SSブログ

アンドレア・グリミネッリ フルートリサイタル [コンサート感想]

Jホール・レインボーコンサート Vol.42
アンドレア・グリミネッリ フルートリサイタル
 
ジュナン/ヴェルディの「仮面舞踏会」による幻想曲
ブリッチャルディ/ヴェルディの「アイーダ」による幻想曲
メンデルスゾーン/無言歌集より、「春の歌」「ヴァネツィアの舟唄第2番」「紡ぎ歌」
クラカンプーブリッチャルディ/ヴァルディの「椿姫」による幻想曲
 ~ 休 憩 ~
ブリッチャルディ/ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」による幻想曲
グルック/「オルフェオとエウリディーチェ」より 精霊の踊り
ポップ/ヴェルディの「リゴレット」による幻想曲
ボルヌ/ビゼーの「カルメン」による華麗な幻想曲

フルート:アンドレア・グリミネッリ
ピアノ:津田 裕也


2017年5月31日 岡山大学 Junko Fukutake Hall


2015-07-07 14.33.38.jpg

(写真は別の日に撮影したもの)

 年度初めに忙しいのはいつものことですが、土・日曜日出勤で平日に休みを取る体制のウチの職場は、この時期は休みを取るのが難しい。世の中、平日は年度末決算から監査、株主総会など、バリバリ動いていますからうちの職場だけ止めるわけにはいかないんですよねぇ。ということで、必然的に仕事が落ち着き始めるこのぐらいの時期に代休を取ることになります(本当は違反らしい・・・でも、ブラック職場が跋扈するご時世、時期が遅くなっても代休を取れ取れと言ってくれる職場はありがたいよねぇ)。この日も代休消化の休みで、このコンサートを聴いてきました。
 このJホールのコンサートシリーズ、すっかり定着していますね。この日もホールのメイン部分はほとんど埋まるほどの盛況っぷり。いつもはワンコイン500円で岡フィルの団員さんら、地元音楽家のコンサートが聴ける。しかし、今回は「プレミアムコンサート」と銘打って、イタリアの至宝:アンドレア・グリミネッリと俊英:津田裕也のデュオ、これでなんと2000円。いずみホールや紀尾井ホールだったら5000円ぐらいは取るコンサートです。
 グリミネッリは岡フィルの定期演奏会に登場したのだが、当日は出勤日と重なり聴きに行けなかった。だからなんとしても聴きに行きたいと思って代休を使った次第。
 やはり聴きに来て良かった。このレベルの奏者になると、一音発しただけで、「おおーっ」と驚かざるを得ない。アンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーもそうだった。まずもって、なんという圧倒的な「声量」!(「声量」という言葉がいちばんしっくりくる)。
 テクニックも凄い!重音奏法、大きな息継ぎをほとんどしないのは循環呼吸が出来るから?巻き舌奏法での茶目っ気のあるヴィヴラーとなど、フルート演奏の特殊技法を堪能させていただいた。
 プログラムは、ヴェルディやビゼーを中心としたイタリア・フランスのオペラのヒットメドレー。そしてグリミネッリさんのフルートは本当に「歌」がある。僕はオペラをそれほど聴かないので、どの場面のどの曲を演奏しているかというのは細かいところは分からないが、有名どころを押さえているので、クラシックになじみの薄いお客さんも大満足のプログラムだろう。
 一方で、グルックの「精霊の踊り」が象徴的だったのだけれど、ピュアな音で祈りを捧げるように印象的に奏でられる場面は、霊的と言えるほど会場の空気が引き込まれていった。横笛という楽器は、日本では魂を慰撫し、時には悪霊を追い払い神々を呼び寄せる「霊的な楽器」として、古来から愛されてきた。この日のグリミネッリさんの演奏からも、そうした「霊的な魅力」が詰まっていた。
 そう、この日のプログラムは、ルチアーノ・パヴァロッティの没後10年を記念して、彼の業績をオマージュした作品群だった(ご本人からの説明があった)。グリミネッリさんはパヴァロッティに才能を見いだされたことがきっかけで、世界的な活躍が始まったとのこと。イタリア・オペラの魅力と同時に、グリミネッリさんがパヴァロッティのことをどれほど尊敬しているか、こちらにまで伝わってきた。
 
 このJホールという空間は何とも言えない魅力な空間です。一番の特長はステージと客席の距離が近く、演奏者と打ち解けた空気が流れること。この日も会場の聴衆とグリミネッリさんとの心が、徐々に通い合ってくるのがわかるコンサートでした。

 そして、今回の伴奏役の津田さんのピアノも素晴らしいもので、このホールのピアノはヤマハのセミコンサートサイズのものですが、「このサイズのピアノからこんな芳醇な音を引き出すか!?」というほど、時には煌めきを感じさせ、時には天衣無縫の無垢な音色を聴かせた。私はあまりピアノのソロコンサートには行かないのだけれど、津田さんのソロ・コンサートには行ってみようと思う。
 
 アンコールはチャールダッシュ、クマンバチの飛行、という超絶高速パッセージの曲の後、浜辺の歌。最後の浜辺の歌は、まさに日本人のDNAに組み込まれている「横笛の霊力に対する敬意」があふれる演奏になった。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

バルビ

 グリミネッリさんの公演の素晴らしさが伝わる記事でした。ありがとうございます。プログラムの内容も豪華で、お楽しみになられたようですね。羨ましく思います。
 実はそのグリミネッリさん。我が群響の5月定期で客演してくれました。指揮は大友さん。演目はモーツァルトのフルート協奏曲第一番。軽やかで艶っぽくて伸びやかで……、本当に素晴らしいモーツァルト演奏でした。
 興味深い記事をありがとうございます。
by バルビ (2017-06-07 21:27) 

ヒロノミンV

>バルビさん
 グリミネッリさん、高崎でも素晴らしい演奏を披露されたんですね。モーツァルトのフルート協奏曲は、まだ2曲とも岡山では披露されていないので(岡山フィル定期では、フルートとハープの協奏交響曲)、「次回」を期待したいと思います。
 それにしても先月はハルサイで、今月は高関さんのショスタコーヴィチ7番、群響は充実していますね!
by ヒロノミンV (2017-06-08 18:34) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0