはなったが・・・。


・今回も「コロ中の中でのコンサート参加自粛の自己基準」により、リスク計算を実施。

直近一週間の新規感染者数の平均値:82人

来場予想者数:1400人       以上の想定で計算。
82人✕0.2(無症状感染者割合)✕10(日数)=164人
82人✕3日(発症前でウイルス放出状態)=246人
(164+246)/1,900,000(岡山県の人口)=0.022%
1400人✕0.022%=0.31(人)
 ということで、無症状でコンサートに来てしまう人は0.31人ということで、かなりリスクは低いと判断した。


・今回はピアノ協奏曲があるので、中央より左側に人が集中すると読んで、あえて右側の座席をとったところ予想は見事に的中。隣に人が居ない状態で落ち着いて見ることができた。ピアニストの手元は見えなかったが、中桐さんの表情がよく見えて、充分に楽しめた。よくよく考えてみたら、自分はピアノが弾けるわけでもないので、鍵盤視認席にこだわる必要は無いなと(笑)


・ホールに入った瞬間、元大フィルの名ハープ奏者の今尾さんがステージ上で音出ししている様子が目に入った。ハープが登場する曲はプッチーニの1曲だけで、なんと贅沢なことか。オーケストラは1stVn10→2ndVn8→Vc6→Va6→上手にCb4の10型2管編成。弦五部は東京・関西組の首席奏者が勢揃い。管楽器は客演首席が多かったが、グリーグで大活躍するフルートは畠山さん、ブラームスで大活躍するオーボエは工藤さんが乗っておられ、岡山フィルらしいサウンドは健在だった。

 

・1曲めのグリーグのピアノ協奏曲。このホールの響かせ方を熟知している中桐さんだけあって、雑味のない力強い音を存分に響かせていた。オーケストラと一体になって音楽を構築していく感じで、この曲のシンフォニックな面を再発見した快演だった。


・オーケストラも、特に弦五部が良かったなー。とりわけこの日はヴァイオリン隊の音がいつもよりも洗練されていてとても良かった。瞬間瞬間でニュアンスたっぷり、情感たっぷりに聴かせてくれ、中桐さんの澄み切った力強い音と融合しながら大きなうねりを作り出していた。まるで絵画を次々に見ていくように瞬間瞬間が輝くような心に残る景色を見せてくれた。


・過去にグリーグのピアノ協奏曲を聴いたコンサートを思い返してみると、時間配分的に座りがいいためかブルックナーなどの重厚長大な交響曲の組み合わせで聴くことが多く。正直、この曲の演奏の印象が薄れがちな経験が多かったのだが、改めていい曲やなー。と感じ行った次第。


・白眉だったのは第3楽章のノルウェー舞曲風の場面。指揮者がヴァイキングの躍動を描くようにオーケストラをかなり鳴らしているにも関わらず、それに負けない強靭なピアニズムで中桐さんが応える。昨年の2台のピアノによるアンサンブルで聴かせたバーンスタインのウェスト・サイド・ストーリーでも思ったのだが、リズムに宿る叙情性や悲劇性を表現させると聴き手の心に迫ってくるような演奏になる。腕二本で劇的なドラマを作れるピアニスト。彼女の演奏でまたコンチェルトを聴きたいな(岡フィルさんお願いしまッサ)。


・続いて森野美咲さん。ブラームス国際コンクール優勝という、岡山の声楽界の歴史を変えた快挙の後、コロナ禍でなかなか実現しなかった凱旋公演だ。

 まずもってモーツァルトのモテットがは絶品だった!司会の山本アナウンサー(元OHK、夕方の顔だった方)の「本当に気持ちのいい歌でしたね!」というご感想に心から同意。この曲、実演で聴いてみると「夜の女王のアリア」に匹敵する難曲だ。その難曲を正面突破していく、あまりのパワフルかつ気持ちの良い歌唱に、愉悦で背筋が震えた。特に高音の伸びは本当に天に召されそうな「ほわーっ」とした浮遊感を味わうような感じになった。1曲目でカーテンコールが鳴り止まない盛り上がり、会場のみんなで「これは凄い!」という思いを共有した。


・森野さん自身もコロナ禍のなかでの凱旋公演への歓びに満ち溢れているようで、舞台上での彼女の輝きが眩しく感じられた。


・プッチーニの「私のお父さん」は、このホールでも何回か聴いているが、これほどホールを響かせた歌唱は無かったと思う。モーツァルト、プッチーニともに、矢崎さんのタクトによるものか、いつもとは違う岡山フィルの音を聴けたことも収穫だ。


・からたちの花は、ヴィブラート抑えめのピュアな声を聴かせてくれた。なんと心にしみる情感を表面上は抑えつつも心の内の熱さが感じられた。もう、こんなのを聴いてしまったら泣いてまうがな。


・休憩を挟んで、岡山の期待を一身に背負う福田廉之助くんが、いよいよブラームスの協奏曲に初挑戦する。


・休憩中にソリストの位置に椅子が置かれた。「荷物か道具を置くのかな?」と思っていたら、演奏開始の拍手の後、廉之助くんが椅子に座って出番を待つ。この光景は初めて見た。ふと、土曜日に放送された福田くんがDJを務めるラジオ番組で、「ちょっと自立神経がやられてしまったみたいで、立ちくらみの症状が出た」と仰っていたのを思い出す。ただでさえハードな曲なのに、大丈夫なんだろうか・・・という心配を他所に、期待を大きく上回る演奏を聴かせてくれた。


・この曲は、まずヴァイオリンのソロが入ってくるところが勝負所。まるで交響曲のような重厚な序奏に続いて入ってくるヴァイオリンがオーケストラに負けてしまうと、その時点で勝負ありになってしまう。しかし、やはり廉之助くんはやってくれた、オーケストラに負けないどころか、ホール全体に強靱なニコロ・ガリアーノの深みのある美音を響かせた。

・これが本当に21歳の演奏なのか?迷いが無く、初めてのこの難曲への挑戦にも関わらず何かを試す、ということも全く感じさせない、確信を持った演奏だった。一つ一つのフレーズにそれぞれ意味があって、現時点での福田廉之助のすべてを投入した演奏は鳥肌モノだった。

・第1楽章のカデンツァが圧巻だった。情熱的とか、技巧が凄いとか、そういう次元で感動したのではなくて、なんという心を打つ、人間味あふれるヴァイオリンだろうか。

・廉之助くんのブラームスは厳しい・強靱なだけではない、時折、オーケストラの方を向いて、色気のある音で挑発したり、やさしい音で語りかけたりしながら、それに触発されたオーケストラと一緒に音楽を構築していく。時には指揮者の矢崎さんと顔を突き合わせるような感じで、「今、この瞬間に生まれる世界」を意欲的に創作していく。未知のウイルスに人類が直面してまもなく2年・・・、そんな中で、今、目の前で行なわれている創造の営みがどれほど貴重で愛おしいことか・・・そんなことをしみじみと噛みしめるながら聴いていた。

・ソリストとオーケストラの共同作業は、第2楽章が見事だった。愛情あふれる表現で会場の人々の心を包み込んでいくような演奏だった。彼の演奏から岡山への思いを感じ取ったのは僕だけだろうか。それに対して見事な演奏で応えた岡フィルの木管陣も素晴らしかった。

・オーケストラの方は、特に自分第1楽章の前半は調子が出なかったように思う。第1楽章冒頭のヴァイオリン・ソロが入って来た直後、ソリストと木管を中心にしたオーケストラとの掛け合いの場面で聴いている自分も冷や汗がでるような危ない場面があった。オーケストラが止まりかけたと感じたのは僕だけか?何が起こったのかはよく解らないのだが、指揮が合わなかったのかな?廉之助くんもオーケストラも落ち着いて対応し、事なきを得た感じ。

・終演後に矢崎さんが思いのほか興奮されていたのが印象に残る。彼のキャリアの中でも廉之助くんの演奏は強い印象を残したのだろう。

・コンサートの後、オーケストラが舞台から退場後にインタビュータイムがあった。私は家族の元に戻らなければならなかったので、さわりだけ聞いて帰路についたのだが、どうやら廉之助くん、かなり体調が悪かったようで、リハーサルはずっと座って演奏をしていたそうだ。いやいや、そうは見えなかった、そんな状態であの演奏を披露したのか・・・信じられない。

・ヨーロッパ最高峰の音楽院で研鑽を積みつつ、日本とスイスを何度も往復して演奏活動を続け、ファースト・アルバムも出し、そのうえ、室内オーケストラを立ち上げ、財団法人も設立。そこに入国規制による隔離期間も挟まる、いやいや、廉之助くん、働きすぎやって。。。どうか身体だけは大事にせにゃーおえんよ。


・最後の会場の拍手はすごかったなあ・・・。廉之助くんは、渋野日奈子とならんで、岡山の希望の星なのだと思う。岡山の人々の夢を載せて演奏してくれている感じがある。上の世代にも守屋剛志、松本和将、川島基といったクラシック音楽界のスターが居るが、ここまでの熱狂は無かったように思う。来月には彼が心血を注ぐ「THE MOST」の2回目の公演が楽しみだ。でも、くれぐれも無理しないで欲しいものの・・・・


やはりこんな予告動画を見ると、楽しみで仕方がなくなってしまう!

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