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岡山芸術交流2019を見て(その1) [展覧会・ミュージアム]

   なかなか更新する時間がなかったのだが、9月27日から11月24日まで開催された岡山芸術交流の感想を、何回かに分けて書いてみようと思う。
 いきなり脱線。
 私が岡山に引っ越したのは18歳のとき。人文科学系の勉強をしたくて大学に入ったので、まずは本屋チェックをした。
 大手では紀伊国屋と丸善があるということで、当時はビル1棟まるごと本屋だった紀伊国屋に行った後、丸善の入る岡山シンフォニービルを見た瞬間、その奇抜な色彩と個性的なシルエットが目を引いた。円筒形のビルは大阪のマルビルぐらいしか見たことがなく、その奇抜なデザインに驚いたのだった。現在は周囲に20階以上のマンションが林立し、ライオンズタワーマンションのデザインがシンフォニービルの色彩に似せてきているので周囲に溶け込んでいる感すらあるが、90年代前半では相当に目立つ存在だった。国内初の都市型巨大イオンモールが出来るまでは岡山クレドとともに岡山市民のランドマークとして存在感を放っていた。
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※内山下小敷地内にある岡山城西手櫓と岡山シンフォニービル
 ビルのテナントも90年代ごろは備前焼などの岡山の伝統工芸品を扱う店舗や観光案内所が入っていて、機能面でもランドマークな存在だったのだが、表町の衰退と歩調を合わせるように1~2階のテナントが撤退・入居・撤退が繰り返され、今は1階にコンビニが入る、どこにでもあるようなビルになっってしまい、1階のイベントスペースもコンサートのない日は閑散としている。
 しかし、岡山芸術交流の屋外インスタレーションの登場によって、この岡山シンフォニービルのデザインの特異性が再度注目を浴び始めた。地下空間への採光のための塔を大胆に彩色したリアム・ギリックの「多面的開発」とセットでインスタグラムに投稿され、今回のメイン会場となった旧内山下小学校から眺める岡山シンフォニーホールにも注目が集まった。私にとってはシンフォニーホールが入るこのビルには強い愛着があり、再び岡山の奇抜な建築デザインが注目を浴びるのは嬉しい。
 
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 他にもこの芸術交流は、今回で言えば、岡山出身の横綱、常の山が寄贈した土俵が内山下小学校にあったことを初めて知ったし、石山公園におかれたフリーの屋外インスタレーションを見に来た観光客が、岡山で知らない人はいないが県外の人には知られていなかった後楽園の森と旭川の美しい景色に感激したりといったことがあった。
 前回は前川國男建築(県庁舎、天神山文化プラザ、林原美術館)にも注目が集まったことで、例えば「県庁はボロいので早く建て替えたほうがええ」と言う人が少なくなったし(笑)
 しろちかから聳え立つコンクリートのタワーは、「太陽光採光システムひまわり」という、太陽光を地下空間の照明に取り入れる大掛かりなシステムだった。
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 この塔が何のための塔なのか、20年以上岡山に住んでいても知らなかったし気にも留めていなかったのだ。おそらく岡山の人々の殆どはそうだったと思う。
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 しろちかの広場の中にあるサボテン畑の存在は知っていても、これが太陽光を地下空間に採り入れる装置で育成していることを知っている人は少ない。
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 ほかにも何気ない風景が、現代アート作品を見た後だと、どれもアートに見えてきてしまうのが不思議だった。この感覚は岡山に住んでいて、あらゆる風景が見慣れたものになっている岡山の人々こそが味わえた愉悦だったのではないだろうか?
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ただの自転車置き場も、現代アート作品を見た後の脳で見ると、アート作品に見えた
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校歌の碑もなかなかにアートだ
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校庭に隣接する年季の入ったビル、なかなかに味わい深い
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「S44.8.6」と銘記されたオブジェ、これはアートそのもの
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中庭にあったコンクリートの築山、もうアート作品にしか見えない
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プール越しの市民会館と山陽放送社屋、もう4年後には見られない
 このイベントによって、全国で見ても極めて稀な財産である岡山カルチャーゾーン」という、文化施設の集積区域を徒歩で回って感じてもらうことで、全国のアートファンに認知された。ボランティアの方から聞いた話では、県立博物館・県立美術館・市立オリエント美術館・林原美術館・県立図書館・ミニシアターのシネマクレールに加え後楽園・岡山城がすべて徒歩県内で回れるという事実に驚きの声が上がり、「岡山の人が羨ましい」とまでいってくれる人も居たそうだ。
 次回の芸術交流は2022年。ちょうど現在の市民会館が役割を終える頃。もしかしたら、その市民会館の建物を使った展示が見られるのでは?と勝手に予想して楽しんでいる。
(その2につづく)

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