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七澤達哉 ヴィオラ・リサイタル [コンサート感想]

七澤達哉 ヴィオラ・リサイタル
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ブラームス/F.A.E.ソナタより第3楽章スケルツォ
J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番
シューベルト/アルペジョーネとピアノのためのソナタ
 〜 休憩 〜
ヴュータン/無伴奏ヴィオラのための奇想曲「パガニーニへのオマージュ」
ブルッフ/ロマンス
クラーク/ヴィオラソナタ
ヴィオラ:七澤達哉
ピアノ:山中歩夢
2020年2月9日 日本福音ルーテル岡山教会
 岡山フィルの首席ヴィオラ奏者を務める七澤達哉さんのリサイタル。これほどの多彩な表現をヴィオラで奏でる、豊かな音楽性に魅了された。それほど大々的な告知が無く、私自身も先日の岡山フィル定期でこのコンサートの存在を知った次第で、聴衆は100人弱ほどで、そのうち10人ほどが岡山フィルの奏者の方だったが、それだけ彼が楽団の中での人望がある証拠だろうと思う。しかし、もっと沢山の聴衆が来てもよいコンサートだった。
 前半のプログラムで心に残ったのはバッハの無伴奏チェロのヴィオラ独奏での演奏。張り詰めるような怜悧な緊張感が漂う演奏が好みだった自分としては、初めはゆったりとした構えの演奏に戸惑ったが、曲が進んでいくうちに暖かく優しい気持ちにさせてくれる演奏もいいなあと思った。シューベルトは一瞬激情的な面を見せるものの、寂寥感とロマンティシズム溢れる演奏に、七澤さんの人間性が反映されているようだった。
 七澤さんの説明にもあったとおり、前半は本来ヴィオラ以外の楽器のために書かれた曲だったが、後半はヴィオラのための曲ということで、前半よりも2段も3段もエンジンのギアが上がった感じで、圧倒的な世界を現出した。ブルッフのロマンスは七澤さん自身が「バシュメットの演奏を聞いて、その演奏に憧れていた」と仰っていたとおり、感情移入の深さとどこまでも美しい表現に目頭を拭わざるをえなかった。この曲は中村洋乃理さんらの4人のヴォラ奏者のユニット、アルト・ドゥ・カンパーニュでも聴いたことがあるが、本当に珠玉の名曲だと思う。
 最後のレベッカ.クラークのヴィオラ・ソナタは、初めて聴いた曲だったが、こんないい曲なんですねえ。30年以上クラシック音楽を聴いていても、この音楽の世界にはまだまだ知らない曲が山のように眠っていることを実感。5音階の和音はどこか懐かしさを感じさせる曲で、ヴィオラ独特のコクのある音を存分に引き出している。七澤さんの幽玄で幻想的なヴィジョンを現出させていて、第2楽章が演奏されている時に、ちょうど窓の外が暮れなずんでいって、音楽とシンクロしていた。陶然と外の夕暮れを見ながら音楽に耳を傾ける時間は至福だった。ひょっとしてこれも計算に入れてのプログラミングだったのだろうか。
 伴奏の山中さんの腕も相当なもので、クラークのソナタはほとんどピアノのカデンツァのような場面があるが、その演奏に圧倒された。
 
 余談になるが、この日は、実は広島交響楽団の福山定期演奏会と重なっていて、この七澤さんのリサイタルがあることがわかったのが2周間前、広響の方は福山「定期会員」にもなっているのだが、去年の岡山フィルのブルックナー4版でのヴィオラセクションの素晴らしい演奏を聴いて以来、それを率いる七澤さんのコンサートがあったら行ってみたいと思っていたため、こちらを優先することになった。
 あと、岡山フィル定期以来、体調を心配していた高畑コンマスのお元気な姿も客席で拝見できた。
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 会場の教会のあるあたりは学生時代に住んでいたこともあり、今でも家から徒歩圏内。そんな場所で聴いた素晴らしいコンサートと、未知の名曲との出会いに満足しながら徒歩で帰路についた。宣言通り、再びのリサイタルを期待して待っていますよ。

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