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シェレンベルガーのメリーX’mas 岡山大学Jホール [コンサート感想]

 2017 Jホール・レインボーコンサート Vol.49
 『シェレンベルガーのメリーX’mas』
 
マンフレディーニ/クリスマス協奏曲(ソロ:高畑壮平、近藤浩子)
マルチェロ/オーボエ協奏曲(ソロ:シェレンベルガー)
トレッリ/クリスマス協奏曲(ソロ:高畑壮平、近藤浩子)
 ~ 休 憩 ~
J.S.バッハ/オーボエ・ダモーレ協奏曲(BWV1055)(ソロ:シェレンベルガー)
リチョッティ/協奏曲第2番(弦楽合奏)
J.S.バッハ/オーボエとヴァイオリンのための二重協奏曲(BWV1060)(ソロ:シェレンベルガー、近藤浩子)
 
岡山フィルハーモニック管弦楽団弦楽アンサンブル
コンサートマスター:高畑壮平
CCI20171212.jpg
 
 第九の記事より先にこちらを更新、第九は強烈な印象を残したので、忘れることはありません。後ほど更新します。
 
 10月にエリシュカの最終来日公演(大フィル)とイブラギモヴァの協奏曲演奏(日本センチュリー響)を聞き逃し、先週はゲルギエフ&マリインスキー劇場管@高松のチケットをフイにしてしまって、イマイチ不完全燃焼だったこの秋のコンサート巡りでしたが、捨てる神あれば拾う神あり、日曜日(バリバリの出勤日)の岡山フィルの第九を聴くことができ、本日は無理やり半ドンにしてシェレンベルガーと岡山フィルの公演を聴くことが出来た。第九の時にチラシが入っていて、やっぱりこのメンバー、このプログラムは聴きにいかにゃーおえんですよねぇ。
 
 今日の岡山フィル弦楽アンサンブルのメンバーは1stVnが高畑コンマス、奥野さん、石原さん、田中さん。2ndVnが入江さん河野さん、澤田さん。Vcは山本玲子さん、Cbは嶋田真志さん。チェンバロに小川園加さん、というメンバー。
 
 Xmasと聴くと、日本人の僕はすぐに浮かれた気分になってしまう訳だが、前半の2曲の「クリスマス協奏曲」は、祝祭的な中にも敬虔な祈りのような雰囲気を湛えていて、Xmasはあくまでキリストの誕生を祝う日なんだなあ・・・と今更ながらに噛みしめる。
 岡山フィルの弦楽アンサンブルは、シェレンベルガーさんが絶対の信頼を置く首席コンマスに、精鋭のベテランメンバー、気鋭の若手で構成されていて、なかなかの好演を聴かせる。高畑さんと近藤さんのソロの掛け合いの見事な音楽を聴いていると、今後はこの両コンマスが岡山フィルをますます発展させていくことは間違いないと確信させられる。
 しかし、やはりシェレンベルガーのソロは今回も凄かった!マルチェッロはバロックの作曲家だが、オーボエ版パガニーニのコンチェルトか!と突っ込みを入れたくなるような超絶技巧と高速パッセージや、第2楽章のメランコリックさ(映画にも使われるほど、名曲なんですね)などは、もはやロマン派のようなドラマチックさに溢れていた。第1楽章で「いや~さすが、シェレンベルガーやなあ!」と惚れ惚れさせられ、第2楽章の味わい深い音色にうるっと来て、第3楽章の超絶技巧でも魅せる魅せる。
 
 日曜日の第九と今日の前半の演奏について、岡山フィルは本当によくなった、と感慨にふけっていたが、後半の1曲目が、どうもうまくない。シェレンベルガーのオーボエは流石の一言だったが、寄せ木細工のような幾何学的なバッハのオーケストレーション、しかも少人数という厳しい状況に、十分に対応しきれていない。バッハの音楽は、少しのズレがきっかけで全体のアンサンブルが定まらなくなる危険を孕む、そんな場面が散見され、吹きながらも少し心配そうにオーケストラを振り返るシェレンベルガーの姿が印象に残った。
 まだまだ、シェレンベルガーさんに小編成のアンサンブルを鍛えてもらわないといかんなあ・・・

 それにしても、オーボエ・ダモーレって、なかなか聴く機会は無いし、それもシェレンベルガーの演奏っで聴けて、これだけでも今日無理してでも来て良かった。もう少し朴訥とした音だというイメージだったが、シェレンベルガーの手にかかると、これほど切れ味のある演奏ができる楽器なのか・・・と驚いた。「シェレンベルガーのオーボエ・ダモーレを聴いた」というのは、のちに自慢できる場面もあるだろう。
 
 後半2曲目は、トッププルトだけが残り、2-2-2-1-1の編成に。シェレンベルガーはお休みで、指揮者無しの高畑コンマスのアイコンタクトでの弦楽八重奏。これは見事な演奏だった。これを聴くと、先ほどのバッハは単純に弾き込み不足・リハ不足だったのかもしれない。オーケストラではファーストを弾く入江さんがセカンドに座ってよく歌う演奏を聞かせ、これまた歌心にかけては負けていられないとばかりに高畑コンマスの音楽と融合する。前半の近藤さん演奏も含め「これが、これからの岡山フィルの音の核になる音楽なんだなあ」と思いながら聴いていた。
 
 最後のバッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲。シェレンベルガーとこれまで岡フィルのコンサートミストレスを張ってきた近藤さんがソロを取る。これが本当に熱い演奏になった。
 首席指揮者とそのオーケストラのコンミスという立場をお互い脱ぎ捨てての真剣勝負、一人の音楽家同士の作り出す2つの世界が、時に対峙し、時に融合する。シェレンベルガーがこれまた鬼のように正確なピッチとフレージングで演奏し、演奏の正確性とテクニックの面では近藤さんが一歩譲った感はある(というか、オーボエ奏者:シェレンベルガーという怪物と、すべてにおいて互角に渡り合えるヴァイオリニストなんて一握りしかいないだろう)、しかし、二人のソロに導かれた音楽は、バッハの幾何学的な、あるいは宇宙的な世界にを描き出し、その迫力に圧倒された。
 終演後に、近藤さんに惜しみない拍手を送ったシェレンベルガーの姿と、会場の盛り上がりがすべてを物語っていたと思う。 
 
 しかし、このホールでのコンサートはいい演奏になる。シェレンベルガーさんが以前、語っていたように、彼自身がこの会場で演奏することを楽しみにしていることも大きい。特別に音響がいいわけでも居住性が高い(会議用の椅子ですから・・・)わけでもないけれど、最先端のデザインの建築物に包まれて、日光が降り注ぎ、ガラスを通して外の世界を感じながら聴くと、素直に自分の心を開いて、その音楽が作り出す世界に没頭できるように思う。
 そして。これはシェレンベルガーも狙ってやっていたのだろうが、岡山フィルには新・首席コンマスの高畑さんだけじゃなく、近藤さん、入江さん、他の奏者にも素晴らしい駒が揃っている。オーケストラとしての定期演奏会だけじゃなく、シェレンベルガーと高畑コンマスは、色々なことをやるんじゃないか?そんな予感のするコンサートでした。

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南海 凡吉

こんばんは。
早速の感想アップ、ありがとうございます。小生も、演奏を堪能してきました。シェレンベルガー氏のオーボエ・ダモーレ、最高でした。高畑さんだけではなく、近藤さんもすごいと思いました。
裏方さんが第九と同じで、挨拶してきました。
by 南海 凡吉 (2017-12-12 23:20) 

ヒロノミン

>南海 凡吉さん
 当日、運よくノントラブルで、仕事を半ドンに出来ました。聴きごたえ充分のコンサートで、やはり高畑さんをコンマスに迎えたことは大きかったと思うと同時に、シェレンベルガーさんのプレイング・マネージャーの利点を遺憾なく発揮して、昔からの団員さんの演奏を披露できるばが、どんどん拡がっているのも嬉しいです。
by ヒロノミン (2017-12-13 22:33) 

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