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日本センチュリー響いずみホール定期No.31 飯森範親指揮 Ob:シェレンベルガー [コンサート感想]

日本センチュリー交響楽団 いずみホール定期演奏会
ハイドンマラソン

ハイドン/交響響第19番
モーツァルト/オーボエ協奏曲ハ長調
 ~ 休憩 ~
ハイドン/交響曲第58番
  〃 /交響曲第7番「昼」

指揮:飯森範親
オーボエ独奏:ハンスイェルク・シェレンベルガー 
コンサートマスター:荒井英治

2016年6月17日 いずみホール
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  このコンサート、まず第一目的はシェレンベルガー氏のソロで、それはシェレンベルガー氏の挑発に見事に応えた飯森&センチュリーの柔軟性もあって、シェレンベルガーの音楽性を120%引き出した見事なコンチェルトでした。

  そして、第二目的だったはずのセンチュリーのハイドンマラソンシリーズ、まずセンチュリーが水を得た魚のようにピチピチの音楽を聴かせてくれる、そしてその純度の高いピュアトーンと、アンサンブルの自由闊達さと精度の高さが理想的なバランスで成立している。

  お世辞抜きで、このサイズ(6ー2型対抗配置では)国内最高峰級のレベルではないでしょうか?少なくとも西日本には敵はいないと思う。

  僕もハイドンを聴く愉悦に浸った。これはまさに人生の愉悦の時間です。それはこの上なく心地のよい時間であり、またスリリングな体験でもありました。

  今年の関西遠征は、大フィルと京響を中心に予定を組んでいますが、このセンチュリーのハイドンシリーズも考慮に入れないと!とりあえず8月は行くことに決めました。

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(いずみホールは、ホール階外壁を改装中でした)

・いきなり余談ですが、地下鉄の駅を降りると、物凄い人数の女性たちが僕と同じ方向に向かっている。「これはセンチュリーも隅に置けない、いや、まさかな」と思っていたら、途中、大阪城ホールの方への分かれ道でサヨナラとなった。韓流アイドルのコンサートだったらしい。そしてホテルニューオータニ北側の落ち着いた並木道で、ようやくコンサートに行く落ち着いた気持になる。

・編成は6-6-4-3-2の対向配置。曲によってチェロバスを減じていた。

・客席は8割程度の入りでした。ハイドンって日本では人気が無い印象なんですけど、これはリピーターが付いている感じがしますね。会場の雰囲気も一体感があって、この企画も2年目に入ってオケと観客の間に、一種の戦友のような雰囲気があります。

・このシリーズをずっと通して登場しているらしい通奏低音のチェンバロ担当のエスカンデさん。ずっと音楽を支え続ける、その則からはみ出ることのない、響きが薄くなるところでは自らも薄く徹しないといけない役割を良心的にこなしていく。実は尋常な技術と集中力が必要なんやないだろうか。このシリーズの目の肥えた客には解っているらしく、カーテンコールではひときわ盛大な拍手をもらっていた。

交響曲第19番
・この曲で、もうセンチュリーの響きに心を鷲づかみにされた。格調の高い柔らかい音、ノンビブラート奏法を重しつつも尖った音は皆無。6型の編成であるから一人でも異質な音が出れば大変に目立ってしまうだろうが、そんな奏者は皆無。そう、全員が極めてハイレベルで、「センチュリーの音」が頭の先からつま先まで体に沁み込んでいる感じ。

・19番の第3楽章のメヌエット。これを聴いているときに先日の岡フィルのマーラー1番の第2楽章を思い出していたんですよ。2つか3つのモチーフが対位法とフーガで構築的に盛り上がっていく、マーラーだってハイドンからず~っと繋がっていく作曲家なんだな。と改めて感じた。

モーツァルト/オーボエ協奏曲
・2曲目はモーツァルトのオーボエ協奏曲。シェレンベルガーは岡山フィルではハイドンのオーボエ協奏曲を演奏したこともあるが、集客や少し違ったテイストのモノを入れて変化を持たせているのだろう。

・もし違ってたらゴメンナサイ。シェレンベルガーはオーボエを何本か持っていると思うのですが、今回は岡山大学Jホールで奥さんとのデュオで使用していた者と色が同じ(赤みがかった茶色)。このオーボエは音量は少し抑え目ながらものすごく柔らかい音が出る印象があります。いずみホールの音響や容積を考慮して、ベストな選択をしたものと思う。

・やはりシェレンベルガーのオーボエは(今や岡山でだって聴けるんですが!)大阪へ足を運ぶ価値がありました。オーボエってこれほどやわかい音が出るもんなんですね。カデンツァでは地上と天の声の会話のように、いずみホールの残響を使って伸びやかな演奏を聴かせた。

・あと、指揮者やオケメンバーの息気遣いの中に入り込んで、時折挑発したりしながら(飯森さんって、コンチェルトのタクト、やっぱり上手いですねぇ)、大いに音楽を楽しんでい。悔しいけれど、岡フィルと演った(2007年)ときよりもソリストとオケの対話量が豊富だった。でも、今、岡フィルとこの曲をやったら分からへんけどね。

・第3楽章はオケもシェレンベルガーも大いに遊んだ。で、若干シェレンベルガーさん、息切れな印象もあったけど、それ以上の愉悦があった。最高のコンチェルトでした。

交響曲第58番
・3曲目はこの日演奏された3曲のシンフォニーの中では最も、構成がしっかりしている。いわゆる疾風怒濤期の初期の曲になるようだ。

・第3楽章のメヌエットは、タターッという付点音符のリズムが全曲を貫く。その弦楽器の音の伸びやかな音、そこに絡む木管+ホルンの柔らかさ、これぞハイドンを聴く愉悦だと、天井を仰ぎながら聴いていた。

・第4楽章は疾風怒濤の楽章、ベートーヴェンのシンフォニーのスケルツォの源流を見る思いがしたし、シンコペーションのリズムがどんどん盛り上がっていく昂揚感、それなのに突然訪れるフィナーレは、ドヴォルザークの第8番の最終楽章にも応用されたアイデア。ハイドンの交響曲を聴くことは、後年のシンフォニー作曲家のネタ帳を覗き見るようなわくわく感がある。


交響曲第7番「昼」
・最後に7番「昼」。交響曲の父と言われるハイドンが、まだ父になっていないころ、まだまだ交響曲というジャンルは確立されていなかった。そのことがよくわかる曲でもあるし、それだけ形式的な自由さが眩しい。

・要するに、この曲は『合奏協奏曲』なんですね。だからこの日は、前半のモーツァルトのオーボエ協奏曲と、この曲と、コンチェルトを2曲聞いたような美味しさがある。さすがに飯森さん、よく寝られたプログラムだわ。

・冒頭のゆったりした序奏からして、若かりしハイドンの野心が感じられる作品です。対向配置のヴァイオリンの独奏の掛け合いにチェロが絡んで、さらにオーボエも絡んでいく。

・ソロを取る楽器以外の通常のパート譜を演奏する楽器も、絶妙の塩梅で全体のアンサンブルを柔らかくかつ引き締まったものに整えて行く。それぞれのパートにリーダーたちはソロに取られてリードできないにも関わらず、まったくそんなことを感じさせない。この曲を聴いているときに「センチュリーのアンサンブルは国内最高峰、少なくとも西日本では敵なしだ」との思いを強くした。

・第2楽章は、まるでオペラのアリア(解説には伴奏付レチタチーヴォと書かれてありました)のように悲劇的な伴奏に、応えて荒井英治さんのヴァイオリンが歌いに歌う。音楽は明転して、フルートに導かれて天国的な世界へ。いやはや、こうして聴くと、この交響曲「昼」ってなんでもありでんな(笑)

・第3楽章に入ると、今度はコントラバスまでソロに参加させられる、ハイドンの交響曲ではよくありますよね→コントラバス独奏。ソロは村田さん(でよろしかったでしょうか?)、こんな上手いコントラバス奏者が、ハイドンの時代にはおれへんやろ(笑)とツッコミを入れたくなるほど、見事な演奏。

・最終楽章までコンチェルト・グロッソ交響曲が前回。フルートだって難しい。ストップ・アンド・ゴーの多い構成にも余裕のアンサンブル。この曲をメインに持ってきた理由が分かりました、会場も大いに盛り上がりました。

・ハイドンの交響曲104曲を全曲演奏する。こんな企画が興業として可能なのは。東京と大阪だけだろうと思う。飯森さんは経営的な苦境の中にありながらも、大阪のオーケストラだから出来ること、大阪の聴衆のプライドをくすぐる様な企画を考えて、実行に移したということでしょう。じっさい、このシリーズの固定のお客さんが沢山ついている様子。そりゃーハイドンの交響曲104曲を全曲聴けたら、自慢になるよね。
 完走を目指している方は、ぜひ頑張って通ってください。


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