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岡山の情景を音楽で語る旅 ピアノ:山地真美 柴田真郁指揮 [コンサート感想]

日本博イノベーション型プロジェクト
岡山の情景を音楽で語る旅
「〜音楽と映像と語りでたどる~桃太郎伝説が生まれたまち おかやま」
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〈1部〉岡山城と後楽園を巡って Piano & Orchestra
    ●岡山城と後楽園
    ・岡山城と後楽園の情景を描く「暁、時うつす蒼の水」
    ●岡山城
    ・岡山城主 宇喜多秀家の生き様に迫る「生きる」
    ・秀家と豪姫、つらぬいた夫婦愛「紅の想い/蒼い約束」
    ●後楽園
    ・幻想庭園の月夜を想って「幻園の彩り」
    ・空を優雅に舞う丹頂鶴の放鳥「鶴は舞う」


〈2部〉日本遺産の旅「桃太郎伝説の生まれたまち おかやま」
    Piano & Orchestra & Tell a story
    ・おかやま桃太郎物語「吉備津彦と温羅」
    ・オープニングおよびエンディングテーマ曲「光華光源」
ピアノ・作曲:山地真美
オーケストラ編曲:小松真理
第2部演出:みやもとたかひろ
第2部語り:クリストファー・J・クレイグトン
     :ジェーン・O・ハローラン
管弦楽:岡山フィルハーモニック管弦楽団
指揮:柴田真郁
コンサートマスター:高畑壮平
 少し時間が立ってしまったが、感想を。
 このコンサートは日本博のイノベーション型プロジェクトとして上演された。
日本博とは
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成や訪日外国人観光客の拡大等も見据えつつ、日本の美を体現する我が国の文化芸術の振興を図り、その多様かつ普遍的な魅力を発信するため、日本全国を舞台に「日本博」を展開します。「日本博」では、総合テーマ「日本人と自然」の下に、「美術・文化財」「舞台芸術」「メディア芸術」「生活文化・文芸・音楽」「食文化・自然」「デザイン・ファッション」「共生社会・多文化共生」「被災地復興」の8つの分野にわたり、縄文時代から現代まで続く「日本の美」を国内外へ発信します。
 今回のコンサートは「音楽」だけではなく、「舞台芸術」「メディア芸術」の分野に跨がる大掛かりなものだった。
 久々に祝祭感のあるロビー
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 舞台上には超特大のディスプレイ1台を反響板中央に、特大ディスプレイ2台を上手と下手それぞれに配置。ディスプレイには後楽園や岡山城をはじめ、吉備津神社や鬼ノ城、吉備路など日本遺産の風景が映し出されると同時に、会場内の演奏者や語りの役者を7台のカメラ(専門業者さんのtweet情報)を切り替えながら映し出されていた。
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※ホールのトラックヤードに入りきれなかった専門業者の車であふれるホール裏のスペース。
 本来であれば東京オリンピック直前の2020年6月に上演される予定だったが、コロナ禍の影響で延期。結果的に2度目の緊急事態宣言発令(岡山県は対象地域外)中の最中の上演となり、客席はバルコニー席と3階席を閉鎖した状態で6割程度の入りだったから、800人ぐらいだっただろうか?寂しい客席となった。イベント企画当初に見込まれていたであろうインバウンドの聴衆も皆無。
 一方でオーケストラはほぼベストメンバー。先月の定期演奏会に引き続いて高畑コンマスの姿もあった(ドイツはロックダウン中で、音楽家の仕事も望めない状況だから、しばらくは日本におられるのかも知れない)。編成は1stvn8→2ndVn6-Vc4-Va4-Cb2の2管編成。
 前半は山地真美さんの語りと演奏。大画面に映し出される映像作品にピアノとオーケストラの演奏を付けていく形で、普段は見られないものを見させてもらった。柴田真郁さんの指揮も流石にオペラ指揮者らしい、見通しの良いアンサンブルながら迫力満点の音楽を引き出す。オペラと違い、ひたすら演奏者が映像に合わせていく形になるが、まるでオーケストラの音に映像が呼応しているように生き生きとした作品に仕上がった。
 山地さんの経歴を見るといわゆる音大卒ではなく、岡山大学法学部(ということは学部は異なるが後輩になるのか、と思うと親近感が湧く)の出身で、大学卒業後に尚美ミュージックカレッジで作曲を学び、音楽の道を進むという異色の経歴を持つ。
 ブログを拝見していると、自分の考えを強く持っていて従来の音楽家のイメージを壊していくバイタリティに溢れており、クラシック演奏家のエリート集団であるプロ・オーケストラとの共演は、異種格闘技的なものになるかと思われたが、そういったイメージとは違って、非常に柔らかい人柄が感じられ、それは音楽にも現れていた。
 実は、事前にYOUTUBEで彼女の作品を色々と聴いたときは、美しい音楽だと思いつつも、作風のバリエーションは広くない印象で「2時間のコンサートで聴き飽きないかな」とも感じていた。マンネリズムとオリジナリティというのは表裏一体で、どちらにも転びうるし、聴き手の好みにも左右される。私は2時間のオール・ショパン・プログラムは苦痛に感じるが、ブルックナーのシンフォニーは何時間でも聴いていられるが、一般的には逆の感性の人の方が多いだろう。
 じっさいコンサートに入ると、山地さんの情感のこもった演奏や、彼女の音楽性を引き出すオーケストレーションと映像作品と一体になった音楽世界は見応え・聴き応えがあり、飽きさせることはなかった。『文化や情景』『土地の記憶』を深い感受性で受け止め、それを現代から未来の人々へどうやって伝えていくかという純粋な情熱を感じた。
 私自身、過去の人々の営みに強い関心があって、旅行先でもその土地の景観や食事だけでなく、歴史の積み重ねや長年受け継がれた伝統文化も知りたいし、過去に生きた人と心を通わせる感覚を求めていくタイプの人間なので、こんな人間だからクラシック音楽を聴いて、ベートーヴェンやシューベルトのような200年以上も前の人間が作った楽曲から、彼らの感情や思いが伝わってくる(気にさせられる)ことに、無常の喜びを感じているのだが、山地さんも同じタイプの感受性を何倍も持った人だと勝手に感じている。
 後半は英語による語りと音楽、映像による日本遺産の旅、「吉備津彦と温羅」。テキストは日本遺産のポータルサイトでも読むことができるが、今回は英語ネイティブの語り手2人による語りを、日本語字幕で上演。本来であれば客席にはインバウンドの観光客が居ることを想定したようなプログラム。
 英語は、やはり日本語とはアクセントやリズムが異なるので、吉備津彦の伝説がまるでシェークスピアの劇のような雰囲気を漂わせていたのが面白い。
 朗読はあまり見る機会がないのだが、男性のクリスさんの迫力と表現力が壮絶だった。今回の舞台は朗読、オーケストラ(岡山フィル)、山地さんのピアノ演奏、そしてディスプレイに表示される映像や劇画、照明などを駆使した現代における総合芸術とも言えるもので、このコロナ禍の時代にこれだけの舞台をよく作ったなあと・・・・。特に朗読と映像とピアノ演奏はまさに三位一体といった感じで、普段は純音楽のコンサートしか見てこなかった私には非常に刺激的な世界を見せてくれた。
 一つ、失敗だったなと思ったのは2階席の前方ブロックでもステージから遠くて、もう少し近くで見たかったなあと。
 それから、オーケストラが演奏される場面がもっと欲しいなあとは思ったが、そうなると朗読劇ではなくオペラになってしまうな(笑)
 オーケストラは、普段の定期演奏会でやっている楽曲に比べると、ボリューム的には物足りない部分はあったが、高畑コンマスのソロは情感のこもった「高畑節」を聴かせてもらったし、木管・金管のソロ、とりわけトランペットの小林さんの、冬の澄み切った朝の空気を震わせるようなピュアなソロの音色に魅了された。
 この舞台はこれ1回こっきり・・・なんでしょうねえ・・・。ちょっと勿体ない気がします。コロナ禍が収束してもう少しお客さんが来れるようになったら、今度は岡山芸術創造劇場で再演して欲しいと思う。

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