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瀬戸内アートリージョンをクラシック音楽界にも [クラシック雑感]

 少し時間が経っていて恐縮ですが、10月16日の山陽新聞の備後地域面にこんな記事が掲載されていた。
 
 この記事の中に、湯崎広島県知事(なんと、伊原木岡山県知事とはスタンフォード大学の学友だったらしい)が
岡山、香川県を舞台とする「瀬戸内国際芸術祭」、岡山市中心部での「岡山芸術交流」と積極的に連携していく考えを示し、「二つの芸術祭とともに、瀬戸内アートリージョンの一翼を担いたい」と述べた。
 とある。
 
 瀬戸内アートリージョンについては、岡山芸術交流の総合プロデューサーの石川さんが提唱していて、まだまだ構想段階なのかな?と思っていたが、ここへ来て中国地方の中心県の広島県知事が意欲を示したことで、行政の垣根を超えてアートを通じて強力に連携していこうという動きが加速し始めた。
 岡山県と広島県との県境は峠や大河川と言った地理的な障壁は全く無く、民間レベルの経済活動では県境を感じさせることは少ないが、県という行政区画上の障壁は存在し、例えば許認可が絡む業界はマーケットが分断され、ビジネス面での成長が阻害されてきた面がある。例えば、笠岡に住む私の知人などは、「地デジになって広島の放送が見れなくなって、よく行く福山のお店の情報が入らなくなった」(アナログ時代は岡山&香川と広島の両方の情報番組が見れていた)とか、「笠岡に本社があると、福山の公共事業に食い込めない。民間発注の事業の売上は福山のほうが多いにもかかわらず・・・」などといったことが起こっており、まさに県境が経済活動を阻害している要因になっている。
 今回はアートの世界の話ではあるが、広島県西部から岡山・香川にかけての地域が行政区画の足枷から自由になって瀬戸内地域として一体になれるきっかけになって欲しい。歴史的にも文化的にも共通点が多いので、アートを通じて交流人口や経済を活性化していくと面白いと思う。
 
 瀬戸内地域のアート界では、本四高速が力を入れて取り組んできた『瀬戸内美術館ネットワーク』があり、そういった連携の取り組みが素地になっているものと思う。
 ここからが今回の本題。
 この瀬戸内アートリージョンの取り組みを、クラシック音楽界にも行かせないだろうかと思うのだ。
 少し話は飛ぶが、先日の岡山フィルの定期演奏会で、びっくりしたことがあった。それは入場口でプログラムとともに配布されるチラシの数の多さ。ほんの5年前は5枚ぐらいのチラシがプログラムに細々と挟まれているに過ぎなかったのが、今月は30枚ぐらいのチラシがドサッと袋に入って渡され驚いた(笑)この分量は神戸・京都や広島のコンサートで貰う量に匹敵する。
 要因の一つは岡山フィルの活動が活発になって、岡山フィルの団員さんをはじめ、ソロや室内楽のコンサートなどが盛んになってきていることがあるが、もう一つの要因は福山や高松、松江など、周辺地域(松江は「周辺地域」ではないかも知れないが・・)のコンサートのチラシも入るようになってきてること。
DSC_1278.JPG
 ただ例外があって、福山リーデンローズや三原ポポロなどの行政運営系の公共ホール主催のチラシが無いんだよなあ。
 
 民間のイベント主催者は福山〜岡山・香川の交流人口の多さに敏感に反応し、岡山フィルのコンサートにチラシを入れれば岡山から離れていても集客に繋がることが分かっているが、福山リーデンローズなどは、主催事業の集客に苦労していて、(私が見る限り)客席がギッシリ埋まっているのをほとんど見たことが無いのだが、「広島県」という行政区画が足枷になっているのか、岡山シンフォニーホールのコンサートにチラシを入れるという発想自体が存在しないかのようだ。(逆に岡山フィルのチラシは福山ローデンローズのコンサートに入っていて、このあたりを見ても岡山フィルの近年の頑張りが見て取れる)。
 
 熱心な聴衆や民間の事業主催者は、県境や各都市の枠を超えてどんどん交流しているのに、一番大きなパイを持っている公共ホールが行政の境界に囚われている。これって非常にもったいない。
 
 美術の世界が「瀬戸内アートリージョン」をすすめるならば、クラシック音楽界もそれに乗っかるぐらいの厚かましさが必要なのでは?
 理想は備後・岡山・香川の公共ホールや民間事業者が連合を組んで、「瀬戸内パフォーミング・アーツ・リージョン」(ま、名前はなんでもいいんですけど)を一体的に運営する。
 
 海外オーケストラの招聘コンサートや、岡山フィルや瀬戸フィル、広響を『瀬戸内3オケ』としてこの地域を聴衆が自由に行き来する環境を整備するのだ。クラシックに限らず演劇などの舞台芸術全般に広げてもいい。
 福山・倉敷&岡山・香川、それぞれ単体で運営している現在は、聴衆のボリュームも予算規模も充分でないために、お金のかかる大曲・豪華演目や、出演料が高い一流アーティストの招聘が難しい。しかし、この地域全体で各地域のリソースを持ち寄って、瀬戸内地域全体で回すようにすれば「広島か大阪に出ないと超一流の舞台が見れない」という状況を変えるきっかけになるんじゃないだろうか?
 岡山から広島・大阪に出ようと思えば交通費だけで1万円かかる、高松からだともっと出費を強いられるだろう。これが瀬戸内地域内の往来ならば少なくとも半額以下で済む。
 
 当ブログにも関西や香川から岡山フィルのコンサートに来ている方からコメントを頂くし、某SNSのクラシック音楽コミュニティを見ても、岡山フィルのコンサートに香川や愛媛から通っていたり、逆に香川のコンサートに備後や岡山から通ったりしている様子が見られる。それこそ各ホールはチケット販売データやアンケートなどで集客地域のデータは持っているだろうから、この傾向は掴んでいるはず。
 まずは第1段階として、
◯各ホール主催公演のチラシの挟み込みをバーターで無料化する。
◯各ホール主催公演の共通リーフレットの作成。
◯瀬戸内地域内の主要コンサートが、各ホールで購入できる体制をつくる
主催公演の日程が被らないように調整する
 などは、比較的手がつけやすいのではないか。特に福山リーデンローズの公演は岡山県内のホールの聴衆へ積極的に広報すれば、かなり客足が伸びそうだ。

 次の段階には、
◯チケット販売システムの共通化で各ホール会員が瀬戸内地域内の公演のチケットを買えるようにする
◯各ホール会員になれば瀬戸内地域全体の公演割引制度を適用する
◯海外オーケストラ公演・一流演奏家の公演を持ち回りで招聘し、地域内でコンスタントに一流の舞台が見れるようにする。
 などが進めば、いっそう聴衆の交流人口は増加しそう。
 瀬戸内美術館ネットワークが本四高速会社がスポンサーなら、クラシック音楽界はJR西日本・JR四国に支援をお願いする。各地域の交流人口の増加は、鉄道会社にとってもメリットがある。

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サンフランシスコ人

岡山の美術の新聞記事を発見....

http://brooklynrail.org/2019/11/artseen/Okayama-Art-Summit-2019-If-the-Snake

ArtSeen

Okayama Art Summit 2019: If the Snake

By Osman Can Yerebakan

ニューヨーク市のブルックリン区で発行されている

http://en.wikipedia.org/wiki/The_Brooklyn_Rail
by サンフランシスコ人 (2019-11-15 02:39) 

ヒロノミン

>サンフランシスコ人さん
 情報ありがとうございます。
 この芸術祭で奮闘している関係者の励みになると思います。
by ヒロノミン (2019-11-18 19:40) 

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