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岡山フィルハーモニック管弦楽団 2017/2018シーズンプログラム [各地プロ・オケ情報]

 前回のエントリーで、「岡山フィルの来季のプログラムの発表は、たぶん年明け」と書いてしまいましたが、本日発表になりました(あやうく前回のエントリーがお蔵入りになるところやった)。

岡山フィル第53回定期演奏会
2017年7月9日(日)15:00~
 ブラームス/悲劇的序曲
 R.シュトラウス/ホルン協奏曲第2番
 ブラームス/交響曲 第3番
指揮:三ツ橋敬子
ホルン独奏:シュテファン・ドール

岡山フィル第54回定期演奏会
2017年10月8日(日)15:00~
 ベートーヴェン/交響曲 第2番
 ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲
 ベートーヴェン/交響曲 第7番
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ヴァイオリン独奏:青木尚佳


岡山フィル特別演奏会 ~ニューイヤーコンサート~
2018年1月21日(日)15:00~
 モーツァルト/歌劇「魔笛」ハイライト
 リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ソリスト未定(岡山県にゆかりのある歌手の方々)


岡山フィル第55回定期演奏会
2017年3月11日(日)15時~
 ベートーヴェン/交響曲 第8番
 ショスタコーヴィッチ/交響曲 第5番
指揮:ハンスイェルク・シェレンベルガー
 定期演奏会年3回体制は維持しますが、前回エントリーで予想した通り、特別演奏会を入れて年4回(季節に1回)のサイクルを組んできたのは、定期演奏会を年4回にするための布石だと思います。
 さて、私が感じる来シーズンの聴きどころを書きたいと思います。

 まずシェレンベルガー以外の指揮者が久々に登場する7月の第53回定期演奏会。岡山のファンの熱烈なる再登場の要望を受けてのシュテファン・ドールの登場。忘れもしない去年のアンサンブル・ウィーン=ベルリンとの共演で聴かせた、R.シュトラウスのホルン協奏曲での迫力のある鮮やかな演奏!

 蒸し暑い7月の岡山シンフォニーホールがアルプスの麓の爽やかな夏の空気になりました。吹奏楽・オーケストラの管楽器を演奏する高校生は、1000円札を握りしめてB席ユースシートを買うべし!
 指揮者の三ツ橋さんは若手の実力派の指揮者です。女性指揮者(しかも美人)ということで話題になっていますが、鮮やかな指揮技術とスケールの大きい音楽づくりには定評があります(余談ですが、大阪の2管編成の某交響楽団は、思い切って三ツ橋さんを常任指揮者に据えてみてはどうか?とかねがね思っています。それぐらい僕は評価しています)。
 岡山フィルにとっても、楽団の今後のことを考えるとシェレンベルガーばかりが登場する状況に頼っているわけにはいかない。他の指揮者との共演で、いかに「岡フィルらしさ」を発揮していけるのか?三ツ橋さんと岡山フィルは相性がいいと踏んでいます
 この7月定演にはテーマがあって、それは「英雄」。R.シュトラウスのホルン協奏曲の調性は「英雄の調性」と言われる変ホ長調。後半のブラームスの交響曲第3番は、19世紀末の大指揮者、ハンス・リヒターが「ブラームスの英雄交響曲だ」といった、堂々たる内容を持つ曲です。

 10月の第54回定期演奏会は、ソリストに青木尚佳の登場。ロン=ティボー国際コンクールで第2位に入賞しています。このコンクールは極めてハイレベルなのが特徴で、日本人の優勝者には樫本大進や山田晃子らが知られていますが、1位以外の入賞者についても、米元響子(3位)、南紫音(2位)、有希・マヌエラ・ヤンケ(5位)、長尾春花(5位)、成田達輝(2位)と錚々たるメンバーが揃います。青木さんのブルッフがたいへん楽しみです。
 ブルッフのヴァイオリン協奏曲を挟むベートーヴェンの2つのシンフォニーも対照的。テーマは「絶望と絶頂」ということになるだろうか?ハイリゲンシュタットの遺書を書いた時期に書かれた2番、『傑作の森』の絶頂期に書かれた7番。しかしながら2曲とも明朗で快活な楽曲。シェレンベルガーはこの2曲をどう描き分けるのでしょうか。

 1月の特別演奏会:ニュー・イヤーコンサート。これもプログラムが凝っています。テーマは「古代エジプトからアラビア 夢の物語」
 『魔笛』はラムセス時代の古代エジプト。神官ザラストロとゾロアスター教との符合。フリーメイソンの暗号など謎の多い作品ではありますが、モーツァルトの時代のキリスト教・イスラム教の立教の前の時代を舞台に選んだ意味が大きい。シェエラザードは言うまでもなく「千夜一夜物語」。
 そこで提案なんですが、岡山シンフォニーホールにほど近いオリエント美術館とタイアップした企画なんかがあると面白い。

 「~岡山フィルニュー・イヤーコンサート特別企画~ 魔笛とアラビアンナイト」のような小さな企画展でもいいので、岡山の音楽文化と全国でも類を見ない公立の古代オリエント専門博物館とのコラボが見てみたいですね。
 3月の第55回定期演奏会のテーマは「古典回帰とアイデンティティ」
 ベートーヴェンの8番は古典回帰の形式を取りながら、新しい時代の空気を感じさせる画期的な作品。第3楽章のメヌエットを聴いて貴族の匂いを感じる人は皆無でしょう。ベートーヴェンはこの交響曲を自分の分身のように愛し、誰にも献呈しなかった唯一の交響曲。
 ショスタコーヴィチは反革命的作曲家の嫌疑をかけられ、刑務所か強制労働送りの崖っぷちで、この曲を作曲。ソ連当局の重鎮にも解りやすいよう、古典的な作風となった。シェレンベルガーが「革命」という副題をつけていないのも彼の良心を感じます。ショスタコーヴィチはこの曲のフィナーレに「私は(社会主義を・革命を)信じない!」という巧妙に隠された自己のメッセージを入れる。
 とまあ、聴きどころは尽きません。
 最後にシェレンベルガーと岡山フィルの今後について。これまでの4年間は「バランスを重視し、響きの美しさを追求した音楽」を追求してきたように思います。一方で、今年3月のドイツ・レクイエムや6月のマーラーでは、その瞬間に生まれるニュアンスや変化を大事にする新たな一面が垣間見えました。シェレンベルガーは関西フィルや日本センチュリー(これはソリストとして)との共演で、結構、「変化する」指揮を志向していたんですよね。
 現状の岡山フィルはシェレンベルガーのハイレベルな欲求に瞬時に反応できていないもどかしさは確かにあります。一方で、岡山フィルの合奏レベルは回を追うごとに向上しているのが解る。その速度は瞠目すべきスピードです。
 シェレンベルガー首席指揮者5年目のシーズンは、どんなシーズンになるんでしょうね。 

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バルビ

 シェレンベルガーさん+岡山フィルでの来年度の定期、期待が高まりますね。どうぞ、お楽しみください。
 三橋さんは私も、素晴らし女流指揮者の一人だと思います。バトンテクニックも、優れていますね。我が群響にも客演してくれて、プッチーニの蝶々夫人やドビュッシーの管弦楽曲を繊細な味付けで佳演を聴かせてくれました。
 我が群響も、大友さんの体制で充実期を迎えます。大植さんや高関さんの公演が楽しみです。
by バルビ (2016-12-28 18:05) 

ヒロノミンV

>バルビさん
 コメントありがとうございます。
 さすがに三ツ橋さんは色々なオーケストラのファンが目をつけていますね。広響を振ったシューマン3番が見事な演奏だったので、岡山フィルでのタクトも期待してしまいます。
 大植さんが10月に群響に登場するんですね!(う~ん、関東方面に出張が入らないだろうか…ないですね)。
 デュメイが弾き振りするのにも驚きました。関西フィル以外ではあまり指揮はやっていない印象だったもので。非常に魅力的なプログラムですね。
by ヒロノミンV (2016-12-30 23:25) 

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