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岡山大学Jホールレインボーコンサート Vol.33 [コンサート感想]

岡山大学 Junko Fukutake Hall レインボーコンサート Vol.33
~岡山から世界にはばたく若きヴィルトゥオーゾ達にエールを~

Vn:福田廉之介
クライスラー/ジプシーの女
  〃   /愛の悲しみ
  〃   /中国の太鼓
フォーレ/子守歌
モンティ/チャールダッシュ
クライスラー/ウイーン奇想曲
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン

Vn:長坂拓己
バルトーク/ルーマニア民族舞曲
ラヴェル/ツィガーヌ

Pf:中桐望
ショパン/ピアノソナタ第3番
DSC_0337.JPG

 午後から夏休みを取って岡山大学鹿田キャンパス内にあるJunko Fukutake Hall(通称:Jホール)へ。会場は大盛況。400人ぐらいは入っただろうか?既にピアニストとして地位を築き始めている中桐望に加え、地元の好事家の間で話題沸騰中の天才少年、福田廉之介、アンサンブル・セフィロトなど室内楽を中心に実績がある長坂拓己の3名が一堂に会する、ということで岡山フィルの団員さんをはじめ、多くの音楽関係者の方の姿が見られました。

 まず、福田さん。メニューイン国際コンクールジュニア部門での優勝以来、中学生にしてソロコンサートを何度も成功させている、今、岡山で最も注目されているヴァイオリニスト。僕は生演奏で聴くのははじめてでしたが、いやはや恐れ入りました。
 もう10代半ばにしてソリストとしての存在感は充分。素人耳ですが、既に技術的な穴は全く無いように感じる。表現の引き出しも多彩で、聴衆をどんどん魅了していく。
 岡山出身のヴァイオリニストといえば、現在、海外の室内楽のコンクールを総なめしている「クァルテット・ベルリン=トゥキョウ」の第1ヴァイオリニスト:守屋剛志さんの名前があがりますが、福田さんの演奏は、守屋さんに続く世界で評価されるヴァイオリニストへ確実に歩んでいることを感じさせます。
 チャールダッシュやツィゴイネルワイゼンの超絶技巧を涼しい顔で弾いて、聴衆を沸かせたと思ったら、愛の悲しみで、なんとも奥の深い表現を見せる。末恐ろしいヴァイオリニストです。

 次に長坂さん。情熱的な演奏で、ヴァイオリンの弦が切れる、というハプニングがあったほど。しかし、素人耳で聴いても、技術的には課題を多く抱えていることが分かる。ただ、もっと技術を高めたい!という欲求があるから、単身・ハンガリーで修業を積んでいるのでしょう。今後の進化に期待したい。ただ・・・
 音楽を聴きに行くことが好きだから、そして岡山の演奏家にもっと活躍してほしいから、ここからはあえて厳しいことを書きます。まず、彼が醸し出す全体的な雰囲気が良くない。聴衆へ向けたお辞儀一つをとっても、後半に出てきた中桐さんの美しい所作と比べると、なんとなくルーズな雰囲気がある。服装がだぶついていて演奏中も姿勢が悪く、全体的にだらしない雰囲気が漂っている。また、福田さんのように、大きな呼吸感で客席を巻き込んでいくようなことが無く、彼の呼吸感が客席に伝わってこない。
 彼に必要なのは正しい姿勢と呼吸を身に着けることではないかと思う。座禅・茶道・合気道・・日本には姿勢と呼吸法を矯正する様々な文化がある。回り道に思えることでもブレイクスルーの契機になることはある。
 それから服装と髪型は聴衆の感性にも影響を及ぼす。髪型で個性を主張するというのは、聴衆の心理的ハードルを上げる。例えば(例に出して申し訳ないが)及川浩治や田村響のような圧倒的なテクニックとオーラがあれば、金髪も演奏者の個性の一つとして印象に残るだろう。しかし、奇抜な髪型で目を引いた演奏者が技術的に物足りなかったら・・・、誠実で真面目な服装の演奏者よりも不満は大きくなる、ヘタをしたら「二度と足を運んでやるものか」となるものだ。
 クラシックのコンサートのチケットを購入するボリュームゾーンは、40代~70代だろう。クラシック音楽の演奏家として生きて行く、ということは、人生の酸いも甘いも噛み分けたこうした世代の大人たちに、身銭を切らせて、時間を使わせて、足を使わせて会場に来させなければならない。この厳しい事実を彼は自覚しているのだろうか。後半に登場した中桐さんの一本筋の通った気持ちの良い所作や姿勢、華やかだが清潔感のある服装や髪形。これらは大いに参考になったはず。

 休憩後には中桐さんのピアノ。彼女の所作は本当に美しく、マイクを使ってのお話の内容も知的でショパンへの思いを感じさせるもの。演奏を始める時の集中力と背中越しでも感じられるオーラ。どれをとってもソリストとしての資質は盤石です。
 僕は、ショパンが本当に苦手で、海外・国内の名だたるピアニストの演奏でも、演奏中に他の事を考えて我に返る自分に愕然としたり・・・。マーラーやブルックナーのシンフォニーなら、70分であろうが90分の長丁場であろうが、1秒たりとも集中力を切らすことが無いのに・・・。ショパンとは本当に相性がよくない。唯一、120分ずっと集中して聴けたピアニストは横山幸雄さん。
 しかし、中桐さんのショパンのピアノソナタは(今回、1曲だけだが)そういったことが無く、集中して聴けた。本当にいい曲だ。感情に過度に溺れることが無く、一音一音大切にし、作曲者へのリスペクトが伝わってくる演奏でした。ピアノもセミコンサートサイズで、万全な環境ではないはずだったが、そんなことを跳ね返す素晴らしい25分間だった。


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