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珠玉の東京富士美術館コレクション 岡山県立美術館 [展覧会・ミュージアム]

〜ヨーロッパ絵画400年の旅〜 珠玉の東京富士美術館コレクション

岡山県立美術館


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 この特別展、前売券は買っていたもの会期末あたりに行く予定にしていたが、岡山でもデルタ株を中心とした新型コロナウイルスの急速な感染再拡大期に入り、県立美術館もいつ休館になるか分からいため、慌てて足を運んだ。


岡山県立美術館HPから================================

東京都八王子市にある東京富士美術館は、日本・東洋・西洋の各国・各時代の様々なジャンルの美術作品約3万点を収蔵しています。
なかでも16世紀のイタリア・ルネサンス絵画から20世紀絵画まで、400年にわたるヨーロッパ絵画の歴史を見渡すことのできる充実した油彩画コレクションは、日本のみならず海外でも広く知られています。

本展では、同館の誇る珠玉の西洋絵画コレクションのなかから、ティントレット、ヴァン・ダイク、ブーシェ、ターナー、モネ、ルノワール、セザンヌ、モディリアーニといった西洋絵画史に燦然とその名を刻む巨匠たちの作品83点を紹介します。
ぜひご来場いただき、歴史と伝統がおりなすヨーロッパ絵画の豊饒な美の世界をご堪能ください。

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 東京富士美術館は創価学会系の公益法人が経営しており、創価大学も立地する八王子にある。東京に行ったついでに足を運ぶにはちょっと遠いため、岡山に引っ越し展示してくれるのは非常に有り難い。

 美術館のホームページを見ると、西洋画コレクションの主要作品の大部分が来てくれていたようで、たいへん見応えがあった。展示は以下の構成。


□第1部−絵画の「ジャンル」と「ランク付け」

 1−1.歴史画ー神話、物語、歴史を描く 〜絵画の最高位〜

 1−2.肖像画ー王侯貴族から市民階級へ 〜あるべき姿/あるがままの姿〜

 1−3.風俗画ー市井の生活へのまなざし

 1−4.風景画ー「背景」から純粋な風景へ〜自然と都市〜

 1−5.静物画ー動かぬ生命、死せる自然

□第2部−激動の近現代ー「決まり事」の無い世界

 2−1.「物語」の変質ー1.物語/現実

             2.幻想の世界へ

 2−2.造形の革新ー2.フォルムと空間


 第1部と第2部は完全に時代で別れているわけではなくて、第1部では5つのジャンルについて、それぞれ19世紀後半あたりまで追える構成になっている。第2部はほぼフランス革命以後の時代の革新性のある作品でまとめられ、近代自我が発露した作品は心撃たれるものが多く。鑑賞者もこのあたりの作品は混雑していた。


 まず、目玉作品について。

ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房/「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」(1805年)

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 ジャック=ルイ・ダヴィッドはブルボン王室の仕事をしていたが、フランス革命後は政治に深く関与し、ロベスピエール、ナポレオンなどの時の権力者と深い関係にあったようだ。工房には100人を超える弟子を抱え、この有名な絵もベルサイユ宮殿など同じものが5点以上現存しているが、東京富士美術館にあるのは工房が作ったいわばサイズの小さいレプリカ。ナポレオンの英雄像を伝え、政治的効果を狙って量産されたもの。ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」とほぼ同時期の作品ということになる。教科書でよく見る絵を観られた感動はあるが、それ以上の感慨は沸かなかったのは、作家の魂が作品から感じられなかったからだろうか。

  

 モネ/「睡蓮」(1908年)

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 これは観られてよかった。1908年の作品で、大原美術館の睡蓮の2年後、地中美術館の睡蓮の7〜8年前。僕はこの時期の睡蓮が一番好き。



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 ルノワール/「赤い服の女」(1892年)

 服の柔らかい質感、それを纏った女性の生命力のリアリティは、その息遣いや鼓動が聞こえそうな錯覚に陥る。とても強い印象を残した。


 気に入った作品の絵葉書を収集。

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カナレット/「ローマ、ナヴォーナ広場」(1750/51年頃)→写真左上

 いやあ、これには驚いた。ローマにかつてあったナヴォーナ広場での集会の様子を描いているのだが、驚くほど精密でこれは写真よりもリアルだ。絵の前で10分近く立ちすくんでしまった。同じくカナレットの「ベネツィア、サン・マルコ広場」のクリアファイルも買ってしまった。



ミレー/「鵞鳥番の少女」(1866/67年)→写真左中

 鵞鳥のふわっとした羽毛、水面をターンしながら泳ぐさま、まるで鳴き声まで聞こえてきそうだ。少女も質素ながら「落ち穂拾い」のような貧しさ・厳しさは感じない。



ピサロ/「秋、朝、曇り、エラにー」(1900年)→写真左下

 やっぱりピサロはいい!例によってエラニーの風景を点描で描いた作品。以前見た作品(クラーク・コレクションの「エラニー・サン=シャルル」、ポーラ美術館の「エヌリー街道の眺め」)に比べると、緑の色彩が淡い感じで、秋の空気が感じられる。東京富士美術館にはピサロ作品があと2点あって、1点は今回の作品と対になる「春、朝、曇り、エラニー」。うーん、やっぱり八王子まで行くべきか・・・。



ポール・セザンヌ/「オーヴェルの曲がり道」(1873年頃)→写真左上

 セザンヌがピサロと一緒にポントワーズで画架を並べて制作していた時期の作品。ピサロとは作風が全く違うが、セザンヌが外の風景に関心を持つようになったのはピサロの影響があったという。空の色彩や木々の妖しい生命力、右に曲がる道の先が見えない不安感。見る人の心に不安のさざ波を立てるような作品だが、なぜか惹かれる。



シダネル/「森の小憩、ジェルブロワ」(1925年)→写真右下

 緑の美しさもさることながら、人が全く描かれていないのに、ピクニックの様子が見えるようだ。

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