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倉敷のヴィルトゥオーゾ 室内楽コンサート Vol.2 [コンサート感想]

第31回倉敷音楽祭 倉敷のヴィルトゥオーゾ 室内楽コンサート Vol.2

ピアノ:松本和将
ヴァイオリン:守屋剛志
  〃   :黒川侑
ヴィオラ:中村洋乃理
チェロ:ドミトリー・フェイギン
コントラバス:河本直樹

ラフマニノフ/悲しみの三重奏(黒川、フェイギン、松本)
  〃   /チェロ・ソナタト短調(フェイギン、松本)
  ~ 休 憩 ~
シューベルト/ピアノ五重奏曲イ長調「ます」

2017年3月18日 倉敷市芸文館

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 後半の「ます」も良かったけど、この日の主役はフェイギンさんのチェロでしたね。的確に音を捕らえる演奏は、はじめは「真面目」過ぎるかな、と思っていましたが、途中から正攻法でぐいぐい高揚していく音楽に息を飲みました。

(4月29日 感想後進)

 結局、コンサートから1か月半経ってしまいました。僕は演奏中には絶対にメモを取りませんが、演奏会後に余韻を楽しむ時間を必ず取って、編成や客席の埋まり具合や雰囲気、その時の興奮や感じたことをメモするようにしています。そのメモ書きを元に、感想を起こしていきます。

 昨年の第1回のメンバーからチェロがドミトリー・フェイギンさんに交代、メインのプログラムがシューベルトの「ます」ということで、コントラバスに岡山ではおなじみの河本さんが加わりました。

 まず1曲目は、ラフマニノフのチェロソナタ。フェイギンさんと松本和将さんのデュオ。1901に作曲されたこの曲は、いかにもラフマニノフらしいメランコリックな旋律が次から次へと押し寄せてくる。ロマン派音楽の黄昏を感じさせる曲で、チェロの奏でる旋律だけで無く、ピアノの伴奏も相まって、転調に次ぐ転調で切ないメロディーをたたみかけてくるようなところは、ピアノ協奏曲第2番を思わせる。

 フェイギンさんの演奏は、折り目の正しい演奏で、体の軸をほとんど動かさず、的確に音符を捉えていく感じ。でも、表情は豊か。フマニノフの音符の羅列がくっきりとはっきりと客席に届き、この曲の傑作さを的確に伝えていたように感じる。ラフマニノフに限らず、ロシアの作曲家の音楽には、何とも表現しがたい翳りがある。フェイギンさんの折り目正しい演奏の中に、その翳りを内包しながら前進する音楽に心を解きほぐされた時間だった。

 2曲目の「悲しみの三重奏第1番」は黒川さんも加わってのトリオで演奏。松本さんの解説で「あまり演奏される機会はありませんが、本当に素晴らしい名曲」との言葉通りの曲。チェロ・ソナタもそうだけど、もしこの曲が1860年あたりに発表されていたら、もっと有名になっていたのでは無いだろうか?
 松本さんの情感のこめられたピアノと、高音を中心に伸びやかにうたう黒川さんが主導しているように思うけれど、曲が進んでいくにつれて、この曲もやはりチェロのフェイギンさんの音に惹かれて行く。旋律で主導するところも内声も、通奏低音的な部分も、なんでもこなしつつ、彼の曲想の描き方が全体の演奏の肝になっているように感じられました。
 後半のピアノ五重奏曲「ます」。色々なユニットで聴いてきたこの曲。やはり、これだけのメンバーが室内楽の定番曲を演奏すると、まったく余裕が違うのはもちろんの事。室内楽を中心にやっている守屋さんと松本さんが際立って華があったなあ、というのが正直な感想。鱒が飛び跳ねるような場面や揺れる水面を映すような場面のこの2人のアドリブは流石でした。一方で、シューベルトの音楽のハーモニーも素晴らしかった。ヴィオラ・チェロ・コントラバスの充実した中低音が、この演奏のしっかりとした手応えを与えていたように思う。

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コメント 3

サンフランシスコ人

米国では、ラフマニノフの室内楽をあまりやりませんねぇ....
by サンフランシスコ人 (2017-03-22 02:38) 

ヒロノミンV

>サンフランシスコ人さん
 確かにラフマニノフのウェットな音楽は、アメリカには似合わない気がします。
by ヒロノミンV (2017-03-24 19:14) 

サンフランシスコ人

ボルティモア市でボルティモア交響楽団の演奏会に行った時、デイヴィッド・ジンマンがラフマニノフの音楽とは何かと聴衆に質問していました...
by サンフランシスコ人 (2017-03-25 03:01) 

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